LAGUNA MOON MELLOW FLAVOR  LIVE GUITAR  LINK LYRICS


 つつみしんやのひとりごと  2024年5月
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2024.5.1

渡辺貞夫
meets 新日本フィルハーモニー交響楽団




昨年4月29日にすみだトリフォニーホールで、
開催された1日限りの公演、
「渡辺貞夫 meets 新日本フィルハーモニー
交響楽団」のコンサート。
その日のエントリーには、
「1日で終わるのは、ほんまに
もったいないようなコンサートだった」と
書いているが、そう思ったのは
私だけではなかったようで、1年ぶりに
今回の再演が叶ったんだ。

貞夫さんのバンドのメンバーは、
マルセロ木村(gt)がいないのは残念だけど
ほかは昨年とほぼ同じ。
「ほぼ」と書いたのは、昨年は1部2部
通してベースが コモブチ キイチロウさんだったけど
今年は、1部では 新しいメンバーの
若い三嶋大輝さんがベースを弾いた。
メンバー紹介で、貞夫さんが名前をど忘れする
場面もあったのは愛嬌。

今日は、端っこの方だったけど、前から
4列目だったので、メンバーの表情なども良く見えた。
スピーカーから、5メートルほどだったので、
最初の数曲は音がデカすぎると感じたのだけど、
気付いたら気にならなくなっていた。

今回はステージ上に椅子が置いてあって、
貞夫さんは時々座っていた。
まあ 91歳だからな。
基本的にご本人が吹く時は、立っていたけど。

たぶん、後ろの方の席で観ていたら、
気付かなかったかも知れないけど、2部では、
時々ちょっと貞夫さんが心許ない場面があった。
きっちりアレンジされている分、自由度は低くなる。
コンボバンドなら、メンバーも合わせられるだろうが、
オーケストラが一緒となると、中々難しい。
それをメンバーが、アイコンタクトで、サポートするんだ。
そういうことも含めて、素晴らしいコンサートだと思った。

1曲、何が起こったのか分からないけど、
全体がロストしたようで(私にはそう見えた)、
どうなるかと思ったけど、なんとか持ち直すという場面も。
とにかく、指揮をしている村田さんが大変。
村田さんは、通常のオケの時と同様、
客席に背中を向けて、オケに向いて立っているわけだが、
その後ろ、つまり客席側にバンドの5人がいる訳で、
村田さんを挟んで前と後ろにプレイヤーがいる状態なんだ。
指揮は、オケに対してだけでなく、
後ろにいるメンバー(特に貞夫さん)に出す
キューもあって、大変だ。
昨年のコンサートの後のインタビューをYouTubeで
見たけど、とても難しいというような話しをされていた。

2部の開始前、オケのメンバーがステージに
登場するときに、コンサートマスターらしき、
ヴァイオリンの人が西江辰郎さんに見えた。
上原ひろみピアノ・クインテットのメンバーだ。
すると貞夫さんが「コンサートマスターを
紹介します。西江辰郎さん」と言ったのだ。
(昨年は、席が後ろの方だったので、
顔が見えなかったし、紹介がなかったので、
昨年も西江さんだったかどうかは分からない。)

オケとは11曲演ったのだけど、驚いたのは、
昨年も演ったのは、3曲のみ。
8曲は新たにアレンジされたものだ。
個人的には、昨年も演ったデイブ・グルーシンの
『SUN DANCE』、アルバムでは、
リチャード・ボナがベースを弾いていた
貞夫さんの『TEMBEA』、そしてやはり、
『MY DEAR LIFE』が良かった。

アンコールは、いつもの『CARINHOSO』を
小野塚三とのデュオで。
2回目のアンコールでは、これまたいつもの
『HARAMBEE』。
村田さんもトロンボーンも持ち出し、
1部のベースの三嶋さんも参加。
楽しく、素晴らしいコンサートでした。


[ 出 演 ]
-- 第1部 -- 渡辺貞夫カルテット
・渡辺貞夫 (sax)
・小野塚晃 (pf)
・三嶋大輝 (b)
・竹村一哲 (dr)
・村田陽一 (tb)(途中からゲスト)
-- 第2部 -- 渡辺貞夫 meets 新日本フィル
・渡辺貞夫 (sax)
・小野塚晃 (pf)
・竹村一哲 (dr)
・養父貴 (gt)
・コモブチ キイチロウ (el-b)
・村田陽一 (cond)
・新日本フィルハーモニー交響楽団
 (con.mas 西江辰郎)

[ SETLIST ]
-- 第1部 --
1. PEACE
2. LAURA
3. I CONCENTRATE ON YOU
4. DEEP IN A DREAM
5. ONE FOR JOJO
6. TREE TOPS
7. SANGOMA
8. CHEGA DE SAUDADE
-- 第2部 --
9. TOKYO DATING
10. EARLY SPRING
11. I'M WITH YOU
12. BOA NOITE
13. SAMBA EM PRELUDIO
14. PAGLIACCI
15. WARM DAYS AHEAD
16. SUN DANCE
17. TEMBEA
18. MY DEAR LIFE
19. LIFE IS ALL LIKE THAT
EC1. CARINHOSO(渡辺貞夫, 小野塚晃)
EC2. HARAMBEE

@ すみだトリフォニーホール





2024.5.2

オッペンハイマー
Oppenheimer




一度では到底理解のできないであろう映画
『オッペンハイマー』の二度目の鑑賞。
前回観てから、1ヵ月以上経っているのだけど、
その間に、YouTubeで数本解説動画を観て、
復習(&予習)をしたので、前回の理解度が
50%だったとしたなら、今回は 75%ぐらいだろう。
それぐらい複雑な話だ。
一度目にはほとんど分かっていなかったと
いうこともよく分かった。

もちろん、あらすじは理解しているし、
この映画のテーマ(おそらくノーラン監督が
提言したかったこと)は、自分なりに
受け止めているつもりだが、まだ不十分な
感じがしているので、もう少し登場人物の
相関関係など整理したうえで、もう一度
上映中に観に行きたい。
もうこれは「何度も観ろよ」という映画だと思う。
何がそんなにこの映画に惹かれるのか
よく分からないのだけど。

おかげで今まで観たノーラン監督の
「なんかよう分からんかった」的な作品、
『インセプション』『インターステラー』
『テネット』も、もう一度観てみようという
気になっている。
もしかしたら、ノーランにハメられたか。

