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落語 2024-25年
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2024.2.9

鈴本演芸場
2月上席 昼の部




先日、久しぶりに寄席に行ってきた。
初の鈴本演芸場。
上野と御徒町の間にある寄席だ。
退職する前、あこがれていた平日の昼の部。
なんとも言えない、まったりした時間の流れが良い。
客は、ほとんどが老人だ。

私は落語を聴き出して10数年、結構な数の落語会に
足を運んだが、寄席には数えるほどしか行っていない。

今回のお目当ては、一之輔と白酒だったんだけど
白酒は体調不良とかで欠場だったのは残念だった。
でも、改めて寄席の魅力を感じたね。
落語だけでなく色物の面白さ、芸の深さは
もちろんのこと、結構知っていると思っていた
落語でさえ、まだまだ知らない噺家がいるんだ。

今回、良いなと思った噺家は、
五明樓玉の輔(ごめいろう たまのすけ)。
この方、1966年生まれとあるから、ほぼほぼ
私と同年代なんだけど、初めて観ました。
春風亭小朝の弟子。
その日のトリで、演目は『明烏』だったんだけど、
ぜひ他の演目も聴いてみたいと思った。
そう思える噺家って意外に少ないんだ。
だから、ついつい好きになった噺家の落語会に
足を運び、寄席に行く機会が減ってしまうのだけど、
これからは、もっと寄席に行こうと思ったね。
3千円で1日楽しめれば、コスパ最高でしょう。


[ 出演 / 演目 ]
三遊亭歌ん太(前座) 「狸の札」
春風亭一花 「子ほめ」
ストレート松浦 (ジャグリング)
林家正蔵 「松山鏡」
春風亭一之輔 「真田小僧」
おしどり (音曲漫才)
柳亭燕路 「時そば」
林家正雀 「 ? 」
柳家小菊 (粋曲)
橘家圓太郎 「野ざらし」
アサダ二世 (奇術)
三遊亭歌武蔵 「 ? 」
古今亭菊丸 「祇園会」
林家二楽 (紙切り)
五明樓玉の輔 「明烏」

@鈴本演芸場





2024.3.4

落語協会百年興行


先月、鈴本演芸場に足を運び、
改めて寄席の良さを感じた。
1924年に発足した落語協会が、
今年で100年を迎えたその記念興行を
演っているので、再び鈴本演芸場に行ってきた。

百年興行といったって、内容はほとんど普段と同じ。
違うのは、毎日落語協会の幹部が交代で
口上を述べるのと、『百年目』を前後半に分け、
10日間日替わりで、トリの噺家二人が
リレーで口演するという企画。

『百年目』は、結構好きな演目。
硬いと評判の番頭さんが、隠れて
遊んでいるところをお店(たな)の旦那に
見つかってしまうというストーリー。
旦那の素晴らしさに、噺家によっては、
泣かされてしまうこともあるよ。

今日は、三三とさん遊のリレーで、
それぞれの個性が際立つのも見所だった。

他には、先月初めて観て「また観たい」と
書いた五明樓玉の輔も出演していたのが
嬉しかったね。
初めて聴いた噺で、演目名が分からない。
古典風なんだけど、もしかしたら新作だろうか。
あと、鈴々舎美馬。
最近二つ目になったらしいけど、
かわいらしい女性で現代的な新作。
若い女性ならではの噺。
今後も期待できる噺家だと思った。

とにかく今日は、みんな良かったね。
正蔵の落語「おすわどん」も口上も。
さん喬師匠の「締め込み」も。
寄席はいいね。


[ 出演 / 演目 ]
入船亭扇橋 「高砂や」
翁家社中 <太神楽曲芸>
五明樓玉の輔 「?」
三遊亭白鳥 「ナースコール」
鈴々舎美馬 「アカの他人」?
柳家小菊 <粋曲>
林家正蔵 「おすわどん」
柳家さん喬 「締め込み」
--- 仲入り ---
<口上> 林家正蔵
林家楽一 <紙切り>
柳家三三 「百年目」リレー(前半)
柳家さん遊 「百年目」リレー(後半)

