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2015年 映画・演劇・舞台 etc

    
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2015.1.1

2014年のベスト映画

毎年のことだが、昨年観た映画のまとめを。

昨年は、劇場での鑑賞数68本と、

コンサート・ライヴ同様 記録を更新。

どんだけ観てんねん、という感じだが、

前半6ヶ月で42本観ていたので、

その調子なら80本以上観たわけで、

後半かなり失速した感がある。

まあ、6ヶ月で42本ということは、

月7本やからそのペースをずっと保つのは

無理があるわな。

昨年は、イマイチ記憶に残っているものが

少ない。

ちょっと書き出してみよ。


★4.5

「ジャッジ!」
「7番房の奇跡」
「光にふれる」
「ソウルガールズ」
「ダラス・バイヤーズクラブ」
「それでも夜は明ける」
「ジョバンニの島」
「バックコーラスの歌姫 (ディーバ) たち」
「アナと雪の女王」
「自由に乾杯」
「8月の家族たち」
「プリズナーズ」
「超高速!参勤交代」
「こっぱみじん」
「もういちど」
「プロミスト・ランド」
「フライト・ゲーム」
「寄生獣」
「フューリー」
「ゴーン・ガール」


★5つ

「ラッシュ プライドと友情」
「LIFE!」
「ONE CHANCE」
「青天の霹靂」
「ぼくたちの家族」
「柘榴坂の仇討」
「マルティニークからの祈り」
「蜩ノ記」
「ミリオンダラーアーム」


こうやって書き出すと、ああそうそうって感じやな。

高評価も多い。

さすがに ★5つは全部覚えてるけど、

★4つ半の中には、題名見てもすぐには、

どんな映画か思い出せんもんもある。

これは、私の記憶力の低下か。


この中からベスト5を選ぶとしたら、

順位なしでこの5本。

「LIFE!」
「ぼくたちの家族」
「柘榴坂の仇討」
「マルティニークからの祈り」
「蜩ノ記」

おお、邦画が3本に米映画と韓国映画。

上記には出てこなかった (★4つ) けど、

「ジョゼと虎と魚たち」 は 印象に

残っていて、また観たいなぁ。

これ、リバイバル上映で観たので

昨年の映画とちゃうけど。





2015.1.8

バンクーバーの朝日

ブラジルやハワイ、アメリカへは、

多くの日本人が移民したことは知っていたけど、

カナダにも20世紀の初頭、多くの日本人が

移民していたとは知らなかった。

バンクーバーには、日本人村があったほど。

映画 「バンクーバーの朝日」 は、

戦前にバンクーバーに実在した日本人の

野球チームの物語。

日本人といっても彼らは移民の二世で、

カナダ生まれ。

名前もレジー、ロイ、トム、フランクなど。

なので、彼らは 「日本に帰る」 とは言わずに、

「日本に行く」 という表現をする。


彼らの親たちは、胸をふくらませて、

カナダに渡ったものの、その生活はつらく、

差別もひどかった。

仕事を失うもの、仕事があっても白人より

過酷な条件。

そんな中、「バンクーバー朝日」 は、

野球で日本人の希望になるのだった。

力では白人に勝てなかった 「バンクーバー朝日」 は、

バントや盗塁などを駆使し、ついには

リーグ優勝するのだが、その後、太平洋戦争に

突入し、日本人は 敵性外国人とみなされ、

強制収容所に入れられることになる。


それから60年上経った2003年、

カナダの移民社会、野球文化への貢献が認められ、

「バンクーバー朝日」 は、野球の殿堂入りを果たした。

映画では、エンドロール時にその OB と思われる

老人が一人、登場する。


出演は、妻夫木聡、亀梨和也、上地雄輔、

勝地涼、池松壮亮 (最近売れっ子やね)、

石田えり、佐藤浩市 ら。

ちょい役で 宮崎あおい、貫地谷しほり、

ユースケ・サンタマリア なども出演。


題材は、良いねんけど、映画としては

やや散漫な感じ。

前半、時代背景や彼らのおかれた境遇の

説明的シーンが多く、ちょい退屈。

確かに背景を知らないと、

この映画は分からないのだけど。

その過酷な状況で、野球チームが日本人の

希望となったということを短時間で描くのは

相当難しいやろうけど。


戦争と差別。

どちらも、今だになくならない人間の闇やね。

カナダ人全員が日本人を差別していたわけではなく、

良心的なカナダ人もいるのは救いやね。


グランドの塀にあった

「All You Need Is Hope」 という落書きが印象的。

監督は 「舟を編む」 の石井裕也。


★★★★☆





2015.1.9

百円の恋

山口県周南映画祭というのがあるらしい。

松田優作に出身地で、優作の志を受け継ぐ

クリエイターを発掘すべく、2012年に

「松田優作賞」 という賞が新設された。

その第1回グランプリ作品 『百円の恋』 を

観てきた。


主演は、安藤サクラ、新井浩文。

前半は、安藤サクラ演じる32歳、

一子のだらしなさと登場人物数名の

ダメさ加減が、見ていられなくて、

これは失敗したか、とまで思ったが、

途中、ボクシングに目覚めてからの

一子の変化が素晴らしい。

ゆるくて、だらしない一子が、

目も見張る変化を遂げる。

ボクシングのテストに受かるまで、

シャープになっていくのだ。

もう、別人です。


最初は、「Blues」 で始まったのが、

途中で 「Rock」 になり、最後は

「Blues」 で終わる、そんな映画だ。

我ながらこの表現は、言い得て妙だと思うが、

観た人に意見聞きたい。


ここから、ネタバレ。

一子は 最後には、試合をするのだが、

この試合がまた、迫力がある。

そして、ロッキーのようにはいかない。

ボコボコにされて負けるのだ。

この映画は、ロッキーのような

ファンタジーではない。


冒頭、甥っ子 (小学生) とボクシングの

テレビ・ゲームをしていて、

負けた甥っ子に

「大人は手加減するもんだよ」 と言われる

シーンがある。

その時、一子は甥っ子に向かって、

「世の中、甘くないんだよ」 みたいなことを言う。

ボクシングを始めてからは、ジムのオヤジに

「ボクシングを舐めるな」 と、今度は

たしなめられる。

試合に負けた一子は、試合後、こう言って泣く。

「勝ちたかった。一度でいいから、勝ちたい。」

これは、ボクシングのことだけを言っているのではない。

それが聞こえてくるので、結構、切ない。


世の中は、甘くない。

でも、立ち向かうことには、意味がある。

何もしないより、よっぽど意味がある。

そんなことを思ったのでした。

そして、人間って

ちょっとしたきっかけがあれば、

大きく変われるんじゃないか、とも思った。


前半の一子は嫌いだが、

ボクシングをしている時の一子は美しい。

どこか、昭和の匂いのする、

「松田優作賞」 らしい作品でした。

東京でも2館でしか上映していないためか、

ほとんど満席の様に混んでてビックリ。


★★★★☆


百円の恋 オフィシャルサイト





2015.1.12

6才のボクが、大人になるまで。

気の遠くなるような話だ。

6歳から18歳までの少年の成長を描く映画。

そういうストーリーは、今までもあっただろうが、

それらは、数人の子役を年頃ごとに

使い分けての作品。

本作の凄さは、6歳から18歳まで、

同じ少年を、いや少年だけでなく、

両親役も姉役も 同じ役者を使って12年間かけて

撮影した映画だということ。

そんなこと、普通やろうと思わへんよね。

「気の遠くなるような話だ」 と書いたのは、

映画のストーリーではなく、製作の話。


予告編を観たときに

「一生に一度、あるかないかの名作」 という

フレーズがあったんやけど、

まあ、そうそうないやろな、こんな映画。


主人公は、エラー・コルトレーン演じる、

少年メイソン。

彼の成長の物語だが、それだけではない。

メイソンの母親役のパトリシア・アークエット、

父親役のイーサン・ホーク、

姉役のローレライ・リンクレイターも

12年間の成長と変化を、

それこそ12年間かけて演じている。

12年を165分に凝縮しているせいもあってか、

子供は、あっという間に大きくなっていく感が強い。

初恋、別離などを経験しながら、

あっという間に。

12年間に母親は、離婚と再婚を繰り返す。

父親は再婚し、子供をもうける。

そんな風に、トピックスがいっぱいあるのに、

また出会いと別れがいっぱいあるのに、

物語は淡々と流れていく。

それこそが人生そのものだと 言わんばかりに。

メイソンは、母のもとを離れ大学生になる。

そして、ラストシーン。

この映画を象徴する、メイソンの言葉と

彼の新しい出会いで幕を閉じる。


めちゃくちゃ感動するとか、

そういう類ではなかったけど、

静かに染み入ってくる映画です。

165分は、長く感じない。

(12年分やからね。)

原題は、「BOYHOOD」。

「少年時代、少年期」 という意味。


ベルリン国際映画祭 監督賞 (銀熊賞) 他 多数受賞。


監督は、リチャード・リンクレイター。

観ていないけど、この監督の作品、

「恋人までの距離」、「ビフォア・サンセット」、

「ビフォア・ミッドナイト」 は、1995年から

2013年の18年に渡った3部作らしい。

そういう、長〜い時間をかけて作品を

創る人なのかもしれない。

その3部作も観てみたくなった。


★★★★☆


6才のボクが、大人になるまで。Official Site





2015.1.19

神様はバリにいる

バリ島にいる実在の大富豪、

通称アニキを主人公にした映画

「神様はバリにいる」 を観てきた。

主演は、堤真一、尾野真千子。

そのほか、玉木宏、ナオト・インティライミ ら。

コメディタッチで、笑える楽しい映画。

実在の人物がモデルということだが、

どこまでが本当かは分からない。

深いことは考えず笑った方がええやろな。


このアニキのこと、私は知らなかったが、

彼に関する本、彼の著作は、

アマゾンのレビューで

結構 賛否が分かれている。

彼のバリ島への貢献は大きいようだが、

本への批判は成功者へのやっかみか、

それとも色々書かれていることは本当なのかな。

どっちでもええねんけど。


★★★★☆





2015.1.25

トラッシュ!
この街が輝く日まで


気になっていた映画、

『トラッシュ! この街が輝く日まで』 を

観てきた。

原題の 「TRUSH」 は、「ごみ、ごみくず」 の意。

ブラジルのリオデジャネイロ郊外が

舞台ということだが、スラムで暮らす

少年たちを見ると、

『スラムドッグ$ミリオネア』 を思い出した。

あれは、インドだったけど。

さて本作、ゴミを拾って生活する少年が

ゴミの中から、ひとつの財布を拾ったことから

警察に追われるという物語。

その財布には、大事な秘密が隠されてたのだ。

財布を差し出せば、終わりなのだが、

少年たちは、自分たちの信じる正しい道を

全うするため命を懸ける。

警察も政治家も汚職にまみれた風に

描かれているが、本当のリオはどうなんだろう。

オリンピックが開かれようかというのに、

あんな風に酷いのだろうか。

もしかしたら、そんなメッセージも

あるのかも知れない。

ここからネタバレ (予告編でバレてるけど)。

最後に、少年たちは手にした大金を

ゴミの山でばらまく。

その大金は、市長候補が集めた賄賂だ。

汚れた金をゴミの山で撒くシーンは、

何かとても象徴的な感じがした。

汚れた金も、汚れた政治家も、

汚れた警察も、みんな ゴミ だと

言っているようだった。

でも、そのお金、皆で拾うねんけどね。


オーディションで選ばれたという、

少年たち3人が、素晴らしい。

ブラジルが舞台だが、イギリス映画。


★★★★☆





2015.1.31

ショート・ターム

何らかの事情で両親と暮らせない

子供達を引き取っている施設で働く

女性職員 グレイス とその施設の

子供達を描いた映画 『ショート・ターム』 を

観てきた。

グレイスにも、その恋人で同じ施設で

働くメイソンにもそこで働くように

なる生い立ちがある。

こういう子供達を受け入れられる、

施設の存在の意義を感じると共に、

そういう施設は救いなのだけど、

こういう施設が必要のない

世界は不可能なのかと、

考えさせられた。


何がって言いにくいのだが、

じんわり心に染みる良い作品。

タイトルのショート・タームは、

その施設の名称。


★★★★▲




フランシス・ハ

ニューヨークを舞台に、プロダンサーを目指す

27歳のフランシスの物語。

端正な顔立ちの美人なのに 性格的に

ちょっと残念なところのあるフランシス。

彼氏と別れ、ルームシェアしている親友とも

離れて暮らすことになる。

ダンスのメンバーからも外され、

散々なのだが、なぜか深刻さがない、

たくましく生きていく女性の物語。

白黒映画なのだが、劇中の音楽や

カット割りも手伝ってか、どこか

懐かしくヨーロッパ的な印象がある。

と言っても、現代の話です。

レストランでお会計しようとしたら、

クレジットカードが使えず、

近所の ATM を探して街中を疾走する

シーンと、もう一つ街中を踊りながら

駆けるシーンが良い。

『フランシス・ハ』 というタイトルの意味が

最後に明かされるが、それも良い。


★★★★☆





2015.2.8

繕い裁つ人

末廣亭を出て、遅めのランチを食べ、

何か映画を1本、と調べてみると、

ちょうど時間が合うのが、

中谷美紀主演の 『繕い裁つ人』。

チケット買うのに カウンターで

「ぬいたつ人」 って言うてしもたけど

「繕い」 は 「つくろい」 って読むねんな。

「ぬう」 は 「縫う」 やわな。

で、チケットを買ってからポスターを

見て気づいたのだが、監督が

『しあわせのパン』 の三島有紀子。

『しあわせの〜』 のあまりのリアリティの

なさが私としては、マイナス評価だったので、

(まさか・・・) と不安がよぎった。

結果、ズバリ。

あの 『しあわせの〜』 同様のリアリティの

なさで、その上、『しあわせの〜』 に比べて、

大人のファンタジー感も低い。

また、神戸が舞台にも関わらず登場人物の

誰も関西弁でないということも解せない。

それなら、神戸かどこか分からんように

したらええのに、わざわざ神戸と分かるように

作ってある。

もっとも、私が関西人だから神戸だと

分かったのであって、山形と東京しか知らない妻は、

「横浜かと思ったぁ〜」 と言うてはりましたが。

モノ作りへのプロとしてのこだわりとか、

モノを大切にすることとか、メッセージは

分かるねんけど、そんなこんなで、

映画としての私の評価は低い。

が、だ。

主役の中谷美紀が、良いのだ。

なんと言っても美しい。

今までも、(この人、キレイやな) とは

思っていたが、今までで一番美しい。

というわけで、本作は、

中谷美紀を鑑賞する映画だと思う。


★★★★☆

★ ひとつは、中谷美紀の美しさに。





2015.2.12

アゲイン 28年目の甲子園

中井貴一、波瑠 主演の映画

『アゲイン 28年目の甲子園』

全国の高校野球OBが、出身校別に世代を超えて

同窓会チームを結成し、甲子園を目指すという

「マスターズ甲子園」 に出場するという

物語だが、野球の映画ではない。

野球は素材で、あくまでもテーマは、家族。

それも父と娘の物語。

それにちょっとミステリーの要素もある。


中井貴一演じる坂町は、元高校球児。

高校3年生の時、野球部員の一人が

暴力事件を起こしたために、県大会決勝の

前日に出場停止になったという過去を持つ。

その坂町のところへ、暴力事件を起こした

松川の娘・三枝 (波瑠) が、

「マスターズ甲子園」 に出場しませんか

という話を持ってくるのだ。

松川はすでに亡くなっており、三枝は

父がなぜ野球をやめたかを知らない。

そして、28年前のその事件の

真相を知ることになる。


原作は、重松清。

聞いたことある名前やと思ったら、

数年前読んで、大泣きした

『その日のまえに』 の作者や。

本作でも、泣かされたね。

中井貴一が上手い。

波瑠もとても良い。

「負け犬とは、負けたことを言うんじゃない。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ことを言う」 なんて

印象に残るセリフがあったり、

ここでそれくるかぁ!という

涙腺直撃があったり、

最後まで物語に惹きつけられます。

上記セリフの 「〜〜〜〜」 部分は、

ぜひ劇場で。

というても、明日 (13日) で

基本上映 終わりのようやけど。


上映前、劇場で本作の浜田省吾の主題歌が

流れていた。

あまりの昭和のフォーク調のアレンジに、

(これは微妙やなぁ) って思ってたけど、

映画のラストで流れたときは、不思議と

違和感なかったね。


それから、「マスターズ甲子園」 って、

創作かと思ったら、ホンマにあるんやね。


その他の出演は、柳葉敏郎、和久井映見、

西岡徳馬、中井貴一演じる坂町の高校時代を

工藤阿須加。

監督・脚本は、『風が強く吹いている 』 の

大森寿美男。

人間ってええよな、って思える作品です。


★★★★▲





2015.2.14

滝を見にいく

昨年11月公開の映画だが、

全くのノーマークだった 『滝を見にいく』

観てきた。

有名な俳優は出ていないが、『南極料理人』、

『キツツキと雨』 の沖田修一監督の作。

滝の見学のあと、温泉につかるというバスツアーに

出かけた7人の女性たち。

滝を見に行く途中、ガイドとはぐれ、

携帯電も通じない山中で、

プチ遭難 (?) 状態になり、

一夜を過ごすことになる、という物語。

深刻さや緊迫感はなく、ほのぼのした、

大爆笑ではないけど、笑える作品。

7人の女性役は演技経験の有無を問わず

オーディションで選ばれたらしいが、

(こんなおばちゃん、おるよなぁ) という

人たちばかりで、妙な親近感を覚える。

中には、本作出演まで、

全くの素人だった人もいる。

撮影時79歳だった 徳納敬子さんは、

高校時代の夢が映画女優で、大映のカメラテストまで

行ったのに親の反対で断念した過去があり、

60年越しの夢を叶えたとのこと。

そんな裏話も良い。


★★★★☆





2015.2.18

娚の一生

豊川悦司、榮倉奈々 主演の映画。

本作では、「娚」 と書いて、

「おとこ」 と読ませているが、

「めおと」 と読む漢字のようだ。

通常、「めおと」 といえば

「夫婦」 という字を思い浮かべるが、

「女」 と 「男」 で めおと。

「めおと」 は、「めおとこ」 が

変化したらしいので、さもありなん。


若い女性 (20代後半ぐらいの設定かな) と

50過ぎの大学教授の恋の物語。

ちょっと現実味に欠けるところは、

原作がコミックということもあるんかな。

全体としては、飽きずに楽しめるが、

2人が恋に落ちていく様が、ほとんど

描かれていないので、そこはちょい不満。

榮倉奈々 演じるつぐみのことは、

まだ描かれているが、トヨエツ演じる

海江田は、後半その生い立ちが少し

描かれているものの、どんな人なのか

ちょっと分かりにくい。

いくつかのエピソードで 想像はできるけど、

もう少し描いて欲しかった。


本作、トヨエツが榮倉奈々の

足の指を舐めるシーンが、ポスターにも

使われており、そのシーンのことが

取り沙汰されているようだが、

私の感想は、そのシーン、全然、

エロチックでないし、大したことない。

中途半端な印象。

どうせなら、もっとイヤラシクして欲しかった。

もっとも、エロいシーンなど

この映画にはないねんけど。


榮倉奈々は、『図書館戦争』 や

『のぼうの城』 でも良かったが、

本作でも魅力的だ。

トヨエツは、撮影時52〜53歳だろうが、

お腹も出ておらず、スタイルが素晴らしい。

原作は未読だが、おそらく読んでいない方が、

映画は、先入観なしに楽しめるんとちゃうかな。


★★★★☆





2015.2.22

おみおくりの作法

気になっていた映画。

『おみおくりの作法』 とはまた日本的な

言葉をタイトルに選んだものだと思うが、

原題は、『STILL LIFE』。

辞書を引くと 「静物」「静物画」 という

意味のようだが、「動かぬ生」 なんていうのも

あったので、どういうニュアンスで

このタイトルなのかは、ちょっと分かりかねる。

たくさんの映画祭で、いろんな賞を受賞した作品。


ロンドンのケニントン地区で、

孤独死した人の葬儀を執り行うことが

仕事の公務員、ジョン・メイの物語。

とてもとても真面目で几帳面なジョンは、

亡くなった人の家族や友人を探し、

弔辞を書き、葬儀の音楽を選び、

その人の宗教にあった葬儀をあげる。

そういう彼も、家族はなく孤独だ。

あまりに丁寧で仕事に時間をかけすぎることから

リストラにあい、解雇通達を受ける。

最後の案件になったのは、自分の家の近所で、

孤独死したアル中の死だった。

その家族や友人を探し出し、会いに行くうちに

彼に変化が訪れる。

「奇跡的なラストシーン」 という謳い文句に

勝手な期待をしたが、私は泣けなかった。

誠心誠意、死者と向き合うジョンの仕事ぶりには、

感銘を受けるが、あまりにも悲しい、寂しい、物語だ。


邦題には、「おみおくり」 という言葉が使われているが、

皮肉にも 「おでむかえ」 の映画だったような気がする。


★★★★☆


おみおくりの作法 オフィシャルサイト





2015.2.24

アメリカン・スナイパー

今年85歳になる (私の父と同じ年)

