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落語 2020-21年
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2020.2.10

志の輔らくご
〜PARCO劇場こけら落とし〜




渋谷のPARCO劇場が建替えのために
休館したのは、2016年8月7日だというから、
3年半も前だったのだな。
時の流れの速さに、毎度のことながらびっくり。
そのPARCO劇場が新しくなり、
1月24日にこけら落としとして
「志の輔らくご」が始まった。
1月24日 〜 2月20日の全20公演。
PARCO劇場公演を毎年開催していた
志の輔師匠が選ばれたのは、
当然な事かもしれないが、
芝居のための劇場のこけら落としが
舞台に一人きりの落語というのも面白い。
と、思っていたら志の輔師匠は、
そのわけを、いきなり大勢の劇団が出ると
何が起こるか分からないから、
一番被害の少ない落語にしたんだろうと
冗談を言っていたけど、そういう面も
無きにしも非ずかもな。

何度公演カレンダーを見ると、
今日は14日目だと思うのだが、
志の輔師匠は、13日目と言っていたのが
気になるなぁ。

劇場の客席数は、458席から636席に
増えたので、劇場自体がひと回り
大きくなったということだろう。
客席がゆったりめで、後ろから3列目
だったけど、とても観易かった。
良い劇場だと思う。



オープニングは、「こけら落とし」には
付きものだというお祝いの舞を
師匠自らが踊られた。

そして、プログラムに「こけら落としの一席」と
書かれていたのは「ぞろぞろ」。
神様が登場する古典落語だ。
劇場の新しい神棚のマクラから、
流れるように入っていった。

「ぞろぞろ」が終わると、
一旦、暗転しビデオが流れる。
師匠の20年間のパルコ公演のハイライトが流れ、
高座に上がった51(52だったかな?)席が、
テロップで流れた。

そして、2席目は「メルシーひな祭り」。
これは、以前に「メルシー!おもてなし」
として、中井貴一の主演の舞台を
観たこともあるが、演劇向きな噺だ。

休憩を挟んで「おめでたい一席」として
「新・八五郎出世」。
私は、この噺は4回目だったが、
なんとパルコ劇場では一度も高座に
上げたことがなかったのだという。

終わってみると(休憩を入れて)
2時間45分ほど。
完全なる「志の輔ワールド」で、
もう落語を超えたと思うね。
素晴らしくてとっても満足です。


[ 演 目 ]
「ぞろぞろ」 立川志の輔
「メルシーひな祭り」 立川志の輔
〜 仲入り 〜
「新・八五郎出世」 立川志の輔

@ PARCO劇場


 





2020.2.29

桂文珍 芸歴50周年記念
国立劇場20日間独演会




桂文珍を初めて見たのは、子供の頃、
日曜の夕方にテレビ放映されていた
「ヤングおー!おー!」だった。
オール阪神・巨人や あのねのね も
「ヤングおー!おー!」で知った覚えがある。
(今と違って、テレビが大きな情報源だった。)
私がはまだ小学低学年だった。
文珍は、林家小染、桂きん枝、月亭八方と
4人で「ザ・パンダ」というグループとして
出演していた。

その文珍が、芸歴50周年である。
気が付けば、小学生だった私も今年58歳。
見た目は、ええ感じに衰えてきているが、
中身は58歳にはなっていない。
思うに19歳ぐらいで止まっているような気がする。
困ったものだ。

それはさておき、今日はその、
芸歴50周年記念の20日間独演会、
その2日目に行ってきた。
会場は、大きなお祝いにふさわしい、
国立劇場の大劇場だ。

しかし、このお祝いの会が、なんとも
微妙な時期に当たってしまった。
コロナウイルスのせいで、たくさんのイベントが
中止になっている。
国立劇場の主催公演も、
3月15日までの公演中止が発表されたが、
主催公演以外の公演は主催者の判断に
ゆだねられており、本公演は、
27日(初日前日)に
予定通り開催することが決まったようだ。