@ 鈴本演芸場





2024.3.23

立川談春芸歴40周年記念興行
「立川談春独演会2024」




1月から10月まで毎月2回(合計20回)
開催される芸歴40周年記念興行。
40席の演目が発表されているという
ネタ出しの独演会だ。

今日は、昼夜二部あったけど夜の部を鑑賞。
休憩を挟んで150分、
談春を、たっぷり堪能したよ。
通常、前座が上がるところの
開口一番も自分で演じる談春の姿勢。
自分の弟子を高座に上がらせても良いのに、
おそらくは、自分の芸を観に来たお客様に
100%応えたいという芸人根性の表れだと
私は解釈している。

本日の演目は、お楽しみで 『たらちね』、
そしてネタ出しの『宿屋の仇』、『たちきれ』。
私的本日のハイライトは、最後の演目『たちきれ』。
何度も聴いているが、涙が出たのは
初めてではないかと思う。
その前の『宿屋の仇』も良かったけれど、
談春の良さは人情噺の方が
際立つのではないかと思う。
人情噺に入るのかどうかよく分からないけど、
以前独演会で聴いた『居残り佐平次』が
素晴らしかった覚えもある。

今日は、昼夜2回公演のあと、
深夜にNHKの生放送『今夜も生でさだまさし』に、
出演するそうな。
すごいね。
独演会のあとだからと、断ろうと思ったら、
さだまさしのスケジュールの方が大変で断れなかったとか。
芸人だな。


[ 演目 ]
「たらちね」
「宿屋の仇討」
--- 仲入り ---
「たちきり」

@ 有楽町朝日ホール


40席の演目






2024.4.12

文春落語
柳家喬太郎・柳家小ゑん二人会




一時は年に30本以上の落語会に足を運び、
CDを聴き、DVDを観て、と落語にずっぽり
ハマっていたのだが、この数年は落語会も
年に10回前後と、やや落ち着いていた。
2020年などは、コロナのせいで
観に行った落語会2回だった。
(まあ、この年は観客を入れて
ほとんど演っていなかったけどね。)
ところが、今年はまだ4月なのに来週も行く予定で
6回(うち2回は寄席)になる。
なんだか、落語熱が再度高まっている感がある。

今日は柳家喬太郎、柳家小ゑんの二人会。
柳家喬太郎は、好きな落語家ベスト10に入る。
誰が一番かというのは決めにくいけど、
10人選べと言われたら、必ず入るね。
古典も新作も両方OKで、自由な芸風が魅力。
柳家小ゑんは、一昨年、初めて寄席で観て
印象に残った噺家。
この人も新作を演る人なんだ。

さて、本日の感想。
少し前から喬太郎は、正座が出来ないようで、
見台を置いての口演になった。
座ったり立ったりが、辛そうだけど、
噺に入った途端にそんなことは忘れてしまう。

終演後 貼り出された演目を見ると、
喬太郎の一席目は「毒蛇小噺」となっていたが、
15分話したうち小噺は、1分か2分であとはマクラ。
今日は生配信もしていたようだが、そのことも
ネタに取り入れ相変わらずの爆笑を取っていた。

2席目は、小ゑんの「ぐつぐつ」。
居酒屋のおでんの鍋の中の具が話すという
超シュールなネタ。
ナンセンス過ぎて笑えない部分もあるのだが、
時々ツボにハマって爆笑してしまう。
この人の魅力はこれだな。

仲入りを挟んで、喬太郎の「やとわれ幽霊」。
初めて聴いた新作。
これまた、破天荒な爆笑噺なのだが、
最後にはしんみりさせられた。
上手いね。

そして、最後はおふたりのトーク。
オタク(マニア?)なふたりの
ディープなトークで、楽しめました。


[ 演目 ]
「毒蛇小噺」 柳家喬太郎
「ぐつぐつ」 柳家小ゑん
--- 仲入り ---
「やとわれ幽霊」 柳家喬太郎
<トーク> 小ゑん・喬太郎

@ 文藝春秋西館地下ホール





2024.4.20

五街道雲助一門会
〜 雲助祭り的な 〜




昨年、落語家の五街道雲助師匠(76)が、
重要無形文化財保持者に認定された。
人間国宝だ。
落語家の人間国宝は、柳家小さん、
桂米朝、柳家小三治に続いて4人目。
3人はすでに故人なので、現役落語家では
ただ一人となる。