クリント・イーストウッド監督の映画

『アメリカン・スナイパー』。

半年ほど前に その監督作品

『ジャージー・ボーイズ』 が公開された

ばかりだというのに、80歳を過ぎて、

その創作意欲、エネルギーには

拍車がかかっているようだ。

どんな爺さんやねん。


本作、アカデミー賞作品賞、主演男優賞ほか

6部門でノミネートされていたが、

結局、受賞したのは 音響編集賞 だけだった。


クリス・カイル という実在した、

アメリカ軍史上最強の狙撃手の自伝を

基にした作品。

クリスは、イラク戦争で公式記録で

160人射殺したというスナイパー (狙撃手)。

異常な緊張感の戦場と、

平和な日常の行ったり来たりが凄くて、

それらが同時に世界に存在することに

あらためて、居心地の悪い違和感を

感じさせられた。


愛国心の強いクリスは、「国を守るため」

「仲間を守るため」 に敵を撃ち続けた。

国では英雄になり、敵の中では彼の首に

18万ドルの賞金が掛けられていたという。

4度に渡るイラクへの遠征で、

彼の精神は蝕まれていく。

戦争映画というよりは、

戦争を通して描いた人間ドラマだ。

これは観る人によって、大きく解釈が

変わる作品のようで、愛国的だの、戦争支持だの、

反戦映画だのと色んな物議を呼んでいるようだ。

私は、とてもじゃないが 「戦争支持」 には

思えなかった。

クリスは、160人の敵を殺した。

それは兵士としては、評価される実績なのは分かる。

しかし、それが 「英雄」 なのだろうか。

クリスは、正義のために戦った。

しかし、敵は敵の正義のために戦っているんじゃないのか。

爆弾を持っていれば、子供でも撃ち殺す。

殺さなければ、味方が殺されるからだ。

そんな、異常な世界において、

英雄なんか いるのだろうか。


除隊後、PTSD に悩むクリスに

医者が 「後悔しているか」 と質問する。

クリスは、後悔は救えなかった仲間が

いることだと答える。

彼の後悔は、人を殺したことではないのだ。

彼は、とことん国のため、仲間のために

戦ったんだろう。

クリスは除隊後、PTSD に悩む帰還兵のための

支援活動を行い、自分を取り戻してゆく。

2013年2月、PTSD の元海兵隊員と

射撃場に行き、その元海兵隊員に射殺されるという

悲劇で命を落とした。


この物語のどこに 「愛国」 を思えば

良いんだろう。

最近、仲代達矢さんの記事 を読んだ。

そこで彼は、こんなことを言っている。

 今も集団的自衛権とか何とか言っていますが、
 僕は絶対に信用しない。
 戦争だけはやめた方がいい。
 「国を守る」とか言い出したら
 十分に警戒した方がいい。
 結果は大体戦争につながるからです。



ここだけ、引用するとわけがわからないと思うので

できれば記事全文を読んでいただきたいが、

クリスの愛国心を思うと、

その仲代さんの言葉を思い出した。

「愛国心」 ってなんやろ?


クリスが殺されたあとの映像で、

たくさんの星条旗が、映る。

星条旗の意味は、

クリスの功績を讃えているのか、

悼んでいるのか、

私には分からない。

いずれにしても、

クリスは戦争に殺されたことに

違いはない。


この映画は、戦争支持でも反戦でもなく、

「戦争ってこういうことやで、

こんなん続けててええの?」 という

問いかけに思えた。

仲間が殺され、報復に出向いて、

また別の仲間が殺される。

人類は、もう十分に狂気を味わったでしょうに

まだ足りないのでしょうか。

そんな問題定義に感じるのです。


クリス・カイルを演じる、

ブラッドリー・クーパーが素晴らしい。

最後に本人の写真が出てくるが、

まるでそっくりだ。

また、エンドロールは、音楽なし。

エンドロール無音という映画も初めてだったが、

「ゆっくり味わえ、考えろ」 という

メッセージに感じた。

さすがはクリント・イーストウッド監督。

観終わったら、無口になってしまいます。


あ、一つ 気になったこと。

生まれて間もないクリスの娘 (赤ちゃん) が、

どうも人形に見えたのだが、気のせいでしょうかね。


AMERICAN SNIPER 公式サイト


★★★★★




12−12−12
ニューヨーク、奇跡のライブ


2012年10月にアメリカ東部を襲った

大型ハリケーン 「サンディ」 の被災者救援の

チャリティ・コンサートのドキュメンタリー。

2012年12月12日に ニューヨーク、

マディソン・スクエア・ガーデンで

開催されたコンサートで、出演は、

ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、

ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、

ビリー・ジョエル、ボン・ジョヴィ、

ブルース・スプリングスティーン、

ロジャー・ウォーターズ、

アリシア・キーズ ら、超豪華。

ミック・ジャガーが

「イギリスの年寄りがよく集まったな」 と

いうようなことを言うが、

確かにイギリス人多いね。

なお、ポールマッカートニーは、

エギゼクティブ・プロデューサー。


また、ウーピー・ゴールドバーグ、

ジェイク・ギレンホール、クリステン・スチュワートら、

ハリウッド・スターが募金の電話受付という裏方で参加。

電話かけて、そんな人ら出たら、

びっくりするよな。

その他にも、ジェイミー・フォックスやら、

名前が出てこなくても、私でも分かる顔が

結構あったので、アメリカでは有名な人が、

ほんとにたくさん関わってたんでしょね。

このコンサート、一晩で 5000万ドルの

寄付を集めたらしい。

凄いね。

「音楽の力」 というような安易な表現ではなく、

それぞれの人が、それぞれの仕事を

全うしている、そんな風に見えた。

アーティストはアーティストの、

電話オペレーターは電話オペレーターの、

ディレクターは、ディレクターの、

そして、観客は観客の、

それぞれのやるべきことを真摯にやっている。

なんか、そんな風に見えて、

その姿がちょっと感動的。

何かを成し遂げようとするとつきものの

トラブルやブレイクダウンも当然発生。

インターネットでの募金の受付が殺到し、

さばききれない状態に。

そんな時も、それを解決できる人がいて、

その人がやるべきことをやり、解決。

イベントは進んでいく。


この規模のイベントで、

企画から本番までわずか1ヶ月半というのも

これまた前例がないでしょう。


パフォーマンスでは、やはりというか、

ミック・ジャガーが際立っております。

大好きなエリックは、やや地味な印象。

ビリー・ジョエルは、太りすぎです。

アダム・サンドラー (知らんかったけど

アメリカでは人気の俳優・コメディアンらしい) の

(レナード・コーエンの) 『ハレルヤ』 の

替え歌が良い。


日本人が こういうイベントやると、

「和 (ハーモニー)」 な感じやけど、

アメリカ人がやると、「個の塊」 みたいに感じたね。


それにしても、ハリケーン 「サンディ」、

被害が大きかったんやなぁ。

その前の 「カトリーナ」も 印象が強いけど。

地球温暖化の影響でしょうか、

アメリカもハリケーンやら竜巻やら

自然災害の国やねんな。


★★★★☆


12-12-12 ニューヨーク、奇跡のライブ





2015.2.26

映画 深夜食堂

なんで わざわざ 「映画」 って

頭に付いてるんやろと思ったいたら、

『深夜食堂』 って、

テレビドラマにもなってたんや。

コミックが原作やというのは知ってたけど、

テレビでもやっているのは知らんかった。


予告編を観て、どこかの映画館に置いてあった、

本作の小冊子を読んで、なんとなく好きそうな

雰囲気だったので 観てきた。

夜の12時から朝7時頃までやっているという

食堂に出入りするお客さんとマスターの物語。

マスターを演じるのは、小林薫。

ええ味出してます。

いくつかのエピソードが あるのだが、

多部未華子、田中裕子の話が良かった。

特に田中裕子は、出演時間も短いが、

見せてくれます。

インパクト大。

料亭の女将役の余貴美子 (存在感 大) や、

交番の警官役のオダギリジョーも良い。


筒井道隆と菊池亜希子の話は、

どうも共感できず、残念。

でも、全体に ゆる〜い感じで好きやな。

マスターの作る料理も旨そうやし、

シリーズになったら、また観に行くと思う。


そういえば、東大阪でアパート暮らししてた頃、

すぐ近くに朝までやっている居酒屋があった。

ガラス戸の入口やったけど、朝7時とか8時とか

出勤する人が店の前を通るような時間になると、

客のためにか、外からは見えないように

カーテンを閉めてくれたっけ。

朝、明るくなってからも飲んでいるのを

出勤する人に見られるの、

なんとなく居心地悪いもんね。


映画 深夜食堂 公式サイト


★★★★☆





2015.2.27

日本アカデミー賞

今日は、第38回日本アカデミー賞の授賞式だった。

数週間前、ぴあで チケットを売っていたので、

いくらだろうと見てみたら、

ディナー付きで 4万円でした。(高!)


さて、受賞結果だが、

今年は 『永遠の0』 の年やったね。

『永遠の0』 は、優秀賞を11部門受賞しており、

そのうち、作品賞、監督賞 (山崎貴)、

最優秀主演男優賞 (岡田准一)、撮影賞、

照明賞、美術賞、録音賞、編集賞 の

8部門で最優秀賞に輝いた。

最優秀主演男優賞の岡田くんは、

『蜩ノ記』 で最優秀助演男優賞も受賞。

男優でのダブル受賞は史上初とのこと。

あれも素晴らしかったもんね。

テレビでちらっと岡田くんの受賞スピーチを

聞いたけど、素直に 「良かったね、おめでとう」 と

言いたくなるようなスピーチで、好感が持てた。

今や、ジャニーズのアイドルの中では、

一番 映画俳優が似合う男になったと思う。

『永遠の0』、観てから1年以上経つので、

たぶん、あちこちの劇場でまた上映するやろし、

もう一度観てみようかな。


最優秀主演女優賞は、『紙の月』 の宮沢りえ。

映画の主演は、7年ぶりだったという。

そういえば、彼女の映画、あんまり観てないよな。


【 受賞結果 】(主要なもののみ)

最優秀作品賞 : 「永遠の0」
最優秀監督賞 : 山崎貴(「永遠の0」)
最優秀主演男優賞 : 岡田准一(「永遠の0」)
最優秀主演女優賞 : 宮沢りえ(「紙の月」)
最優秀助演男優賞 : 岡田准一(「蜩ノ記」)
最優秀助演女優賞 : 黒木華(「小さいおうち」)
最優秀脚本賞 : 土橋章宏(「超高速!参勤交代」)
最優秀撮影賞 : 柴崎幸三(「永遠の0」)
最優秀照明賞 : 上田なりゆき(「永遠の0」)
最優秀美術賞 : 上條安里(「永遠の0」)
最優秀録音賞 : 藤本賢一(「永遠の0」)
最優秀編集賞 : 宮島竜治(「永遠の0」)
最優秀音楽賞 : 周防義和(「舞妓はレディ」)




はじまりのうた

評判の良い音楽モノ映画 『はじまりのうた』。

失恋したシンガーソングライターのグレタの

歌を偶然聴いたのが、

これまた人生うまくいっていない

音楽プロデューサーのダン。

一発で、グレタの才能を見抜き、契約を申し出る。

予算のない彼らは、街中でバンドの録音をし、

グレタのアルバム作りが始まる。

まあ、そんなストーリーなのだが、

ちょっと期待したほどではなかったな。

音楽制作の部分が、おとぎ話みたいに

なってしまってて、ちょっとリアリティないねん。

アレンジを譜面にしたり、リハーサルとかに

もっと時間かかるはずやねんけど、

そういうところ描いてなくて、

いきなりダンの娘 (中学生?) にギター弾かせて

それが OKテイクになったり。

なまじ私が音楽をかじっているだけに、

気になることも多かった。

でも、音楽やアレンジのことで、

議論するシーンは良かったし、

ラストもスカッとする感じで良い。

特にダンがグレタの弾き語りを聴いていて、

バンドアレンジが聞こえてくるという

描き方は、秀逸。

正にあんな感じなのです。


グレタを演じるのは、キーラ・ナイトレイ。

その彼氏の役のアダム・レヴィーンという人が

(えらい歌 上手い役者やな) と思ってたら、

マルーン5 のヴォーカルやった。

マルーン5 といえば、10年くらい前、

『Sunday Morning』 という曲が、

宮沢りえが出演していたテレビ CM

使われていて、その曲聴きたさに

CD を買った覚えがあるが、

ヴォーカルの名前までは、知らんかった。

映画は、本作がデビューということだ。

音楽プロデューサーのダン役は、マーク・ラファロ。

グレタの友人役で、イマイチな歌を歌う

スティーヴ役に 『ワン・チャンス』 で、

ポール・ポッツを演じた ジェームズ・コーデン。

憎めないピュアな印象は、『ワン・チャンス』 と同じ。


本編が終わったので、エンドロールが始まると

思ってたら、そのまま終わって 照明が点いた。

そこで、ストーリーが進みながら、

もうエンドロールに入ってたんやと気がついた。

この手法は初めてのような気がする。


本作、もしかしたら、もっと若い時に観たら、

違う印象を持てたかもしれない。

本作で、感動するには、

おじさんは年を取りすぎたような気がする。


はじまりのうた (原題:BEGIN AGAIN) 公式サイト


★★★★☆





2015.3.7

君が生きた証

俳優 ウィリアム・H・メイシーの

初監督作品 『君が生きた証』 (監督本人も出演)。

この邦題はどうなんでしょね。

原題は 『RUDDERLESS』。

「かじのない」「指導者のいない」 という意味で

映画の中で結成される、バンドの名前でもある。

邦題は微妙やけど、間違いなくええ映画でした。

ここしばらく観た映画の中では、

一番、心を揺さぶられたね。

物語は、こんな風。

広告代理店でバリバリ働くサムは、

息子ジョシュを、大学で起きた銃乱射事件で失う。

それからサムは、仕事も辞め、

すさんだ生活を送ることになるが、

息子の死後から2年、その遺品の中から、

息子ジョシュが作詞作曲した曲が録音された

CDを手にする。

サムは、その歌の1曲をライブバーに飛び入りで

弾き語りで歌う。

たまたまそれを聴いていた クエンティンは、

その曲に魅了され、一緒に演奏しようと

サムに持ちかける。

当初、やりたがらないサムは、

やがてクエンティンの熱意に負け、

バンド結成に至る。

ただ、サムはクエンティンに、それらの曲が

死んだ息子の作品だとは打ち明けていない。

ストーリーはそんな感じ。


ネットのレビューの中に、

同じく最近公開された 『はじまりのうた』 と

比較してるレビューがいくつかあった。

それらは、『はじまりのうた』 の方が

良かったというものだった。

同じ音楽モノ映画で、

同時期に公開されているという点で、

比較は免れないでしょう。

そもそも、比較すること自体、

ナンセンスなのを承知で書くと、

私は、『はじまりのうた』 より、

本作 『君が生きた証』 の方が、

断然良かった。

『君が生きた証』 はただ音楽映画であるだけなく、

ちょっとヘビーなテーマを背負っている。

『はじまりのうた』 には、それがない。

言ってみれば、おとぎ話的要素が強い。

音楽制作の描写についても

ファンタジーっぽかったように。

一方、『君が生きた証』 は、音楽制作の過程も

『はじまりのうた』 に比べてリアルだ。

『君が生きた証』 は、音楽を題材の一つに

しているが、ただの音楽映画でなく、

人間ドラマなのだ。

なので、そもそも比較すべきではない。


サムを演じるビリー・クラダップが良い。

今までいくつかの出演作を観ているが、

意識したことがなかった。

本作は、主役ということもあるが、良いです。


前半、息子を亡くした父親としての

サムの感情表現に疑問があった。

しかし、物語中盤にその意味が解き明かされる。

ああ、これ以上書くとネタバレになるので

やめておくけど、何も知らずに観た方が

絶対良い作品。

劇中の音楽も良いです。


★★★★★


君が生きた証 オフィシャルサイト

映画を観てから読もう。





2015.3.12

妻への家路

中国のチャン・イーモウ監督の映画、

『妻への家路』。

中国語の原題は、『帰来』、

英語タイトルは、『COMING HOME』。


ちょっとネタバレ注意です。

「この世で最も切なく愛し合う夫婦の愛の物語」

という謳い文句なのだが、

まあ、なんと哀しい映画だろう。

おそらく、中国の文化大革命のことを

詳しく知っていれば、もっとこの物語の

背景を理解でき、作品の見方も

変わってくるのだろうが、

歴史に疎い私にも多くの民が、

その歴史に翻弄されたのであろうことは、

十分に理解できた。


1977年、文化大革命終結後、

捕らわれの身だったルー・イエンシーは、

解放され、20年ぶりに妻のもとに帰る。

ところが、妻のフォン・ワンイーは、

心労のあまり、記憶障害になっており、

夫のことが分からなくなっていた。

ルーと会っても、この人は夫ではないと言い、

戻らぬ夫を待ち続けるのだ。

ルーは、他人として向かいの家に住み、

娘の助けも借りながら、なんとか妻の記憶を

取り戻そうと奮闘する。

フォンは、目の前に夫がいるのに、

ひたすら夫の帰りを待ち続けるのだった。

・・・そんなストーリー。

ルーが妻の記憶を取り戻そうと

ピアノを弾くシーンは、涙なしには観られません。


戦争が、家族を引き離すという物語は、

たくさんあるやろけど、再会できたのに、

再会していないという理不尽。

直接的ではないが、文化大革命という背景に

夫がいない間に、妻が記憶障害を起こすほどの

何かがあったことを臭わせている。

さて、妻は記憶を取り戻すのでしょうか。

続きは、劇場で。


夫、ルー・イエンシーに、チェン・ダオミン。

妻、フォン・ワンイーにコン・リー。

娘、タンタンにチャン・ホエウェン 。

タンタンのバレエが素晴らしいです。


★★★★▲


妻への家路 公式サイト





2015.3.15

FOXCATCHER
フォックスキャッチャー


カンヌ国際映画祭では、監督賞を受賞したが、

アカデミー賞では 5部門ノミネートされるも、

受賞を逃した作品 『フォックスキャッチャー』。

実際にあった、オリンピックの

金メダリスト射殺事件を描いた作品。

実際にあった事件なので、私のただの無知なのだが、

実は誰が誰に殺されるか知らずに観た。


一言でいうと、哀しいほどの

さびしいさびしいお金持ちの物語。

どんなにお金があっても、

人は幸福ではないんやとつくづく思うね。

そして、人の欲望には限りがなく、

権力、名声、名誉、賞賛、承認、

そして実は、愛が欲しいんやね。


デュポン社って、聞いたことあるような名前やけど、

アメリカでは、三大財閥の一つらしい。

(あと2つは、ロックフェラー、メロン)

世界90ヵ国に7万人の従業員というから、スゴイ。

調理器具のテフロンもデュポン社の商標らしい。

その御曹司、ジョン・デュポン役に

スティーヴ・カレル。

ちょっと偏った人間性を見事に演じてた。


レスリング金メダリスト、

デイヴィッド・シュルツ役にマーク・ラファロ。

彼は、アカデミー賞助演男優賞にノミネート。

映画を観ても、全く気が付かなかったのだが、

このマーク・ラファロ、先日観た

『はじまりのうた』 で音楽プロデューサーを

演じていたあのおっさんだった!