公式サイトには、
「新型コロナウイルス感染拡大の状況も踏まえ、
前期(2月28日〜3月8日)の公演につきましては、
残念ながらご来場が難しいお客様におかれましては
払い戻しの対応をさせていただきます」と
公演はするものの払い戻しにも応じるという
特別な対応に出たためか、やはり行かない選択を
する人も多かったようで、見た感じ、
客席は半分ぐらい空席となっていた。

冒頭、ネクタイ姿の上に白衣を着て
「ケーシー高峰です」と登場した文珍。
結構な空席で、心中複雑だろうなと思ったが、
文珍はこの状況を
「国からの要請で、混雑は避けるように
言われているので、ええ感じで
隙間があいて、願ったり叶ったり」と言っていた。
どんな状況になろうとも、笑いに替えるのがプロなのだ。
「今日この場に来た皆さんの勇気を讃えます」
そして「今日は皆さんに免疫力を上げて帰って頂く」と
普段にはない、目的の提示も。
「明日は『くしゃみ講釈』なのでどうなることやら」と
何もかもを楽しんでいるようにさえ見える。
これぞ「芸人」の姿だと思ったね。

開口一番は、米團治の弟子、米輝の「天災」。
「ある筋では師匠より上手いと言われている」という
文珍の紹介の通り、ええ感じだった。
2011年入門だから、東京で言えば
まだ二つ目だろうが、これからも楽しみな人。

続いて、文珍の「七度狐」。
上方の噺で、東京の噺家が演るのは聴いたことがない。
江戸の噺に比べて、上方の噺は、
この噺や「地獄八景亡者戯」「愛宕山」などのように、
観客の方に豊かな想像力を求められる噺が
多いように思うがどうだろう。
それだけ、展開が現実離れしているということだが。

この20日間公演は、日替わりのゲストがあるのだが、
今日のゲストは、桂南光。
演目は「火焔太鼓」。
これは、江戸の噺なので上方の噺家が演るのは
初めて聴いたように思う。
道具屋が仕入れた汚い太鼓が、
300両で売れるという物語だが、
江戸落語では、武士(お殿様)が気に入って
買ってくれることになるのに対し、
今日の噺では、商人(三井)が買うというのも
江戸と上方の違いを表わしていて興味深い。

休憩の後、文珍の登場かと思っていたら、
幕が開くと 内海英華(うつみえいか)の登場。
この20日間公演のお囃子、鳴り物を担当している
三味線のお姉さんで、裏方だけではなく、
ご自身も芸人としてステージに上がられる。
ご自身の芸を「女道楽」と紹介していたが、
「女道楽」ってなんか響きがスゴイ。
東京では、「三味線漫談」と
呼ばれることが多いように思う。
たまに聴くと、三味線も都々逸も良いなぁと思う。
勉強したいけど、やりたいことが多すぎて、
今生では無理だ。

最後は、文珍の「けんげしゃ茶屋」。
確か 米朝師匠のを CD で聴いたことはあったが、
これも珍しい演目だ。
ナマでは初めて聴いたが、上方らしい噺。
やはり東京の噺家が演るのは聴いたことがない。
今日は「上方らしさを」と言っていたので、
こういう演目になったのだろう。
ゲストも上方からだし。