雲助師匠を観るのは、今日が4回目だったが、
人間国宝になられてからは初めて。
まず、弟子3人とともにトーク。
ここだけ写真を撮ってOKだった。



雲助師匠等身大パネルとご本人。



もう人間国宝になって大分時が経つので、
お祝い的な会もそろそろ終わりのようだ。

弟子の桃月庵白酒と隅田川馬石は、
好きで良く聴く。
もう一人の弟子、蜃気楼龍玉も面白いが
兄弟子ふたりの個性が強いため、
やや目立たない印象。

龍玉の演目は「鹿政談」。
上方の古典落語で、過去に米團治の口演しか
聴いたことがなく、東京の噺家では初めて。
オチが「マメで帰ります」というのだが、
この「マメ」が調べると「身体が丈夫なこと」なんだけど、
ほとんどの人が「?」ではないかな。
こうやって、意味の分からないオチの意味を
知っていくのも落語の勉強ね。

続いて馬石の「締め付け」。
最近、寄席で柳家さん喬師匠のを聴いた。
正統派なさん喬師匠と、
いく分オーバーではち切れた馬石と
芸風の違いを観るのも落語の楽しみだ。

休憩を挟んで、白酒の「犬の災難」。
トリは、雲助師匠の「幾代餅」。
なぜか、この噺だけ睡魔に襲われて、
まともに聴けなかった。残念。


[ 演 目 ]
<トーク> 雲助・白酒・馬石・龍玉
「鹿政談」 蜃気楼龍玉
「締め込み」 隅田川馬石
--- 仲入り ---
「犬の災難」 桃月庵白酒
「幾代餅」 五街道雲助

@ 渋谷区文化総合センターさくらホール





2024.5.3

文藝春秋 講座 文春落語
喬太郎と大師匠五代目小さん




先日(4月12日)、文藝春秋社が
主催する「文春落語 柳家喬太郎・
柳家小ゑん二人会」を観に行った。
その時に知った今日の「文藝春秋 講座」、
喬太郎師匠が、大師匠五代目小さんについて
語るというのは、ぜひ聴いてみたいと思い、
行ってきた。
講師は、このふたり。
柳家喬太郎(落語家)
長井好弘(演芸評論家)

長井さんのことは、存じ上げなかったが、
演芸評論家ということで、この世界にかなり
通じていらっしゃる方と見た。

今日のテーマは、五代目小さん師匠。
小さん師匠の落語は、私はナマでは
聴いたことがなく、映像と音声でしか知らない。
永谷園のCMのおかげで、大阪出身の
私でも顔を知っている。
テレビの力は偉大だ。
落語ファンになって以来、落語家のことを
色々知っていくうちに、小さん師匠が、
1936年の226事件に決死部隊として
出動していた(本人は計画を知らされず、
訳が分からず出動したらしい)ことや
剣道家でもあったことなどは知っていたけど、
今日は、孫弟子である喬太郎の口から、
たくさんの思いで話を聴けた。

小さん師匠は、太平洋戦争でも
ベトナムに出陣していたんだな。
226事件や東南アジア(ベトナム)の戦線で
戦っていた人が、噺家として人間国宝に
選ばれるという、なんだかスゴイ世界なんだ。

もっとも、226事件の出動の直前にも
命令で隊員相手に落語をしたらしいし、
ベトナムでもご本人は「慰問に行っていた」と
語ったぐらい落語をしていたようで、
復員後すぐに高座に上がれたというから驚きだ。

今日は、喬太郎師匠の口から、
たっぷり大師匠小さんの思い出話と柳家愛に
溢れるエピソードを聴けたのでとても良かった。
ただ、現代の噺家なら、全員とは言わないが
大体分かるけれど、戦前、戦後の落語界と
なると、まだまだ勉強不足を感じる講座でもあった。

