2023年7月
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2023.7.1
ハンバーグが食べたい! #24
ラムバーグ / LambU
★★★▲☆
以前から気になっていた、恵比寿駅前の
羊焼肉屋「LambU (ラムユー)」に
ランチに入ってみた。
ランチは、ラムステーキとラムバーグが
あるのだが、欲張って盛り合せプレートを注文。
ステーキとラムバーグのセット、サラダ、スープ、
ライス付き、2,200円だ。
ステーキの量は増量できるが、
今回は 100グラムにしてみた。
ラムバーグは 150グラムだと思う。
トッピングが5種の中からひとつ選べるので、
山わさびをチョイス。
先日食べた新大阪駅のハンバーグも
そうだったけど、ここもレアで提供され、
自分で鉄板で仕上げるタイプだ。
好き嫌いが分かれるだろうけど、
余計に油が飛ぶので、この方式は
私は余り好きではないな。
それに、もう少し焼きたいと思っても
鉄板が冷めてしまうともう焼けない。
それなら、厨房で仕上げてくれた方が
良いような気がするのだが、どうだろう。
ステーキの方は、臭みやクセのないラム。
バーグの方も、言われなければラムだと
気付かないだろうと思った。
そういう意味では、ラム好きにはやや物足りないかもな。
写真を撮り忘れたので、メニューの写真。
2023.7.3
真夜中の辞典
先日、深夜に YouTube を観ていると
坂崎幸之助(アルフィー)と北山修が
出ている映像を見つけた。
北山修は、名前に聞き覚えがあったが、
誰だか思い出せなかった。
北山は、ザ・フォーク・クルセダーズ(略して
フォークル)のメンバーだった人で、
作詞家、精神科医、心理学者だ。
見つけた映像は、2010年の九州大学、
定年退職を記念しての「さよならコンサート」の
映像で、何本にも分かれて YouTube に
アップされている。
ゲストには、杉田二郎、南こうせつ、
デビュー前のフォークルのメンバーなど。
語られる内容は、とても興味深かった。
その映像を観ていて分かったけど、
フォークルの大ヒット曲
『帰って来たヨッパライ』のセリフ、
「なぁ~お前、天国っちゃううとこは
そんなに甘いもんやおまへのや
もっとまじめにやれ」という神様の声が、
北山だったんだ。
北山についてググっていると、
「自切俳人(じきるはいど)」という
文字が目に入った。
彼の芸名の一つだ。
その途端、何十年も意識の奥深くに眠っていた
記憶が突然飛び出してきた。
「自切俳人!」
「ジーキルハイドの オールナイトニッポン、
ジーキルハイドの オールナイトニッポン」という
ジングルまで頭の中で流れ出した。
中学生時代、その語り口に惹かれ、
何度も聴いたラジオ深夜放送が
「自切俳人のオールナイトニッポン」だった。
当時は、自切俳人が『帰って来たヨッパライ』の
人だとは知らなかった。
オールナイトニッポン以外で自切俳人の
名前を聞くこともなかったように思う。
北山修の検索の結果の中に
「真夜中の辞典」という言葉があった。
再び深い記憶が反応した。
「真夜中の辞典!」
「真夜中の辞典」は、
「自切俳人のオールナイトニッポン」の中の、
聴取者から募集した言葉で辞典を作ろうと
いうコーナーで、楽しみにしていた覚えがある。
中学2年生だったと思うけど、
私も思いついたことがあって、ハガキを送った。
自切俳人の放送は、木曜日だったようだが、
25時からの放送まで中学生の私は、
毎週、起きていることはできなかった。
ハガキを送った翌週は、聴かずに寝てしまったんだ。
しかし、放送日の翌日、
姉が学校で友人から聞いたらしく、
「昨日、眞也のハガキ読まれてたらしいで」と言った。
もう記憶が曖昧だけど、ハガキを送ったことは、
誰にも、姉にも言ってなかったような気がする。
だから、姉がそんなことを言うのは、
本当に私の名前がラジオで言われたのかも
知れないと思いながらも現実味がなかった。
それから数日後に、放送局から景品が
送られてきた。
番組でハガキが採用されると、
何か景品が送られてくるのだ。
それは当時人気のあったアイドル、
松本ちえこの顔がデザインされた Tシャツだった。
私は、特に彼女のファンでもなかったので、
あまりうれしくなった覚えがある。
話しはそれるが、松本ちえこがどんな活動をしていたか
全く覚えていないので調べてみると、
バスボン・シャンプーの CM で人気が出て
その後、『恋人試験』という曲がヒットしている。
同年代の人には「あーそうそう」という感じだろう。
『真夜中の辞典』は、自切俳人(北山修)
監修で 1978年に出版されていた。
本になっていたなんて、知らなかった。
聴取者から募集した言葉を編集したものとあるので、
もしかしたら、私の投稿が載っているかも知れない。
何を書いたか全く覚えていないし、名前が
載っているかどうかも分からないのだけど、見てみたい。
手に入らないかと探してみると
ヤフオクやアマゾンで、5000円前後している。
う~ん、どうしようかと迷っていると
メルカリで 1650円で発見!