言われれば、確かにそうやねんけど、

別人のようでした。


そのデイヴィッド・シュルツの弟、

マーク・シュルツ役にチャニング・テイタム。

この人、初めて観たような気がするけど、

ホンマにレスリングやってたんかなと

思うようなレスリングぶり。


実在のマークご本人は、当初、本作を支持していたらしいが、

マークとデュポンとの関係に同性愛を示唆させる

描写があるとの批評を知り、怒っちゃたらしい。

(確かに、直接的ではないけど、

そんな風に感じたシーンはあった。)

その後、監督がオスカーにノミネートされると

マークは批判を取り消し、監督に謝罪したらしい。

これはこれで、イタイなぁ。

まあ、批判を取り消した理由とオスカー候補の件は、

事実かどうか分からんけど。

いずれにせよ、自分のことが映画になって、

世界中の人に観られるのって、複雑やろなぁ。

特にマークの場合、弱い部分もモロに描かれてるからなぁ。

そんなことも考えさせられるドラマでした。


【 アカデミー賞 5部門ノミネート 】
監督賞 ベネット・ミラー
主演男優賞 スティーブ・カレル (ジョン・デュポン役)
助演男優賞 マーク・ラファロ (デイヴ・シュルツ役)
脚本賞
メイクアップ&ヘアスタイリング賞


FOXCATCHER Official Site


★★★★☆




The Grand Budapest Hotel
グランド・ブダペスト・ホテル


今年のアカデミー賞では、『バードマン』 と

並んで、最多部門受賞 (4部門) と、

最多部門ノミネート (9部門)。

ノミネートされたうち、受賞したのは、

作曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞、

メイクアップ&ヘアスタイリング賞。

そして、ノミネートのみに終わった賞は、

作品賞、監督賞 (ウェス・アンダーソン)、

脚本賞、撮影賞、編集賞。

受賞したのは、全部裏方さんたちだ。

日本では昨年6月の公開で、

すでに終演となっていたが、

アカデミー賞の受賞を受けての再上映を観てきた。

受賞した部門からも分かるとおり、

映像がきれいで面白い。

ストーリー自体は、

それほど どうってことはないが、

1回ではちょっと分かりにくい部分もあった。


仮想国のホテルのコンシェルジュを描いた

ミステリー・コメディ。

時代が行ったり来たりするのだが、

時代によってスクリーンの幅が変わったり、

カメラワークが、正面か真横からだけだったり、

色んなこだわりがあるようだが、

私の場合、気付いていないことも多く、

ストーリーを含め、もう1回観たら、

もっと楽しめるような気がする。


The Grand Budapest Hotel Official Site


★★★★☆





2015.3.17

ANNIE
アニー


もう30年以上前だが、輸入版LPのセール

(3枚1000円) で、Cissy Houston という

黒人女性のレコードを買った。

私は、Cissy のことは知らなかったが、

黒人というだけの理由で、そのレコードを選んだ。

彼女が、Whitney Houston の母親だと知るのは、

Whitney が、デビューし売れてから

しばらくしてからだ。

そのレコードは、アタリだった。

後に知ったことだが、Cissy は、

ゴスペル・シンガーで、そのレコードには、

ゴスペル調にアレンジされた

Elton John の 『Your Song』 が、

入っていたりして、私の愛聴版の1枚になった。

1曲目は、『Tomorrow』 という美しい曲だった。

私は、その曲が大好きになったが、

ミュージカル 『アニー』 の主題歌だと

知るのは、何年もあとのことだ。

ちなみに 『Your Song』 もこのレコードで

知ったので、Elton John の曲だと知るのは、

数年後のことだ。

残念ながら、この Cissy のアルバム

(タイトルも ずばり 『Cissy Houston』) は、

今だにCD化されていないようだ。

『Tomorrow』 も 『Your Song』 も

色んな人が歌っているが、私的には、

Cissy のそれを超えたものはない。


前書きが長くなったが、その 『Tomorrow』 が

主題歌の映画 『アニー』 を観てきた。

1月24日の公開だったので、そろそろ

終演も近い。

私は、どちらかというとミュージカルは苦手。

劇団四季の 『ライオンキング』、『キャッツ』 を

観ても 好きになれなかった人だ。

日本では、舞台の 『アニー』 が毎年、

上演されているようだが、観に行くことはないだろう。

でも、こんなに有名な 『アニー』 について

「少女と金持ちの話」 ぐらいの知識がないのも

どうかと思ったのと、

『Tomorrow』 が好きなのだから

この機会に観ておこうと。


もともとは1930年代が舞台らしいが、

映画では現代の物語にアレンジされていた。

出演は、アニー役にクワベンジャネ・ウォレス。

携帯電話会社の社長で大金持ち、

スタックス役にジェイミー・フォックス。

アニーの里親、ハニガンにキャメロン・ディアス。


前半、人間の醜さ、弱さが描かれていて、

観ててあんまり気持ち良くない。

ところが、嫌な奴だった金持ちスタックスが、

後半、アニーとの暮らしを通して、

変わり始める。

イタイおばはんとして描かれているハニガンも

最後には、良い人になってしまう。

ああ、そういうことかと納得。

前半で人間の醜さを描いておきながら、

最後には良心へと持っていく。

これがロングランの訳なのだな。


アニー役のクワベンジャネ・ウォレスは、

もちろん素晴らしいが、

ジェイミー・フォックスが

あいかわらず歌上手い!

ほんで、キャメロン・ディアス、

イタイなぁ。(褒めてるんやで)


ANNIE Official Site


★★★★☆





2015.3.18

パリよ、永遠に

もしも、「パリ」 がなくなっていたら ―?

そんな謳い文句の映画 『パリよ、永遠に』。

1944年8月、パリを占領していたドイツ軍に、

連合軍の進撃で危機が迫っていた。

ヒトラーは、パリを破壊するよう、

パリにいるコルティッツ将軍に命令を下した。

爆破するのは、市内33本の橋、オペラ座、

ノートルダム大聖堂、ルーヴル美術館、

エッフェル塔など、パリの全てだ。

ヒトラーは、パリに魅了され、ベルリンを

パリのようにしたいとまで思ったようだが、

ベルリンが戦闘で廃墟となったのに

パリだけが、残るのは許せなかった。

つまり、この爆破は、戦争行為ではなく、

単なるヒトラーの嫉妬だったのだ。

その爆破計画を阻止しようと、パリで生まれ育った

スウェーデン総領事ノルドリンクは、

コルティッツに降伏を持ちかける。

スウェーデンは、中立国だ。

当初、ノルドリンクの話に聞く耳を持たない

コルティッツだったが、彼と話すうちに、

少しずつ変わっていく。

そして、(歴史を見れば明らかな通り)

パリは破壊されなかった。

事実を基にした映画ということだが、

計画が実行されなくて、

本当に良かったと思う。

素晴らしい話術で交渉を続けたノルドリンク。

最後の最後に、勇気を持って

ノルドリンクを信じ、

良心に従ったコルティッツ。

あの異常な状況で、

正気でいられたこの2人の大きさに感動です。

原題は、『Diplomatie』。

「外交」 という意味だ。

これは、戦争映画に非ず。


昔、 『パリは燃えているか』 っていう

アロン・ドロンの映画があったけど、

同じ時のパリを描いた映画のようだ。


パリよ、永遠に


★★★★★




反日映画?

太平洋戦争で日本軍の捕虜になった、

元オリンピック選手の映画 『UNBROKEN』 が

昨年12月に全米で公開された。

監督は、アンジェリーナ・ジョリー。

日本では、「反日映画だ」 と

公開を反対する運動があるようだ。

(反対派に数は負けているが、

「公開しよう」 という運動もあるらしい。)

監督のアンジーは、「反日」 を否定し、

「赦しの物語だ」 とコメントしている。

まだ観てもいない映画に過剰な反応をするのは、

動揺丸出しであまりスマートじゃないと思う。

この件に関するネットへの書き込みを少し読んだが、

同じ日本人として情けないものが多く、

品がなく、読んでいて恥ずかしく悲しい。

たぶん、若い人たちが多いのだろうが、

ひと言でいうと、無知でレベル低すぎ。


この件について、冷静に書いている記事が、

あったので、興味のある人はお読みください。


残酷な日本兵を演じるのは、ギタリストの MIYABI.。

いきなりのハリウッドデビューだ。


予告編 公式予告編 非公式字幕


私は、観てみたい。





2015.3.22

今日は、アカデミー賞絡みの2本を鑑賞。

作品賞ほか 5部門でノミネートされ、

エディ・レッドメインが主演男優賞を受賞した

『博士と彼女のセオリー』 と、やはり作品賞ほか

8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した

『イミテーション・ゲーム』 の2本。

奇しくも2本とも、実話を元にした

イギリス人の物語だった。

そして、両方に共通するのは、主人公の男が、

めちゃくちゃ頭が良くて、そして、普通じゃないこと。

事実は、小説より奇なりというが、

誠に興味深い2本でした。



博士と彼女のセオリー

天才物理学者スティーヴン・ホーキング博士の

物語で、原題は 『THE THEORY OF EVERYTHING』。

「博士と彼女だけ」 のセオリーではないのだ。

「彼女」 というのは、博士の (元) 奥さん、

ジェーンのこと。

20代で、難病 ALS (筋萎縮性側索硬化症) を

発症し、余命2年と診断されるも、

闘病を決意し、2人は結婚する。

そして、3人の子も授かる。


身体が不自由になっても、ポジティヴで

ユーモアのあるホーキンス。

献身的に夫を支えた妻ジェーン。

2人のラヴ・ストーリー、夫婦の物語だ。

ホーキンスを演じたエディ・レッドメインは、

主演男優賞を受賞したとおり素晴らしいが、

妻ジェーンを演じた フェリシティ・ジョーンズも

美しく、素晴らしい。(主演女優賞ノミネート)


ホーキング博士は、

余命2年と言われたにも関わらず、

73歳になった今も

研究に打ち込んでいるというのもスゴイ。


博士と彼女のセオリー


★★★★★




イミテーション・ゲーム
エニグマと天才数学者の秘密


第二次大戦中、ドイツ軍の暗号解読の任務に就いた、

天才数学者 アラン・チューリング の物語。

ネタバレになるので詳しく書かないけど、

イギリスが戦後50年間公表しなかった

機密を描いた映画だと言われれば、

そして、戦争終結を早めた秘密だと

聞けば、観たいよね。


予告編の

「私は犯罪者か、それとも英雄か」 の

意味がこんなに重いとは。

ホンマ凄い話です。


今日の2本に共通しているのは、

変わった (普通じゃない) 人の物語。

そういう意味では、妻は力づけられたようです。


イミテーション・ゲーム


★★★★★





2015.3.24

風に立つライオン

さだまさし原作の映画 『風に立つライオン』。

アフリカ・ケニアで国際医療活動に従事した

実在の日本人医師にインスパイアされて、

1987年にさだまさしが発表した

『風に立つライオン』 という曲をもとに、

小説化、映画化されたものだ。

この映画の話を最初にテレビで観たときは、

(ぜひ、観たい) と思ったのだが、

映画が公開されてからは、イマイチな評判も

聞き、観ようかどうしようか迷った。

結局、期待せずに観ることにしたのだった。


とても良い話、良い題材なのに

私には、何か物足りない感じというか、

中途半端な感じがするのが残念。

何が足りないのかをうまく説明できないのだけど。


主演は、大沢たかお。

そのほか、真木よう子、石原さとみ、

石橋蓮司、萩原聖人 ら。


予告編で 「僕は9人も殺した」 と言う少年に

「それなら一生をかけて 10人の命を救うんだ」 と

大沢演じる島田医師が言うシーンがある。

このシーンは、本作のいくつかある

ハイライト・シーンの1つだ。

そのセリフを予告編でバラしてしまっている。

もし、知らずに観たらこのシーンで、

もっと感動しただろうにと思う。

こういう、予告編の作り方は

ホンマにやめて欲しい。

観客の楽しみ・感動を奪っているとさえ思う。

とはいえ、十分に泣かされたシーンもあるし、

恐ろしい現実を見せられ、

考えさせられるシーンもある。


アフリカ滞在から何年も経ったあと、

真木よう子演じる貴子と、萩原聖人演じる青木が

誰かにインタビューされているかのように

話すシーンがあるのだが、誰に話しているのか

分からない。

考えられる相手が、一人いるのだが、彼なのか、

それとも、誰がインタビューしているかは、

重要ではなく、観客に向かって聞かせているのか、

そのへんの曖昧さも釈然としない。

印象に残るセリフもいくつかあっただけに

全体的に惜しいのだ。


あと、あの環境で働く看護師に石原さとみは、

似合わんなぁ。

かわいすぎるねん。

もっと強い感じのする、井上真央とかの方が

合ってると思うねんけど、どうでしょうか。

監督は、『藁の楯 わらのたて 』 の三池崇史。


★★★★▲


さんざん書いた割には高評価。


風に立つライオン





2015.3.27

くちびるに歌を

新垣結衣 主演の映画 『くちびるに歌を』。

(なんちゅうくさい展開や) と思いながら、

ずい分 泣いてしもた。


新垣結衣 演じる柏木ユリが、

長崎県の五島列島にある中学校へ

音楽の臨時教員としてやってくる。

彼女もこの中学校の卒業生で、

東京でプロのピアニストとして活動していたのだが、

友人でもある教師が産休に入るための臨時教員だ。

この柏木がいっこも可愛くない。

無愛想で、ニコリともせず、つんつんしている感じ。

美人のはずなのに、笑顔がないだけで、

こんなにブスに見えるんやね。

いくら臨時でも教壇に立つんやから、

もうちょっと何とかならんのか、と思う。

でも、物語が進むにつれ、

なぜ彼女から笑顔が消えたのかが明かされていく。

このワケアリ・ピアニストと中学の合唱部員との

物語なのだが、この中学生達が初々しくて良い。

オフィシャルサイトには、

かつての 『ウォーターボーイズ』 や
『スウィングガールズ』 のように、
本作から次世代のスターが生まれること間違いなし!

と書かれていたけど、確かに。

中心人物となっているナズナ役の 恒松祐里 も悪くないが、

私は、サトル役の 下田翔大 という男子が良いと思った。

まだ中学1年生のようだが、その少年時代の終りかけ感と

弱々しさの中の純粋さがとても良いと思った。

これは、彼であっても 今しか出せない味だろう。

サトルが、15年後の自分に宛てた手紙を書くのだが、

その内容がまた泣かされる。

反則やで。

先生役の 桐谷健太 は、最近テレビCM で、

あんまり賢そうでない浦島太郎を繰り返し観ているため、

その印象が強くて、最初は困った。

途中からちゃんと映画の中の人になってくれたから

良かったけど。

木村多江 (サトルの母役) は、少ない出演シーンでも

存在感ある演技でさすがでした。


2008年の全国学校音楽コンクールの

課題曲となったアンジェラ・アキ作の

『手紙 拝啓 十五の君へ』 という曲がある。

私も何度かTVで聴いたことがあるくらいだから、

有名な曲だろう。

その作者 アンジェラ・アキが、

全国の中学生に会いに行き直接対話をするという

テレビのドキュメンタリーがあったらしく、

その番組から発想を得た小説が原作。

本屋大賞にノミネートされた

ベストセラー青春小説ということだが

知らなかった。


心に大きな傷を持った大人の再生と

思春期の中学生の悩みと前進の物語で、

くさいけど泣けます。

また、五島列島の風景が美しい。

一度は訪れてみたいと思うほど美しい。


中学生でも大人でも、生きるっちゅうのは、

悩むっちゅうことなんや、

悩みながら前進していくことなんやと、

大した悩みのない私は思ったのでした。


くちびるに歌を


★★★★▲





2015.3.29

みんなの学校

大阪市住吉区にある大阪市立大空小学校の

ドキュメンタリー映画 『みんなの学校』。

こういう小学校が存在することに

驚かされたと同時に、

日本の教育現場に対する大きな希望を感じた。


大空小学校は、不登校ゼロを目指し、

実際に不登校がゼロなのである。

なぜ、そんなことが可能になるのか。

タイトルの 『みんなの学校』 の意味は、

「みんなで作る学校」 の意味。

校長の木村先生は、児童に問う。

「みんなって誰ですか?」

児童が応える。

「自分!」

「自分って誰ですか?

自分だっていう人、手を挙げてください」

「は〜い」 とみんなが手を挙げる。

つまり、「みんなで作る学校」 は、

児童が 「自分で作る学校」 なのだ。


大空小学校では、特別支援の対象となる児童が

30人を超えているが、みんな同じ教室で学ぶ。

そのことで、子供たちは、色んな子がいること、

みんなが一人一人違うこと、彼ら彼女らを

理解し、分かり合うことを学び取っていく。


私が5年生まで通った小学校は、

マンモス校で全校生徒の数が

1000人を超えていた。

当時、養護学級と呼ばれていたクラスに

何人かの児童がいたが、その中に同級生が

いたのかどうかさえ記憶がない。

彼らとは、完全に区別されていたので、

一緒に遊んだり学んだりする機会はなかった。

大人になっても、自閉症やダウン症などの人たちと

どんな風に接して良いのか分からず、

戸惑いがあるのは、自分の身近に

そういう人たちがおらず、

学校でも彼らと 「隔離されていた」 から

かもしれないと思った。

また、クラスに少々問題 (授業中教室を

抜け出すなど) のある子がいても、

それはけっしてクラス (自分) の問題ではなく、

その子の問題として扱われていたように思う。

つまり、自分たちには関係なかったのだ。

映画にこんなシーンがある。

教室に入ることを拒む児童に対し、

「教室に入るよう誘ってあげて」 と

校長先生が クラスメートに頼むのだ。

引き受けた男子 (4年生) は、

その問題の子に拒否されながらも、

根気よく背中をさすりながら、

「教室に入ろう」 と声をかけ続け、

やがて、一緒に校舎に入る。


小学低学年から、障害のある子供、

問題児と言われる子供と一緒に、同じ教室で

学んでいる 大空小学校の子供らは、

誰とも分け隔てることなく、理解し、

関係することのできる大人になることが

できるんじゃないかと思った。

こういう小学6年間を過ごした子供たちは、

中学・高校に進んでもクラスメートを

いじめるようなことはしないんじゃないだろうか。


それだけがこの学校の素晴らしさではない。

大空小学校では、児童と教職員だけでなく、

保護者や地域の人も一緒になって、

誰もが通い続けることができる学校を作ってきた。

多くの人の協力なしには

成し得なかったであろうことは容易に想像できる。


その中でも 校長の木村先生が素晴しい。

信念の人。

どんな時も ブレない。

子供に対する態度、新米教師を叱る態度、

全てが一貫していてブレないのだ。

こんな先生になら、安心して我が子を

預けられると思った。(子供いませんが)