前回は、IMAX で観たので、
音響がもの凄い迫力だった。
今回は、前回と同じシネコンの IMAX ではない
劇場で観たのだけど、それでも結構な迫力だったよ。

米国での上映では「日本人なら絶対笑わないような
場面で笑いが起きていた」と何かで読んだ。
その記事には、どの場面か書いていなかった。
確かに日本人なら、笑えるシーンは全くない。
たぶんだけど、原爆投下に関する会議で、
「京都をターゲットから外した」という場面では
ないだろうかと思った。
偉いさんが、「京都には新婚旅行で行ったから」と言う。
その前に彼は「京都には文化的価値がある」と
本当の理由を言い、そのあとに付け足しのように
新婚旅行の話をするのだけどね。
ほかには思い当たらないので、
もし、そこだったとしたら、あれは米国人には面白いのかな。

一度目の感想に「原爆の投下に成功した
ニュースを聞いて、歓喜する人間。
このシーンは、気持ち悪い」と書いた。
しかし、彼らはおかしくないんだな。
日本人であっても、あの立場で
あの場所にいたら、原爆の投下を喜び、
戦争の終結を祝っただろう。
気持ち悪いのは、アメリカ人に対してではなく、
「人間」に対しての気持ち悪さだ。


★★★★★


2023年製作/180分/R15+/アメリカ
原題:Oppenheimer
劇場公開日:2024年3月29日





MONTY ALEXANDER
"The 80th Birthday Nights’ Celebration"




2022年の10月の公演以来、二度目となる、
ジャマイカ出身のジャズ・ピアニスト、
モンティ・アレキサンダーを観てきた。
あの時は、78歳だったけれど、
今年の誕生日(6月6日)で80歳を迎える。
"The 80th Birthday Nights’ Celebration"
と題されたライヴ。
なんと彼は、1944年6月6日、
ノルマンディー上陸作戦の日に生まれたんだ。

今回はトリオでの来日。
ドラムは、前回と同じくジェイソン・ブラウン。
ベースは、前回のポール・バーナーに
変わって、ルーク・セリク(from Canada)。

2日間4公演の最終ということで、
大盛り上がり。
客電が付いた後もアンコールの拍手が
鳴りやまず登場し、トータルで90分ほどの
ライヴとなった。
しかし、最近の生活リズムの乱れのせいか、
2曲目途中で睡魔に襲われ、それからは
後半まで、ウトウト状態。
目が覚めるたびに会場の雰囲気から
素晴らしいライヴであることは感じるのだが、
いかんせん起きていられない。
完全に目が覚めたのは、本編最後の
『The Battle Hymn of the Republic』あたりから。
アンコールは、なんとボブ・マーリーの
『No Woman, No Cry』。
これはジャズでは初めて聴いた。
まだ鳴りやまぬ拍手にもう1曲、
『C Jam Blues』。
毎日、夜中にギンギンに眼が冴えるのに、
いやぁ、もったいないことしたなぁ。


[ MEMBERS ]
Monty Alexander (p)
Luke Sellick (b)
Jason Brown (ds)

@ Blue Note Tokyo
2nd show


[関連エントリー]
2022.10.24 MONTY ALEXANDER





2024.5.3

文藝春秋 講座 文春落語
喬太郎と大師匠五代目小さん




先日(4月12日)、文藝春秋社が
主催する「文春落語 柳家喬太郎・
柳家小ゑん二人会」を観に行った。
その時に知った今日の「文藝春秋 講座」、
喬太郎師匠が、大師匠五代目小さんについて
語るというのは、ぜひ聴いてみたいと思い、
行ってきた。
講師は、このふたり。
柳家喬太郎(落語家)
長井好弘(演芸評論家)

長井さんのことは、存じ上げなかったが、
演芸評論家ということで、この世界にかなり
通じていらっしゃる方と見た。

今日のテーマは、五代目小さん師匠。
小さん師匠の落語は、私はナマでは
聴いたことがなく、映像と音声でしか知らない。
永谷園のCMのおかげで、大阪出身の
私でも顔を知っている。
テレビの力は偉大だ。
落語ファンになって以来、落語家のことを
色々知っていくうちに、小さん師匠が、
1936年の226事件に決死部隊として
出動していた(本人は計画を知らされず、
訳が分からず出動したらしい)ことや
剣道家でもあったことなどは知っていたけど、
今日は、孫弟子である喬太郎の口から、
たくさんの思いで話を聴けた。

小さん師匠は、太平洋戦争でも
ベトナムに出陣していたんだな。
226事件や東南アジア(ベトナム)の戦線で
戦っていた人が、噺家として人間国宝に
選ばれるという、なんだかスゴイ世界なんだ。

もっとも、226事件の出動の直前にも
命令で隊員相手に落語をしたらしいし、
ベトナムでもご本人は「慰問に行っていた」と
語ったぐらい落語をしていたようで、
復員後すぐに高座に上がれたというから驚きだ。

今日は、喬太郎師匠の口から、
たっぷり大師匠小さんの思い出話と柳家愛に
溢れるエピソードを聴けたのでとても良かった。
ただ、現代の噺家なら、全員とは言わないが
大体分かるけれど、戦前、戦後の落語界と
なると、まだまだ勉強不足を感じる講座でもあった。

次から次へと喬太郎師匠の記憶がよみがえり、
時間は押しまくり、最後の落語は20分ほど
だっただろうか。
それでも、今日の会に相応しく『強情灸』で、
小さんへのリスペクトを表現するという、
喬太郎師匠の小さん愛でした。
予定時間を20分以上超過しての講座でした。

印象的だったのは、
会場からの質問で、弟子との関係に
答える喬太郎師匠。
その発言には、簡単には割り切れない
微妙な関係を強く強く感じたのでした。
最近、落語界の師匠と弟子の関係が
裁判にまでなったでしょ。
裁判の判決は、ある面では正しいけど、
ある面では正しくないのかも知れないと思う。
なんだか答えのない難しい問題なんだ。


[ プログラム ]
【第一部】
長井さんによる
「10分で学ぶ、歴代の小さん師匠」
【第二部】
喬太郎が見た、聞いた、感じた
大師匠五代目小さん
質疑応答
--- 休憩 ---
【落語】
「強情灸」 柳家喬太郎

@ 文藝春秋本社 西館地下ホール




Larry Carlton Salute Japan Tour

〜The Crusaders - Steely Dan - Fourplay




何度もライヴを観てきたラリー・カールトン
(76歳)が、「ワールドツアーにしばしの別れを
告げる」という。
「しばし」の別れなのに「フェアウェル公演」と
銘打っているのは、ちょっと違和感があるが、
そのジャパン・ツアー(横浜、東京、大阪)
7日間14公演の2日目 2nd show を観てきた。

私が、ラリーをレコードで初めて聴いたのは、
友人に借りた 1978年の名盤『夜の彷徨』だから、
もう46年も前のことになるんだ。
当然、見た目もすっかり変わり、
当時はロン毛だったけど、今ではすっかり禿げあがり
(もちろん私もだ)時の流れを感じずには
いられないのだけど、「フェアウェル公演」
なんて聞くと、やっぱり寂しくなるわな。