即、購入!
その『真夜中の辞典』が、今日届いた。
結果から言うと、執筆者という名目で
数百人の名前が連ねてあるのだが、
残念ながら、私の名前はなかった。
あとがきには「放送で読まれた原稿が
全て掲載されているのではなく、
活字にして見ごたえのあるものを
掲載させて頂いています」とある。
残念ながら、中学生の原稿は、活字には
耐えられないレベルだったんだろうな。
それにしても、45年も経ってこの本を
手にするなんて、スゴイなと思う。
入手したものは、年代の割には
痛みの少ない良品でした。
[ 参考 ]
ザ・フォーク・クルセダーズ:
1967年の解散を記念に制作した自主制作盤のアルバム
『ハレンチ』に収録されていた『帰って来たヨッパライ』が、
ラジオで流れたのをきっかけにフォークルは、
解散ではなくプロへの道を歩むことになる。
デビュー前のフォークルのメンバーは、北山修、
加藤和彦、平沼義男であったが、平沼は家業を次ぐことを
決めており、プロデビューを断った。
平沼の代わりにはしだのりひこが参加。1968年『帰って来た
ヨッパライ』は、史上初のミリオンヒットとなった。
2023.7.5
Earl and The Ladies Grey LIVE
ずい分久しぶりに辻本明子さん (vo) の
ライヴに行ってきた。
いつ以来だろうと記録を見てみると、
2008年の(今はなき)Jay-J's Cafe での
ライヴ以来、なんと15年ぶりだった。
辻本さんとは、2006~08年あたりには
ライヴをしたり、辻本さんの生徒さんの発表会の
伴奏をお手伝いさせて頂いたりした。
この1~2年、またお会いする機会が増えてきている。
今日のライヴは、ピアノ、ベース、ヴォーカルというトリオ。
辻本さんが、ずっとやりたかったという、
ベースとヴォーカルのデュオも何曲も聴けた。
これはベースも歌も難しいだろうなぁ。
でもその分、取り組みがいがあろうというものだ。
詞の朗読、ピアノの連弾、ベースとのデュオ、
そしてトリオによる演奏とバラエティなプログラムでした。
ハコは、初めて行った Tonalite という
赤坂にあるお店。
Tonalite(トナリート)はフランス語で
「調性」とか「音色」という意味らしい。
[ MEMBERS ]
辻本明子(vo, pf)
東儀かな江(pf)
カイドーユタカ(b)
@ Tonalite(赤坂)
2023.7.6
カレーはスポーツだ! #62
チキンカレー / サラ・アンダルーサ(恵比寿)
★★★★▲
以前にも一度だけ、ランチでカレーを
食べたことのある サラ・アンダルーサ。
その日はエビカレーだったが、今回はチキンカレー。
「本日のカレー」となっているので、
日替わりなのかもしれない。
前菜、ソフトドリンクが付いて1,200円。
ルーの感じ、辛さ加減、チキンの煮込み具合など、
結構 私好みでした。
トッピングの焼いた野菜もグッド。
2023.7.7
千紫会 公募 万紅展
友人のT君は、もう長く「書」をやっている。
昨年11月に「丹治思郷 生誕百年 記念展」に
行ったが、T君は丹治先生の弟子だった。
「だった」というのは、2015年に丹治先生は、
91歳で亡くなられた。
国立新美術館(六本木)で開催中の
「千紫会(せんしかい)公募 万紅(ばんこう)展」に
T君の書が展示されているというので、観に行ってきた。
千紫会は、丹治先生の先生(金田心象)の
先生にあたる鈴木翠軒(すいけん)が
作った会で、前身の「鈴木翠軒一門展」から
数えると今年で80年の歴史を持つ。
今日はT君(現在は三重県在住)も
会場に来る予定で、久しぶりに会えると思っていたら、
コロナに罹ったらしく、来れなくなってしまった。
これが今回のT君の作品「自他共楽」。
額の高さは、150センチほどあるだろう。
妻が毎年年明けに講演している「新年創作の会」の
今年のテーマが「自他共楽」だったのだ。
和歌をさらさらと書いた書が多い中、
とても力強さを感じる書でした。
ところで、今日7月7日は、父の誕生日。
生きていたら、93歳だ。
2023.7.9
浅草演芸ホール
久しぶりの寄席、浅草演芸ホールへ行って来た。
友人の息子、現在アメリカ留学中の大学生の
K君が、夏休み帰国中で、先日会ったおりに
落語の話になり、一度もナマで落語を聴いたことが
ないというので、今日の企画となった。
私も若い頃は、落研の友人の落語しか
聴いたことがなく、本物の落語をナマで聴いたのは、
50歳を過ぎてからだ。
アメリカ留学しているなら、尚更この日本独自の
古典芸能を知って欲しいと思ったのは、老婆心か。
今日寄席に行くことは、決まっていたけど、
どの寄席に行こうかと調べていると、
浅草演芸ホールの夜の部の出演者がスゴイことを発見。