約束を破った児童 (暴力を振るったり、

教室を抜け出したり、子供によって様々)は、

校長室に 「やり直し」 に来る。

その時も、木村校長は、あくまでも

誠実に児童をひとりの人間として扱う。

その 「やり直し」 のたびに

子供らは、自分の人生に責任を取り、

成長しているように見えた。


木村校長だけではなく、

大空小学校で働く全ての先生の

忍耐力、根気、誠実さ、正直さ、

子供たちへの愛と先生たち自身の生命力にも

感動せざるをえない。


テレビ版 「みんなの学校」 の放送後、

全国各地から、支援を必要とする子どもたちが

数多く、校区内へと引っ越しているという。

今後、全国に大空小学校のような学校が

増えていくことを願ってやまない。


みんなの学校


★★★★★





2015.4.4

ジヌよさらば 〜 かむろば村へ 〜

映画 『ジヌよさらば 〜 かむろば村へ 〜 』。

原作は、いがらしみきおのコミック。

いがらしみきお って、あのちょっと下品やけど、

おもろい4コマ漫画を書いていた人だ。

主演は、松田龍平。

そのほか、阿部サダヲ、松たか子、二階堂ふみ、

片桐はいり、荒川良々、西田敏行 ら。

600万円以上の貯金を持っていながら、

お金アレルギーで、通帳と印鑑をゴミに

出してしまうような男の物語。

結構、笑わせてもらいました。

おもろいです。

音楽は、佐橋佳幸 (松たか子の旦那ね)。

冒頭から ええギターの音が聞けます。


★★★★▲


ジヌよさらば 〜 かむろば村へ 〜




シェフ 三ツ星フードトラック始めました

監督・脚本・主演 ジョン・ファヴロー。

その他の出演、ダスティン・ホフマン、

オリヴァー・プラット、ジョン・レグイザモ、

そしてセクシーな2人、ソフィア・ベルガラ と

スカーレット・ヨハンソン。

レストランのオーナー (ダスティ・ホフマン) と対立し、

店を辞めたシェフ、カール・キャスパー (ジョン・

ファヴロー) は、キューバ・サンドイッチ

一品だけのフードトラック (移動店舗) を始める。

これが大当たり。

とにかくそのサンドイッチが美味そう。

そして、出てくる人々が素晴らしいね。

助手のコック達、カールの息子、元嫁、元嫁の元夫、

辛口の批評家など。

幸福って、やりたいことをやって、

素晴らしい人に囲まれていることやと思ったね。

アメリカ映画らしく、家族の絆も交えながら、

信じる道を進めというメッセージかな。


ああ、キューバ・サンドイッチ 食いたい。

サウンドトラックも Very Good。


★★★★▲


シェフ 三ツ星フードトラック始めました





2015.4.6

あ ん

映画 『あん』 の試写会に行ってきた。

Movie Walker の試写会に応募したら

当選したのだ。

主演は、樹木希林、永瀬正敏。

2人とも ベリー・グッドです。

そして、内田伽羅 (きゃら)。

樹木希林の孫、本木雅弘の娘だ。

伽羅 (きゃら) って名前もスゴイけど、

もっくんの娘とか、樹木希林の孫とかいうより、

私には、「お祖父ちゃんが内田裕也」 って

言われる方が、インパクトがあるな。

そして、芸歴50年超にして、

樹木希林とは初共演だという 市原悦子、

浅田美代子、ちょびっとだけ、水野美紀。


タイトルの 「あん」 は、どら焼きの 「あん」 のこと。

あん作りを通しての明るいヒューマンドラマかと

思っていたら、イメージしていたのとは違う、

結構、重いテーマだった。


今日の試写会は、完成披露試写会。

上映の前に舞台挨拶があるのだ。

そのため、客席の後ろには、

15台ぐらいテレビカメラが並び、

客席の1〜2列目には、30人ぐらいの

スチール・カメラマンが座っていた。

舞台挨拶には、河瀬直美監督、樹木希林、

永瀬正敏、内田伽羅、そして原作者の

ドリアン助川の5人が登場した。

舞台挨拶の模様は、プロの報道 でどうぞ

司会者が 「あん!」 と叫び、

客に 「大ヒット!」 と言わせていたので、

コマーシャルで使うのかもしれない。


さて、映画の感想。

すすり泣いている人もいたのだが、

正直に言うと 私には あんまりピンと来なかった。

何が言いたいのか、よく分からず、

難しかった、と言った方が良いかもしれない。

でも、映画が終わったあとの河瀬直美監督の

言葉を聞いて、少し印象が変わった。

上映終了後、監督と永瀬正敏が、再び舞台に登場し、

監督は、「映画だけを観て判断してもらうものなので、

こんなこと言うのはイレギュラーなのですが」 と

前置きした上で、こう言った。

「私たちは、色んなことがあるけれど、

ここにいるだけで素晴らしいっていうことを

この作品で言いたかった。」

言葉は多少違うかもしれないが、そういう内容だった。

なるほど、そういうメッセージだったのか。

ちょっと、分かったような気がした。


原作は非常に評価が高いようだ。

読んでみよう。


★★★▲☆


あん





2015.4.11

バードマン
あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

アカデミー賞9部門ノミネート、そのうち、

作品賞、監督賞 、脚本賞、撮影賞の

4部門ので受賞した

映画 『バードマン』 。

主演は、マイケル・キートン。

共演は、エドワード・ノートン、

エマ・ストーンら。

ずいぶん前から、何度も予告編を観て、

(面白そう) と期待してたのだが、

(よく分からんかった) というのが感想。

面白くないわけではない。

退屈もしない。

マイケル・キートン演じるリーガンの

心の葛藤も分からないではない。

が、結局、どういうことか分からんのだ。

火の玉 (隕石?) の意味も分からんし、

リーガンが何をしたかったのかも、

分からない。

本作は、映画情報サイトに

「ブラック・コメディ」 と紹介されている。

また、ゴールデン・グローブ賞のコメディ・

ミュージカル部門の主演男優賞を受賞している。

つまりは、コメディなのだろうが、

あまりにブラックなためか、

あんまり分からんかったというのが

感想なのだ。


印象的だったのは、音楽。

音楽というより、ドラムソロが効果的に

散りばめられている。

エンドロールもドラムソロ。

(ドラム、誰やろ?) と思っていたら、

アントニオ・サンチェスでした。


撮影賞も受賞したカメラワークについては、

確かに長回しが多く、撮影が難しいのは

分かるが、それほど斬新な印象は

受けなかった。


なかなか 名前を覚えられない監督の

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。

そういえば、この人の作品『バベル』 も

『ビューティフル』 も難解やったな。


副題のようにつけられた

「無知がもたらす予期せぬ奇跡」 は、

原題にも付いている。

原題は、

Birdman or (The Unexpected Virtue Of Ignorance)

この " Virtue " は、「奇跡」 と訳されているが

辞書によると 「徳・美徳・美点・善・長所・

効き目・効力・貞節」 となっている。

最後の方で、この言葉がリーガンへの

評価家の褒め言葉(?) のように出てきた (と思う)。

あれは、ブラックな意味だったのだろうかね。


★★★▲☆


バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)





2015.4.15

JIMI : 栄光への軌跡

ロック・ギタリスト、ジミ・ヘンドリックス

(日本では通称 ジミヘン) を描いた映画

『JIMI:栄光への軌跡』。

冒頭から、ブルース・ギタリスト数名の

名前が 登場人物の会話に出てきて、

興味のない人が観ると、

何のことか分からず、

途中で席を立ってしまうんやないかと

余計な心配をするような

ちょっとマニアックな映画だった。

ジミは、1970年に27歳という若さで

この世を去った。

デビューして死ぬまでの活動期間は、

たった4年にも関わらず、

今だに人気があり、ロック、エレキ・ギターを

語る上で避けては通れない人物だ。

私は、ジミのことはそんなに詳しくなく、

曲も有名どころを4〜5曲知っている程度

なのだが、その中の1曲 " Little Wing " は、

大好きな曲で、ライヴでも演奏したことがある。

さて、映画はジミがデビューする前後、

2年間ほどを描いている。

ジミという人間と彼の周りにいた女性の

物語でもある。

ジミを演じるのは、アンドレ・ベンジャミン。

顔つきや雰囲気がかなりモノホンっぽい。

数ヶ月間、1日8時間ギターの練習をして、

撮影に臨んだという。

ホンマには弾いてないのが分かるのは

仕方がないが、かなりええ感じだった。

若かりし頃のエリック・クラプトン、

キース・リチャーズ、ポール・マッカートニー、

ジョージ・ハリスンなどが登場するのは

楽しかった。


印象的だったのは、エリックとジミが

初対面でセッションするシーン。

当時、ジミはまだ無名だったのだが、

ジミがギターを弾きだすと

あまりの凄さにエリックは、

ステージを降りてしまう。

それから、ビートルズの 「サージェント・

ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」 を

そのアルバム発売3日後に、ポールやジョージの

目の前で演奏するシーン。

本番前に楽屋にそのレコードを持ち込んだジミは、

30分でメンバーに曲を覚えろと言い、

そして演奏するのだ。

そのシーンは、ゾクッときたね。


そんなエピソードに代表されるように

ジミは、とても自由な人だったことが

映画からうかがえる。

白人・黒人の区別や、政治的なこと、

音楽のジャンル分けなど、ジミには、

どうでもよかったのだ。

ただ、自分の音楽を表現できれば。


原題は、" All IS BY MY SIDE "


★★★★☆


JIMI:栄光への軌跡




ティック・クアン・ドック

4日前、NHK で ティク・ナット・ハン という

ベトナム出身の高僧の特集を観た。

その番組の中で、1963年に

ベトナムにおける仏教弾圧への抗議として、

ティック・クアン・ドックという僧侶が

ガソリンを被って焼身自殺を行った時の

写真が出た。

その写真は、炎に包まれた僧侶が、

蓮華座を崩さずに座っているものだった。

炎に包まれれば、普通なら、

のたうちまわるんじゃないかと思ったが、

燃えながら、綺麗な蓮華座で合掌しているという

かなり強烈な写真だった。

そんな凄い僧侶がいたことを、

その番組を観るまで知らなかった。


さて、今日観た映画 『JIMI:栄光への軌跡』 に

不思議な偶然があった。

映画の中で、その僧侶が焼身自殺するシーンが

数秒 流れたのだ。

今度は、写真ではなく、動画だった。

そのことについて、ジミが何かを

言ったのだが、4日前にテレビで見た写真が

いきなり映画に、しかも動画で登場したので、

私は驚きのあまり、そのシーンの

ジミのセリフを覚えていない。


帰宅してから、調べてみると、

当時 (1963年)、その焼身の様子は

世界中に放映されたようだ。

当時の南ベトナムのゴ・ディン・ジエム大統領の

実弟の妻、マダム・ヌーが

「あんなもの、単なる人間のバーベーキューよ」

とテレビで言ったことが、全世界のひんしゅくを

買い、その5ヶ月後にクーデターにより、

ジエム政権は崩壊したらしい。


ネットには、その焼身の動画がアップされている。

弟子だろうか、一人の僧侶が、蓮華座の僧侶に

ガソリンをかけるところから、始まる。

まともに観たらショックを受けるんちゃうか、

やめよかなと思いながら、結局最後まで観た。

約5分。

焼けてくずれるまで、本当に動かない。

強烈です。

なんか分からんけど、涙が出ます。


あるサイトには、この動画には、

「言語化不可能な 『聖なるもの』」 が

捉えられていると書いてあった。

前述の NHK の番組で、

ティク・ナット・ハン は、

「これは自殺ではない」 と語っていた。


リンクは貼らないので、

観たい人は、自分で探してね。





2015.4.16

ソロモンの偽証 前篇・事件

いよいよ後篇が公開されたので、

ようやく前篇を観てきた。

映画 『ソロモンの偽証 前篇・事件』。

原作は、宮部みゆきの同名小説。


現実的ではないこともあるが、

扱っているテーマは、シリアスだ。

結構、引き込まれてしまい、

121分、あっという間だった。

前篇と後篇でそれぞれ独立して

話がまとまっているわけではなく

完全につながっている感じで、

前篇の終わり方は、まるでテレビドラマ。

ぶった切りで終わり、

「続きを観な!」 と思わせてくれる。

『巨人の星』 を思い出したもん。


同級生の転落死の真実を暴こうとする

中学生の物語。

主役の藤野涼子 (新人) が良い。

1万人の中から選ばれただけのことはある。

2000年生まれだから、15歳か。

将来が楽しみな女優だ。

役名・藤野涼子を芸名にデビューと

いうのも新しいスタイルなのかな。


ちょっとクセのある役を演じる

石井杏奈も良い。

映画の中では、コワイけど、

ほかの写真を見ると別人のように

可愛くて おじさんびっくり。


どっかで見たことあるな、という

男子がいたのだが、大阪の子供漫才の

「まえだまえだ」 のお兄ちゃんでした。


中学生役は、フレッシュな役者が多いが、

大人は、佐々木蔵之介、夏川結衣、

永作博美、小日向文世、黒木華、

尾野真千子、余貴美子、田畑智子、

塚地武雅、松重豊など、豪華。


前篇だけでは、評価はつかないのだが、

つまらなければ、後篇を観たいとは

思わないわけで、そういう意味で言うと

今のところ 高評価だ。

★は後篇を観てからにしよう。


ソロモンの偽証





2015.4.20

エイプリルフールズ

映画 『エイプリルフールズ』。

予告編を観てドタバタ喜劇かと思っていたら、

笑いはそんなになくて、

むしろ泣かされてしもた。

7つの嘘の物語が、微妙に絡みながら、

進んでいくという手法で、

荒唐無稽ではあるけど、

つまらないエピソードから、

ベタなストーリーやのに

泣かされてしまうもんまで、色々。

4月1日、エイプリルフールだからという

嘘もあれば、エイプリルフールは関係ないけど

無理やりこじつけた感のあるものまで。

出演は、ちょっとしか出ない人もいるけど

かなり豪華。

戸田恵梨香、松坂桃李 、寺島進、

ユースケ・サンタマリア 、小澤征悦 、

菜々緒 、大和田伸也、千葉真一、

高嶋政伸、岡田将生、生瀬勝久、

古田新太、小池栄子、等々。

それに、里見浩太朗、富司純子という

大御所も。

あと、子役の浜辺美波が良かったね。

プロフィールを見ると、

中学生やねんけど 小学生役でした。

胡散臭い占い老婆役の人、

誰やろうと思っていたら、りりィ でした。


★★★★☆


エイプリルフールズ




ソロモンの偽証 後篇・裁判

先週、前篇を観て結構面白くて、

楽しみにしていた後篇を観てきた。

残念ながら、前篇のような疾走感というか、

引き込まれ感はなく、どちらかというと、

展開上そうなるのは当然だが、

謎解きに取り組んだという感じだ。

面白くなかったわけではないが、

原作をかなり端折られているらしく、

6冊の原作を4時間ほどにまとめるのには、

無理があったのだろうか、もう少し、

ここんとこ背景を知りたいなぁという所もあった。


後篇では、いよいよ中学生による裁判なのだが、

大人でも難しいであろうあのような裁判を

中学生があんなに冷静にブレずにやるあたりに、

現実味はないが、フィクションだからこそ

できる設定と思えば十分に面白かった。

結末は、それほど衝撃的ではなかったが、

さすがに人の生死に関わることなので、

あと味の良いものではない。


前篇の時も書いたけど、主役の藤野涼子が良い。

前篇より、後篇でますます良くなっている。

おじさん、ファンになってしもた。

あと、印象的だったのは、

ちょっとアホなオカン役の永作博美。

イタさかげんがかなり (嫌なくらい) 良いです。

それと藤野涼子の父親役の佐々木蔵之助、

いつの間にか、こんなお父さん役を

演るようになったんやね。(俺、誰?)

それから、お笑い芸人の域を完全に脱した

塚地武雅、素晴しいです。


★★★★☆


ソロモンの偽証





2015.4.26

セッション

アカデミー賞3部門を受賞した映画

『セッション』 。

アカデミー賞以外にも多くの賞を受賞しており、

その数は合計142ノミネート、51受賞。


名門音楽大学の生徒 (ドラマー) と鬼教授の

物語で、ひと言でいうと狂気の世界。

天才を生み出すことに固執したコーチ (教授) と

偉大なミュージシャンになりたくてしょうがない

若者の物語とも言える。

この教授のレッスンが異常。

弱い精神の人間は、音楽とか演奏技術云々の前に

淘汰されていく。

教授の方針は、「本物だけが生き残る」 なので、

生徒をギリギリに追い詰め、試し続けるのだ。

その試し方が、尋常ではない。

欝になって自殺する生徒まで出るほどだ。


面白かったけど、

正直、よく分からんかった。

一緒に観た妻の解説 (?) で、

(なるほどそういうことか) と

理解したが、ちょっと難しいかもね。

ネット上の評価は高いが、

中には的はずれなレビューもあり、

分かり易い映画とは言い難い。

でも、退屈はしないし、

緊張感も半端ではない。

音楽映画というよりは、人間ドラマ。

天才は、狂気と紙一重なのだな。


その狂気の鬼教授フレッチャーを演じるのは、

アカデミー賞助演男優賞を受賞した J・K・シモンズ。

そして、生徒であるドラマー、アンドリューを

演じるのは、マイルズ・テラー。

監督・脚本は、撮影当時28歳で無名だった

デイミアン・チャゼルという人。


原題は 「WHIPLASH」 で、映画の中で

演奏される曲のタイトルでもあるが、

「むち打ち、むち先のしなやかな部分、むち紐」

という意味だ。

邦題の 「セッション」 には、

このニュアンスはなく、映画の中の演奏も

「セッション」 という感じではない。


★★★★☆


セッション





2015.4.30

寄生獣 完結編

『寄生獣』 の続編 『寄生獣 完結編』 を

観てきた。

昨年12月17日に観た 『寄生獣』 が

面白かったので、楽しみにしていたのだ。

あれから4ヶ月半も経っていたとは、

ちょっとびっくり。

感想はね、残念ながら前編の方が面白かった。

この 『完結編』 も退屈せんかったし、

面白いといえば、面白かったし、

涙してしまうシーンもあったんやけど、

でも、前編に比べると何かが物足りんかった。

先日観た 『ソロモンの偽証』 も

そうやったけど、なんでしょね。

なんか、終結に向かって行くとなると

何かが失われるんかな。

そんなことないと思うねんけど・・・。

本作の場合は、ラストがイマイチやった。

もうちょっと、早い段階で

グッとくる終わり方できたんちゃうかな。

最後に登場するサイコ野郎は、

なんでシャバに出てきてるかも

理解できんかったし。

ちょっと惜しいな。

でも、染谷君と時々グロテスクな

SFX は素晴らしいです。


★★★★☆


寄生獣 完結編





2015.5.4

イタリアは呼んでいる

イタリアを旅する映画ということで、

楽しみにしていた 『イタリアは呼んでいる』。

原題は、" THE TRIP TO ITALY "。

イギリスのコメディアン2人が、

グルメ・ルポのため、イタリアを北から南へ

ミニ・クーパーに乗って旅するのだ。

美味しそうなイタリア料理や、

イタリアの景色は楽しめたが、

いかんせん、この2人の会話が楽しめない。

ジョークとモノマネの連続で、

分かる人には、おそらくメチャクチャ

面白いのだろうが、(日本人には) ネタが

少々マニアックなこともあり、ほとんど笑えなかった。

悔しい限りである。

モノマネは、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、

アンソニー・ホプキンス、ヒュー・グラントなどなど。


イタリアは呼んでいる


★★★★☆




龍三と七人の子分たち

北野武監督作品。

元ヤクザのジジイ達の物語。

主役の龍三に、藤竜也。

そのほか、近藤正臣、中尾彬、小野寺昭

品川徹らが、子分役。

北野武は、刑事役で出演。


笑わせてくれるんかなと期待していたが、

コメディとしてはイマイチ。

思っていたほど面白くない。

残念。


★★★▲☆


龍三と七人の子分たち





2015.5.5

イタリア映画祭

今年も イタリア映画祭 に行ってきた。

今年で15回目ということだが、

一昨年に知ってから、数本、観に行くようになった。

今年は、14本公開され、そのうちの

2本を観てきた。

今回は、10分ほどの短編映画も

同時上映だった。




僕たちの大地

2011年の感動作、『人生、ここにあり!』 の

マンフレドニア監督の新作。

『人生、ここにあり!』 は、廃止された

精神病院の元患者たちの協同組合の物語だったが、

この 『僕たちの大地』 は、町がマフィアから

没収した土地で農業を始めようとする

これまた協同組合の物語。

冒頭、「実際にあったことに着想を得ています」 と

テロップが出る。

イタリア社会における、マフィアの影響力、

問題点は、日本人が想像する以上に、

たとえば日本における暴力団の問題以上に

根深いものがあるんだなと思わずにいられない。

そして、その問題に向かう、

イタリア人の勇気と明るさが素晴らしい。

南イタリアの田舎町の純朴な人たちが、

勇気と努力で自分たちの土地、農業を

勝ち取る物語。


原題:La nostra terra
監督:ジュリオ・マンフレドニア Giulio Manfredonia
[ 2014年/100分 ]





★★★★☆




幸せの椅子

昨年、57歳の若さで亡くなったらしい、

カルロ・マッツァクラーティという監督の遺作。

エステの備品の支払いに困る、

エスティシャンのブルーナは、顧客の一人から

死ぬ直前に宝が隠された椅子のことを告げられる。

同様に金に困る、タトゥー師ディーノと2人で

その椅子探しをするという物語。

ストーリー自体は、なんてことはないが、

ちょっとミステリー仕立てで、

コメディタッチで、面白い。

ブルーナを演じるイザベッラ・ラゴネーゼが、

若い頃のアン・ルイスのようで可愛らしい。


原題:La sedia della felicita
監督:カルロ・マッツァクラーティ Carlo Mazzacurati
[ 2013年/94分 ]