今日のギターは、この数年ラリーがメインにしている、
Sire(サイアー)のセミアコ、ラリー・カールトン・モデル。
彼がステージで弾いているものが、市販モデル
(11万円!)と全く同じ仕様なのかどうかは
分からないけど、よほどお気に入りなんだろうな。
同様にサイア―から、マーカス・ミラー・モデルの
ベースも発売されたけど、マーカスの場合、
お披露目程度には使ったけど、けっして
ステージのメインにはならなかったからな。
サイアーも良いのだろうが、私のような70年代からの
ファンの多くは、ラリーのあのギブソン ES-335 への
憧れが大きいのではないかと思う。

昨年6月、一昨年6月の来日公演も観たし、
コロナ前の 2019年8月のリチャード・ボナとの公演
(その日は ギブソンだった)も観たのだけど、
私としては、2018年2月6日の公演
ギブソンの ES-335の異様な存在感が
いまだに忘れられないほど、強烈だった。

さて、今日のライブ、見た目には76歳を
感じさせないのだけど、今日は疲れていたのか、
何度も大きく「フーッ」と息を吐く場面があった。

曲目は、"Minute By Minute" に始まり
"Smiles and Smiles To Go"、
"Put it where you want it"、
"(It Was) Only Yesterday"、
"Blues Force"、"Room335" など。
曲名が分からないけど、スティーリー・ダンの曲も
数曲演奏。
ソロからクルセイダーズ、スティーリー・ダン、
そして、あまりソロ公演では、披露してきたことのない
フォープレイの曲まで、オールタイムな選曲なのでした。

ホントにこれが最後になってしまうのでしょうか。


[ MEMBERS ]
Larry Carlton / ラリー・カールトン (G)
Travis Carlton /トラヴィス・カールトン (B)
Ruslan Sirota / ルスラン・シロタ (Key)
Mark Douthit / マーク・ドゥティット (Sax)
Barry Green / ベリー・グリーン (Tb)
Gary Novak / ゲイリー・ノヴァク (Dr)

@ Billboard Live TOKYO
2nd show


<メールインタビュー>
世界屈指の名ギタリスト=ラリー・カールトン
フェアウェル公演を前にこれまでの軌跡を辿る






2024.5.4

悪は存在しない



『ドライブ・マイ・カー』で数々の受賞と
ノミネートをされた濱口竜介監督の
最新作『悪は存在しない』。
タイトルからも ちょっと期待していたのだけど、
これが難しかった。

思えば『ドライブ・マイ・カー』のレビューに私は
「全くもって 『??? 』な終わり方だった」
「残念ながら、私はこの映画のターゲットから
完全に脱落している」と書いた。

本作も全くもって然り。
今回も「???」な終わり方、何がこんなに
高評価なのか分からないところを鑑みると
本作についても「私はこの映画のターゲットから
完全に脱落している」ような気がする。

あまりに不可解なので、本作に関する記事や
監督のインタビューも読んだのだけど、
それでも謎は解けない。
それもそのはずだろう、監督は結末の解釈を
鑑賞者に預けているんだ。
もちろん、それはどの映画だって同じだ。
でも「なんで主人公はそんなことをしたの?」
という疑問を解くカギが私には見当たらないんだ。

本作は、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞
(審査員グランプリ)を受賞した。
(そのほかにも受賞歴あり)
もしかしたら、高評価の人たちは、
その受賞を受けて、訳も分からず高く評価
しているのではないか、実は何も分かっていない
のではないかと勘繰ってしまうほど、
私にはよく分からない。
自分の理解力の低さを棚に上げてるのだが。

監督のインタビューやその他の解説を読んだ上で
もう一度観ると、違って観える可能性もあるが、
そこまで惹かれないのが正直なところだ。

映画や文学で、結末を観客や読者に
委ねるタイプのものを「オープン・エンディング」
というが、あまりにもオープンの角度が
広すぎて、私は置いてきぼりをくらってしまった。
やはり、私には濱口監督作品を理解する
センスはなさそうな気がする。

ただ、映像と音楽は良い。
元々が『ドライブ・マイ・カー』の音楽を
担当した石橋英子からの
ライブパフォーマンス用映像の依頼が、
本作のスタートだったというから、
音楽との相性は良いのだろう。

毛細血管を連想させる木々の枝を
見上げる映像に、あまり旋律を感じさせない、
重厚なストリングスの響きという組合せは、
環境音楽としても良いし、そこから何かの
示唆を受取るという意味でも嫌いではない。
が、あのエンディングは、どうしてよいか分からない。

なぜだかヨーロッパ、それもイタリアやフランスではなく、
イングランドか北欧のイメージを感じてしまった。
そういう意味でも、監督が国際的評価が
高いという意味でも、外国映画的なのかもね。

舞台は、長野県の水挽町(みずびきちょう)という
架空の村なのだが、登場する車が諏訪ナンバーだった。
実は、来月諏訪地方へ行く予定をしているんだ。
昨夜、ちょうどホテルを予約したところだった。
もうひとつ、映画の上映前、席に着いてから
妻と話していてノーム・チョムスキー
(哲学者・言語学者)の話が出た。
予告編が始まったら、なんと佐藤真の
ドキュメンタリー映画『暮らしの思想 佐藤真
RETROSPECTIVE』の予告編の中に
チョムスキーが登場した。
そんな、シンクロニシティな映画鑑賞でした。

ところで、冒頭
「EVIL DOES NOT EXIST」と字幕が出る。
昔、何かの本で「EVIL」は、「LIVE(生)」の
逆だから「悪」なんだと読んだのを思い出した。


★★★☆☆


2023年製作/106分/G/日本
劇場公開日:2024年4月26日





2024.5.5

マイ・スイート・ハニー
Honey Sweet



例年のゴールデン・ウィークは、一泊か二泊程度
国内旅行に出かけていたのだけど、
退職して、いつでも行けるとなると、
わざわざ料金の高い、そして混むこの時期に
行かなくても良いだろうと、今年は
どこへも行かなかった。
でも、どこかに行くには、
季節は今が一番良いんだよな。

さて、昨日は、難しい映画を観たけど、
今日は超分かりやすいラブコメ。
公開されたばかりの韓国映画の
『マイ・スイート・ハニー』。

45歳のもてない男チャ・チホを演じるのは、
ユ・へジン。
少し前に観た映画『梟―フクロウ―』で
朝鮮王朝の国王を演じていた役者だ。
あまりにも違うキャラなので、
言われないと気付かない。
ヒロイン役、明るくエネルギッシュな
シングルマザーのイ・イルヨンを演じるのは
キム・ヒソン。