次から次へと喬太郎師匠の記憶がよみがえり、
時間は押しまくり、最後の落語は20分ほど
だっただろうか。
それでも、今日の会に相応しく『強情灸』で、
小さんへのリスペクトを表現するという、
喬太郎師匠の小さん愛でした。
予定時間を20分以上超過しての講座でした。

印象的だったのは、
会場からの質問で、弟子との関係に
答える喬太郎師匠。
その発言には、簡単には割り切れない
微妙な関係を強く強く感じたのでした。
最近、落語界の師匠と弟子の関係が
裁判にまでなったでしょ。
裁判の判決は、ある面では正しいけど、
ある面では正しくないのかも知れないと思う。
なんだか答えのない難しい問題なんだ。


[ プログラム ]
【第一部】
長井さんによる
「10分で学ぶ、歴代の小さん師匠」
【第二部】
喬太郎が見た、聞いた、感じた
大師匠五代目小さん
質疑応答
--- 休憩 ---
【落語】
「強情灸」 柳家喬太郎

@ 文藝春秋本社 西館地下ホール





2024.5.20

立川談春芸歴40周年記念興行
「立川談春独演会2024」




1月から10月まで毎月2回(合計20回)
開催される、談春の芸歴40周年記念興行。
1回につき2席、合計40席の演目が
発表されているネタ出しの独演会だ。
3月にも行ったのだけど、あまりに素晴らしかったので
昨日の公演(昼の部)のチケットも取ったんだ。

昨日は『百川』と『慶安太平記より
宇都ノ谷峠』がネタ出しで、お楽しみの
一席は『萬金丹』だった。

終演後、一旦幕が下り、拍手の中、
再び幕が開いたときの談春のトーク。
なんだか、自分の仕事に満足していないかのような
口ぶりで「もの足りないですか?
言いたいことがある人いますか?
言いたいことがある人は楽屋まで来てください」
というようなことを言っていた。
個人的には、全く満足な高座だったけど、
ご本人は何か思うところがあったのかな。

5月16日は、五代目柳家小さんの命日だったので
小さんの噺であった『萬金丹』を演ったようだったが、
あえて言うなら、『萬金丹』は渋すぎたかな。

『百川』は好きな演目のひとつ。
今まで数人の落語家の口演を聴いているが、
田舎を出てきたばかりの訛りの強い男、
百兵衛のキャラが演者によって少しずつ違う。
談春の百兵衛は、ちょっと控えめな感じの
天然キャラで、これが面白い。
そして、これまでは百兵衛にばかり注意が
行っていたのだけど、昨日の『百川』では、
魚河岸の若い衆のひとりの早合点も、
百兵衛同様、相当な天然キャラなのだと
気付かせてくれる口演だった。

ラストは初めて聴く『慶安太平記より
宇都ノ谷峠』。
歌舞伎や講談、小説にもなっている
『慶安太平記』の『宇都ノ谷峠』のくだり。
マクラで講談の「続きはまた明晩」という、
明日も聴きに来てもらうための終わり方の
説明をして、そして、終わりが「続きはまた来月」
という絶妙な終わり方。
ああ、続きを聴きたい。


[ 演目 ]
「萬金丹」
「百川」
--- 仲入り ---
「慶安太平記より 宇都ノ谷峠」

@ 有楽町朝日ホール




碁盤斬り



古典落語『柳田格之進』が映画化された。
映画のタイトルは『碁盤切り』。
落語の方は、ナマとCD、DVD合わせると
古今亭志ん朝、立川志の輔、
春風亭一之輔、春風亭小朝など
数人の落語家の口演を聴いたことがある。
それぐらいポピュラーな古典落語なんだ。
落語は、演者によって、ストーリーや登場人物の
キャラクターが、微妙に違っていて面白い。

映画の監督は、白石和彌(かずや)。
白石監督作品は、数本観ているが、
『凪待ち』と『凶悪』が、印象に残っている。
なんというか、生々しい演出・描写の
監督というイメージだ。
主人公・柳田を草なぎ剛が演じると知って、
私のイメージとはちょっと違ったので、
それを覆してくれると良いな、と期待しての
鑑賞となった。