今年で72歳になる文珍師匠。
まだまだ面白い噺を聴かせてもらいたい。


[ 演 目 ]
トーク 桂文珍
「天災」 桂米輝
「新版・七度狐」 桂文珍
「火焔太鼓」 桂南光
〜 仲入り 〜
女道楽 内海英華
「けんげしゃ茶屋」 桂文珍

@ 国立劇場大劇場





【20日間独演会の文珍の演目とゲスト】(予定)
日程 文珍 演目 ゲスト
2月28日(金) らくだ / 新版・豊竹屋 笑福亭鶴瓶
2月29日(土)  けんげしゃ茶屋 / 新版・七度狐 桂南光
3月1日(日) はてなの茶碗 / くっしゃみ講釈  林家木久扇
3月2日(月) 寝床 / 老楽風呂 柳家喬太郎
3月3日(火)   帯久 / お血脈 桂文枝
3月4日(水) 不動坊 / 憧れの養老院 林家正蔵
3月5日(木) 三十石夢之通路 / 天狗裁き 柳家花緑
3月6日(金) 庖丁間男 / 商社殺油地獄 立川志の輔
3月7日(土) 猫の忠信 / セレモニーホール旅立ち 春風亭小朝
3月8日(日) たちきれ線香 / ヘイ・マスター 三遊亭小遊三
3月15日(日) 地獄八景亡者戯 / 風呂敷間男 柳亭市馬
3月16日(月) 算段の平兵衛 / 稽古屋 立川談春
3月17日(火) 三枚起請 / 心中恋電脳 柳家三三
3月18日(水) 胴乱の幸助 / 星野屋 春風亭昇太
3月19日(木) 愛宕山 / 不思議の五圓 林家たい平
3月20日(金・祝) 饅頭こわい / そこつ長屋 桃月庵白酒
3月21日(土) 天神山 / 老婆の休日 柳家権太楼
3月22日(日)  船弁慶 / 新版・世帯念仏 神田松之丞
3月23日(月) へっつい幽霊 / 花見酒 春風亭一之輔
3月24日(火) 百年目 / スマホでイタコ 三遊亭円楽





2020.6.28

桂米朝
『昭和の名演 百噺』


上方落語界、初の人間国宝、
桂米朝が亡くなって5年が経った。

2006年に発売された米朝の CD 10枚組
ボックス 4セットの CD 40枚が、
今年、単体発売された。



CD 40枚に 1970年代の口演100演目を収めたもの。
40代の脂の乗り切った米朝が聴ける。

『其の一』から順番に聴き始めて、
3カ月ぐらいかかって、『其の三十三』まで来たよ。
40代ということで、声に張りがあるし、勢いがある。
米朝の素晴らしさを再確認したよ。
言葉がなく、客席から笑いが起こっている箇所は
表情やしぐさで笑わせているのだろう。
映像がないのは、残念だが、
想像力が膨らませながら聴くのも一興だ。

『けんげしゃ茶屋』なんて、米朝以外では
聴いたことがないし、『次の御用日』、
『算段の平兵衛』、『どうらんの幸助』、
『七度狐』、『阿彌陀池』、『京の茶漬』、
『池田の猪買い』あたりは、
上方落語でしか聴けないんやないやろか。

落語の中には、上方落語を江戸でも演るように
なったものや、その逆もあるが、それぞれの
地域の噺家しか演らない演目もある。
絶対ではないと思うけど、
上方では『芝浜』や『文七元結』は
(たぶん)演らないだろう。

『文七元結』は、娘を吉原に売った
大切な五十両を金に困って死のうとしている
見知らぬ若者にあげてしまう人情噺。
以前、鶴瓶(だったと思う)が、
知らん人にそんな大金をあげるなんて、
恥ずかしいと言っていた。
商人の町、大阪ではそんなん
ありえへんという意味だったのかな。

話を戻そう。
実は、噺家は年を取るほど良いと思っていた。
60、70歳を過ぎた方が 味わいが出てくると
どこかでインプットされたのだな。
しかし、40代の米朝の素晴らしさに触れて、
ちょっと考えが変わった。
そもそも、40代が良いとか60代が良いとか
比べるものでもなかろう。
それぞれに良さがあるのだ。

40代の噺家が勢いがあって良いというと、
東京では、春風亭一之輔、桃月庵白酒、
三遊亭兼好、隅田川馬石 あたり。
一之輔以外は、もう50代だけど
4人とも好き。





2020.7.1

落語で学ぶ古い日本語 2

以前にも「落語で学ぶ古い日本語」という
エントリーを書いた。

「悋気 (りんき)」 は、嫉妬・やきもち、
「へっつい」は、かまど、
「胴乱(どうらん)」「紙入れ」は、財布など、
落語で知った古い日本語は多い。

桂米朝『昭和の名演 百噺』を聴いていることは、
一昨日に書いたが、どちらかというと、
江戸落語より上方落語の方が、
意味の分からない言葉が出てくるような気がする。