大人のメルヘンということだろうが、
40代の恋愛にしては、なんというか
ちょっとウブすぎやしないかと思う。
恋愛経験のない45歳だとこうなるのかな。
まあ、コメディということで、野暮なツッコミはいたしません。

家族を大切に思うがゆえに、
いったんは恋愛を諦めようとするふたり。
だが、双方の家族が再びふたりを
結びつけるというハッピーエンド。

後半、主人公がテレビに出演することが
決まった時点で、その先が読めてしまったのは残念。
やっぱり、意外性が欲しいもんな。
結構笑えたのは良かった。


★★★▲☆


2023年製作/118分/G/韓国
原題:Honey Sweet
劇場公開日:2024年5月3日





2024.5.9

MARTY HOLOUBEK TRIO II
featuring 井上銘 & 石若駿




昨日は、MARTY HOLOUBEK TRIO II の
ライヴを観てきた。
このトリオのライヴを観るのは2年ぶり2回目。
オーストラリア出身のベーシスト、
マーティ・ホロベックと日本人若手トップの
ふたり、井上銘、石若駿のトリオ。

3人とも凄いんだけど、今回もやはり
石若のドラムに唸らされた。
ずっと聴いていられる感じ。
なんだろうね、この人のドラムは。
柔らかい。
そう柔らかいという表現がピッタリくる。
そして、けっしてうるさくない。

昨日の銘君のギターは、ストラト・タイプ。
まだ新しそうだった。
ヘッドのロゴが読めなかったんだけど、
ヘッドの形状からすると Xotic かな。
太くて良い音だった。
いいなぁ、Xotic。

マーティは、ウッドベースと昨日のエレベは、
セミアコタイプ。
なぜかヘッドのブランド名をテープで
隠してあったけど、たぶん Ibanez だと思う。

曲は『Karuizawa(軽井沢)』、
『Shizuru(静流)』、『Uncle Izu(伊豆おじさん)』
(この曲が出来たエピソードは面白かった)など。
『Shouganai(しょうがない)』はやっぱり好きだな。
夏には、ニューアルバムが出るらしい。
このトリオはどんどん発展していくんだろうな。


[ MEMBERS ]
Marty Holoubek (b)
井上銘 (g)
石若駿 (ds)

@ Cotton Club
2nd show





2024.5.16

David Sanborn

12日、米国のサックス奏者、
デイヴィッド・サンボーンが亡くなった。
前立腺がんだったらしい。
享年78歳。

私がデイヴィッドを知ったのは、1982年の
アルバム『As We Speak』。



マーカス・ミラー、オマー・ハキム、
マイケル・センベロらが参加したアルバムだ。
奇しくも一昨日、大阪の実家でその
『As We Speak』の LP レコードをかけ、
甥っ子に聴かせたところだった。
(LPレコードは実家に置いたままなんだ。)
1982年当時、このアルバムの1曲目
『Port of Call』がカッコよくて大好きだった。

デイヴィッドの音は、アルト・サックス奏者の中でも
聴いてすぐ彼と分かる独特のトーンだった。
エリック・クラプトンと一緒に演ったときは嬉しかったな。
エリックとデイヴィッドがバックで、
ランディ・クロフォードが歌った
『Knockin' on Heaven's Door』(ボブ・ディランの
カヴァー。映画『リーサル・ウェポン2』の
サウンドトラック。1989年)。
DMS(ジョージ・デューク、マーカス・ミラー 、
デイヴィッド・サンボーン)の来日ライヴ(2011)も観たよ。
(ジョージ・デュークも死んでしもたな。)
LEGENDS(エリック・クラプトン、スティーヴ・ガッド、
マーカス・ミラー、ジョー・サンプル、
デイヴィッド・サンボーン)は、日本ではナマでは
観られなかったけど、スゴイメンバーだった。
(ジョー・サンプルも死んでしもた。)

また一人、いなくなったね……。

合掌。





2024.5.17

鉄道今昔物語

私は、4歳から23歳までを大阪府柏原市で過ごした。
実家は今も柏原にある。



写真は、JR関西本線の柏原駅付近。
私が小学生だった昭和40年代、
JRがまだ国鉄だった時代には、時々、
ここで蒸気機関車を見た覚えがある。
蒸気機関車には乗った覚えががないので、
おそらく貨物列車だったんだろう。
客車はディーゼルだった。

中学生のころ、電化が進み、
ディーゼルから電車に変わった。
私の記憶が間違っていなければ、
柏原駅から天王寺駅まで、ディーゼルだと
30分かかっていたのが、電車になって、
15分程度に縮まった。
今では当たり前のことも、そんな風に
年月をかけて発展してきたんだ。

柏原駅は、自宅から歩くと15分ほどかかるので、
普段使うのは、歩いて5分ほどの所にある、
近鉄大阪線の「法善寺」という駅だった。
柏原市には、法善寺というお寺はないが、
町名には法善寺がある。
法善寺というと、大阪ミナミにある法善寺が
有名だが、そことは関係ない。

調べてみると、平安時代に「法禅寺」と呼ばれた
寺院があったようで、どうやらそれが町名の由来のようだ。
「法禅寺」は14世紀に焼失し、その後現在も
存在している「壷井寺」が再建されたとなっている。
小学生の頃、子供会のイベントがその「壷井寺」で
行われ、何度も参加した覚えがある。
お寺でクリスマス会なんてやっていたんだ。

話を法善寺駅に戻そう。
法善寺駅は小さな駅で、上りと下りは別のホーム。
私が子供の頃は、改札口は上り側のひとつで、
下りのホームに行くには、改札口を入ってから
踏切を渡らなければならなかった。
下り電車に乗ってきて降車した場合、
降りた電車が通り過ぎてから、踏切を渡ることに
なるので、待たなければならなかった。
その踏切が危険でもあり、場合によっては、
改札口の前後で2回踏切を渡らなければならなかった。

30年ぐらい前だっただろうか、地下道が作られ、
駅構内の踏切が廃止され、改札口も地下に移動した。
その結果、駅に入るにも 駅から出るにも
階段で地下に下りなければらなくなった。
小さな駅なので、エスカレーターやエレベーターなんてないが、
地下道と地下の改札口、駅員室を作るのは
結構な工事だし、一見するとそれは、
進化・進歩のようにも思えた。

だが、数年前、地下の改札口が廃止された。
おそらく高齢者の増加で階段の昇り降りが
しんどいという利用客の声が反映された結果では
ないかと推測する。
数十年ぶりに地上の改札口が復活した。
道路から改札口まではやや長めのスロープが
あることからもバリアフリーを目指しての移転だったんだと思う。
構内の踏切まで復活させる訳にはいかないだろう。
結局、上り下り両方のホームに改札口が設置された。
現在は上り下りともに、自動改札のみで駅員はいない。