以下、感想など(ネタバレ含む)。

落語の『柳田格之進』を映画にしたのだと
思っていたら、厳密に言うと違った。
『柳田格之進』を題材に脚本家の加藤正人さんが
膨らませたストーリーが『碁盤斬り』。

落語にはない背景やエピソードも盛り込まれている。
考えてみれば落語は30分程度なので、
2時間の映画にするには、短いのかもな。

落語には出てこない、格之進の妻の話が
出てきて、その妻の敵を取るという
サイドストーリー的なものが付け加えられている。

落語では、萬屋の主人・源兵衛は、最初から良い人として
描かれているが、映画では最初はイヤなオヤジとして
登場し、格之進の影響で善い人になっていく。

落語では、五十両を盗んだ嫌疑を格之進にかけるのは
番頭なのだが、映画では(番頭が言い出すのだけど)
源兵衛の遠縁の若者・弥吉が、嫌疑をかけた
本人として描かれる。

映画としては、まあまあ面白かったのだけれど、
私は最後のハッピーエンドがイヤだった。
格之進の娘・お絹と格之進を疑った弥吉とが
祝言をあげるんだ。
首を差し出す、とまで言うほど自分を疑った男と
娘の結婚を認めるのか。
お絹と弥吉は、前半好き合っていく様が
描かれているが、お絹だって、あんな風に父上を
疑った男と結婚したいと思うのだろうか。
弥吉に向かって「二度と私の前に現れないで」
とまで言ったではないか。

個人的には、あれはない方が良かったのにと思う。
もし、ふたりを一緒にさせるなら、嫌疑をかけたのは
番頭ひとりで、弥吉は格之進の無実を信じていた、
という風にして欲しかったな。

格之進は「清廉潔白」に生きてきた。
そのため、格之進に藩を追い出され、
浪人になり家族が路頭に迷った侍は少なくなかった。
五十両盗んだと疑われただけで、
腹を切ろうと思うほど、「清廉潔白」であることに
こだわって生きてきた男だ。
その「清廉潔白」野郎が、最後にちょっとした
悪事を働く。
悪事と言えるのかどうかも分からないのだけど、
いずれにしろ、殿への裏切りだろう。
それを同じ藩士の梶木左門が、見逃す。
格之進は、「清廉潔白」であることより、
大切なことに気付いたんだと思う。
そのことを教えてくれたのが仇であった、
柴田兵庫だったということが、
本作の隠れたテーマのようにも思う。

これは落語の『柳田格之進』とは違う話だね。
落語では「ならぬ堪忍するが堪忍。
柳田格之進の一席でした」
と終わる落語家が多いことからも、
格之進が、主人と奉公人の互いを想う心に負け、
ふたりを赦す(堪忍する)話だとわたしは解釈している。

格之進を演じた、草なぎ剛は迫真の演技でした。
所々、わざとらしいものの言い方が気になったけど。
お絹役の 清原果耶、清純な感じがよろしい。
弥吉役の 中川大志、まっすぐな感じが出てて良かった。
萬屋源兵衛役に、國村隼。
その他、市村正樹、斎藤工、小泉今日子、奥野瑛太など。



★★★★☆


2024年製作/129分/G/日本
劇場公開日:2024年5月17日





2024.6.12

桂ざこば 死去

芸能人や著名人の訃報を知った時の私の反応だが、
全く気にならずに「へぇ、そうか」という程度のときと
思わず「えっ!」と声を上げてしまうときがある。
今日の訃報は、後者だった。

桂ざこば。
享年76歳。
ぜん息だったらしく、昨年秋から、
入退院を繰り返していたようだ。

東京の落語家を聴く機会が多く、
上方の落語家を聴く機会は少ないのだけど、
それでも、ざこば師匠の高座は、生で6回観た。
最後に観たのは、2019年2月24日。
桂米團治の「還暦&噺家生活四十周年記念
独演会」での「上燗屋」だった。

子供の頃、私は大阪在住だったから、
テレビでも馴染みがあった。
その頃は「ざこば」ではなく「朝丸」だったけど。
「動物いじめ」は小学校で流行ったなぁ。
そうそう「ウィークエンダー」にも出ていたなぁ。