例えば『胴乱の幸助』に登場する、
幸助という人は、
「わりきやの親っさん」と呼ばれる。
この「わりきや」の意味が分からない。
もう何年も前から知っている落語だが、
「わりきや」の意味が分からなくても
落語は通じるので、聴いたときには
調べようと思うのだが、いつも忘れてしまい、
そのままになっていた。

ようやく調べてみると、
「わりきや」は「割木屋」と書く。
漢字を見ればなんとなく想像がつくが、
「割木」は、割った木、つまり「薪(まき)」のことで
「割木屋」は「薪を売っている店」のこと。
今では、すっかりなくなったので知らなくても
仕方がないかもしれない。

『牛の丸薬(がんやく)』という落語には
「ほしか」という言葉が登場する。
聴いていると、臭いものだと分かるが、
何か分からない。
知らべてみると、「ほしか」は「干鰯」と書く。
イワシを乾燥させた肥料のことだ。
そら、臭うわな。

また、上方落語には、
「あの人は "すい" なお人や」なんて言葉が出てくる。
江戸では、「粋(いき)」というが、
上方では、「粋(すい)」という。
(上方落語では「いき」も出てくるけど。)

同じ意味のようだが、
江戸の粋(いき)と上方の粋(すい)は
全然違うという記事を読んだ。
これは、興味深い。

江戸の粋(イキ)と上方の粋(スイ)





2021.2.23

関内寄席
一之輔 わさび 小痴楽 三人会




昨年の2月以来、一年ぶりの落語会。
関内ホールの客席は、1000席以上あるのだけど
新型コロナ感染予防のため、一席ずつ開けての
販売なので、実際は500人ほどの入りだ。
主催者や出演者には、厳しい状況が
続いている。

両隣に人が座っていないと
とてもゆったりした気分で、観られる。
これに慣れると、全席に座るようになると
新たなストレスが生まれそうだ。

さて、1年ぶりに落語を聴いて
笑おうと思ったのに、前座が始まって間もなく
強烈な睡魔がやってきた。
午前中に用事があって、早起きしたため
睡眠不足ということもあるだろうが 参った。

結局、7〜8割は起きていられなかった。
トリの一之輔はなんとかと思ったけど、
それも途中で意識不明に・・・。

最近、こういうの増えてきたけど、
加齢と関係あるのかね。

さて、少ししか聴いてないけど落語。
小痴楽は、落語にハマって間もなく、
2014年に知った噺家の一人で、
当時はまだ二つ目だったけど、印象に残った。
今では、真打に昇進し、一之輔と
並んで会をできるほどになったんやな。
久しぶりに観たけど、ええ感じだった。

わさびについては、ほとんど聴けていない。

一之輔の高座は、1年数カ月ぶりだったのだけど、
ずい分と落ち付いてきた感じ受けた。

次回は、睡眠を十分にとって臨みたい。


[ 演 目 ]
「元犬」 春風亭与いち(前座)
「五目講釈」 柳家わさび
〜 仲入り 〜
「蔵前駕籠」 柳亭小痴楽
「味噌蔵」 春風亭一之輔

@ 関内ホール大ホール





2021.4.18

よってたかって春らくご ’21 昼の部




昨日は、久しぶりの「よってたかって」の落語会。
実は、今月12日も落語会のチケットを取っていた。

この2〜3年は回数が減ったものの7〜8年前に
落語にハマって以来、160回以上の落語会に足を
運んだのに、なんと人間国宝、柳家小三治師匠の
高座を一度も生で体験したことがない。
一度は、見ておかないと思いながら、
中々機会がなかったのだ。
寄席に行けば良いのだろうけど、
できれば落語会でたっぷり聴きたい。
で、チケットを取っていた12日の落語会は、
小三治師匠の独演会だった。