数十年の間に改札口は、地下に潜り、地上に戻ったわけだ。
地下の改札口は、廃止されたけど、地下道は残ったままだ。
今では、わざわざ地下道を使う人はいない。
(使うとしたら、構内での上りと下りのホームの行き来のみだろう。)

嗚呼、諸行無常。


現在の法善寺駅 上りホーム改札口




下りホーム改札口




駅員は常駐しておらずインターホンが設置されている




地下改札口があった場所




地下改札口があった場所(駅の外、地上から見た)




上りホーム下りホームを結ぶ地下道。柵の向こうは駅構外。







2024.5.20

立川談春芸歴40周年記念興行
「立川談春独演会2024」




1月から10月まで毎月2回(合計20回)
開催される、談春の芸歴40周年記念興行。
1回につき2席、合計40席の演目が
発表されているネタ出しの独演会だ。
3月にも行ったのだけど、あまりに素晴らしかったので
昨日の公演(昼の部)のチケットも取ったんだ。

昨日は『百川』と『慶安太平記より
宇都ノ谷峠』がネタ出しで、お楽しみの
一席は『萬金丹』だった。

終演後、一旦幕が下り、拍手の中、
再び幕が開いたときの談春のトーク。
なんだか、自分の仕事に満足していないかのような
口ぶりで「もの足りないですか?
言いたいことがある人いますか?
言いたいことがある人は楽屋まで来てください」
というようなことを言っていた。
個人的には、全く満足な高座だったけど、
ご本人は何か思うところがあったのかな。

5月16日は、五代目柳家小さんの命日だったので
小さんの噺であった『萬金丹』を演ったようだったが、
あえて言うなら、『萬金丹』は渋すぎたかな。

『百川』は好きな演目のひとつ。
今まで数人の落語家の口演を聴いているが、
田舎を出てきたばかりの訛りの強い男、
百兵衛のキャラが演者によって少しずつ違う。
談春の百兵衛は、ちょっと控えめな感じの
天然キャラで、これが面白い。
そして、これまでは百兵衛にばかり注意が
行っていたのだけど、昨日の『百川』では、
魚河岸の若い衆のひとりの早合点も、
百兵衛同様、相当な天然キャラなのだと
気付かせてくれる口演だった。

ラストは初めて聴く『慶安太平記より
宇都ノ谷峠』。
歌舞伎や講談、小説にもなっている
『慶安太平記』の『宇都ノ谷峠』のくだり。
マクラで講談の「続きはまた明晩」という、
明日も聴きに来てもらうための終わり方の
説明をして、そして、終わりが「続きはまた来月」
という絶妙な終わり方。
ああ、続きを聴きたい。


[ 演目 ]
「萬金丹」
「百川」
--- 仲入り ---
「慶安太平記より 宇都ノ谷峠」

@ 有楽町朝日ホール




碁盤斬り



古典落語『柳田格之進』が映画化された。
映画のタイトルは『碁盤切り』。
落語の方は、ナマとCD、DVD合わせると
古今亭志ん朝、立川志の輔、
春風亭一之輔、春風亭小朝など
数人の落語家の口演を聴いたことがある。
それぐらいポピュラーな古典落語なんだ。
落語は、演者によって、ストーリーや登場人物の
キャラクターが、微妙に違っていて面白い。

映画の監督は、白石和彌(かずや)。
白石監督作品は、数本観ているが、
『凪待ち』と『凶悪』が、印象に残っている。
なんというか、生々しい演出・描写の
監督というイメージだ。
主人公・柳田を草なぎ剛が演じると知って、
私のイメージとはちょっと違ったので、
それを覆してくれると良いな、と期待しての
鑑賞となった。

以下、感想など(ネタバレ含む)。

落語の『柳田格之進』を映画にしたのだと
思っていたら、厳密に言うと違った。
『柳田格之進』を題材に脚本家の加藤正人さんが
膨らませたストーリーが『碁盤斬り』。

落語にはない背景やエピソードも盛り込まれている。
考えてみれば落語は30分程度なので、
2時間の映画にするには、短いのかもな。

落語には出てこない、格之進の妻の話が
出てきて、その妻の敵を取るという
サイドストーリー的なものが付け加えられている。

落語では、萬屋の主人・源兵衛は、最初から良い人として
描かれているが、映画では最初はイヤなオヤジとして
登場し、格之進の影響で善い人になっていく。

落語では、五十両を盗んだ嫌疑を格之進にかけるのは
番頭なのだが、映画では(番頭が言い出すのだけど)
源兵衛の遠縁の若者・弥吉が、嫌疑をかけた
本人として描かれる。

映画としては、まあまあ面白かったのだけれど、
私は最後のハッピーエンドがイヤだった。
格之進の娘・お絹と格之進を疑った弥吉とが
祝言をあげるんだ。
首を差し出す、とまで言うほど自分を疑った男と
娘の結婚を認めるのか。
お絹と弥吉は、前半好き合っていく様が
描かれているが、お絹だって、あんな風に父上を
疑った男と結婚したいと思うのだろうか。
弥吉に向かって「二度と私の前に現れないで」
とまで言ったではないか。

個人的には、あれはない方が良かったのにと思う。
もし、ふたりを一緒にさせるなら、嫌疑をかけたのは
番頭ひとりで、弥吉は格之進の無実を信じていた、
という風にして欲しかったな。

格之進は「清廉潔白」に生きてきた。
そのため、格之進に藩を追い出され、
浪人になり家族が路頭に迷った侍は少なくなかった。
五十両盗んだと疑われただけで、
腹を切ろうと思うほど、「清廉潔白」であることに
こだわって生きてきた男だ。
その「清廉潔白」野郎が、最後にちょっとした
悪事を働く。
悪事と言えるのかどうかも分からないのだけど、
いずれにしろ、殿への裏切りだろう。
それを同じ藩士の梶木左門が、見逃す。
格之進は、「清廉潔白」であることより、
大切なことに気付いたんだと思う。
そのことを教えてくれたのが仇であった、
柴田兵庫だったということが、
本作の隠れたテーマのようにも思う。

これは落語の『柳田格之進』とは違う話だね。
落語では「ならぬ堪忍するが堪忍。
柳田格之進の一席でした」
と終わる落語家が多いことからも、
格之進が、主人と奉公人の互いを想う心に負け、
ふたりを赦す(堪忍する)話だとわたしは解釈している。

格之進を演じた、草なぎ剛は迫真の演技でした。
所々、わざとらしいものの言い方が気になったけど。
お絹役の 清原果耶、清純な感じがよろしい。
弥吉役の 中川大志、まっすぐな感じが出てて良かった。
萬屋源兵衛役に、國村隼。
その他、市村正樹、斎藤工、小泉今日子、奥野瑛太など。



