2025年 映画・演劇・舞台 etc
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2025.1.8
ミュージック
Music
ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀脚本賞)を
受賞した作品。
監督(脚本・編集も)は、アンゲラ・シャーネレク
というドイツの女優、映画監督、脚本家。
1962年生まれとあるから私と同じ年だ。
タイトルが「ミュージック」だし、予告編を観た上で
期待して観に行ったのだが、なんとも難しかった。
始まって、45分ぐらい経っても、
ストーリーが分からない。
登場人物の人間関係が分からない。
なにしろ、ほとんどセリフがない。
あまりにも説明をはしょり過ぎ。
ついに途中で20分か30分ぐらい寝落ちしてしまった。
目覚めてからも、相変わらずセリフは少なく
唐突に場面が変わり、繋がりも分からず、
何が言いたいのかも分からず。
ずっと推測し続けなければならない映画だった。
ちょっと違うけど、昨年観た
『悪は存在しない』を思い出した。
あの映画も高評価だったけど、
私には全く分からなかった。
本作もベルリンで銀熊賞を受賞している。
こんなに評価されている作品の良さが
分からないということは、もしかしたら、
私は現代の評価に全く 付いて行って
いないのかも知れないな。
まあ、途中20~30分も寝てしまったら、
正確な評価なんてできないけど。
もう一度 観直そうとは思わなかった。
★★▲☆☆
2023年製作/108分/ドイツ・フランス・セルビア合作
原題:Music
劇場公開日:2024年12月13日
2025.2.2
リンダ・ロンシュタット
サウンド・オブ・マイ・ヴォイス
Linda Ronstadt: The Sound of My Voice
2022年公開時、劇場で観たいと思いながらも
見逃してしまったリンダ・ロンシュタットの
ドキュメンタリー映画『リンダ・ロンシュタット
サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』を 観た。
高校生の頃、リンダの『It's So Easy』が
大好きでシングル盤のレコードを買った。
当時のお小遣いでは、LP は中々買えなかったんだ
この映画は、リンダの生い立ちに始まり、
LA に出てバンド(トリオ)でデビュー、
その後、ソロになってからの活躍から、
パーキンソン病になり、思うように声が
出なくなり、引退することまでが描かれている。
ご本人はもちろん 登場人物は、ジャクソン・ブラウン、
ライ・クーダー、ドン・ヘンリー、ボニー・レイット、
ドリー・バートン、エミリー・ハリス、J.D.サウザー、
カーラ・ボノフなど 超豪華。
そのほかにも演奏シーンや写真では、
グレン・フライ、ニール・ヤングも。
ドリー・バートン、エミリー・ハリスとのトリオの
ライヴ(TVショー)では、バックバンドに
デビット・リンドレーやリーランド・スカラーらしき
姿も見え、ウエスト・コースト・ミュージック
ファンにはたまらない内容となっている。
若い頃、イーグルスはリンダのバックバンドだったと
雑誌で読んだような気もするが、
ドン・ヘンリーご本人の口からそのことが
語られるのを聴けることは貴重だろう。
リンダが、ただのカントリーロックや
ロックンロールに収まらず、オペラまで
歌っていたのは知らなかったので驚いた。
1983年にジャズ・スタンダードを唄った
アルバム『What's New』を聴いた時には、
まだ若かった私は、退屈だと思った。
オペラの公演中に母親が亡くなり、
死に目に会えなかったリンダは、
母親が好きだったジャズを唄おうと思ったのが
あのアルバムのスタートだったんだな。
レコード会社の反対を押し切り、
ネルソン・リドルに直接、編曲を頼み、
実現させたんだ。
オペラ、ジャズの後1987年には、
父親から教わった曲を歌いたいと、
自身のルーツでもあるメキシカン・ミュージックの
アルバム『ソングス・オブ・マイ・ファーザー /
Canciones De Mi Padre』をリリース、
ツアーを行った。
これも当初はレコード会社の反対にあったようだが、
リンダは決めたら突き進む人だったんだ。
結果、アルバムは歴代1位のスペイン語の
アルバムになったという。
ミュージシャンのドキュメンタリー映画というと
酒やドラッグ、異性関係などの
ダークサイドも描かれることが多い。
もちろん、その人の生き方が音楽に現れるのは
間違いないけれど、『ホイットニー
オールウェイズ・ラヴ・ユー』のように
ダークサイドに焦点をあてた映画は
観ていてしんどいし、観たくない。
本作は、リンダの恋愛についても触れているが、
あくまでも彼女の音楽が中心で、好感が持てる。
引退した彼女の言葉が印象的だ。
「たくさんの夢を叶えられて私は幸運だった。
死んだあとのことはどうでもいいの。
大事なのは存命中よ。
何をするか。どう生きるか。」
リンダは、現在 75歳。
最後には2019年に撮影された、
いとこと甥とのハーモニーが聴ける。