★★★★☆





2015.5.11

寝ずの番

先日、久しぶりに 中島らも を読んだ。

短編3篇 『寝ずの番』 だ。

「寝ずの番」 とは、お通夜で寝ずに死人の番、

線香の番などをして、故人をあの世へ見送るという

しきたりのこと。

読後、映画になっているのを知って、

これは観なければと早速 DVD をレンタルした。


明らかに 六代目笑福亭松鶴をモデルにしたと分かる、

笑満亭橋鶴 (長門裕之) の臨終前から、物語は始まる。

橋鶴が死に、その妻の志津子 (富司純子)、

一番弟子の橋次 (笹野高史) が次々に亡くなる。

3人のお通夜で、弟子たちが、

それぞれ故人を偲ぶという物語だ。

それが、下ネタだらけで、放送禁止用語連発。

しかし、本で読んだときより、

どういうわけか、下品に感じない。

セリフは、ほとんど原作のままのように感じたんやけど。

役者たちが、" 真面目に " 放送禁止の猥語を

連発するからだろうか。

いやらしいというより、カラッとしている感じ。

テレビでは、絶対放送できないやろし、

下品だと笑えない人もいるだろうが、

私は面白かったし、師匠を思う弟子の

橋太 (中井貴一) に泣かされてしまう

シーンもあった。

原作を読んでいなかったら、

もっと笑ったやろし、インパクトあったと思う。

そういう意味では、原作を読んで、

まもなく観たのは失敗。


本人役で、笑福亭鶴瓶、桂三枝、浅丘ルリ子、

中村勘三郎、米倉涼子が、ちらっと出演。

監督は、マキノ雅彦 名義で、

津川雅彦 (第1回監督作品)。


ほとんどの役者の大阪弁は許容範囲だったが、

堺正章だけ、残念な大阪弁だった。


★★★★☆





2015.5.12

歓喜の歌

立川志の輔師匠の新作落語を映画化した

『歓喜の歌』。

映画になっているのは、知っていたが、

ずっと見そびれていた。

(公開は、2008年。)

やっと DVDをレンタルして観た。


公民館の大晦日の予約に、2つの似たような

名前のママさんコーラスグループが、

ダブルブッキングされていることが、

その前日に発覚するというストーリー。

落語版より、時間が長い分、なんやかんやと

話を膨れませていて、面白かった。

落語が原作だと知っていれば、

(それはないやろ〜) ということも

なんとなく許せてしまう。

出演は、公民館の職員に

小林薫、伊藤淳史、田中哲司。

ママさんコーラスのメンバーに

安田成美、由紀さおり、ほか。

志の輔ご本人と 談志師匠も ちらっと出演。

偶然、前日に見た 『寝ずの番』 にも出演していた

2人 (笹野高史、土屋久美子) も出ていた。

これは落語良し、映画良しの作品だ。

監督は、

『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』、

『深夜食堂』 の 松岡錠司 (まつおかじょうじ)。


★★★★☆





2015.5.14

映画 ビリギャル

タイトルにわざわざ 「映画」 と付けたのは、

検索時の原作本との区別のためだろうか。

それはさておき、本作、偏差値30の

高校2年生が、1年半で偏差値を40も上げ、

慶応大学に合格したという、実話の映画化。

実話でなければ、「そんなアホな〜」 と

言いたいところだが、実話と言われれば、

黙るしかない。

今日は、14日で TOHO の日 (14でトーホー)。

TOHOシネマズでは、料金が1100円と

いうこともあってか、18時45分の回は、

思ったより、混んでいた。

見渡すとお客は、ほとんど若い人たちだ。

中にはセーラー服の女子高生もいる。

明らかにおっさん一人は、場違いな感じ。

左隣は、大学生ぐらいのオネエちゃん2人組、

右隣は、やはり大学生ぐらいのオニイちゃん2人組。

あら、これ、子供 (失礼、若者) の観る

映画やったんか? 失敗したかも。

などと思いながら、映画は始まりました。

結果、不覚にも5〜6回は泣いてしもた。


成績の悪かった女子高生が、ある塾講師との

出会いをきっかけに、慶応大学を目指し、

合格するという、ストーリーとしては、

ベタベタな展開。

一種のサクセス・ストーリーなんやけど、

見事に涙腺直撃。

めちゃくちゃ頑張ったさやか (有村架純) 本人も

スゴイけど、塾の講師、坪田先生 (伊藤淳史)、

母親、ああちゃん (吉田羊) が素晴らしい。

原作は、この坪田信貴という先生の著作で、

「学年ビリのギャルが1年で偏差値を

40上げて慶應大学に現役合格した話」 という

長〜いタイトル。

原作本のレビューは、賛否分かれており、

手厳しいものも多い。

というのも、彼女の通っていた高校が、

もともと進学校であったからだ。

つまり、進学校内で勉強をサボっていたから

偏差値が低かっただけだ、タイトルに

偽りあり! と、低い評価をつけた

レビュアーは、言いたいようだ。

だったら、進学校内のビリが皆、

慶応に行けるんか? と突っ込みたくなるけどね。

原作は、読んでいないから分からんけど、

少なくとも映画では、そんなことは、

全く重要ではない。

もっと大切なことを描いているので、

そんなことに引っかかって、

そこを見落とすのは、もったいない。

(映画の評判は、(今のところ) 良いので

原作を読んでイマイチだった人は、

映画は観ないかもね。)


本作、コミカルに作られているのかと思ったら、

いやいや、結構深い。

人が本気になること、奇跡が起こりうる条件、

教育・指導とは何か、また、

学生に向けて、親に向けて、

教師に向けて、全ての人に向けて、

たくさんのメッセージが

詰まっている作品と観た。


★★★★★


映画 ビリギャル




脳内ポイズンベリー

ラブ・コメディの映画。

原作は、少女コミックということだが、

もちろん知らない。

30歳のいちこ (真木よう子) は、

7歳年下の早乙女 (古川雄輝) に

恋をする。

いちこの頭の中で 「ポジティブ」「ネガティブ」

「理性」「衝動」「記憶」 という5つの

擬人化された思考が脳内会議をする。

実像の方のストーリーは、結構シリアスに

展開するが、脳内会議はコミカルで、

その対比、バランスが面白い。

そして、一つのことに対し、頭の中では

複数の考えや思いが、同時にあることや

迷いがあることを 上手く表現している。

脳内の 「ネガティブ」 役に、吉田羊。

『映画 ビリギャル』 で素晴らしい母親役を

演じていたのに、こちらでは、とても

同じ人とは思えない 強烈なネガティブ思考を

演じている。


予想していた ただのラブコメに非ず、

これまた結構、深い。

ほんで、面白かった。

監督は、『キサラギ』 の 佐藤祐市。


★★★★★


脳内ポイズンベリー





2015.5.24

駆込み女と駆出し男

江戸時代、夫から妻への離縁は

自由にできたようだが、

妻からの離縁は認められていなかった。

女性差別の時代である。

女たちは離縁をするために、

幕府公認の東慶寺へ駆け込んだ。

縁切寺である。

そこで2年間、東慶寺で修行を済まし、

ようやく公的に離婚が認められるのだった。

しかし、駆け込む前に夫に連れ戻されて

しまうこともあり、そう簡単に

離婚することはできなかったようだ。


映画 『駆込み女と駆出し男』 は、

その縁切寺に駆け込んだ女たちと、

縁切寺の御用宿に居候する医者見習いの

男の物語。

駆け込む女に、

戸田恵梨香 、満島ひかり 、内山理名。

女に逃げられる男に、堤真一、武田真治。

御用宿の主に。樹木希林。

そして、居候の医者見習いに大泉洋。

監督は、『クライマーズ・ハイ』

『わが母の記』 の原田眞人。

原作は、井上ひさしの 『東慶寺花だより』。


大泉洋のキャラに依るところが大いにあると

思うが、コミカルに描かれているシーンも多く、

重いテーマのようで、作品自体は明るく、

暗く重い印象はない。

映画の出だしがちょっと分かりにくい

感じがしたが、大泉洋が何者か分かった

あたりから、物語に引き込まれていった。

当時、女性からの離縁は、命がけで

あったのであろう。

女性にとっての理不尽極まりない時代が

あったことに、驚くとともに、

今の自由な時代の恩恵に感謝。

原作は、11年にわたり 「オール読物」 に

連載されたので、それなりに長編なんだろう。

駆け込む女の背景をもう少し、

描いて欲しい気がしたが、

2時間そこそこの映画にするには

これが限界か。


★★★★☆


駆込み女と駆出し男





2015.5.27

チャッピー

『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督作品。

AI(人工知能)を持ったロボットの物語だが、

そのロボットの見た目が、なんとなく

『第9地区』 の宇宙人に似ている。

『第9地区』 では、人間と宇宙人の話だったが、

本作では、人間と、知能や感情を持った

ロボットの話になっている。

舞台は、2016年の南アフリカ・ヨハネスブルグ。

ロボット開発者のディオンは、

人工知能の作成に成功し、廃棄予定だった

警察ロボットに搭載するが、そのロボット

“チャッピー” は、ギャングの仲間に

されてしまうというストーリー。

何も知らない、無垢なチャッピーは、

凄いスピードでいろいろ学習していくのだが、

いかんせん人間が創り上げたものなので

完璧ではない。

「暴力はダメだ」 ということを

人間に暴力で教えようとするあたりは、

痛々しい。

また、環境によって学ぶことが違うのは、

人間でも同じだろうが、ロボットを

通して見ることで、子供を育てる環境に

ついても考えさせられる。

人間の意識を転送したり、かなりイッテル

設定だが、物語のテンポがよく、

考えるすきを与えない。

ラストは、これはハッピーエンドなのか

どうかも判断できない。

切ない、哀しい、そして怖いラストだ。

もしかしたら、めちゃくちゃ深い映画かも。

出演は、デーヴ・パテル、ヒュー・ジャックマン

シガニー・ウィーヴァー ほか。

デーヴ・パテルは何に出ていたっけと

思ったら、『スラムドッグ$ミリオネア』の人。


★★★★☆




ワイルド・スピード
SKY MISSION


この手の映画は、あんまり観なく

なってきたのだが、面白いとの評判なので

観てみることに。

よく知らずに観たのだが、本作、

ワイルド・スピード・シリーズの7作目。

ものすごいカーチェイスとアクション。

いやぁ、面白かった。

これぞ、エンタテイメントっちゅう映画。

「そんなアホな〜」 の連続だが、

これは、ただドキドキハラハラして

楽しむ映画だろう。

と、思ってたら、後半何やら違う要素を感じた。

観終えてから知ったことなのだが、

出演している ポール・ウォーカーという

俳優が2013年、本作の撮影の途中で

交通事故で亡くなっていたのだった。

一時は、制作休止の発表まであったものの

ポールそっくりの実の弟が残りのシーンに

出演し、公開までこぎつけたという。

そういう意味で、ワイルド・スピード・

シリーズのファンにとっては、

とっても思い入れのある作品に

なったようだ。

そのことが分かった上で、

ラスト・シーンを観ると、ちょっと

胸が締め付けられます。


★★★★▲





2015.5.30

メイズ・ランナー

巨大な迷路に囲まれたところに

囚われた若者達が、もとの世界に向けて

脱出しようと試みるサバイバル・アクション映画。

それなりにドキドキハラハラ感はあったものの

設定に無理があるのと、謎が多いのと、

登場人物の行動が解せないのとで、

予告編を観て、面白そうだと

思ったほどではなかった。

エンドロールのあと、近日公開の

続編の予告編付きで、

3部作の1作目ということだった。

観るまで知らんかったけど。


なんでこんなことになってるのか、

分からんという謎の感じに

なんか、数年前に途中まで観た、

『ロスト』を思い出した。


たぶん、続編 観るやろな、って感じ。

あんまり期待できひんけど。

有名な役者は出てません。


★★★▲☆



ダライ・ラマ14世


本日公開のドキュメンタリー映画。

ダライ・ラマ法王14世の来日時の

映像を中心に、インドのダラムサラ

(北インドにあるチベットから亡命した

人たちの都市)の学校で学ぶ子供達への

インタビューなど、法王とチベット、

チベット仏教を知るには、

とても良いドキュメンタリーだった。


法王は、1935年生まれだというから、

今年80歳。(うちのオカンと一緒や)

5歳で正式に ダライラマ14世に

即位してから75年ということか。

チベットの人々は、中国にずい分と

ひどい目にあわされたわけだが、

その中国人さえも赦し、

共に発展・平和を目指そうという、

法王の器の大きさ、慈悲の深さ、

非暴力、平和主義の本物さには、

感銘を受けざるを得ない。


映画では、東京の街頭で募った法王への質問や、

法王の講演会だと思われる会場での日本人の

質問が、いくつも出てくる。

その質問の内容が、結構 ひどい。

同じ日本人として、

恥ずかしいような質問も少なくない。

質問のビデオを法王に見せるのだが、

(こんなくだらん質問を

なんで法王に訊くんや)と、

監督に問いただしてみたくなるものもあった。

そんな質問にも法王は、

ユーモアを交えて、一つ一つ答えていく。

そして、法王の言葉に気が付かされる。

ああ、こんなくだらないことで、

私の心の平和は乱されている・・・と。


真面目な質問もあったが、

まるで正解があると思って

訊いているように見えた。

そんな時、法王はこう答える。

「I don't know.」


印象的な回答にこういうのがあった。

それは、ある好ましくない状況に出会った時、

法王ならどうしますか?というものだった。

「あなたにできることがあれば、

それをやりなさい。

あなたにできることがなければ

黙っていなさい」

要は、答えなんかない、

自分で考えろっちゅうことや。


もう一つ、印象に残ったこと。

ダラムサラの子供、学生は、

チベットから亡命してきたか、

亡命してきた人たちの子供だ。

その子供たち学生たちに訊く。

「勉強は好きですか?」

「何のために勉強しますか?」

日本の高校生、大学生に

同じ質問をする。

ここには書かないけど、

答えが、違いすぎて愕然とする。

もちろん、日本人の若者全員が、

あんな風ではないだろう。

私だって、10代の時に質問されたら、

「勉強は嫌い」と答えただろう。

だから、偉そうなことは言えないけど、

なんか聞いてて ちょっと情けなくなった。

映画のために象徴的な回答を

選んだんだと思いたいね。

この映画は、日本の若者の

ドキュメンタリーではないのに

そんなレビューになってしもた。


ダラムサラの子供たちに

「今、欲しいものは?」と訊くと、

一様に「ない」と答える。

(ひとり「祖国がないのでチベットの独立」と

答えた女の子がいたけど。)

この質問は、日本人にはなかったけど、

「ない」「足りています」「幸せです」と

答える日本の若者は、おるんやろか。


ダライ・ラマ14世 予告編


★★★★★


もう何年も前に、ブラッド・ピットの

『セブン・イヤーズ・イン・チベット』を

観たけど、もう一度観たくなった。





2015.6.6

国際市場で逢いましょう

韓国では、1,410万人を動員し、
歴代2位の記録を打ち立てたという映画
『国際市場(いちば)で逢いましょう』を
観てきた。
ちなみに韓国動員1位は、
『鳴梁(ミョンリャン)』という、
1597年の文禄の役での日本軍との
戦いを描いた映画らしい。

さて、『国際市場で逢いましょう』。
1950年、朝鮮戦争の混乱の最中、
父親と妹と離れ離れになった
男(ドクス)の物語。
戦争に翻弄された家族の物語でもある。
父親との別れ際、ドクスは父に
「お前が家長だ。お前が家族を守るのだ」と
言いつけられる。

それからドクスは、母親と幼い弟、
妹を守るために、ずっと苦労をする。
ドイツの炭坑に出稼ぎに行ったり、
ベトナム戦争時に出稼ぎに行ったり、
やりたい夢をもあきらめて。
そのたびに命の危険にも遭いながら。

映画の冒頭、蝶々が飛ぶシーンは、
『フォレスト・ガンプ』への
オマージュだと感じたがどうだろう。
『フォレスト・ガンプ』では、
白い羽だったけど。

一人の男が、子供の時から幾多の困難に
打ち勝っていく様は、確かに
『フォレスト・ガンプ』に似ている。
実在の人物(例えばヒュンダイの創立者など)が
登場するあたりも。

さて、感想。
まず、色んな要素の詰まった映画だった。
親子愛、兄弟愛、友情、出会い、恋、夢、
貧困、戦争、別離、再会、責任・・・。

子供の頃、母に聞かせられた覚えがある。
「朝鮮は、南北に分断されたから、
家族がバラバラになった人が大勢いる。
日本は、南北に分断されなくて
良かった」 と。
子供心に、そういうもんかという
程度に聞いていた。

この映画を観て、気づいたのだが、
今まで、朝鮮戦争で南北に離れ離れに
なった韓国人家族の話なんて、
聞いたことがなかった。
もちろん、そういうことを書いた
専門的な書籍はあるのだろうし、
韓国映画もあるのだろうけど、
テレビでは、観たことがない。
もしかしたら あったけど、
私が観なかっただけかもしれんけど。

改めて韓国も戦争で、
ずい分と酷い目にあったんだと思った。
考えてみれば、戦争のあった国で、
国民がひどい目にあっていないところなんか
ないんやろうけど。

朝鮮戦争で離れ離れになった家族を探す
テレビ番組が、80年代になって
作られたようだ。
休戦が、1953年なので、30年ぐらいかかって、
やっと家族を探せるようになったということか。
家族と引き離されたまま、死んでいった人も
たくさんいたんだろう。

大変な男の一生なのだが、
暗く重くなく、時々笑いもありながら、
泣かされるシーンでは、たっぷり泣かされます。

「最も平凡な父の最も偉大な物語」という
キャッチのとおりの映画。


★★★★★




ジェームス・ブラウン

〜 最高の魂(ソウル)を持つ男 〜


今年50本目の劇場鑑賞映画となった、
『ジェームス・ブラウン
〜 最高の魂(ソウル)を持つ男 〜』。
原題は、" GET ON UP "。
(50本達成は、今までで最速。
この調子だと年間100本に届くかも。)

昨年は、フォー・シーズンズを描いた
クリント・イーストウッド監督の
『ジャージー・ボーイズ』を観たし、
今年4月には、ジミ・ヘンドリックスを
描いた『JIMI:栄光への軌跡』を観た。
実在のミュージシャンの伝記的映画が
たくさん作られるのは、音楽好きには
嬉しいことだ。

さて、JB は、1933年生まれだから、
レイ・チャールズ(1930年生まれ)より
少し年下。
キング・オブ・ソウル、ファンクの帝王などと
言われ、マイケル・ジャクソンや
ミック・ジャガーに影響を与えた黒人シンガー。

私は、若い頃、輸入盤の安い LP レコードを
数枚買った覚えがあるが、JB のことを
大好きだったわけではない。
でも、一度だけ来日公演を観たことがあるのだ。
1986年2月4日の大阪城ホール。
当時、アルバイトをしていた先の
同僚の女の子が招待券をもらったから
行かないか?と誘ってくれたのだった。
細かいことは覚えていないけど、
ステージでの、お決まりのマントを
かけてもらい、楽屋に下がりかけては、
マントをはねのけるパフォーマンスは、
印象に残っている。

その前年の1985年、JB は、
映画『ロッキー4/炎の友情』に出演し、
「リビング・イン・アメリカ」が
ヒットしたので、調子の良い時だったのかも
しれない。

映画にも描かれていたが、その後、
1988年に薬のせいでマシンガンを
ぶっぱなし逮捕され、6年の実刑判決を受けた。
(2年で出てきたようだ。)

映画を観ると、貧困な少年時代、
両親からも捨てられるなどのキツい境遇で
育ったことがよく分かる。
そして、天才的な音楽の才能、
音楽への妥協なき姿勢、
強烈なリーダーシップなどとともに
嫉妬深さなども描かれている。

JB は、2006年、73歳で他界したが、
昨年は、" The Original James Brown Band "
という名義で、JB のバックを務めた
オリジナル・バンドのメンバーが来日したりと
そのパワーは、いまだ衰えていない。

映画は、レイ・チャールズを描いた
『レイ』には及ばないが、
ジミ・ヘンの若い頃を描いた
『JIMI:栄光への軌跡』よりは良かったな。
比べるべきではないやろうけど。

JB を演じるのは、チャドウィック・ボーズマン。
後半に行くほどに JB 本人に似てくるように感じた。
ダンスなどステージのシーンは、
JB が乗り移っているかのようだ。
このチャドウィック・ボーズマン、
『42 世界を変えた男』で、
メジャーリーグ初の黒人選手、
ジャッキー・ロビンソンを演じた人だが、
JB とはあまりにもキャラが違うので、
同じ俳優だとは思えないほどだった。

ちなみに2003年の西田敏行主演の映画、
『ゲロッパ!』は、ヤクザの親分が、
JB の大ファンという設定だった。
タイトルの「ゲロッパ」は、JBの曲、
" Get Up (I Feel Like Being Like A) Sex Machine "
の " Get Up " のことやけど、
どう聞いても日本人には、
「ゲロッパ」としか聞こえへんのですわ。