数週間前、その落語会の中止を知らせるメールが届いた。
コロナの感染が増え出していたので、
感染防止のためかと思ったら、そうでなく、
小三治さんの体調不良による入院のための中止だった。
中止のメールを受け取った時は、とても残念に思ったが、
いずれにしてもその日は、父の葬儀になったので、
行けなかった。
小三治さんは、今月12日には退院されたとの
報道を観たので一安心。

さて、昨日の落語会。
東京は、まん延防止等重点措置の最中、
会場のよみうりホールは客席を1席ずつ開けて、
観客は全員マスク着用、
もぎりの人はチケットを見るだけで、
半券は観客が自分でちぎって回収箱に入れる。
会場のあちこちには、アルコール消毒液が設置されている。
終演後は、規制退場、と感染予防対策も万全だ。

出演者の誰だったかが、これでオリンピックの中止が
決まったら、興行も出来なくなると言っていた。
こんな風でもまだ開催できていることは、
出演者にとっても、主催者にとっても、
観客にとっても、ありがたく嬉しいことだ。

出演は、前座の泥棒噺(演目不明)のあと、
三遊亭萬橘、柳家喬太郎、桃月庵白酒、
三遊亭白鳥と続く。
皆、良かったけど、一番面白かったのは、喬太郎だな。
いつものことながら、長い長いマクラで爆笑です。

コロナ禍の不自由や苦労さえも笑いに変える噺家。
芸人はやっぱりそうであって欲しい。
笑いは免疫力を高めるというし、
深刻になっても何一つ良いことないもんね。


[ 演 目 ]
「 ? 」 前座
「長屋の花見」三遊亭萬橘
「親子酒」 柳家喬太郎
〜 仲入り 〜
「新版 三十石」 桃月庵白酒
「落語の仮面 第2話 嵐の初天神」 三遊亭白鳥

@有楽町よみうりホール
昼の部





2021.6.5

桂宮治 真打披露公演



緊急事態宣言中の真打披露公演。
4月に観た同じよみうりホールの落語会は、
客席を一席ずつ空けて、つまり客数を半分に
減らしての開催だったが、今日は通常時通りに
お客さんを入れての開演。
2階の後数列に空席が見えたけど、
全体としては、9割り以上の入りという印象。
久しぶりに隣の席に他人が座っているという
状態を体験した。
主催者もおそらく、6月まで緊急事態宣言が
延びるとは考えていなかったのだろう。
チケットは販売済みなので、
今さらお客さんを減らすわけにはいかない。
やるか中止かしか選択がないとしたら、
今なら感染対策をした上でやるだろうな。
ちなみに昨日、一昨日に行ったブルーノートは
開演時間を繰り上げ、客席はおそらく平常時の
50%ぐらいに減らし、入場時の検温、除菌、
観客・スタッフのマスク着用はもちろんのこと、
アルコールの提供はなしという対策だった。

さて、桂宮治 真打披露公演。
多くの落語会を観てきたけど、真打披露公演は特別だ。
普段聴けない話も聴けるし、ゲストも豪華だし、
感動も笑いもある。

桂宮治を始めて観たのは、2014年9月の
にっかん飛切落語会。
演目は、「妾馬」だった。
その日のエントリーに、同日に出演していた
(当時二つ目だった)柳亭小痴楽と宮治のことを
「真打に近いと感じた」と書いている。
小痴楽は、2019年に真打に昇進。
宮治は、今年真打に昇進した。
私は素人だから、「近い」と書いても、
個人的な感想でしかないのだが、それでも
二人ともあれから5年以上かかっての昇進だ。
それだけ甘くはない世界なのだと思う。

その初めて観た高座で宮治を気に入った私は、
翌2015年7月に彼の独演会を観に行った。
2015.7.31
その日のエントリーは、客席からの
「戸越銀座〜!」という掛け声のことは
書いているが、落語については触れていない。
それから今日まで宮治を観に行かなかったのには
わけがある。