隅田川馬石、古今亭菊之丞、柳家喬太郎、
古今亭志ん輔、春風亭一之輔、柳家三三、
柳亭市馬など、私にとっては、
こんな日があるのか、というラインナップだった。
K君のアルバイトの都合で、柳亭市馬、
トリの柳亭こみちが聴けなかったのは、
残念だったが、それでも十分に落語、
そして寄席の魅力は伝わったんじゃないかと思う。
そして、私的には今日も初めての演目が
あったことが嬉しい。「浮世根問」。
「鍋草履」もナマで聴くのは
初めてだったと思う。
【 出 演 】
桂枝平(前座) 「浮世根問」
柳家小はだ 「転失気」
柳家小八 「小言念仏」
のだゆき (音楽パフォーマンス)
古今亭菊之丞 「鍋草履」
隅田川馬石 「鮑のし」
ホンキートンク (漫才)
柳家喬太郎 「同棲したい」
柳亭燕路 「片棒」
翁家勝丸 (曲芸)
古今亭志ん輔 「紙入れ」
春風亭一之輔 「夏どろ」
柳家三三 「道灌」
林家楽一 (紙切り)
柳亭市馬と夜の部主任、
柳亭こみちは聴かず。
@浅草演芸ホール
それにしても、あれだけたくさん聴けて、
楽しめて、その気になれば、
9時間居れて、3,000円というのは安いね。
2023.7.10
ジョン・ウィリアムズ来日
9月に アメリカ映画音楽の巨匠、
ジョン・ウィリアムズが来日する。
「ドイツ・グラモフォン創立125周年
Special Gala Concert」だ。
「ドイツ・グラモフォン」は、世界No.1の
老舗クラシック・レーベル。
映画音楽好きの私だが、実は、
ジョン・ウィリアムズの曲で音楽として
好きだという曲は意外にない。
『スター・ウォーズ』、『スーパーマン』、
『E.T.』、『ジョーズ』など映画音楽として
素晴らしいと思うのだが、「音楽として好き」と
いうのは、単純に楽曲として聴きたいか、
ギターで演奏したいと思うかどうかなんだ。
そういう意味では、好きな曲は、
エンニオ・モリコーネが一番多くて、
チャーリー・チャップリン(スマイル/ライムライト)、
ニーノ・ロータ(太陽がいっぱい/ロミオとジュリエット)、
ミシェル・ルグラン(シェルブールの雨傘 )、
ジェリー・ゴールドスミス(パピヨン)、
ヘンリー・マンシーニ(ひまわり)など、
やはりメロディが美しいものが好きだ。
ジョン・ウィリアムズの曲が美しくないわけでは
ないのだが、同じ映画音楽でも、ちょっと毛色が
違う感じなんだ。
彼は、SF やアクション、パニックモノが多いから、
音楽が違うというより映画のジャンルかも知れないけど。
とはいえ、現在91歳のジョン・ウィリアムズ。
これが最後の機会だろうから、
彼がタクトを振る姿を一度は観ておきたい。
と思って、チケット料金を観たら・・・
VIP席:\50,000
S席:\37,000
A席:\30,000
B席:\25,000
P席:\20,000
会場は、サントリーホール。
オケは、サイトウ・キネン・オーケストラで
指揮は、ジョン・ウィリアムズ と
ステファン・ドゥネーヴ。
すでに プログラムも発表されている。
あまり、私が知っている曲はないのだが、
ジョン・ウィリアムズがタクトを振る
『スーパーマン・マーチ』は、聴いてみたい。
VIP席でなくても良いが、どうせ観るならS席かA席。
うーむ、どうしたものか。
思ったより高いやん・・・
しばし考え中。
久しぶりの「死ぬまでに観ておきたい
アーティスト・シリーズ」、悩ましい。
--- プログラム ---
(前半)
I.雅の鐘
II.Tributes (for Seiji)
III.『遥かなる大地へ』組曲(映画『遥かなる大地へ』から)
IV.『E.T.』交響組曲(映画『E.T.』から)
-遥か300万光年の彼方から
-スターゲイザー
-フライング・テーマ
【指揮:ステファン・ドゥネーヴ/サイトウ・キネン・オーケストラ】
(後半)
I.スーパーマン・マーチ(映画『スーパー・マン』から)
II.ヘドウィグのテーマ(映画『ハリー・ポッターと賢者の石』から)
III.不死鳥フォークス(映画『ハリー・ポッターと秘密の部屋』から)
IV.ハリーの不思議な世界(映画『ハリー・ポッターと賢者の石』から)
V.シンドラーのリストのテーマ(映画『シンドラーのリスト』から)
VI.レベリオン・イズ・リボーン(映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)
VII.王女レイアのテーマ(映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から)
VIII.王座の間とエンドタイトル(映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から)