私のざこば師匠の印象は、
情に厚くて、涙もろくて、器用でないけど、
まっすぐで、ストレートで、一生懸命。
ちょっと危なっかしい。
そして、師匠の米朝このことが大好きだった。
うーん、まだまだ、落語聴きたかったなぁ。
残念です。

合掌。


昨年12月には「アホの坂田」の坂田利夫、
先月は(芸人ちゃうけど)キダタロー、
漫才師の今くるよ、と大阪の重鎮が
続けて亡くなっている。
なんだかさびしくなるなぁ。





2024.8.10

立川談春芸歴40周年記念興行
「立川談春独演会2024」




1月から10月まで毎月2回(合計20回
昼夜合わせて40公演)開催される、
談春の芸歴40周年記念興行。
1回につき2席、合計40席の演目が
発表されているネタ出しの独演会だ。
3月と5月に観に行ったのだけど、
あまりに素晴らしかったので
またまた観に行ってきたよ、3回目。

ネタ出しの演目以外にお楽しみとして、
1席演じられるのだが、今日は「たがや」。
聞いたことはあるけど、あんまり高座に上がらない
珍しい演目だ。
橋の上で、たがや(桶のたがを締める職人)と
侍との決闘(?)の話だが、結構な臨場感で
素晴らしかった。
マクラで、花火のときに観客が「たまや〜」と言う
由来も聞けた。
どういう意味だろうと、常々思いながらも
調べたことはなかったが、こういう話は興味深い。

2席目は、「蒟蒻問答」。
何度も聴いたことのあるネタだが、
通常は大体20〜30分じゃないだろうか。
今日は問答に至るまでの話しも十分にあって、
40分ぐらいあったと思う。
こんな「蒟蒻問答」は、初めてだった。
ここまでで2席終わって、1時間25分経過。

休憩を挟んで「死神」。
これも何人もの口演を聞いたけど、
今日のはスペシャルだったな。
どこまでが談志を受け継いだもので、
どこからが談春のアレンジなのか分からないけど、
これまた聞いたことのない「死神」だった。
いくつかのサゲを知っていたけど、全く知らない、
想像もつかないサゲだった。
70分もあったよ。
泣くような噺ではないのだけど、
あまりの素晴らしさに終わった時は、
ウルウルしてしまったほど。

3席に通じて言えることだけど、
談春の落語はとても丁寧に思う。
だからといって、他の噺家が雑だと
いうわけではないのだけどね。

昼の部は、3時間だったらしいが、
夜の部も終わってみれば、2時間55分。
途中、中だるみもなく、ホントにたっぷりと
聴かせて頂いたという感じ。
やる側も聴く側も結構な集中力だが、
当然やる側の方が大変だ。
毎回のことだけど、談春は自分の独演会に
弟子も出さないし、ゲストも呼ばない。
全部自分一人でやるんだ。
珍しく、途中で足が痛いと言って
立ち上がったシーンがあった。
昼の部と合わせて5〜6時間座って(正座)
いるわけだから足もおかしくなるかも知れないな。


[ 演目 ]
「たがや」
「蒟蒻問答」
--- 仲入り ---
「死神」

@ 有楽町朝日ホール
夜の部





2024.10.26

立川談春芸歴40周年記念興行
「立川談春独演会2024」




談春の芸歴40周年記念興行、
3月、5月、8月に続いて、4度目。
それだけ、良かったということだけど。
この興業(東京公演)は、1月から10月まで
毎月2回(合計20回、昼夜合わせて40公演)の
開催で、今日が最終日だった。

開演前、弟子の小春志のアナウンスが会場に流れる。
演目「人情八百屋」の予定が変わったというお詫びだった。
珍しいな。
何でだろう? と思った。
談春ご本人の話しっぷりでは、どうやら演目を
勘違いしていたかのようだったが、真相は分からない。
「『人情八百屋』聴きたいですか?
5分で演りましょうか?」と言って、本当に
5〜6分でまとめたのには驚いた。
登場人物の名前を覚えていなかったりしたので、
本当に準備していなかったのかも知れない。