その独演会での印象が、私の好みに合わなかったのだ。
ちょっとテンションが高くて、頑張ってます感が
強いというのか、聴いていてしんどい部分があった。
春風亭昇太や三遊亭兼好なども
テンションが高いのだけど、彼らはテンションが高いけど
落ち付いているので、聴いていてしんどくないのだな。
個人の好みの問題だけど。

で、この度、いよいよ真打に昇進するとあって、
あれから6年、どんな真打になったのかと
興味を持ったのと、ゲストが笑福亭鶴瓶に
立川談春とあって観に行くことにしたのだ。
真打披露公演は間違いなく面白いしね。

宮治の師匠は、桂伸治ということも今日まで
知らなかったのだけど、伸治師匠の高座も
初めて観た。
この伸治師匠がかなり ぶっ飛んだ人で、
鶴瓶師匠や談春師匠があきれ返るほどの自由人。
その自由度爆発の口上で、感動して涙する
宮治、というシュールな真打披露口上だった。

鶴瓶師匠は、ちょっとのどの調子が良くない
ように聞こえたけど、大丈夫だろうか。
演目は、松鶴師匠をネタにした「癇癪」。
談春師匠は、「鮫講釈」。

鶴瓶師匠も、談春師匠も、強烈な師匠に
育てられた噺家で、今日は「師弟」ということにも
スポットが当たった公演であった。

宮治は、6年前の印象からすると
ずい分と落ち着いてきた感じで、聴きやすかった。
演目は、新作人情噺「パイナップル」。
ちょっと冗長に感じたのはもったいない。


[ 演 目 ]
「大安売り」 桂鷹治
「ちりとてちん」 桂伸治
「癇癪 (かんしゃく)」 笑福亭鶴瓶
〜 仲入り 〜
「鮫講釈」 立川談春
「パイナップル」 桂宮治

@ よみうりホール(有楽町)


撮影OKだった口上






2021.9.14

桂宗助改メ 二代目桂八十八
襲名披露公演




三代目桂米朝の弟子、桂宗助(そうすけ)改め
二代目桂八十八 襲名披露公演。

桂宗助のことは、2015年の「桂米朝追善落語会」で
一度観ているのだけど、記憶に残っていなかった。
でも、「襲名披露公演」のような特別興行に
ハズレはないというのが私の持論。
豪華なゲストが大勢登場し、他では聴けない話が
聴けるのも、襲名披露公演ならではだ。

今日の公演を観て初めて知ったのだが、
宗助は、米朝師匠の最後の内弟子でありながら、
名前に「米」や「朝」が付いていない。
弟子の皆に「米」や「朝」が付いているというのに。
(枝雀やざこばだって、その襲名前は「小米」、
「朝丸」と「米」や「朝」が付いていたのだ。)

宗助という名は、米朝師匠が酔っぱらって、
『二番煎じ』の登場人物の名前を付けたのだという。
(『二番煎じ』は落語の演目。)

そして、この度、宗助が襲名した、
「八十八」は、米朝師匠の俳号であった。
俳号を芸名として襲名するのは、
歌舞伎界では珍しくなく、
上方落語界でも時々あるようだ。

「米」や「朝」が付いていない、と書いたが、
「八十八」は、米朝の俳号であり、
「米」をバラした名前である。
米朝の別名を襲名できることは、
この上なく、光栄なことであろう。

さて、公演はというと、
期待通りの盛沢山な内容で大満足。

口上に登場したのは、桂八十八はもちろん、
柳家小三治、桂南光、桂千朝、桂米團治、
桂ざこば、と超豪華。
全員の落語はなかったけれど、
毎度、こういう会の口上は面白い。

八十八の演目は「はてなの茶碗」。
始まった時に、「はてなの茶碗」では
ちょっと軽いんちゃうの?と思ったのだけど、
終わってみればそんなことはなく、
襲名披露公演にふさわしい口演で、
感動さえ覚えました。