ところで『It's So Easy』は、リンダのオリジナルだと
思っていたら、1958年のThe Crickets
(バディ・ホリーがいたグループ)がオリジナルだった。
作詞作曲は、バディ・ホリーとノーマン・ペティ。
あまり売れなかったみたいだ。
1977年のリンダのカヴァーは、
ビルボード・チャートの5位に入った。
リンダのヴァージョンの方が、ややテンポが遅く
重たい感じで好きだな。
★★★★▲
2019年製作/93分/アメリカ
原題:Linda Ronstadt: The Sound of My Voice
劇場公開日:2022年4月22日
Amazon Prime Video で鑑賞
2025.3.1
スケアクロウ
Scarecrow
俳優のジーン・ハックマンが亡くなった。
1930年生まれで、95歳だった。
ジーン・ハックマンの出ている映画は、
何本か観ているけれど、中学生の時に
テレビで観た『スケアクロウ(Scarecrow)』
(1973年)が、すぐに頭に浮かんだ。
と言っても、一緒に出ていたのが アル・パチーノ
だったことも覚えておらず、内容も全く覚えて
いなかったのだけど、なぜか観たことが
記憶に残っている作品だ。
おそらく、中学生の私に何か感じるものが
あったんだろうと思う。
で、40数年ぶりに観てみた。
ジーン・ハックマン演じるマックスと
アル・パチーノ演じるフランシスは、
ふたりともちょっとクセが強くて、ポンコツなところがある。
6年の刑を終えて出所したマックスと、
5年の船乗り生活を終えたフランシスが偶然出会い、
マックスは、一緒に事業をしようとフランシスを誘う。
マックスは、ピッツバーグの銀行にお金を
預けており、ふたりでピッツバーグを目指す。
途中でフランシスは、5年ぶりに
妻とまだ会ったことのない子供に会いに行くが......
アメリカン・ニューシネマと言われる作品の一つで、
いわゆるロードムービーだ。
マックスとフランシスは、途中、仲たがいもあるのだけど、
お互いを想う友情がどんどん深められていく。
もしかしたら、ティーンだった私はその友情物語に
憧れのようなものを抱いたのかも知れない。
アル・パチーノは、若い頃からいい男だ。
ジーン・ハックマンは、二枚目ではないけど、
良い味を出している。
ハリセンボンの春菜には、ぜひ
「ジーン・ハックマンじゃねえよ」というのも
レパートリーに加えて頂きたい。
★★★▲☆
1973年製作/112分/G/アメリカ
原題:Scarecrow
Amazon で鑑賞
2025.3.8
名もなき者
A COMPLETE UNKNOWN
1961年、無名だったボブ・ディランは、
ミネソタからニューヨークに出る。
そして、フォーク・シンガーとして
時代の寵児となる。
本作は、ディランがニューヨークに着いた
ところから始まる。
ディランは、入院中のウディ・ガスリーに会いに
行くが、偶然、そこにはウディの友人である
ピート・シーガーもいた。
その出会いをきっかけにディランは、売れていく。
映画は、1965年のニューポート・フォーク・
フェスティバルで、エレキギターを持ち観客の
大ブーイングを浴びるまでの物語。
ボブ・ディランを演じるのは、ティモシー・シャラメ。
5年かけて歌、ギター、ハープ(ハーモニカ)を
トレーニングしたという記述も読んだが、
アカデミー賞主演男優賞ノミネートも納得の演技。
ピート・シーガーを演じるのは、エドワード・ノートン。
確かにエドワード・ノートンなのだけど、
エンドロールのクレジットを読むまで気付けなかった。
すっかり歳を取ったんだな。
エドワード・ノートンというと、私には
『真実の行方』や『アメリカン・ヒストリーX』、
『25時』のイメージが強すぎる。
ジョーン・バエズ役には、モニカ・バルバロ、
ジョニー・キャッシュ役にボイド・ホルブルック、
ふたりとも雰囲気があって良かった。
ボブの恋人シルヴィ役にはエル・ファニング。
監督は、ジェームズ・マンゴールド。
『フォードvsフェラーリ』の監督だ。
時代が60年代前半ということで、
キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争、
公民権運動など、歴史的背景を知っている方が、
より理解が深まると思うが、さほど詳しくない
私のような浅い知識でも十分付いて行けた。
映画で描かれていることが全て事実だとは
思わないが、エレキギターを持って登場した
ディランに非難があったというのは有名な話。
フォークギター一本の弾き語りこそが
フォーク・ソングだと思われていて時代に
エレキギターを持ちこんだボブ。
今では、演奏形態ではもうジャンルを決められないし、
そんな聴衆も少ないだろう。
きっと、ディランがやったことは一種の革命で
その後のロックやポップ・ミュージックに
大きな影響を与えたのだろうと思う。
私のような特別、ディランのファンでない者でも
『Blowin' in The Wind(風に吹かれて)』は
もちろん知っているが、どちらかというと
ザ・バンドの『I Shall Be Released』、
エリック・クラプトンの『Knockin’ on Heaven’s Door』、