代わりに「火事息子」。
始まって5分ほどで強烈な睡魔で気絶。
直前に夕食を食べたのがいけなかったかも知れない。
休憩中も爆睡。

二席目は、「居残り佐平次」。
これは、しっかり起きて聴きました。
2017年に初めて談春の独演会に行った。
その時の演目が「天災」と、この「居残り佐平次」だった。
それを聴いて、すっかり談春のファンになってしまったんだ。
7年ぶりだったわけだけど、「居残り佐平次」って
こんなに面白かったっけ? と思うほど
今回も素晴らしかったよ。(7年前と同じ感想)
いやぁ、やっぱりいいなぁ談春。好きだな。

そういえば、いつも三席なのに今日は
「お楽しみがありません」とアナウンスがあり、二席だった。
(「お楽しみ」というのは、ネタ出し〈演目を予め
発表している落語〉に対し、演目を発表していない落語。)
今日も足が痛そうだったし、
もう疲れ切っているのかも知れないな。
三席演ると3時間になってしまうしね。


[ 演目 ]
「火事息子」
--- 仲入り ---
「居残り佐平次」

@ 有楽町朝日ホール
夜の部

写真OKタイム






2024.11.6

なぜ
柳家さん喬は
柳家喬太郎の
師匠なのか?




柳家さん喬師匠と喬太郎師匠への
インタビューと対談をまとめた本。
私は、さん喬さんも喬太郎さんも
好きな噺家なのだが、この本のタイトルの通り、
ちょっと不思議な師弟でもある。

さん喬さんは、正統派の噺家という印象で
言葉もとても丁寧で美しい日本語を話される。
喬太郎さんは、古典も新作も演られるが、
高座でひっくり返ったり、歌を唄ったりと
とても自由に見える。
確かに、なぜこの師匠にこの弟子が、と
疑問に思うのも不思議でないのだ。
とはいうものの一之輔だって、一朝師匠と
全くタイプが違うので、そんなに珍しくは
ないのだろうけど。
それでも、さん喬・喬太郎という師弟は
何かが興味深い。

本書を読めば、私が感じてきた印象なんて、
おふたりのほんの一面であることが分かる。
当たり前と言えば当たり前だが。

さん喬さんの師匠としての葛藤や嫉妬のような
感情さえも包み隠さず話されていることに
共感を覚えた。
そして、何よりもさん喬さんの師匠五代目
小さんへの尊敬と想い、喬太郎さんの
師匠さん喬への想い、さん喬さんの
弟子たちへの想いに心を動かされる。
その背景にあるのは、落語という芸への
終わりなき修行の精神と愛であることはもちろん、
人間であることの崇高な部分だと思う。

以前、鶴瓶さんの松鶴師匠への想いにも
感じたことだけど、人生で絶対的な師匠を
持てることは、とても稀なことで、幸運なことだ。

さて、本のタイトル「なぜ 柳家さん喬は
柳家喬太郎の師匠なのか?」が
問いだとしたら、その答えは何だろう。
喬太郎が弟子入りしたからとか、
師匠が弟子として受け入れたからとか、
そういうことではなく。
弟子入りしたって、続かないこともある。
誰もが噺家として、成功するわけでもない。
弟子入りに至るエピソードも含め、
そんな風に考え行くと「必然」のような気がしてきた。
「これ以外ない」ってね。


★★★★☆





2024.11.22

桂雀々逝く

桂雀々さんが亡くなった。
64歳。
最初に読んだ記事は死因に触れていなかった。
師匠(枝雀)のこともあり、嫌な想像が働いた。
検索して3つ目の記事でようやく所属事務所の
発表で「糖尿病からの肝不全により」という
言葉を見つけた。
非常に複雑な思いだけど、病気であることに
安堵している自分がいた。
雀々さんの高座は何度も観ており、
彼の生い立ちを書いた『必死のパッチ』も読んだ。
子供の頃から苦労した人だが、
一生懸命に高座で演じる姿は、
まさに「必死のパッチ」そのものだったように思う。
最後に聴いた落語は、昨年6月4日、
「落語ドマーニ」での「夢八」になってしまった。
残念。

合掌。







ひとりごと