そして、今日はなんとライヴでは「初」となる
小三治師匠の落語を聴くことができた。
2013年に落語会に行きだして、
この9年間で、700席近くの
落語を聴いてきたのだけど、どういうわけか
小三治師匠の落語を逃してきた。
昨年、今年は、チケットを取るも2度とも
公演が中止になったという経緯もあった。

小三治師匠は、米朝師匠が所属していた
「東京やなぎ句会」の同人で、その俳句会の
お話しは、小三治師匠のCDで聴いたことがある。
そんな関係もあり、今日のゲストになられたのだと
思うが、小三治師匠、期待以上に凄かった。

口上の時、南光が小三治師匠とツーショットの
写真を撮って欲しいと言っていたが、
プロでさえもそんな風に思われる人なんだ。

今年の誕生日(12月)で、82歳。
座布団ではなく椅子に座っての口演だった。
椅子の前に布をかけた大きな箱が置いてあり、
ぱっと見、積み上げた高い高座に正座している
ように見えた。
動きが硬く、明らかに身体が自由に動かない
ように見て取れる。
どこかが痛いのかも知れない。
しかし、話し出したら、凄かった。
ただ観ているだけで泣けてきた。
その存在が凄くて、泣けてきたのは、
三代目 三遊亭圓歌師匠(2017年没)以来。
奇しくも圓歌師匠を観た(最初で最後)のは、
2015年8月30日の「桂米朝 追善落語会」。
そう、今日の主役の 桂宗助 を初めて
観た日でもあったのだ。
なんだか、この繋がりに不思議なものを感じたのでした。

小三治師匠、泣けてきたのは話の内容では
なかったのだけど、やられてしまった話もあった。
コロナで仕事がなくなり、家で稽古すればいいのだけど、
稽古をする気にならないという師匠。
「若い頃は、失敗が怖かったけど、今は
失敗は怖くないです。
だって、人生が失敗ですもの。
皆さん、そんなことないですか?」
この境地は、凄いと思った。
そして、「道灌」(という落語の演目)を
やろうとして、全く覚えてない、と言いながら、
本当に覚えていないようで、それでいて、
たっぷり魅了し、笑いを取る師匠に、
本物を観たのでした。
なるほど、これが人間国宝なのだ。


[ 演 目 ]
「   」 桂米輝
「   」 桂米左
「あくび指南」 桂南光
「道灌」? 柳家小三治
〜 中 入 〜
口上 (桂八十八、柳家小三治、
桂南光、桂千朝、桂米團治、桂ざこば)
「三味線浮世節」 立花家橘之助
「はてなの茶碗」 桂八十八

@ 紀伊國屋ホール





2021.10.10

小三治師匠 逝去

私は、凝り性なところがあって、
2013年に落語にハマってから、
5年間で130回以上の落語会に足を運んだ。
それからは、少しペースが落ちたのだが、
それでもコロナになるまでは、年に10回以上は
落語会に行っていた。

それほど落語を聴きに行ってきたにも関わらず、
人間国宝 柳家小三治師匠の落語を
先月まで聴いたことがなかった。
CD では、何席も聴いたけど、
ナマで高座を観たことがなかったのだ。
(CD も意外に少ない。)

ひとつには小三治師匠の出演が主に寄席で、
落語会への出演が少なかったこと。
(これは、高齢になられていたこととも
関係あるかも知れない。)
私は、ひとりの持ち時間の短い寄席より
たっぷり聴ける落語会の方が好きなので
寄席には、一度しか行ったことがない。
たまには、行こうと思うのだけど。
それと、私がよく観る噺家の落語会に
小三治師匠が出ていないということもある。

昨年は、小三治師匠出演の落語会のチケットを
2回取ったのだけど、コロナのせいで 2度とも
公演がキャンセルになった。

それで、先月(9月14日)、
「桂宗助改メ 二代目桂八十八襲名披露公演」の
ゲストで出演された小三治師匠を
ようやくナマで観ることが出来たのだった。

今年は、3月に入院され、高座を1ヵ月以上
休まれたり、体調も優れなかったようなのだが、
先月 観たときにも、とても身体がつらそうに見えた。
でも、その口演は素晴らしかった。(その日のエントリー