【指揮:ジョン・ウィリアムズ/サイトウ・キネン・オーケストラ】
2023.7.11
怪 物
カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した、
是枝裕和監督の映画『怪物』を観てきた。
予告編で聞いた「怪物だーれだ?」という
言葉から「観点によって違う人が怪物に見える」
という映画だと勝手に思っていたら、違った。
確かに観ようによっては、怪物は
あの人だったりこの人だったりするのだけどね。
イジメ、隠ぺい、モンスターペアレンツ、
毒親、児童虐待、デマ、そして LGBT。
軽く思い出しただけでこれだけの社会問題が、
この物語にはぶち込まれている。
そんな背景で、子供達によって、
教師達によって、無責任な人達によって
事実は捻じ曲げられ、問題の本質は
見えなくなってしまうが、大人達は、
保身と自分の正しさに一生懸命で、
そのことに気付けない。
いや、もしかしたら、問題の本質なんて
どうでも良いのかも知れない。
登場人物は、特別な人間ではなく、
どこにでもいる母親、子供、教師たち。
つまり、怪物は「どこかの誰か」ではなく「私だ」。
いうのは、あまりに安易で薄っぺらいか。
ラストシーン近く、湊(主人公)の
「生まれ変わったかな」という問いに対する
星川(主人公の友達)の言葉と
つかみどころのないキャラの校長先生の
あるひとことが心に残った。
一度でこの映画を理解するのは難しいが、
ラストに感動とは呼べない、意味不明な
カタルシスめいたものを確かに感じた。
それが何だったのか、言語化 出来ずにいる。
音楽は、本作が最後の映画音楽となった坂本龍一。
きっと、どこかでその事読んだんだけど
すっかり忘れていて、途中の劇伴の
ピアノがスゴイなと思ったら、教授だった。
そのピアノの音もカタルシスめいた何かに
一役買っているのは間違いない。
小学5年生の麦野湊を演じる黒川想矢、
その友達・星川依里を演じる柊木陽太、
このふたりともが素晴らしい。
湊の母親、シングルマザー役には安定の安藤サクラ、
担任教師に 永山瑛太、教頭には
すっかり役者になった感の「東京03」の角田、
(あんまり真面目な役やらないで欲しい)
そして、校長先生に田中裕子
(樹木希林亡き後、老婆を怪演出来るのは
この人かもしれない)。
そのほか、中村獅童、高畑充希など。
★★★★☆
ところで、コロナ以前は、まるで中毒の様に
映画を観たかったのに、最近は映画館に
足を運ぶ回数がめっきり減ってしまった。
音楽ライブも同様に2020年21年は、
激減だったけど、今年はもう以前のペースに
戻っているんだけどな。
映画は毎週のように行っていると、
予告編を観て、次々と観たい映画が
出てくるということもあるだろうな。
以前は平日の夜に2本観ることも
珍しくなかったけど、今はそんな気にならない。
60歳を過ぎて少し気力体力が衰えたかも
知れないと、自分の加齢を思うのであった。
せっかくシルバー料金で観られるようになったというのに。
2023.7.12
ぼくたちの哲学教室
Young Plato
昨日、コロナ以降めっきり観る映画の数が
減ってしまったと書いたところだが、
今日も劇場に行ってきたよ。
2日続けて映画を観るなんて、
ずい分と久しぶりだ。
観てきたのは、ドキュメンタリー映画の
『ぼくたちの哲学教室』。
原題は『Young Plato』。
「Plato」って何かと思ったら、
古代ギリシアの哲学者でソクラテスの弟子、
プラトンのことだった。
つまり「若いプラントン」というタイトルなんだ。
残念ながら、この数日の睡眠不足のせいか
始まって間もなく10分か15分ぐらい
寝落ちしてしまった。
北アイルランド、ベルファストという街にある
ホーリークロス男子小学校。
そこでは、小学校なのに「哲学」が
主要科目になっている。
ここの校長先生が素晴らしい。
哲学の基本は、考えること。
誰かが言ったことを鵜呑みにし、自分の
考えを持たないこと、即ち「思考停止」が
哲学から一番遠い。
登場する児童たちは、何年生か分からないけど、
いずれにしろ小学生だ。
その小学生の発言、対話の力に驚いてしまった。
大人だ。
おそらくだけど、日本の小学生の多くは、
こんな風には話せないんじゃないか。
いや、話せないというより、自分の考え、
意見というものを明確に持っていないんじゃないかと思う。
それは、歴史的・文化的・民族的背景も
あるだろうけど、教育のコンテクストが
違うように感じた。
北アイルランド紛争により、
プロテスタントとカトリックの対立が
長く続いた街ならではの教育なのかもしれない。
どんなに考えること、話し合うこと、対話することを