★★★★▲





2015.6.27

MUSICAL CHAIRS
ミュージカル・チェアーズ


昨年11月、「MUSICAL マザー・テレサ 愛のうた」を
観に行ったミュージカル座の公演を観てきた。
今回も妻の知人が出演しているのだ。

「チェアーズ」というタイトルの通り、
椅子を使ったコメディなミュージカル。
1時間ほどの話が2つの2部構成。
椅子は、車の座席にもなるし、バイクにもなるし、
馬にも鹿にもピューマにもなる。
ミュージカルは、どちらかというと
苦手な私でも、楽しむことができた。

ミュージカルなので当然歌がある。
この舞台のために作詞作曲された曲たちだ。
作詞作曲に始まり、役者さんたちが
曲を覚え、セリフを覚えることを思うと
ほんの2時間ほどの舞台のために
費やされた準備の時間は、
想像をはるかに超えるのだろう。

6月24日から28日までの5日間、
全6公演(今日だけ昼夜2公演)。

誰でも上演できるミュージカル台本と楽譜の普及の為に、
インターネット上で台本と楽譜を公開しているらしい。


第一章「三人のドライブ」
第二章「三人のガンマン」

脚本・作詞・演出・振付:ハマナカトオル
作曲・編曲・音楽監督・演奏:久田菜美

出演 :
☆◇共通キャスト:石井一彰、森田浩平、岡智
◇キャスト:中村ひかり、真樹めぐみ、山本英美
☆キャスト:藤倉梓、わたりあづさ、会川彩子
演奏:ピアノ/久田菜美、ギター/成尾憲治

観たのは、☆キャスト。

@ ウッディシアター中目黒







2015.7.6

海街 diary

綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆が
三姉妹を演じる、是枝裕和監督作品。

是枝作品は、全て鑑賞したわけではないが、
『歩いても 歩いても』は、家族をテーマにした
作品として とても印象に残っている。
一昨年の『そして父になる』も良かったしね。
この人は、家族を描かせると上手いね。

出演は、前述の三姉妹女優3名の他に、
腹違いの妹として、広瀬すず。
脇を固めるのは、樹木希林、風吹ジュン、
大竹しのぶ、堤真一、加瀬亮、
リリー・フランキーと ベテランぞろい。

物語。
3人姉妹のもとに、15年前に自分たちと
母親を捨てて出て行った父親の訃報が届く。
3人姉妹が、葬儀の行われる山形へ出向き、
そこで腹違いの妹、すず(中学3年生)と初めて会う。
すずの生みの母は既に他界しており、
父親が亡くなった今となっては、
他人である義母と暮らすしかない。
そんなすずに、3人姉妹は、自分たちと
鎌倉で暮らさないか?と話を持ちかける。


彼女たちの一つの転機である一時期を
切り取ったような映画で、
劇的な事件が起こるわけではない。
ちょっとどこにでもある家庭とは
言い難いが、彼女たちの日常を淡々と
描いている感じだ。

おそらく私が20代の時に観ていたら、
「何がおもろいねん」と思っただろう。
でも好きやな。
こういうの。
若い時に観ていたら分からんやろ、
という意味では、これは大人の映画。

実際、こんなにいつもいつも一緒にいる
姉妹が今時いるのかなと思わないでもないが、
そんなことを差し引いても、じんわり
染みてくる作品だ。

すずを入れて四姉妹、皆、良かった。
綾瀬はるかは、しっかりした、
母親代わりの長女の役を見事に演じていた。
この人、ええ女優になってきたね。
(えらそうに言いますが。)

次女役の長澤まさみは、酒飲みで
男に振り回されるちょっと雑な(?)女を好演。

三女役の夏帆は、末っ子として育った、
独特のゆるいキャラを見事に好演。

そして、腹違いの妹役に、広瀬すず。
この子、ひたすら可愛いです。


★★★★▲




イニシエーション・ラブ


「純粋なラブストーリーが最後の最後で
驚愕のミステリーへと変貌する
衝撃的なストーリー」というので
期待していた。

映画の冒頭にも「お願い」と称し、
「本作には大きな秘密が隠されています。
劇場を出られましたら、
これから映画をご覧になる方のために
どうか秘密を明かさないでくださいネ」
と字幕が出るという手の込みよう。

どんだけ自分でハードル上げるんや、
と思いながら、映画は始まった。

主演は、松田翔太&前田敦子。
監督は、堤幸彦。

舞台が1980年代後半ということで、
カセットテープやミラクオーレ(車)、
黒電話など懐かしいアイテムが登場。
ファッションも髪型も80年代で、
BGMも80年代音楽(「ルビーの指輪」
「君は1000%」「愛のメモリー」など)で
結構楽しめた。

笑えるところも多く、面白かったのだが、
肝心のその「秘密」がですねぇ、
それほどでもなかったんやなぁ。
確かに、思いつきもしない仕掛けだったのは
認めるし、上手く出来てたと思う。
実際、見事に騙された。
でも、例えば『シックス・センス』や
『ユージュアル・サスペクツ』、古くは
『スティング』のようなインパクトには
及ばなかったというのが私の感想。
「秘密」があるって、宣伝しすぎ。

「あなたは必ず、2回観る」というのが
映画の宣伝文句やけど、確かにもう1回、
トリックが分かった上で観てみたいという
気にはなるな。
実際観るかどうかは別として。

タイトルの「イニシエーション・ラブ」は
「大人になっていくための恋愛」というような
意味で使われているが、
それは観終えて 全く納得。


★★★★☆





2015.7.7

イニシエーション・ラブ 続

昨日観た映画『イニシエーション・ラブ』。
ある「秘密」があって最後にそれが明かされる、
いわゆる「どんでん返し」の映画で、
昨日は「見事に騙された」と書いた。

確かに騙されたのには違いないのだが、
今日になって、思い出したことがある。
映画の途中で何ヵ所か(あれ?)っと
違和感というか疑問を感じた所があったのだ。
でも、ストーリーはどんどん進んでいくので、
立ち止まって、どういうことか
考える余裕はない。

後になって 考えてみると、
その違和感・疑問は、すべてこの映画の
「秘密」に関係していたのだ。
おそらく、「秘密」を知った上で、
もう一度観ると、その違和感・疑問の部分は、
全て納得し、なるほどね、と思うのだと思う。

そう思うと、やっぱりもう一度観たいなぁ。

でも、DVDになってからレンタルでもいいか。





2015.7.14

さよなら歌舞伎町

今年1月に公開され、
気になっていた映画、
『さよなら歌舞伎町』。

上映館も少なく、いつの間にか
終わってしまっていたが、
目黒シネマで、上映しているので観てきた。

主演は、染谷将太、前田敦子。

新宿のラブホテルを中心に、
いくつかの男女の物語が、同時に進行していく。
染谷将太が演じるのは、そのラブホの店長だ。

面白かったけど、
染谷くんの魅力を十分に引き出すには、
出番が少ないのか、ちょっと物足りんかったな。
彼は、もっとなんというか、むき出しな感じが
いいのに、ちょっと大人しいとでも言おうか、
不完全燃焼な感じだった。

前田敦子は、先日観た『イニシエーション・ラブ』
では、結構良かったが、本作では
ヒロインと呼ぶには、影が薄いな。
ほとんど脇役。
イ・ウヌという韓国人女優の方が、
インパクトあった。
この韓国人カップルのエピソードだけで、
映画撮れるんちゃうかと思ったほど。

後半、前田敦子がギターで弾き語りをするのが、
桑名正博の『月のあかり』。
オジサン的には、「おぅ!」という選曲。
途中までは、本当に本人がギターを弾いていたのだが、
途中から顔のアップになり、
どうもギターを弾いてないように見えた。
ああいうのは、いややなぁ。
前田は、ミュージシャン役やねんから、
ちゃんとやって欲しいなぁ。

あと、田口トモロヲが、「母親が生きてたら
57歳だ」というシーンがあるねんけど、
彼自身が、それぐらいの年やねんから、
ちょっと無理があるやろ と思った。
聞き間違い?

その他の出演は、大森南朋、松重豊、
南果歩、我妻三輪子、ほか。
監督は、廣木隆一。


★★★★☆





2015.7.15

七人ぐらいの兵士

明石家さんま主演の舞台『七人ぐらいの兵士』。

生瀬勝久が脚本を手掛け、さんまの本格的な
演劇の初舞台として、2000年にパルコ劇場で
初演された作品の15年ぶりの上演らしい。

20〜30年前は、さんまのことを面白いと
思っていたけど、最近はあんまりテレビを観ないし、
たまに観ても、以前のように面白いとは
思わなくなった。

でも、今年、60歳になったさんまが、
どんな舞台をするのか興味が湧き、
観に行ってきた。

休憩なしのたっぷり180分!
さんまのセリフは、どこまでが台本で、
どこからがアドリブなのか、また、
どこまでが仕込みで、どこからがアクシデントなのか
分からないような、自由な舞台だった。
たぶん、さんまのアドリブ的な要素が多いのだろう。
時々、つまらないギャグもあったが、
180分を長く感じることもなく、
全体的には楽しめた。

ただ、舞台が、先の大戦中の戦地という設定なので、
戦死という重い要素もあり、笑いだけではなく、
ちょっとシリアスな面もあった。

反戦のメッセージも感じた。
戦死した戦友を「立派な死」と評することに
対するさんまの「立派ってなんやねん。
立派な死ってなんやねん」という言葉と、
戦地から逃げようとするさんまが、
「そんなに死にたくないのか?」と訊かれ、
「死にたくないんやない。生きたいだけや」
というセリフが印象的だった。

こんな風に書くと真面目な芝居のようだが、
コメディなので、80%はお笑い。
ちょっと、さんまが温水洋一や他の人の頭を
叩きすぎるのが気になったな。
いわゆるツッコミやねんけど、
そんなに叩かんでええやんって感じ。

Wキャストで 恵俊彰と中尾明慶が
出演しているが、今日は恵だった。
内田有紀演じる看護師に自己紹介するシーンが
あるのだが、彼は月〜金で昼のワイドショーをやっているので、
「平日の昼間は埋まっていますが、週末は
空いています」と言って、笑いを取っていた。
こういうくすぐりは、好きやな。



2階の端っこ見にくい席だった。
ステージの4分の1ぐらいが
背伸びをしないと見えない。
「これでS席はひどい!主催者に文句言おう」と
思って、終わってからチケット見たら、
「A席」って書いてあった。

そういえば、S席が売り切れていたので、
A席を買ったんやった。
そんなこと忘れていたので、
もうちょっと恥かくとこやった。


"七人ぐらいの兵士"
作:生瀬勝久
演出:水田伸生
出演:明石家さんま、生瀬勝久、内田有紀、
恵俊彰(Wキャスト)、山西惇、温水洋一、八十田勇一、
森田甘路、須賀健太、中村育二、中尾明慶(Wキャスト)

@ Bunkamura シアターコクーン


【東京公演】7月5日〜26日 @ Bunkamura シアターコクーン
【大阪公演】8月19日〜25日 @ シアターBRAVA!


★★★★☆





2015.7.24



渋谷すばる、二階堂ふみ主演の映画『味園ユニバース』。

「味園ユニバース」って聞いた時から、
なんか懐かしい感じがしていた。
なんでかなと思っていたら、映画を観て分かった。
大阪なんば千日前に「味園」っていう
結構目立つ、ネオンサインがあるねん。
「あるねん」って今もあるとは、知らんかったけど。
「味園」は、レジャービルの名前で、
そのビルに「ユニバース」というキャバレーが
あったんやね(こちらは、2011年に閉店)。
私は、「ユニバース」には入ったことないけど、
そのビルの前は数え切れへんぐらい通ったわけで、
「味園」と「ユニバース」の看板が
思いっきり、無意識に刷り込まれていたんやな。
それで、なんか懐かしい感じがしたんやと思う。

さて本作、舞台は大阪。
記憶喪失の男とその面倒を見る女の物語。
と言ってもラブ・ストーリーではない。

記憶喪失の男を関ジャニ∞の渋谷すばるが演じる。
ジャニーズのアイドルの映画だと知っていたら、
観なかったかもしれない。
渋谷のことは、テレビで見たことがあったけど、
写真を見せられても誰かわからない程度の認知度。
が、この渋谷が中々良い。
私のイメージする、ジャニーズっぽくない。
演技も歌も良い。
本作もアイドルの映画という感じではない。

そして、二階堂ふみ。
『地獄でなぜ悪い』『私の男』
『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』と
出演作を観てきたが、この人はなんというか、
まだ20歳やのに、貫禄があるというのか、
存在感があるというのか、唯一無二という
言葉がホンマよく合っている。
本作は、舞台が大阪なのでず〜っと大阪弁。
始まってすぐ、(あれ?二階堂ふみって、
関西出身やったっけ)と思ったほど、
大阪弁も自然だった。(実際は、沖縄出身。)
が、やはり、大阪弁のハードルは高いねんな。
途中で(あれ?今のイントネーション、変やで)と
いうところがあり、ネイティヴでないことは、
バレてしまった。
惜しかったね。

映画としては、嫌いじゃないけど、
ダメ男な主人公には、共感ができなかったし、
もうちょっと何かが欲しかったな。
(なんで?)って、突っ込みたい箇所もあったし。
でも、渋谷を知れたことは収穫。


★★★▲☆





2015.7.25

ゆれる

今までの人生で一体何本の映画を観たのか
分からないが、その中には繰り返し観たくなる
作品、記憶に残っているけど、もう観なくて
よい(または観たくない)作品、観たことさえ
覚えていない作品と様々だ。
題名を覚えているというだけで
なんらかのフックがあったのだと思う。
殆どは、題名さえ覚えていないのだから。

さて、今日は『ゆれる』を DVD で観た。
ずいぶん前に観た映画だが、
ずっと記憶に残っている作品の一つだ。
調べてみると、2006年の作品で、
私は、2007年に劇場で鑑賞していた。

オダギリジョーと香川照之が出ていたことは、
覚えていたが、オダギリの幼なじみ役が、
真木よう子だったとは、覚えていなかった。
いや、覚えていなかったというより、
あの頃はまだ、今ほど売れる前だったので
真木よう子の名前を知らなかったんだろう。

オダギリジョーと香川照之は兄弟役。
東京でカメラマンをする弟・猛にオダギリ。
田舎で実家のガソリンスタンドを継いだ
兄・稔に香川照之。
そのガソリンスタンドで働く、
幼なじみ・千恵子に真木よう子。

母親の一周忌で、帰省した猛。
翌日、猛と稔と千恵子は3人で、
渓谷に遊びに行く。
そこの吊り橋から転落して千恵子は
命を落とす。
果たして、事故なのか殺人なのか。

細かいストーリーは覚えていなかったが、
香川照之の演技が凄かったことは覚えていた。
香川演じる稔が、正座して洗濯物をたたむ
シーンがあるのだが、その背中が印象的だった
ことは、ずっと覚えていたぐらいだ。
今回観てみたら、正座して重なった足の裏にも
表情があるように見えた。

『半沢直樹』に出ていた香川は、
ちょっと Too Much な感もあったけど、
本作の抑えられた表情による演技は、
怪演だと思う。

ラスト・シーンは、そのあと、どうなるのかを
観客に委ねている。
観る人によって、あのラストシーンは、
意味が変わるだろう。
私は、「どういうこと?」と少し戸惑っているのだが、
その戸惑いが、この作品を記憶に残させたのかも
知れないと思った。
私には姉しかいないが、兄か弟がいたなら、
また違ったふうに感じるのかもしれない。

監督は、『夢売るふたり』
『ディア・ドクター』などの西川美和。
まさに心が「ゆれる」映画だ。


★★★★▲





2015.7.26

アリスのままで

若年性アルツハイマー病患者を演じた
ジュリアン・ムーアが、アカデミー賞の
主演女優賞を受賞した映画『アリスのままで』。

大学教授のアリス(ジュリアン・ムーア)は、
50歳を過ぎて、物忘れがひどくなり、
診断を受けたところ、若年性アルツハイマー病と
診断される。
彼女のそれは遺伝性で、陽性の場合、
100%発症するという。
3人の子供にも可能性があるわけだ。

本作は、アリスがアリスでなくなっていく様子を
淡々と描いており、「現実はもっと大変だ」という
批判もある。
そうなのかもしれないが、十分、苦しい。

最愛のダンナは妻よりも仕事を優先したり、
アリスの面倒を見るのが、衝突の多かった
次女だったりと、家族のあり方も
一つのテーマだ。
何より、この病気は家族の理解とサポートが
必要なのだな。

ラストについてもキレイに描きすぎだという
意見もあるが、私には、十分なラストだった。
人生とは、こういう容赦のないもんなんだと思う。

原題は、"STILL ALICE"。
『アリスのままで』は、上手い訳だと思うが、
私は、映画を観てこの「Still」には、
「今も」「今もまだ」というニュアンスが
あるように感じた。

監督は、リチャード・グラッツァー と、
ウォッシュ・ウェストモアランド。
リチャードは、今年3月、4年間の闘病の末、
ALS のため63歳で他界。
闘病しながら、撮影していたということか。

若年性アルツハイマー病。
もう人ごとではない年齢になった。


★★★★▲




チャイルド44
森に消えた子供たち


監督は、スウェーデンのダニエル・エスピノーサ 。
製作は、リドリー・スコット。
1953年、スターリン政権下のソビエト連邦での物語。
ソ連は楽園だから、犯罪(殺人)なんてない。認めない。
殺人事件は、事故として片付けられる、そんな時代。

どこまでが史実に基づいているのか分からないが、
たぶん、実際にこんな風だったんだろう。
この時代のソ連は、異常だったんだ。

誰もを西側のスパイではないかと疑い、
誰も心底信用できない、そんな時代。
でも、そんな異常な時代でも、まともな考えを持ち、
子供達の命を守るため、命を掛けられる人がいることは、
希望と救いだ。
ラストシーンは、特に。
原作は、フィクションやねんけどね。

主演は、トム・ハーディ、ノオミ・ラパス。
ゲイリー・オールドマン も出ている。

ソ連の物語やのに、言語が英語というのは、
アメリカ、ロシア、ヨーロッパの方々は、
平気なんでしょかね。


★★★★☆





2015.8.9

日本のいちばん長い日

子供のころ、テレビで放映された映画
『日本のいちばん長い日』を観た覚えがある。
小学生だったか中学生だったか覚えがないが、
『大脱走』のような戦争モノが好きだった子供には、
難しくて面白くない映画だったことだけを
覚えている。
調べてみると、1967年の8月3日に公開された作品だ。

昨日は、そのリメイク版『日本のいちばん長い日』の
公開初日だった。
14:50 からの回を観ようと思ったが、
妻と2人で、品川プリンスシネマに着いたのが
ギリギリの 14:48。
空いている席は、なんと2席のみ!