★★★★☆


2024年製作/129分/G/日本
劇場公開日:2024年5月17日





2024.5.20

カレーはスポーツだ! #74
エビカレー / ルーキー(不動前)
★★★★▲




久しぶり(約1年ぶり)のルーキー。
数ヶ月前、続けて休業していたので、
もしかしたら閉めちゃったのかと心配していた。
先日、営業しているのを確認したので、
久しぶりに行って来たよ。

今回は、エビカレー(900円)に
季節の野菜トッピング(250円)、
合計1,150円なり。

カレーは、ココナッツミルクの入った、
クリーミーでありながら、爽やかな辛さ。
旨いです。
そして、毎回驚くのだけど、
「野菜トッピング」のコスパが素晴らしい。
ナス、ピーマン、パプリカ、カボチャ、
ズッキーニ、カブ、スナップエンドウ、
ブロッコリーが、ゴロゴロ入って
250円(税込)なのだ。
お値打ちあり。





2024.5.25

ミッシング



『空白』『ヒメアノ〜ル』の吉田恵輔監督作品と
聞いて、きっと感情が揺さぶられる、
激しい映画なんだろうと覚悟して鑑賞した。

主演は、子供が行方不明になった母親・
沙織里を演じる石原さとみ。
そのストレスから、壊れていく様が、
観ていてしんどいほどの迫真の演技だ。
今まで数本彼女の出演作を観たけれど、
これまでとは違う次元で本格派女優の
仲間入りだと思った。
インタビューで観たが、私生活でも母親に
なったことが演技に大きな力になっていると思う。

その夫役には、青木崇高。
石原さとみが強烈過ぎるので、やや印象が薄まるが、
とても良い味を出している。
特にラストシーンは良い。

これまた難しい役、沙織里の弟・圭吾を
演じるのが森優作。
この人のことは、知らなかったけど
これで覚えたよ。

地方テレビ曲の記者・砂田に中村倫也。
何を放送すべきなのかを考え、
とても人間らしいのだけど、
それでは放送局では出世しないんだな。
テレビ報道による悪影響について、刑事に
「お前らが面白がって放送するからだ!」
と言われ、砂田は
「面白がってない。事実を報道しているだけだ」
と答える。
それに対する刑事の言葉が印象的だ。
「その事実が(大衆は)面白いんだよ」

以下、ネタバレ含む。

結局、行方不明の子供は見つからない。
死体でも見つからないでの、生きてるかどうかも
わからないまま映画は終わる。

上映後、劇場から出る際、観客の
「見つかるか見つからないか、はっきりして欲しい」
「もやもやする」
という声が聞こえて来た。
いずれも若い人だった。

それを聞いて、私は事件が解決しなかったことに
不満がないことに気付いた。
私も20代なら不満に感じたのかも知れない。
この映画は、ミステリーでもなければ、
クライム・サスペンスでもない。
もし、子供が見つかれば、ハッピーエンドだ。
事件が解決し、観た人には「そのこと」になってしまうだろう。
殺されていたという結末にしても
「幼女行方不明事件」の映画になってしまう。
本作のテーマは、そこじゃない。

子供がいなくなった母親の、夫婦の苦悩。
報道のあり方、SNSに現れる人間の悪性。
偏った報道に簡単に洗脳される市井の人々。
報道って何?
テレビって何?
その事実、放送する意味があるの?
SNS って何?
そんな問いかけを私たちに投げかけていると思う。

観ててしんどい映画だが、
人間というものを描いている点では
凄い作品だと思う。
変なツッコミ所もない。

『空白』も最後に救いがあって良かったけど、
本作でも 人間の醜さ弱さを散々暴いたあとに、
人間であることの救いと光を見せてくれる。
これは好きだな。

監督作品は、『空白』「ヒメアノ〜ル』
『純喫茶磯辺』の3本しか観ていないけれど、
他の作品も観てみたくなった。
本作では、脚本も吉田恵輔。


★★★★★


2024年製作/119分/G/日本
劇場公開日:2024年5月17日





ボブ・マーリー:ONE LOVE

Bob Marley : One Love




伝説のレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーの
伝記映画。
ボブ・マーリーといえば、今年3月に
『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ
レゲエ・サンプラッシュ』という、
ボブ・マーリーのジャマイカでのラスト・ライヴ
映像を含むドキュメンタリー映画を観た。
その映画の中で、ジャマイカのある男たちが、
エレキギターやシンセサイザーを使う演奏を
「金儲けだ」と批判していた。
しかし、本作『ボブ・マーリー:ONE LOVE』を
観ると、ボブが純粋に平和のためにレゲエを
広げようとしていたように描かれている。

こういう成功したアーティストの映画の
ほとんどが、有名になったあと、
ドラッグ、アルコール、そして女性問題で
苦しむというのがパターンなんだけど、
ボブにはなかったね。
ドラッグに関しては、最初からハッパは
吸いまくっているし、女性問題に関しては、
パリで夫婦げんかになるシーンがあるけど、
それほど大事件でもない。

まあ、本作は息子のジギー・マーリーが
プロデューサーとして名を連ねているので、
そんな影響もあるのかも知れない。

私は、ボブが白人とのハーフだったことさえ
知らなかった。
本作では、リタ・マーリー(ボブの妻)が
どんな人だったのか描かれていたのは良かった。

それにしても、この映画を理解するには、
ジャマイカの歴史、ラスタファリ、
エチオピア皇帝ハイレ=セラシエなどの
知識がないと、ダメですわ。
ただ音楽好きなだけでは、無理。
『エクソダス』が生まれるくだりなんかは
音楽ファンは嬉しいけどね。

ボブを演じた、キングズリー・ベン=アディルは、
イギリスの俳優。
実際のボブより男前で清潔感があって、
ちょっと作り物っぽいのは残念。
それを思うと、『ボヘミアンラプソディー』の
ラミ・マレックはハマり役だったな。


★★★★☆


2024年製作/108分/PG12/アメリカ
原題:Bob Marley: One Love
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
劇場公開日:2024年5月17日





2024.5.27

QUEEN
ROCK MONTREAL




1981年11月24、25日に クイーンが、
カナダ・モントリオールで行ったコンサートを
収録したライヴ・ムービーを観てきた。

これはすでに映像作品として出回っているもので、
DVDなどでも入手可能なのだが、
IMAX 用にデジタル・リマスターされたというので、
この機会に大きなスクリーンで観ておこうと思った。

T・ジョイ・プリンス品川の IMAX 劇場は、
大きな劇場で、300席あるのだけれど、
今日の上映時の観客は、15人ぐらい。
1日1回の上映で、300人の会場に
客が10数人というのは、ビジネス的に
大丈夫なんだろうか? と余計な心配をしてしまう。
でも、本作2月に公開されたものの、
再上映だと知って、それで少なかったのかということにした。