教えても小学生男児はケンカを繰り返す。
だって大人が何千年も続けてきたことだもの。
しかし、そんな風に諦めて投げ出してしまうことは、
思考停止を意味することになる。
人類は、永遠に問い続けるために
存在しているのかも知れない。
父親に「殴られたら殴り返せ」と教えられている
男子生徒のことが取り上げられ、
生徒と校長先生がやり取りするシーンが秀逸。
個人的には本作のハイライト。
感動してしまった。
そんなに甘くないのは知っているけれど、
希望に満ち溢れている。
人類は暴力で問題解決を図ってきた。
(問題は解決しないけどね)
子供たちには、新たな憎しみの連鎖を
断つ力があるとケヴィン校長は言う。
それが哲学だと。
小学生の間に争うことではなく、対話すること、
考えることを世界中の人が身に付ければ、
本当に地球から争いがなくなるかもしれない、
と思ったよ。
世界平和のキーは、宗教でも道徳でもなく、
哲学かも知れないな。
哲学とエルヴィス・プレスリー(校長が大好き)
という組合せも良かったな。
★★★★▲
公式サイト
原題:Young Plato
監督:ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ
製作国:アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス
上映時間:102分
2021年製作
2023.7.13
カレーはスポーツだ! #63
本日の2種あいがけカレー
/NAIZO CURRY(恵比寿)
久しぶりの再訪、NAIZO CURRY。
約9ヶ月ぶりだったけど、
「本日の2種あいがけカレー」は、前回と同じ
「ココナッツキーマカレー」と
「味噌ホルモンスパイスカレー」の組合せだった。
税込1,000円なり。
「ココナッツキーマカレー」は、以前食べて
美味しかった覚えがある。
しかし、一口目で「あれ?」と思った。
もっと美味しかったようないがしたからだ。
しかし、カレーという食べ物は不思議で、
食べているうちにどんどんと美味しくなっていく
という体験を何度もしている。
今回もそんな感じだった。
「味噌ホルモンスパイスカレー」については、
前回とほぼ同じ感想。
これは、カレーのようでカレーでない料理だと思う。
ココナッツキーマカレー
★★★★☆
味噌ホルモンスパイスカレー
★★★☆☆
2023.7.16
60歳のある日に思うこと その2
20代の頃、こんな話を聴いた。
70代だか80代だかの芸術家の話。
「その芸術家が亡くなったあと、
彼のアトリエには、20年分ぐらいの
材料があった。」
その話を聴いた20代の私は、
そういう生き方に憧れた。
人生を諦めるのではなく、
永遠に続くかのように生きることに
憧れたのだ。
60歳を過ぎて、まだまだやりたいことが
ある自分を観ていて、
「いいじゃないか、やりたいことが
たくさんあって」と思う一方で、
今まで思わなかった考えが出てきた。
それは、「生への執着」じゃないか、
「やりたいことがたくさんあるなんて、
エゴ以外の何物でもないじゃないか」
という考えだ。
じゃあ、その対局にあるのは、
どんな考えかと問われると
答えに窮してしまうのだけど。
その考えに至るには、
母親の物への執着や、
自分の物への執着がきっかけだった。
現在20本以上のギターを所有していて、
それでも、まだ欲しいと思う。
「何も欲しいと思わないよりは、
欲があるのは、いいじゃないか」
と思う一方で「なんだこの執着は」と
俯瞰する自分もいるんだ。
これからの残りの人生は、
手に入れる人生ではなく、
手放す人生なんだ。
そういう時期に入ったんだ、
と思うこの頃。
でも、中々手放せないんだけどね。
2023.7.17
サントメール ある被告
SAINT OMER
被告人らしき黒人女性の写真と
「彼女は本当に我が子を殺したのか?」
というコピーの書かれた広告を観て、
てっきりアメリカの法廷サスペンス映画だと
思って観に行ったら、全く違った。
まあ、難しかった。
フランス映画らしいよく分からない終わり方。
タイトルの「サントメール」というのは、
舞台となるフランス北部の町の名。
そこで、実際にあった裁判をベースにした物語で、
実際の裁判記録をそのまま
セリフにしているという。
セネガルからフランスに留学してきた女性が、
高齢のフランス人男性との間に子をもうけるが、
15ヶ月のその子(娘)を砂浜に置き去りにし
殺してしまう。
なぜ、彼女は我が子を殺したのか。
裁判で、その供述が長々と続く中に
時々、その裁判を傍聴する作家(?)の
シーンが挟まれる。
いちいち、きっと意味があるんだろうけど、
うーん、よく分からん。
ラスト近くで、弁護士が語ることが、