初日だからか、夏休みの上、土曜日だからか、
終戦70年だからか、安保法案で日本が揺れているからか、
とにかく満席状態に驚いた。
例えば同じように戦争がらみの映画でも
『永遠のゼロ』や『男たちの大和』に比べると
こういう映画は、ちょっと地味な印象を
持っていたので、まさか満席だとは思わなかった。

でも、私の隣に座っていた若い男は、
始まって30分ほどで席を立って帰ってしもた。
多少、知識がないとなんの話か分からんやろし。
まあ、面白くはないからね。

映画は、今から70年前のちょうど今頃の話で、
タイトルにある「いちばん長い日」は、
8月14日から15日にかけての一日を指している。

戦争を終わらせたい天皇。
戦争を終わらせたい政治家、軍人。
戦争を終わらせたくない軍人。
戦争を続けるために命を懸ける軍人。
戦争を終わらせるために命を懸ける軍人。
死を覚悟した夫を何も言わずに見送る妻。
そんな人たちの実際にあった夏の出来事。

何か一つ狂っていたら、その後の日本は
どうなっていたか分からない究極の状況だ。
もし、終戦が数日遅れたら、ソ連が北海道に侵攻し、
日本はドイツのように分断されたかもしれない。
降伏を選ばず、本土決戦を選んでいたら、
日本は滅びていたかもしれない。

平和に暮らす、平成の世の私には、
想像もつかない。
現実は、この映画の何倍も凄まじいものが
あったのだろう。

戦争を終結させようとする者も、
本土決戦・2000万人特攻を謳う者も、
軍事クーデターを企てる陸軍将校も、
皆、同様に日本という国を思っている。
その国を思う者同士が、しまいには
殺し合うにまで 発展してしまう。
戦争は狂気だ。

監督は、『わが母の記』『クライマーズ・ハイ』などの
原田眞人。(1967年版の監督は、岡本喜八。)

主な出演者。( )内は1967年版。
阿南惟幾 陸軍大臣 : 役所広司 (三船敏郎)
昭和天皇: 本木雅弘 (松本幸四郎(八代目))
鈴木貫太郎 内閣総理大臣 : 山崎努 (笠智衆)
迫水久常 内閣書記官長 : 堤真一 (加藤武)
畑中健二 陸軍少佐 : 松坂桃李 (黒沢年男)
米内光政 海軍大臣 : 中村育二 (山村聰)

どの役も難しかっただろうが、
皆、素晴らしい。
1967年版も観てみようかな。


★★★★★





2015.8.11

この国の空

最近、私が注目の二階堂ふみ主演の
映画『この国の空』。
終戦の年、昭和20年の春頃から夏にかけての
若い娘と、隣に住む、妻と子供を疎開させた
中年男の物語。

とても叙情的・文学的な作品だった。
そして、昭和的とでも言おうか、
戦争中なのにどこか牧歌的で
のんびりした印象を拭えなかった。
とは言うものの、空襲はあるし、
本土決戦を迎えるかもしれないし、
人々はいつ死ぬかわからないという
緊迫した暮らしをしているんやけど。

「昭和的」と書いた理由のひとつに
二階堂ふみ演じる里子のセリフの言い回しが
あると思う。
まるで、昭和30年代の映画を観るかのような
セリフなのだ。
たぶん、それが当時のリアルなのだろうけど。

出演は、里子役の二階堂ふみの他、
妻子を疎開させ一人暮らししている隣人、
市毛に長谷川博己、里子の母に工藤夕貴、
叔母に富田靖子。

戦争映画ではないようで、戦争映画。
先日観た『日本のいちばん長い日』と
同じ時期の話で、映画は8月14日で終わる。
その日、市毛は新聞社の友人から、
日本は降伏するという情報を手に入れる。
その時点では、次の日が終戦だとは、
市毛も知らないのだけど。

陸軍将校たちが軍事クーデターを起こそうと
している一方で、戦争が終わることで、
愛する人のもとに疎開していた奥さんが
戻ってくることに不安と焦燥を感じる
若い娘がいる。
なんか、その振り幅の大きさに目眩を覚えつつ、
終戦70年の今年、『日本のいちばん長い日』と
セットで観たい作品です。
もちろん、こっちはフィクションなんやけど、
実際あったかも知れんからね、こういう話。

私は、映画鑑賞の前に、オフィシャルサイト
監督のコメントを読んで、とても興味が湧いたので
気になる人は、読んでください。

二階堂ふみは、本作も良いです。
工藤夕貴、富田靖子もええ味出してました。


★★★★☆





2015.8.16

きみはいい子

気になっていた映画『きみはいい子』を
観てきた。
公開からひと月半以上経っており、
もう都内でも新宿の角川シネマで、
1日に1回だけの上映になっていた。

出演は、小学校教諭役に高良健吾。
夫が単身赴任のため、子供(幼児)と2人暮らしで、
その子供にたびたび暴力を振るってしまう
母親役に尾野真千子。
そのママ友に池脇千鶴。
スーパーの店員で、障害を持つ子供の
母親役に富田靖子、など。

親による子供への虐待、クラス内のいじめ、
老人の認知症など、現代の様々な悩みや
問題を抱えた人々の物語。

今、私たちに必要なものは何か。
一方で人と人とのつながりが希薄だと言われ、
一方で数年前の震災後には「絆」という言葉が
飛び交っていた。
常々、「絆」ってなんだろうと思っていたが、
こういうことかも知れない、と観終えて思った。

「それ」を、本作では「愛」だなどと陳腐には
説いていない。
もっとリアルな、極めて個人的で
それでいて普遍的な「それ」の大切さ、
力、必要性を描いている。

ある母親が言う
「子供に優しくすると、この子がほかの子に
優しくするの。
それが広がっていくと世界平和につながる。
母親の仕事は、すごい仕事なの」
という旨のセリフは印象的だった。

「ラストが中途半端」という感想があることを
レビューで読んでいたので、
どんなラストだろうと思っていたが、
「そこで終わるか」と思わず膝を叩きたくなるほどの
秀逸なラストだと思った。

控えめなアコースティックな音楽も非常に効果的。

どちらかというと物語は淡々としているが、
それが一層リアルさを増しているようにも思う。
途中、子供たちが宿題の感想を言うシーンは、
まるでドキュメンタリーのよう。
なんでもないシーンに泣かされます。

『この国の空』でええ味を出していた富田靖子が、
本作でも地味ながら、ええ味を出してます。

原作(中脇初枝 著)も読んでみたい。
久々のおすすめ作。


★★★★★


きみはいい子 オフィシャルサイト





2015.8.22

ラブ&マーシー
終わらないメロディー


昨年は、フォー・シーズンズを描いた
『ジャージー・ボーイズ』、今年は、
ジミ・ヘンドリックスを描いた
『JIMI:栄光への軌跡』、
ジェームス・ブラウンを描いた
『ジェームス・ブラウン
〜 最高の魂(ソウル)を持つ男 〜』と
実在のミュージシャンを扱った映画が続いている。
音楽好きには嬉しいことだ。

今日は、ビーチボーイズの
ブライアン・ウィルソンを描いた映画、
『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
(原題:"LOVE & MERCY")を観てきた。

ビーチボーイズのことは、
特別ファンというわけではなく、
知っている曲も『サーフィン・U.S.A. 』
『グッド・ヴァイブレーション』『サーファー・ガール』
『カリフォルニア・ガールズ』『ファン・ファン・ファン』
などの超有名曲ぐらい。

ビーチボーイズは、1962年のデビューなので、
ビートルズと同じ年のデビュー。
映画の中でも、彼らがビートルズを意識していた
様子が描かれている。

本作、成功者にありがちな栄光と苦悩を
描いた作品かと思っていたら、ちょっと違っていた。
ブライアン・ウィルソンは、病気のため
一時期、第一線から遠のいていたのだが、
その時期(80年代)と60年代とを織り交ぜながら
描いた、音楽映画というよりは、
ヒューマン・ドラマだった。

病気のブライアンは、主治医のユージーンに
ひどい治療を受けていた。
それを救ったのが、後に妻となるメリンダだ。
人を救えるのは、結局、人なんやね。
ブライアンがメリンダと出会って、
本当に良かった。

ところどころ、本物の映像かと思うような、
リアルな作りも良い。

鑑賞後、オフィシャル・サイトの解説を読むと、
ブライアンがおかしくなっていく理由について、
「新作へのプレッシャー」とあるのだが、
映画の中では、そのへんがイマイチ感じられず、
まるで、もともとおかしかったかのように
感じてしまったのは残念。

いずれにしろ、ブライアンは20世紀が生んだ
天才ミュージシャンの一人であることに
間違いはない。

60年代のブライアンを演じるのは、ポール・ダノ。
『リトル・ミス・サンシャイン』
『それでも夜は明ける』『プリズナーズ』と、
私が観た彼の出演作での彼の演技は、
全て印象に残っている。
ポールは、バンドもやっているらしく、
本作でもその歌声を披露しており、
劇中のピアノも実際に弾いているのが分かる。

80年代のブライアンを演じるのは、
ジョン・キューザック。
残念ながら、ジョンは実際にピアノを
弾いているようには、見えなかったな。


★★★★▲


世界に Love and Mercy を。





2015.8.29

テッド 2

テッドというのは、命の宿ったテディベア
(ぬいぐるみ)の名前。
一昨年、公開された映画『テッド』は、
大人向けの下品なコメディで、
結構笑った覚えがある。
その続編『テッド2』が昨日公開されたので、
早速観てきた。

もう、どうしようもないほど
下品でバカバカしいコメディ。

本作では、そのぬいぐるみテッドが、
人間の女性と結婚するところから、
スタートする。
ぬいぐるみが生きているだけでも
十分シュールやのにどこまでいくねん。

セリフは前作同様、「F」の付く言葉の連発。
下ネタとドラッグネタの応酬。

テッドが、市民権を得るために裁判で戦う。
バカバカしさの中に社会的なメッセージも
見え隠れする。
最後には不覚にもちょっと感動してしもた。

テッドの相棒は、前作と同じく
マーク・ウォールバーグ演じるジョン。
モーガン・フリーマンがちょい役(凄腕弁護士)で出演。
リーアム・ニーソンにいたっては、
変わったスーパーの客でちらっと登場。

作っている人は、かなりのオタクだろう。
映画やアニメ、コミックのパロディが
いっぱいありそうで、詳しい人なら
もっと面白いやろな。

バカバカしいけど、私は好きやな。
そして、そのバカバカしさに★ひとつプラス。


★★★★★





2015.8.31

at Home アットホーム

竹野内豊・松雪泰子主演の映画
『at Home アットホーム』。
「at Home」といっても
不動産情報サイトとは何の関係もない。
(あれは「at home」と全部小文字。)

空き巣の父親と、結婚詐欺師の母親と、
子供3人のめちゃくちゃ仲良し家族の
現実にはありえない物語。
そう言う意味では、大人のファンタジーと
言えなくもないが、テーマは深いと観た。

DV、育児放棄、性的虐待など
現代社会の家庭内問題を描きつつ、
家族ってなんやろ、
血のつながりってなんやろ、
血がつながってなかったら、
家族にはなられへんのんやろか、
けど、夫婦はもともと他人やんか。
そんな色々を考えさせられる作品。

ネットでは、ストーリーにツッコミどころが
満載と、評価がやや低いが、私は、
現実的でないフィクションとして
観ていたので、気にならなかった。

制作に吉本興業がからんでいるためか
板尾創路、千原せいじ、村本大輔の
芸人3人が出演。

竹野内豊は、だんだん渋くなってきたな。


★★★★★





2015.9.13

赤坂大歌舞伎
Akasaka Grand Kabuki


2年半ぶりの歌舞伎。
今回も赤坂大歌舞伎だ。



2008年に十八代目中村勘三郎が
始めた「赤坂大歌舞伎」。
2013年に観たのが、中村勘三郎亡き後、
勘九郎、七之助兄弟を中心にした
『怪談乳房榎』だった。

今回は、2つの演目。
まずは、勘九郎が「三番叟(さんばんそう)」という
操り人形に扮し、ユーモアのある踊りを見せる
『操り三番叟』。
25分ほどの短い演目だったが、
操りの糸がもつれたり、切れたりする
細かい様子も演じられ、人形の動きは
ときにコミカルで、面白く、
後見との息の合い方も見事で、素晴らしかった。

休憩を挟んで、『お染の七役』。
これは、七之助が七役の早替りをするというのが見所。
イヤホンガイドを借りて観ていても、
ちょっと難しいほど、登場人物が多く、
人間関係が分かりにくい。
でも、確かに早替りは、まるでマジック。
七役を演じ分ける七之助にも感服。
勘九郎は、悪役で登場。
私は、勘九郎の方が好きなのだが、
こちらは勘九郎の出番が少なかったのが残念。



2つの演目、休憩合わせて、
約3時間15分。



【 演 目 】
一、操り三番叟 長唄囃子連中 
中村勘九郎(三番叟)、坂東新悟(千歳)
中村国生(後見)、坂東彌十郎(翁)

ニ、お染の七役 三幕七場
浄瑠璃「心中翌の噂」常磐津連中
四世鶴屋南北 作 渥美清太郎 改訂
於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)
中村七之助(油屋娘お染、丁稚久松、許嫁お光、
後家貞昌、奥女中竹川、芸者小糸、土手のお六)
中村勘九郎(鬼門の喜兵衛)、坂東新悟(油屋多三郎)
中村国生(船頭長吉)、中村鶴松(腰元お勝、女猿廻しお作)
片岡亀蔵(庵崎久作)、坂東彌十郎(山家屋清兵衛)









2015.9.14

ヴィンセントが教えてくれたこと
St. VINCENT


映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』。
アルコールとギャンブル好きの毒舌嫌われ者オヤジ、
ヴィンセントと、その隣家に越してきた少年、
オリバーの物語。

嫌われ者オヤジに、『恋はデジャ・ヴ』
『ゴーストバスターズ』のビル・マーレイ。
少年オリバーを演じるのは、
ジェイデン・リーベラー。
現在12歳というから、撮影時は10歳だろうか。
この映画の出演後、引っ張りだこだというのも
頷ける演技だ。
そのほか、ナオミ・ワッツが
一風変わった売春婦役で出演。

ヴィンセントは、本当にどうしようもない、
困ったおっさんなのだが、オリバーは、
ヴィンセントのことをそんな風に見てはいない。
表面的な言動にとらわれず、
その人の隠れた本質を観ているとでも言おうか。

子供のような大人と、大人のような子供の
絶妙なコンビネーション。
いや、ほんとにオリバーはオトナです。
私なんかより、よっぽどオトナです。

観終えて、くさいけど(人間ってええなぁ)と
思える、ハート・ウォーミングな作品。

北米で4館からスタートし、2500館に拡大したという。
ビル・マーレイ、めちゃくちゃ はまり役で文句なし。
でも、本作、ジャック・ニコルソンでも
観てみたいなぁ。

原題は、"St. Vincent" (聖人 ヴィンセント)。
嫌われ者のヴィンセントが、なぜ聖人なのかは、
映画を観てのお楽しみ。

先日観た邦画、竹野内豊・松雪泰子主演の
『at Home アットホーム』は、他人同士が集まった
擬似家族の物語でもあったが、本作でも
赤の他人がまるで家族のようになっていく様が
描かれている。
単なる偶然か。


★★★★★





2015.10.3

そこのみにて光輝く

タイトルが印象的だったせいか、
ずっと気になっていた映画『そこのみにて光輝く』を
配信レンタルで鑑賞した。(2014年公開作品)

監督は、呉 美保(お みぽ)。
よく目にする名前なので、彼女の作品は、
何作か観ているものと思い込んでいたら、
過去に観た作品は、今年観た
『きみはいい子』だけだった。

さて、『そこのみにて光輝く』。
北海道函館を舞台に、仕事で大きなトラウマを
追った者、前科者、お金のために体を売る者らの
生き様、愛を描いた作品。
けして、明るい楽しい物語ではなく、
見終わっても希望や救いがあるのかないのか、
良く分らない。
ただ間違いなくあるのは、主役の達夫(綾野剛)の
立ち直りというのか、再生と未来へ覚悟。
その覚悟は、達夫の愛と大きさの表れで、
それこそが、希望なのかも知れない。

最後にヒロインの千夏(池脇千鶴)がある行動を
するのだが、このタイミングで、
なんでそんなことするのかが、理解できなかった。
私の感性の不足か。

PCのモニターで観たので、
映画館で観たら、印象も違ったかも。


★★★▲☆





2015.10.4

徹☆座 公演
渡辺徹☆プロデュース お笑いライブ2015


先日、飲み会の時、友人が、
買っていたけど、行けなくなったという
チケットを取り出した。
見ると、お笑いライヴのチケットで、
大好きなナイツやサンドウィッチマンが
出演するではないか。
スケジュールをチェックすると、
ちょうど空いている。
ということで、その場でチケットを
買い取ったライヴが今日だった。

この公演は、お笑い好きの渡辺徹が、
大好きな芸人だけを集めてのライヴ。
6組の漫才コントのコンビが出演したが、
中々このラインナップで観られる機会は
ないだろうという面子で、全部面白かった。

あえて、苦言を呈するなら、
間に入る渡辺徹の「怖い話」は要らんな。
その分、もっと芸人のネタを聴きたい。
とはいうものの、休憩なしの195分。
十分笑わせてもらいました。
まさかの渡辺徹の『約束』も聴けました。

【 出演 】
渡辺徹
なすなかにし
ますだおかだ
TKO
ナイツ
サンドウィッチマン
中川家

@草月ホール







2015.10.14

12人の怒れる男

『十二人の怒れる男』(原題:12 Angry Men)は、
ヘンリー・フォンダ主演の1957年のアメリカ映画。
子供の頃、テレビで放映されたのを観た妻は、
大きな衝撃を受けたらしい。
私は結婚後、妻に聞いて初めて(レンタルで)観たのだが、
今だに彼女に影響を与えている映画だ。

物語は、父親殺しの少年の裁判で 陪審員12人のうち、
11人が「どう見ても有罪だろ」という中、
1人(ヘンリー・フォンダ)だけが
「そんなに簡単に決めてもいいのか」と
無罪を主張する。
評決は、12人全員一致でなければならない。
さあ、どうなる、この裁判。
という感じで、大変に面白いストーリーだ。

ヘンリー・フォンダ版を観た後、
その役をジャック・レモンが演じている、
リメイク版(『12人の怒れる男 評決の行方』)も
(レンタルで)観た。
1997年の作品で、先の映画から40年経って
作られたものだ。

57年版(白黒)の陪審員は、全員白人だが、
97年版(カラー)では、陪審員に黒人が混ざっていたり、
扇風機だったのが、クーラーに変わっていたりと
設定が微妙に違っていることが
興味深かった覚えがある。
その97年版も 映画だとばかり思っていたが、
アメリカのテレビ映画だったようだ。

数年前には、蜷川 (にながわ) 幸雄 演出、
中井貴一 主演 の舞台も観た。

昨日、2007年にロシアで原題『12』として、
リメイクされた『12人の怒れる男』を DVD を
借りて観てみた。

2時間ぐらいで終わるやろと思って、
23:30頃 観始めたのが、2時間経っても
一向に終わる気配なし。
結局、160分ほどの長い映画だった。

大筋は、アメリカ映画と同じなのだが、
容疑者の少年が、チェチェン紛争の孤児であるなど、
背景にロシアの社会問題が絡んでおり、
ただの法廷もの以上の重みがある作品となっている。

いかんせん、夜遅くに観はじめたために
幾分、冗長に感じたくだりもあるが、
ラストには、アメリカ映画には
なかったことが付け足されており、
これはこれで、見ごたえがある。

ご覧になったことのない方には、
まずは、1957年のヘンリー・フォンダ版をお薦めする。


★★★▲☆





2015.10.19

図書館戦争
THE LAST MISSION


一昨年の『図書館戦争』に続く、
岡田准一&榮倉奈々 主演の映画
『図書館戦争 THE LAST MISSION』。

メディアの検閲・規制を行う「メディア良化隊」と
読書の自由を守るための図書館の自衛組織「図書隊」の
戦いを描いた物語で、図書館の敷地内だけ
戦争行為が許されているという、
そこだけ見ると荒唐無稽なナンセンスにも
見える物語。
その荒唐無稽さから原作はコミックかと
思っていたら、小説だった。
映画は2作目に発展したぐらいだから、
前作もそこそこの成功だったんでしょう。

荒唐無稽、ナンセンスと言いながら、
前作に続き、観てしまいました。
前作同様、岡田くんはカッコイイ。
もう身長だけが、惜しいね。
誰と並んでも小さいねんもん。
榮倉奈々を見上げ、「でかっ」と言うあたり、
その身長も武器にしてます。

ストーリーは、なんでそんなことで
「殺しあわなあかんの?」という疑問は
最後まで払拭できないし、
「そんだけ弾当たったら死ぬやろ!」と
突っ込みどころはあるし、
こういう映画のお約束通り、
主人公に弾は当たりませんが、
アクションや戦闘シーンは、
結構見せてくれます。

タイトルに「THE LAST MISSION」と
あるので映画はこれで最後なのだろうか。
一応、ヒロインとヒーローは、
ハッピー・エンドで終わります。


★★★▲☆


(追記) 2015.10.20
「なんでそんなことで『殺しあわなあかんの?』と
いう疑問は最後まで払拭できない」と書いたが、
過去の歴史において、言論の自由を獲得するために
多くの血が流されてきたことは、周知のことだ。
言論の自由には、それだけの重みがある。
私が「疑問を払拭できない」と書いたのは、
そのことではない。