私は、高校生の時、1979年のジャパンツアーを
大阪フェスティバルホールで観たのだけど、
本ライヴ・ムービーは、1981年ということで
その2年後だが、大がかりな照明は、
1979年のときより進化しているように感じた。
映画『未知との遭遇』を思い出したよ。

モントリオール公演は、1981年11月24、25日
だったのだけど、フレディ・マーキュリーの命日は、
1991年11月24日なので、ちょうど10年前の
映像なんだ。

それにしても、誰にも似ていない、誰々っぽくない、
このクィーンというバンドの個性と素晴らしさを再認識したよ。
『Crazy Little Thing Called Love』なんかを
聴くと、もちろん曲のルーツが分かるんだけど、
それでも個性的だ。
この曲で、ブライアン・メイは、テレキャスターを
弾いたのに、「いつものオリジナルギターと
音一緒やん」と、笑ってしまった。
何を弾いても、ブライアンの音になるのだな。

4人のバンドなので、一人欠けても
そのバンドには、ならないのは承知の上だけど、
今日はロジャー・テイラーの存在の大きさを感じた。
どうしても、フレディやブライアンにスポットが
当たりがちだと思うけど、クィーンにとって
ロジャーの存在は大きかったと感じた。

そういえば、2016年に「QUEEN+Adam Lambert」の
来日公演を観たけど、ロジャーは現役で来日したけど、
ジョン・ディーコンは、ずっと前に引退したみたいだ。

個人的なハイライトは、やはり大好きな
『Somebody To Love』、
それから『Killer Queen』、
『We Are The Champions』、
そして、『Bohemian Rhapsody』のテープによる
間奏後の演奏再開は、やはりゾクゾクする。

IMAX だから料金が、2,700円だったんだけど、
迫力はさて置いてあまり音質の良さは感じなかった。
IMAX 用にリマスターしてるとのことだったけど、
もう40年以上も前の録音なので限界があるのだろうか。
それとも「12 チャンネルのサラウンド サウンド」なんてものに
してしまったせいなのだろうか。
でも、ライブの熱さは、十分に伝わる映像だった。


[SETLIST]
We Will Rock You (Fast Version)
Let Me Entertain You
Play The Game
Somebody To Love
Killer Queen
I’m In Love With My Car
Get Down Make Love
Save Me
Now I’m Here
Dragon Attack
Love Of My Life
Under Pressure
Keep Yourself Alive
Drum and Tympani Solo
Guitar Solo
Crazy Little Thing Called Love
Jailhouse Rock
Bohemian Rhapsody
Tie Your Mother Down
Another One Bites The Dust
Sheer Heart Attack
We Will Rock You
We Are The Champions


あの劇場は、スクリーンが大き過ぎるので、
真ん中より後ろの席で観ないとしんどいね。




関心領域

The Zone of Interest




予告編を観て、なんだか怖そうな映画だと
興味を持っていた『関心領域』。
原題は、『The Zone of Interest』。
「関心領域」とは中々の訳だ。(上から)

と思っていたら、映画の解説にこんなことが。

「タイトルの『The Zone of Interest(関心領域)』は、
第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・
オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ
強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの
地域を表現するために使った言葉」

以下、ネタバレ含む。

アウシュビッツ収容所の隣で暮らすドイツ人家族。
予告編を観て、彼らが、塀を隔てた向こう側で
行われていることに全く無関心でいる
映画なのだろうと、想像した。
そして、塀の向こうで行われている歴史に残る
残虐な行為に どこかで気付き、家族たちは
恐ろしくなるのか、どうにかなるのだろうと
予想したが、全く違った。

何も起こらないんだ。

アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスと
その妻、5人の子供たちと家政婦は、
収容所の隣で、幸せそうに暮らす。
が、塀の向こうから、時折、怒号や悲鳴とも
とれる人の声、銃声、そして不気味な物音が聞こえ、
煙突からの煙と炎が上がる。

きっとそのうち、収容所のえげつない場面が、
出て来るんだろうと思っていたけど、
収容所の中は全く映らないんだ。
音と煙だけ。
そして、たぶん臭い。
収容所の中のことは、観客に委ねられているんだ。

これは、ある種のホラー映画だと思った。

登場人物、つまりルドルフの家族や家政婦は、
収容所からの音や声、煙突の煙に
ひと言も言及しない。
ルドルフは昇進するんだけど、
彼の仕事は、ホロコーストの遂行なんだ。
そして、出世して転勤になるんだけど、
妻は、収容所の隣の暮らしを気に入っており、
夫に付いて行かないんだ。
そう、現代でも転勤族あるあるの単身赴任。
ホロコーストの裏側で、全く何でもない、
日常がくり広げられており、その二つには
接点が見えないという恐ろしさ。

妻の母親が、会いに来るのだが、
数日後に突然いなくなる。
彼女は塀の向こうの異常さを
感じたのではないだろうかと思った。

後半、現在のアウシュビッツ収容所(博物館)の
シークエンスが挿入されるのだが、
その直前にヘスが吐くのがなんとも気持ち悪い。

しかし、あの無関心な家族を誰も責めることは出来ないだろう。
観終えてから、あれは、自分自身なんだと思い、
もう一度、気持ち悪くなった。

ヘス役は、クリスティアン・フリーデルというドイツの役者。
妻役は『落下の解剖学』のザンドラ・ヒュラーだ。
監督は英国のジョナサン・グレイザー。
音響も不気味で凄い(効果的)なと思ったら、
アカデミー賞で、国際長編映画賞と音響賞を受賞していた。
(その他3部門でもノミネート。他にもたくさん受賞。)

残酷なシーンが一切ないのに、怖いという映画。
これが人間の本性なのかもな。
結末を知った上で、もう一度観たい。


★★★★★


2023年製作/105分/G/アメリカ・イギリス・ポーランド合作
原題:The Zone of Interest
劇場公開日:2024年5月24日





2024.5.28

スターダイナ―でバイトしてたよね?