この映画の肝なんだろうけど、
これまたよく分からん。
私には難しすぎた。
これはね、フランスのこと、セネガルのこと、
移民のこと、民族的な背景、そして母性についてや
母と子のこともよくよく知っていないと
理解できない映画だと思った。
★★★☆☆
監督 アリス・ディオップ
撮影監督 クレール・マトン『燃ゆる女の肖像』
キャスト カイジ・カガメ、ガスラジー・マランダ、ロベール・カンタレラ
作品情報 2022年/フランス/123分/原題:Saint Omer
受賞 2022年ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞(審査員大賞)、新人監督賞 受賞
2023.7.20
羅 生 門
数日前のこと、急に映画『羅生門』が
観たくなって、夜中にアマゾン・プライム・ビデオで観た。
たぶん20年以上前にビデオで観たのだけど、
その時は「変な映画」という感想だった。
その後、本作についてどこかで
「何が真実かなんて分からない」、
「真実なんてないことを描いている」と聞いて、
なるほどそういう意味だったのかと
分かったような気になった。
先日観た映画『怪物』も『羅生門』ほどでは
ないけれど、同じ場面でも主役が変わることで
違うシーンに見えてしまうという手法を取っていた。
こういうのを「羅生門効果」というのかな。
さて、真実なんてない、
という映画だと思っていた『羅生門』。
改めて観て、ウィキペディアの解説などを読んで
分かったのは、これは人間の虚栄心の
映画だということだ。
人は、何かを語る時、自分を良く見せようとする。
自分に都合の悪いことは言わない。
それが極端になると『羅生門』のようになってしまう。
殺人事件の当事者の3人は、
それぞれ全く違うストーリーを語った。
おそらく、当事者ではなく、客観的に
観ていた男の話が、本当に近いんだろうけど、
その男の話にもやはり、嘘が混ざっていた。
人間の見栄は、どうしようもなく、
世界を支配しているんだな。
しかし、だからと言って人間が信用に
値しないのではないよ、と最後に
希望を見せている。
ちょっと説明を聞かないと
私には難しい映画だと思った。
1951年、ヴェネツィア国際映画祭でグランプリを獲り、
それから、各国映画祭から日本映画の
出品要請が来るようになり、日本映画の
配給を要望する海外の映画会社も増えたのだという。
日本の映画界を変えた作品なんだ。
★★★▲☆
監督 黒澤明
脚本 黒澤明、橋本忍
原作 芥川龍之介『藪の中』
出演 三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬、千秋実
公開 1950年
2023.7.21
T O T O
今から45年前、私が16歳の時に好きになった
アメリカのロック・バンド「TOTO」。
もう当時のメンバーは、ギターの
スティーヴ・ルカサーひとりになってしまった。
だから、今年の来日のニュースを知った時、
「もう観に行かなくていいかな」とも思った。
でも、やっぱり自分の青春時代(?)に
彩りを与えてくれたバンドだ。
これが最後になったら観ておけば良かったと
後悔するのは間違いない、と
思い直しチケットを取った。
福岡から始まったジャパン・ツアーは、
全国を周り、今日、東京武道館が
8日目で最終日だった。
来日は、4年ぶり 18回目だという。
私は、6回目。
初来日の1980年、1982年と続けて
観たあと、ずい分と間が空いて、
2011年、2014年、2016年と続けて
観たのだが、2019年はなぜか観に行っていない。
2016年には、デヴィッド・ペイチ(Vo/Key)も
スティーヴ・ポー力ロ(Key/Vo)も
いたのだけど、前述のように
今では、オリジナルメンバーは、
ルークひとりになってしまった。
ジョセフ・ウィリアムズは、長くバンドに
いるのだけど、私が好きだった初期(1982年まで)
にはいなかったので、あまり思い入れがないんだ。
ルークひとりだし、観に行くのを躊躇したと
書いたけど、観に行って良かった。
2~3年前から若いメンバーを入れて
活動しているみたいなのだけど、
この新生TOTO が素晴らしい。
とても力強い。
「今」のバンドという感じがした。
若い、スティーヴ・マッジオラ(key/vo)と
ドミニク “エグゼヴィア” タプリン(key)、
そして、ロバート “スパット” シーライト(dr)、
この3人の加入で TOTO は
完全に生まれ変わったと見たね。
ジョン・ピアース(b)は、ちょっと
おじさんだと思う。
この人、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの
ベーシストのようだ。
もう一人、ウォーレン・ハム(Sax etc)という
マルチプレイヤーも来日予定だったのだけど、
健康問題により不参加となった。
アンコール入れて1時間45分と
やや短めではあったが、本編14曲中
7曲が初期のアルバム4枚からだった。
驚いたのは『Georgy Porgy』のアレンジ。
歌に入るまで、それと気が付かない斬新な
アレンジで、オリジナルも好きだけど、
新生TOTO を象徴しているように感じた。
アンコールでは、ビートルズのカヴァーで、
『With A Little Help From My Friends』。
これが良かった。
できれば、『Child's Anthem』、『99』、
『Live for Today』、
『St. George and the Dragon』、
『I Won't Hold You Back』あたりも
聴きたかったな。
今日が、千秋楽ということもあったのか
終演時にメンバーが並んだ時に
なんだか感動があったなぁ。
スタンド2階席 南 F列で、
ステージ正面というのも良かった。
[ MEMBERS ]
スティーヴ・ルカサー(g/vo)
ジョセフ・ウィリアムズ(vo)
ジョン・ピアース(b)
ロバート “スパット” シーライト(dr)
ドミニク “エグゼヴィア” タプリン(key)
スティーヴ・マッジオラ(key/vo)
@ 武道館
[ SETLIST ]
1. Orphan
2. Afraid of Love
3. Hold the Line
4. Falling in Between
5. I’ll be Over You
( keyboard solo )
6. White Sister
7. Georgy Porgy
8. Pamela
9. Kingdom of Desire
( drum solo )
10. Waiting for Your Love
11. I’ll supply the Love
12. Home of the Brave
13. Rosanna
14. Africa
EC. With a Little Help from My Friend (The Beatles Cover)
(引用元)
TOTO 2023 ジャパン・ツアー
【福 岡】 7/10(月) 福岡サンパレスホテル&ホール
【金 沢】 7/12(水) 本多の森ホール
【名古屋】 7/14(金) 名古屋国際会議場センチュリーホール
【大 阪】 7/15(土) 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
【広 島】 7/17(月・祝) JMSアステールプラザ 大ホール
【仙 台】 7/19(水) 仙台サンプラザホール
【盛 岡】 7/20(木) 岩手県民会館
【東 京】 7/21(金) 日本武道館
来年1月には、ビリー・ジョエルが16年ぶりに来日!
2023.7.22
≪噺小屋夏スペシャル!≫
桂米團治 独演会 - 米團治の吟醸噺
久しぶりの米團治独演会だ。
開口一番は、米團治初の
女性弟子だという米舞。
「米舞」と書いて「まいまい」と読む。
現在23歳らしいが、
まだ少し幼さが残っている印象。
演目は「桃太郎」。
どんな風に育って行くのか、
これからが楽しみだな。
米團治、一席目は「京の茶漬」。
本来「上方」(鎌倉時代に都を指して
出来た言葉らしい)は、京都、大阪を
指す言葉だったらしいが、最近は京都の人は
大阪との区別(差別?)する為、
上方という言葉を使わなくなったらしい。
例えば、「上方料理」とは言わず「京料理」という風に
大阪と区別して「京」をブランドにしたわけだ。
そこには、京都人の「京都は大阪とは違う」
というプライドが込められている(たぶん)。
そんな京都人をいじりつつ、大阪人の
バカさ加減も描いた落語が「京の茶漬」。
続いて、米輝の「イルカ売り」。
通常は、どんな演目が口演されるか
落語が始まるまで分からないことが多いのだが、
今日は、プログラムに演目が印刷されている
ネタ出しの落語会だった。
(事前に演る演目を発表することを
「ネタ出し」という。)
米輝曰く、夢で出番直前に自分が演ることに
なっている演目を見て、知らない演目であることに
気付き、焦って目が覚めることがあるという。
落語ではないが、私もライブで出だしのコード進行が
分からなくて、目が覚めたことがあるので、
それに近い怖さは分からないでもない。
で、「イルカ売り」は、そのまま、目が覚めずに
高座に上がるという噺。
プログラムに「イルカ売り」と印刷されていることに
出番直前に気付いた米輝は、師匠(米團治)に
「何かの間違いではないか?『イルカ売り』なんて