戦闘ではない他の解決があるように思え、
殺しあっていることに意味が見いだせないのだな。
その無意味感は、物語の一つの要素にも
なっているのだけど。

まあ、フィクションなので
マジで突っ込んでもしょうがないけどね。




ミッション:インポッシブル
ローグ・ネイション


トム・クルーズ主演の映画
『ミッション:インポッシブル
ローグ・ネイション』。

年とともに、この手の映画は、
観なくても良いようになってきてるねんけど
2006年の『M:i:III 』も、
2012年の『ミッション:インポッシブル/
ゴースト・プロトコル 』も劇場で鑑賞しているので
やっぱり本作も劇場で観ておこうかと思い立った。
もうそろそろ、上映終わりそうやし、
トム・クルーズ、私と同級生やし。
(関係ないか。)

さて、前作では、スタントマンなしで
トムが見せる高層ビルでのアクションが
売りやったけど、本作では、
飛んでいる飛行機にしがみつくシーンが
目玉のようだった。
そのシーンが、クライマックスかと思いきや、
始まってすぐそのシーンは訪れた。

もう、自分と同じ年とはとても思えない、
アクションの連続で、なんというか脱帽です。

ストーリーも退屈させない展開で、
アクションもたっぷりあり、
ハラハラドキドキもあり、娯楽映画、
スパイ映画としては言うことないでしょね。


★★★★☆





2015.10.23

探検隊の栄光


藤原竜也、ユースケ・サンタマリア、
小澤征悦らの出演する映画『探検隊の栄光』。

20世紀の終わりごろという設定だが、
80年代にあったテレビの探検隊番組を
モチーフにした喜劇。

秘境の地へ伝説の三つ首の大蛇「ヤーガ」を
求め探検しながら、テレビ番組を撮影するという
話なのだが、それが、行き当たりばったりの
バカバカしい番組作りなのだ。

当初、その適当さに戸惑う俳優・杉崎(藤原竜也)だが、
だんだんとバカバカしいことを本気で取り組む、
プロデューサー(ユースケ・サンタマリア)や
ディレクター(小澤征悦)に感化されていく。

面白いシーンもあったけど、
コメディとしてはちょっと物足りなかったな。

ななめ45°の岡安が、ええ味出してた。


★★★☆☆





2015.10.28

UFO学園の秘密

大川隆法 製作総指揮、
長編アニメーション映画
『UFO学園の秘密』。

大川氏の著書は、もう20年ぐらい前に
1冊読んだ覚えがあるが、それきりで、
この映画にも全く食指が動かなかったのだが、
前売り券をもらったので、観に行ってきた。

文化祭の自由研究に UFO や 宇宙人の存在を
テーマに選んだ高校生5人組が、
事件に巻き込まれていくというストーリー。

途中までは、人間の覚醒、霊的な進化・成長が
テーマかと思いきや、最後には、
神頼みで終わるという、私には残念な結末。

悪に勝ったのは、信心・信仰、
信じる力というのは、分からないではないが、
女子高生の「私、宗教頑張る!」という
セリフは、信仰を持たない一般人には、
不気味なのではないか。

壮大なテーマを扱っているようで、
どうも空回り感を否めない。
幸福の科学の信者でなくとも、
納得できる作品をぜひ作って欲しい。

タイトルに「Part 0」とあったけど、
続編が作られるのかな。


★★☆☆☆





2015.10.31

メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮

5月に観た映画『メイズ・ランナー』の続編。
あの時は、期待していたほど面白くなかったと
書いたけど、この続編は期待せずに観たせいか、
思っていたより、楽しめた。

途中、ゾンビ映画のようになった時は、
ちょっと(え〜っ!)って思ったけど、
突っ込みどころはありながらも、
ドキドキハラハラ感はそれなりにあり、
結構楽しめた。
3部作なので、続きがまだあるわけだが、
たぶん観てしまうと思います。

『メイズ・ランナー』とタイトルに付くけど
もう迷路は走りません。


★★★▲☆





2015.11.1

ボクは坊さん。

伊藤淳史主演の映画『ボクは坊さん。』。
フィクションかと思いきや、実在する栄福寺
(四国八十八ヶ所霊場第57番札所)の住職の物語。
原作は、住職・白川密成(しらかわみっせい)による
エッセイだった。

主人公は、高野山大学密教学科を卒業するが、
坊さんにはならずに地元の書店で働いていた。
祖父である先代住職が死に、急遽、
栄福寺の住職に就任する。

映画からは、不思議とあまり宗教色は感じられず、
むしろ哲学的なものを感じた。

「僕には何ができますか」
人にはできないことが多い。
できることをやるだけ。
そんな風に思わせてくれる映画だ。

出演は、主演の伊藤淳史の他、濱田岳、溝端淳平、
イッセー尾形、松田美由紀、品川徹など。


★★★★☆




マイ・インターン

「これは観なければ」と思っていた、
アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロ主演の
映画『マイ・インターン』。

インターネットのファッションサイトで、
大成功している会社が社会貢献のために、
シニア・インターンを雇う。
その女社長 ジュールズ(アン・ハサウェイ)の
部下になったのが、退職し、妻を亡くし、
生き甲斐をなくしていた70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)。

最初は、このベンをちょっとうっとうしく思う
ジュールズだが、やがて、なくてはならない
相棒のようになっていく。

このベンが渋い。
男なら誰もがこんなジジイになりたいと
憧れるような男だ。
余計なことは言わず、でしゃばらず、
ここぞという時に最高に適切なことを言う。
ハンカチは、女が泣いた時のために持ち歩く。
(私はもっぱら辛いもんを食べた時の
頭の汗を拭くためですが。)
女性ならずとも、誰だってこんな部下が欲しいよね。

この映画の素敵なところは、
悪人がいないこと、登場人物みんなが
一生懸命、真面目に生きていること。
そして、オシャレ。
アン・ハサウェイは可愛く、
ロバート・デ・ニーロはカッコ良すぎ。


★★★★★





2015.11.4

天空の蜂

東野圭吾 原作の映画『天空の蜂』。
予備知識なしに観たが、観終えてから
この原作が1995年に発表されていたと知ってビックリ。
てっきり、東日本大震災の原発事故の後に
書かれたものかと思っていた。

出演は、江口洋介、本木雅弘、綾野剛、
仲間由紀恵、柄本明、國村隼ら。
本木のハードボイルドな感じが良いねぇ。

結構、ドキドキハラハラするサスペンスで、
娯楽として楽しめると同時に
社会的なメッセージも十分に感じられる、
見応えのある作品だった。

人間関係の背景がイマイチよく分からなかったり、
多少、ツッコミたいところはあったけど、
長編小説を2時間ちょっとにまとめ上げるのだから、
全て描ききるのには無理があるだろう。

大型ヘリコプターが、
原子力発電所上空で静止している不気味さ、
時間が来たら、原発に墜落するという緊張感、
空中での人名救出のスリルは、
映画の中だけにとどめておきたい。
実際には起こりようのない話だと思うが、
万一こんなことが起こったら、
国はどんな対応をするのだろうか。


★★★★▲





2015.11.11

ギャラクシー街道

三谷幸喜 脚本・監督の映画『ギャラクシー街道』。
ネット、特に Yahoo! 映画 では、かなりの低評価。
(これほど ひどい評価をされるって、
どんない映画やろ?)と、興味が湧き、
面白くないのを承知で観てきた。

う〜む、確かにおもろない。
これ、一応、コメディなんでしょうが、
ほとんど笑えない。
きつい言い方をすると、学生が作った
文化祭で上映される映画のような質。
何を作りたかったんでしょうかね。
残念。

三谷幸喜作品は、
『ザ・マジックアワー』が一番面白かった。
次に『清須会議』。
『ステキな金縛り』もまあまあかな。
『THE 有頂天ホテル』はイマイチだった
ような記憶がある。
昨年の『大空港2013』は観ていない。
観た中では、本作が一番面白くない。

とはいうものの、ネットで書かれているほど、
ひどいとも思えなかった。
1ヶ所だけ本気で笑ってしまったところが
あったのは救い。

出演は、従来の三谷作品同様あい変わらず豪華。
香取慎吾、綾瀬はるか、小栗旬、優香、遠藤憲一、
西田敏行、大竹しのぶ、山本耕史、段田安則、
石丸幹二、梶原善、西川貴教 ら。
出演陣が豪華なだけに、なおさら残念。
そうそう、セリフはなかったけど、
佐藤浩市 まで出てきた。

最後の西川貴教の歌は、まじで良かった。


★★▲☆☆





2015.11.12

エール!

フランスで大ヒットした映画『エール!』。
心を掴まれた感は、間違いなく
今年観た映画(74本)の中で一番だ。
途中からほとんど泣きっぱなし。
かなり泣きました。
こんなの久しぶり。

舞台は、パリから少し離れた田舎町。
高校生のポーラは、高校に通いながら、
家業の農業を手伝っている。
両親と弟が聴覚に障害があり、
耳が聞こえるのは、家族でポーラだけだ。
なので、いろんな場面でポーラは、
家族の通訳(手話)をしなければならない。
高校で、コーラスの授業を選択したポーラに
歌の才能があることを教師が見抜き、
パリの音楽学校のオーディションを
受けるように勧める。
ポーラは、歌うことに目覚め夢を持つが、
耳の聞こえない両親に歌うことを理解してもらえない。

主役のポーラは、ルアンヌ・エメラ。
2013年、フランスの音楽オーディション番組で
準優勝を果たしデビューした。
本作が映画デビュー。
このルアンヌの歌が良い。
とても良い。
フランス語って、ええなぁと初めて思った。

「かなり泣いた」と書いたけど、
悲しいわけではないし、
めちゃくちゃ感動したわけでもない。
でも、泣けてくる映画です。
「青春映画」と書いている人もいるが、
私にはそれ以上だった。

原題は、"La Famille Belier" 。
「ベリエ家(の人々)」という意味のようだが、
まさに、家族の映画。
フランス人の家族への愛情表現と
性に対するオープンさが、日本人のそれとは
違いすぎて興味深い。


★★★★★!


来週、シャンソン(ZAZ:フランスの歌手)を
聴きに行くのだが、楽しみが増した。




先生と迷い猫

イッセー尾形主演の映画『先生と迷い猫』。
イッセー尾形は、妻に先立たれた、
元校長先生の役。

校長先生の家には、亡くなった妻が
可愛がっていたノラ猫が毎日やってくる。
ある日、その猫が突然やってこなくなる。
妻を思い出すのが辛くて、猫に
「二度と来るな!」と怒鳴りつけた校長だったが、
来なくなると、その猫のことが心配になり、
探し始める。
さて、猫は見つかるのか?

途中、安直なハッピーエンドが頭に浮かび、
そうなったら、最低やなと思ったけど、
幸い違うエンディングだった。

イッセー尾形は好きで、20年ぐらい前には、
彼の一人芝居のビデオをレンタルして何本か
観た覚えがある。
先日観た『ボクは坊さん。』にも出演しており、
ええ味を出していたので、本作も観たくなったのだが、
ちょっと、仕草がクサいというか、
芝居がかった動作が多く、気になった。
偏屈なじいさんを演じているので、
そうなってしまうのかもしれないが、
途中で、「そんな人おるか?」って
突っ込みたくなった。

全体的に何か物足りないのと、
ミステリー的な要素もありながら、
謎解きは ないのも気になった。

共演は、染谷将太、岸本加世子、
もたいまさこ、ほか。
猫や犬の演技は、素晴らしい。


★★★▲☆





2015.11.21

恋人たち

昨夜のエントリーにこう書いた。
「もし、自分の妻がテロリストに殺されたら、
私はどう思い、どう考え、どう生きるのだろう」

奇しくも、今日 観てきた映画『恋人たち』は、
通り魔に妻を刺し殺された男の物語だった。

彼は、妻が殺されたあと、仕事もできなくなり、
生きるのが難しくなってしまう。
物語は、妻の死から3年後を描いているが、
一向に傷は癒えず、犯人への憎しみは消えない。
「犯人を殺したい」
それが彼の望みだ。

映画『恋人たち』は、『ぐるりのこと。』の
橋口亮輔監督の 7年ぶりの長編映画。
『ぐるりのこと。』は、つつみしんや的
2008年の映画ベスト5に選んだ良い映画だった。

監督が全国各地で『恋人たち』の舞台挨拶をするための
費用を Motion Gallery で集めていたので、
ほんの気持ちだけ 応援したのだった。

Motion Gallery は、クリエィティブな活動を
するための資金を集めるサイトで、
知り合いのミュージシャンも、
アルバム制作費を集めたりしている。

その応援には、前売り券が付いていた。
先日、その前売り券が送られてきたので、
観に行こうと検索してみると、なんと東京で、
1つの劇場(テアトル新宿)でしか上映していない。
あれほど賞を取った『ぐるりのこと。』の
監督作なのに、上映館の少なさにちょっと驚いた。
なるほど、Motion Gallery で監督の交通費などを
集めないといけないほどの大人の事情が
あるわけだな。
なぜか、埼玉県では5劇場で上映されているけど。

東京1劇場だけのせいか、私が観た18:20からの回は
9割以上のほぼ満席だった。
ひとつ前の回は、立ち見が出ていたようだ。

映画は、前述の妻を通り魔に殺された男、
姑とソリが合わない平凡な妻、
親友への想いを秘める同性愛者の弁護士、
そんな3人の物語。
脇には、光石 研、木野 花、リリー・フランキー
などが出演しているが、要の3人は、
ほぼ無名で、有名俳優が演じる以上に
リアリティがある。
そんなシーン要るか?と思うほど、
(私には必要以上に)リアリティを
ぶち込んでくるという印象だった。

人生は、容赦がなく、不条理で、理不尽。
そして、思い通りになどならない。
それこそが、人生。
が、その中にも、救いはある。
辛くても、生きるしかない。


★★★★☆





2015.12.27

杉原千畝
スギハラチウネ


何かのテレビ番組で観たのだろうか、
「日本のシンドラー」と呼ばれる人がいて、
多くのユダヤ人を救ったという話は、
なんとなく聞き覚えがあったが、
その人の名前さえ知らなかった。

唐沢寿明がその人、杉原千畝(ちうね)を演じた映画、
『杉原千畝』を観てきた。

杉原は、第二次世界大戦中、6000人もの
ユダヤ難民にビザを発給しその命を救った人だ。

映画の宣伝には、「6000人救った」とあるが、
映画の中では、ヴィザ 2139枚と出てくるので、
(なんでやろ?)と思っていたら、
杉原千畝資料館というサイトには、こうあった。

後年、外務省外交史料館で発見されたヴィザの
発給リスト(通称:スギハラのリスト)に記された
ヴィザの数は2139枚。1枚のヴィザで同行している
子どもを含めた家族全員が救われた例も多かったことから、
千畝が「命のヴィザ」によって救ったユダヤ人の数は、
少なくとも6000人にのぼると言われている。



彼が歴史に名を残したのは、リトアニア領事時代に
日本政府に背いて、ユダヤ人にヴィザを
発給し続けたからだ。

「世界を変えたいと思っている」男が
命をかけて選んだ道は、国の政策に従うことではなく、
人の命を救うことだった。

杉原は戦後、外務省を追われている。
国に背いて勝手なことをしたと言えば
それはその通りだろう。
外務省は、戦後、杉原に会いに来たユダヤ人に
そんな人は記録にない、と応対している。

映画のエンドロールで、1985年、イスラエル政府から
「諸国民の中の正義の人賞(ヤド・バシェム賞)」を
受賞したことが、出てくる。
この称号は、自分の命の危険を冒してまで
ナチス・ドイツからユダヤ人を守った非ユダヤ人に
感謝と敬意を示す称号ということで、
日本人で受賞したのは、杉原ただ一人だ。

そして、杉原が救ったユダヤ人の子孫は、
今や世界中に4万人いると言われている。

そんな人のことをなぜ日本人の私は、
名前も知らなかったのだろう。

イスラエル政府からの受賞の翌 1986年、
杉原は、86歳でその生涯を閉じた。

しかし、日本国政府が、彼の功績を認め、
公式に名誉回復が行われたのは、
2000年のことなのだ。
彼の死後、14年も経ってからだ。

教科書に載っていてもおかしくない人なのに。

映画には、もう一人、杉原と同じように
ユダヤ人の命を救う日本人が描かれている。
国が「ユダヤ難民をこれ以上受け入れられない」と
言ってきた時に、「私が全責任を取る」と言って、
日本行の船に難民を載せる、
ウラジオストク総領事代理、根井三郎だ。

根井は、ハルビン学院(満州の学校)の
杉原の後輩。
この学校のモットー「自治三訣」は、
「人のお世話にならぬよう、
人のお世話をするよう、
そして報いを求めぬよう」というものであった。


映画は、素晴らしく杉原の功績を描いているが、
欲を言えば、彼の心中をもっと知りたかった。
と言っても、想像するしかないのだろうけど。


★★★★▲





2015.12.29

海難 1890

入場券を買うときに後ろに並んでいたカップルの
若い男が「うみなん」「うみなん」と
読んでいたのには、閉口したが、
「日本人が知らない、奇跡の実話」という
コピーの映画『海難1890』を観てきた。
内野聖陽、忽那汐里らの出演作だ。

これは1890年、和歌山県沖で沈没したトルコ軍艦
エルトゥールル号の乗組員たちを村人たちが献身的に救った実話と、
1985年、イラン・イラク戦争でイランに取り残された日本人の
救出にトルコ人が尽力した2つの実話を描いた、
日本・トルコの合作映画。

テーマは、「真心」。

先日観た『杉原千畝』に出てくる、
ハルビン学院のモットー、
「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、
そして報いを求めぬよう」にも通じる話だった。

なんというか、人間の良心満載の映画。
こういう心でいれば、世界は平和なのに、
こういう心は、どこの国の人にもあるのだろうに、
と思ってしまう映画だった。

一番グッとくるのは、トルコの航空会社の
パイロットにテヘランへ飛ぶ有志を募るシーン。
泣かされます。

ところで、1985年の事件の時、日本の
自衛隊機はすぐには飛べなくて間に合わなかった。
その後の法改正、あるいは今年、可決された安保法案では、
こんな時、すぐに自衛隊機が飛べるように
なったんでしょうかね。
「在外邦人救出」とか言ってたもんね。

エルトゥールル号の事故のことは、トルコでは
学校で習うのでほとんどの人が知っているらしい。
それで、1985年の救出につながったようだ。
日本人には、「良いことは人の見えないところでする」
ことが美学とされるような風潮があるので、
「エルトゥールル号乗組員救出」や「杉原千畝」は、
なかなか学校で習わないのかしらねぇ。

日本トルコ友好125周年ということで、
映画のエンドロール後には、トルコの
大統領の挨拶 VTR が流された。
安倍さんの挨拶はなかったけど。


★★★★☆




母と暮せば


山田洋次 監督の映画『母と暮せば』。
吉永小百合、二宮和也 主演。
そのほか、黒木華、浅野忠信らが出演。

一昨年の『東京家族』、昨年の『小さいおうち』と
続けて、山田監督作品は微妙だったので、
今回はと期待もあったが、「残念ながら」
と言わざるを得ない感想だ。

題材は良いのに、泣けるシーンもあるのに、
なんというかなぁ。
前作『小さいおうち』でも感じたけど、
説明臭いシーンが多くて、冗長に感じるのと、
あと、時代遅れな感じとでも言えばいいのかな。
『おとうと』の時は、その「昭和な印象」を
「安心して観られる」と書いたけど、
もうあかん、今におうてない。
完全にズレてしもとる感じ。

中には、目を塞ぎたくなるような、お粗末な
陳腐な演出もあって、「再現ビデオか」って
ツッコミたくなるほどだった。
エンディングは、どっかの宗教の紹介ビデオみたいやし。
今時、死んで雲の上歩いて行くって・・・。
これ、誰か周囲の人が反対すべきちゃうのって
思うほどだった。

山田監督84歳。
邦画ファンとして、辛辣に言わせてもらうけど、
もう今の時代の作品は、撮れないのかなぁ。
クリント・イーストウッド観てると、
年齢関係ないと思うねんけどなぁ。

そうそう、冒頭、8月 9日なのに
学生が長袖のシャツの上に長袖の詰襟の
学生服着て、授業受けてるねん。
昭和20年って、夏に半袖着たらあかんかったんかな?
うがった見方やけど、二宮和也(32歳)が
半袖シャツだともう学生には見えないので、
詰襟着せることで、なんとか学生らしく
見せようとした苦し紛れの演出かと思った。

山田監督、『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』
『武士の一分』あたりは良かったんやけどなぁ。
来年公開される『家族はつらいよ』は、
『東京家族』のメンバーが出演する
山田監督久々のコメディということなので
期待したい。


★★★☆☆






ひとりごと  ひとりごと