小三治師匠の人気は高く、チケットはすぐに
売り切れてしまうのだが、
来月、11月13日に開催予定だった
「柳家小三治・柳家三三 親子会」は、
8月の発売時に取ることが出来、楽しみにしていた。

それから、11月7日に小三治師匠の独演会があり、
2週続けてはどうかな、と思ったのだけど、
独演会はそんなにないので、やっぱり行こうと思い、
チケットを申し込んだのが、昨日(9日)。

今日、訃報が流れてきたが、
亡くなられたのは、7日だったということなので、
亡くなってからチケットを買っていたということなのだ。

おそらく公演は、中止になるだろう。
この日が来ることは分かっていたけど、残念だ。


弟弟子であり、落語協会会長の柳亭市馬師匠のコメント。

「つい最近まで、元気に高座に上がっている、と聞いて
いたので突然の訃報に接し只々、呆然とするだけです。
落語史に、大きな区切りの線が引かれたのは、確かです。
何事にも迎合することを嫌い、派手を好まず、
極めて芸人らしからぬ、孤高の噺家でした。
個人的には、師匠先代小さん亡き後、
芸について口やかましい事を言ってくれるのは、
小三治師匠だけだったので、いよいよ心細く、
寂しくなりますが、「もうあんなに沢山、薬を
飲まなくてもいいんだな」と思うと、少しだけほっとします。
小三治師匠、長い間、お疲れさまでした。
本当にくたびれましたねぇ。
どうかゆっくり、お休みください。
有難うございました。


「もうあんなに沢山、薬を飲まなくてもいいんだな」
というのが、痛々しい。


享年81歳。

合掌。





2021.11.16

2021 落語一之輔 三昼夜 再び
第二夜




昨日、今日、明日と3日間の
「落語一之輔三昼夜」公演。
3日間で6公演というハードな興行の
その4公演目に行ってきた。
一時期は月一ペースで観に行っていた
一之輔の落語会だが、独演会は、
一昨年の七夜公演の第一夜以来
なんと2年ぶりだ。
厳密には、今年の2月に「一之輔 わさび
小痴楽 三人会」を観ているので、
一之輔をナマで観るのは、9カ月ぶりぐらいだけど。
それにしても、コロナのおかげで落語を
聴きに行くのも激減した。

さて、久しぶりの一之輔。
なんというか、スケールアップしたというか、
円熟味を帯びてきたというのか、
貫禄が出てきたとか、
芸に磨きがかかったなんて表現では、
済まされない進化を観た。

コロナ禍で仕事に大きな影響があったこととかも
関係あるのかないのか、弟子たちが
育っていくことと関係あるのかないのか。
ただ年と共に進化しているのか。
とにかく素晴らしいと思った。

今日の開口一番は、今年、二つ目に
昇進した、一之輔の2番弟子の与いち。
前座時代は、マクラなしで落語に入るのだけど、
二つ目になるとマクラも話す。
与いちは、マクラも落語も面白かった。

本公演の夜の部では、ネタ下ろし(初演)が
一席用意されているのだけど、
今夜は「二階ぞめき」。
ちょっと渋いネタですが、しっかり一之輔ワールドに
なってました。
不覚にも後半、寝落ちしてしまったけど。

最後に演った「寝床」。
5〜6年前にも一之輔の「寝床」は聴いたことが
あるのだけど、今日のはもうもの凄い「寝床」だった。
今まで聴いた中で一番凄い番頭さんが登場したよ。
こんな展開にアレンジしてしまうのは、
やはり天才だと思う。


開演前

[ 演 目 ]
春風亭与いち 「代脈」
春風亭一之輔 「臆病源兵衛」
春風亭一之輔 「二階ぞめき」
〜 仲入り 〜
春風亭一之輔 「寝床」

@よみうり大手町ホール






ひとりごと