ダイアナ・クラールの『Wallflower』などのように
カバーで知った曲も多い。
140分はあっという間で、良かったのだけど、
ディランがエレキギターを持つに至る心境の
変化みたいな部分をもう少し丁寧に
描いて欲しかったと思う。
勝手なイメージを持たれ、期待に応えなきゃ
いけないことに嫌気がさしていたのは、
十分 分かったけどね。
そして映画を観て、ノーベル文学賞の授賞式に
欠席したことは改めて、さもありなんと思ったのでした。
IMAXで鑑賞(2500円)。
★★★★☆
2024年製作/140分/G/アメリカ
原題:A Complete Unknown
劇場公開日:2025年2月28日
2025.5.7
教皇選挙
CONCLAVE
奇しくも今日5月7日(日本時間)の夜から
実際に次のローマ教皇を決める選挙が始まったのだが、
その「教皇選挙」を題材にした映画を観てきた。
タイトルはそのものずばり『教皇選挙』。
アカデミー賞の8部門でノミネート、
「脚色賞」を受賞した作品だ。
映画の公開時期と、ローマ教皇の死が
重なったこともあってか、映画はヒットしており
今日も平日にも関わらず、13:45からの回が
ほぼ満席だった。
TOHO シネマズで観たので、TOHOウェンズデイ
(水曜日は1300円)ということも手伝ったかも
知れないが、実際に満席の回もあるらしい。
監督は、エドワード・ベルガー(ドイツ出身)。
「『西部戦線異状なし』の……」とあったので
さぞかし高齢の監督かと思ったら、1970年生まれと
いうから、まだ55歳だった。
『西部戦線異状なし』は、ずい分古い映画なので、
そう思ったのだけど、エドワード・ベルガーが
監督したのは 2022年で、この映画は、
1930年公開の映画、1979年放送の映画に次ぐ
三度目のリメイクだったようだ。
(一度目、二度目の監督はすでに他界している。)
さて、『教皇選挙』。
「制作に4年費やした」と監督は述べたらしいから、
まさかローマ教皇の死に合わせて作ったわけではあるまい。
私のようなローマ教皇やバチカンにさして興味のない人間には、
ローマ教皇の死去がなくても、十分に面白い映画だと思う。
映画は、ローマ教皇が死んだところから始まる。
教皇が亡くなると、次の教皇を選挙で決めるのだが、
その選挙のことを「コンクラーベ(CONCLAVE)」といい、
映画の原題にもなっているし、セリフにも出て来る。
このコンクラーベは、枢機卿(すうききょう)の投票に
よって決まるのだが、投票総数の3分の2以上を
得る人物が出るまで、投票が繰り返される。
映画では、108人の枢機卿による投票で、
何日にもわたって、何度も投票が繰り返され、
「コンクラーベ」って「根競べ(こんくらべ)」みたいと
思ったが、もちろん「根競べ」とは関係ない。
映画の公式サイトには、用語解説があり
語源も含めこう書かれている。
【教皇選挙/コンクラーベ】
「新教皇を選出する選挙。
名称の由来はラテン語のCUM(共に)
+CLAVIS(鍵)=「鍵と共に」で、「秘密の場所」を指す。
数日に渡る選挙期間中、枢機卿(投票者であり
候補者でもある)は隔離され、外部との接触や
電子機器の使用を禁じられる。」
(ちなみに、今日から始まったという、
現実のコンクラーベには、教皇庁の発表によると、
133人の枢機卿が参加、89票以上を得た人が
次の教皇に選ばれるらしい。)
ローマ教皇になるような人は、どんな人格者かと
思うのだが、映画で描かれている枢機卿達は、
ごくごく普通の「人間」。
ローマ教皇になりたい野心家は、票を金で買う。
他候補の足を引っ張る。
政治でも教会でも人間の考えることは同じだ。
「教会」と「信仰」は違うのだ。
主人公のローレンス枢機卿は、
選挙の管理人であり、自らも候補者で投票者。
自身は、教皇になりたいとは思っていないが、
誰がなっても良いとは思っていない。
数人の候補者をめぐって物語は進んでいくが、
途中まで先が読めない、エンターテイメント・
ミステリーに仕上がっている。
さて、誰が教皇に選ばれるのか。
面白い映画だったが、前半、人の名前が覚えられず
よく意味が分からなかった。
これから見ようと思う人は、公式サイトで
せめて登場人物の相関関係図を予習してから
見ることをお勧めする。
あと「枢機卿」。
これも漢字が読めなくて「〇▽◇きょう」と
ごまかしながら見ていたが、前述の通り
「すうききょう」と読む。
教皇に次ぐ高位聖職者のこと。
公式サイトには、期間限定OPENとして
「キーワード徹底解説」もある。
ネタバレなので「本編鑑賞後にご覧ください」と
なっているが、これは復習としてとても親切。
全く気付かなかったことも書かれており、
大変理解が深まります。
出演は、主人公のローレンス枢機卿に
『シンドラーのリスト』『イングリッシュ・ペイシェント』の
レイフ・ファインズ。
ベリーニ枢機卿に『プラダを着た悪魔』のスタンリー・トゥッチ
ジャン・レノかと思ったテデスコ枢機卿は、
イタリアのセルジョ・カステリットという俳優だった。
★★★★☆
2024年製作/120分/G/アメリカ・イギリス合作
劇場公開日:2025年3月20日