今から30年ぐらい前、まだ私が大阪に住んでいた頃、
大阪ミナミの桜川に「スターダイナー」という
ライヴハウスがあった。
そこでは、何度もライヴをやらせていただいて
お世話になった覚えがある。

当時、私は自分のインスト曲を中心に演るバンドの
ほかに、セッション的なバンドにも参加していた。
バンド名も忘れたけど、男性と女性のツインボーカルで、
中々カッコよかったんだ。
私の記憶が間違っていなければ、
女性ヴォーカルの彼女は、前述のスターダイナ―で
アルバイトをしていたと思う。
私は彼女の歌が良いと思ったので、
ギターとのデュオをやりたかった。
もしかしたら、1曲2曲、何かのライヴの折に
演ったような気もするが確かでない。
店の常連のおっさんが、彼女の歌を気に入っていて
私にその良さを力説していた覚えもある。

そのバンドのことも、彼女のこともすっかり
忘れていたのだけど、ある YouTube 動画で
彼女が歌っているのを見つけた。

それは、ギターの村山義光さんとのデュオだった。
村山さんのことは、ギターの馬場孝喜さん繋がりで
知ったのだけど、凄いギタリストなんだ。
もう村山さんとデュオでライヴをやっている時点で
彼女の歌も凄いということなんだ。

彼女は、2021年にピアノとデュオの CD "We Are Here" を
発表していたんだけど、すでに売り切れていた。
なんとか中古を見つけて購入。
ピアノは、荒武裕一朗さん。
これが素晴らしかった。

あれから30年、ジャズ・シンガーとしての
彼女の成長と成熟に唸らされたよ。
彼女は、私のことはきっと覚えていないだろうけどね。

と、ここまで書いて、ちょっと不安になった。
人違いだったらどうしよう……(汗)
ご本人に会うことがあったら、訊きたい。
「スターダイナ―でバイトしてたよね?」


小柳淳子 "We Are Here"






2024.5.29

渡辺貞夫 meets 海野雅威トリオ
プレイ・スタンダーズ




今月二度目の渡辺貞夫さん。
貞夫さんが MCで「僕はゲストなんですけど」と
言っていた。
元々は海野さんのトリオに貞夫さんがゲストと
いうことだったのかも知れないけど、
ライヴは貞夫さんのバックを
海野トリオが務めたという感じだった。
演奏でも MC でも完全に貞夫さんのライヴだった。
海野さんは、ひとことも喋らず。
でも海野さんは、とても嬉しそうにされていたので、
良かったんだと思う。

ジャズ・ピアニストの海野さんのことは、
2020年のニューヨークでの暴行事件で知った。
彼は日本で活動後、2008年28歳で渡米し、
ニューヨークでゼロからスタートし、かなり認められる
存在になっていた。
2016年には、ロイ・ハーグローヴのバンドに
日本人初のメンバーとして迎えられた。

2020年の事件は、コロナ禍、ニューヨークで
アジア人だということで(中国人だと思われた可能性もある)
暴行を受けたらしい。
骨折を伴う大怪我で、二度とピアノが弾けないかも
知れないほどだったという。
私のように海野さんのことをこの事件で知った
音楽ファンも少なくないだろう。
なんとも皮肉なもんだ。

そんな海野さんのピアノを聴くのは初めてだった。
海野さんのピアノは優しく、変な表現だが
礼儀正しく、それでいてたくさんの曲のフレーズが
散りばめられ、聴いていて楽しかった。
怪我から完全に復帰を果たし、こうして日本でも
ライヴができるようになって本当に良かった。
ベースとドラムのおふたりも良かった。
貞夫さん(91歳!)も、元気そうで何より。
時々、曲名が出て来なかったりしたけど、
そんなん60歳でもあるからな。
演奏は、今日もパワフルだった。
今夜は「プレイ・スタンダード」ということで、
『I'll Remember April』、
3拍子で『Body And Soul』、
『The Shadow Of Your Smile』など。
アンコールは、海野さんとのデュオで、いつもの
『Carinhoso』。
とてもピースフルなライヴでした。


[ MEMBERS ]
渡辺貞夫 (as)
海野雅威 (pf)
吉田豊 (ba)
海野俊輔 (ds)

[ SETLIST ]
1. LAURA
2. I'LL REMEMBER APRIL
3. TADD'S DELIGHT
4. OLD FOLKS
5. LAMENT
6. BODY AND SOUL
7. EU SEI QUE VOU TE AMAR
8. THE SHADOW OF YOUR SMILE
9. I CONCENTRATE ON YOU
10. PARKER'S MOOD
11. LIFE IS ALL LIKE THAT
EC. CARINHOSO (pfとデュオ)
LiveFans のサイトより)


[ 関連記事 ]
暴行事件に関する記事
2020/10/27 東洋経済オンライン





2024.5.30

流浪の月



広瀬すず、松坂桃李 主演の映画『流浪の月』。
劇場公開された時に賛否があって、
気になっていたのに見損ねていた作品だ。

監督は、『フラガール』『悪人』『怒り』など記憶に
残る作品が多い李相日(リ・サンイル)。
原作は、本屋大賞受賞した凪良ゆうの小説。

これは、また難しいテーマの作品だ。
これを純愛と観るか、異常愛と観るかは
個人の感性と価値観に因るだろう。

以下、ネタバレ含む。

家に帰りたくない少女・更紗(さら)を
自宅に招き入れた若者・文(ふみ)。
その時点で、文は社会からは誘拐犯になってしまう。
更紗が家に帰ると、ある被害に遭うことから
守っていたとしてもだ。
文は更紗を、誘拐したわけではないが、
当然家族からは捜索願が出されるわけで、
いつか見つかってしまう。

十数年後、更紗と文は偶然再会する。
その時、更紗には結婚を前提に同棲している
彼氏・亮がいるのだが、この亮という男が
とことんイタイやつで、見ていられない。
演じるのは、横浜流星。
中々のイタイ男を演じております。

結局、世間(社会)は、更紗と文のことを
色眼鏡でしか観ることができない。
何も分かることができない。
警察は、市民を守っているつもりで、
実は酷いことをしていると、分からない。
否、そう言い切ってしまうのも、どうかなと
立ち止まる必要があるようにも思う。

時には「善悪」さえ、心もとないんだ。

その背景には、文が病気であることが最後に明かされる。
ここには、身体の問題と心(精神)の問題と
ふたつあると思うのだけど、文はずっとそのことで悩み続けていた。
そこで、それまで散りばめられていた伏線が回収されていく。
「誘拐犯にされるより、人に知られたくないこと」は何か。
母親に「僕の事も出来損ないだと思っているの?」と
迫ったのは何故か。
その難しい役を松坂桃李が、演じる。
『空白』でもそうだったけど、この人こういう精神的に
追い詰められた役のイメージ付いてしまいそう。

広瀬すずちゃん、いつまでも子供だと思っていたら
いつのまにか、濡れ場(というほどでもないけど)を
演じる大人になっていただんだね。
おじさん、ショックだったよ……(なんで?)

最後に更紗と文は一緒にいることを選択する。
世間からどんな目で見られようとも、
それが、ふたりの一番の望みなんだ。
きっと前途多難だろうけど、互いを理解し合える
唯一の存在と一緒にいられることは、
祝福したいと思った。


★★★★☆


2022年製作/150分/G/日本
劇場公開日:2022年5月13日

Amazon Prime Video で鑑賞



ひとりごと