演目知らない」と言いに行く。
すると師匠に「何を言うてるのや、『イルカ売り』は、
米朝一門では最初に覚える噺やないか」と言われる。
そのまま出演の時が来て、高座に上がるが、
「イルカ売り」は話せない。
なんとか違うネタで、ごまかそうとするが、
観客から突っ込まれてしまう、という噺。
中々面白かったし、何よりも米輝が、
上手くなっているのが、よく分かった。
そして、再び米團治で「らくだ」。
米團治で聴くのは初めて。
残念ながら、途中で急激な睡魔に襲われて、
くず屋が大家んちや漬物屋の所に
行く件を聞き逃した。
休憩を挟んで、米團治の「蛸芝居」。
マクラで最近大阪で演ったという「勧進帳」
(歌舞伎)の一部を披露。
素晴らしいのだが、歌舞伎ファンでないと、
本当の良さは分からないかな。
今日の会場が、銀座ブロッサムだったので、
反応を観て「さすがは銀座のお客さんです」と
米團治は言ってだけど。
「蛸芝居」も、芝居好きでないと
その良さは分からないだろう、マニアックなネタ。
今日はね、米團治が米朝に似てきたなぁ、
って思ったね。
やっぱり、師匠だし親子だからね。
[ 演 目 ]
「桃太郎」 桂米舞
「京の茶漬」 桂米團治
「イルカ売り」 桂米輝
「らくだ」 桂米團治
--- 仲入り ---
「蛸芝居」 桂米團治
@ 銀座ブロッサム中央会館ホール
2023.7.24
森村誠一 死去
作家の森村誠一氏が亡くなった。
享年90歳。
彼のことは、そのいくつかの作品名でしか知らず、
どういう人だったか全く知らなかった。
私が、中学生のとき、証明三部作
(『人間の証明』『青春の証明』『野生の証明』)
が発表されており、角川映画のブームもあって
印象に残っている。
映画『人間の証明』、『野生の証明』は、
観たが、若い頃に一冊ぐらいは
その著書を読んだような気もするが、
全くタイトルを思い出せない。
今日、その訃報のニュースをテレビで観て、
彼がとても平和を望んでいたことを知った。
『人間の証明』は、ジョー山中の唄う
主題歌も好きだけど、映画はなんとなく
微妙な印象だ。
今さらだけど、ぜひ原作を読んでみたいと思った。
『悪魔の飽食』もね。
合掌。
2023.7.27
カレーはスポーツだ! #64
カレーランチ/写真集食堂めぐたま(恵比寿)
★★★▲☆
めぐたまのカレーランチ。
キーマカレーで、サラダと甘くないヨーグルトが
付いて、1,100円(税込)。
「ヨーグルトは、そのままでも良いし、
カレーに混ぜても良いですよ」と
店員さんに教えていただいたので、
カレー混ぜて食べてみた。
カレーはさほど辛くないが、ヨーグルトも
一緒に食べるとよりマイルドになり、
これはこれでありだ。
ライスは、黒米かな。(赤いけど)
カレーには福神漬けかラッキョウが欲しいが、
その手のものが何もないのはちょい残念。
2023.7.29
ソール・ライターの原点
ニューヨークの色
渋谷、ヒカリエホールで開催中の
ソール・ライター展に行って来た。
ソール・ライターの写真展に行くのは、
もう5回目になる。
日本初の回顧展 2017年、そして、コロナ禍の
2020年にはアンコール開催を含めて3回観に行った。
ドキュメンタリー映画も2回観た。
写真集も何冊も持っている。
どうも日本人は特別ソールの写真に
惹かれるようなのだが、
何がそんなに好きなのか、どこに惹かれるのか、
それはこれから私が写真を撮る上においても
とても重要なヒントになる問いかけだと思うのだ。
私は、写真はモノクロの方が好きなものが
多いのだが、ソールに関しては
圧倒的にカラーが素晴らしい。
カラー写真で良いと思った初めての
写真家と言って良いほどだ。
彼のモノクロ写真や、画家になりたかったという
その絵画も何点も観たけれど、
彼のカラー写真ほどには好きにはなれない。
今回の展覧会は、タイトルに「原点」という言葉が付いている。
会場に入るとしばらくモノクロ写真が続いた。
「ニューヨーク 1950 - 60年代」というコーナーだ。
もちろん、モノクロを観てもソール的視点は
十分に感じるのだけど、観ていてカラーほどの歓喜はない。
その中でもソールによるポートレイト
(アンディ・ウォーホル、ユージン・スミス、
セロニアス・モンクなど)は面白かった。
モノクロのあとは、ファッション誌の写真が続く。
「ソール・ライターとファッション写真」というコーナー。
ソールは、1958 - 60年頃ファッション誌
『ハーパーズ・バザー』のカメラマンだった時期があった。
そこにも構図の取り方などソールらしさを
感じられるものも多かったが、
これらも私はそれほど好きではない。
その次のコーナー「カラーの源泉 ー 画家ソール・ライター」では、
ようやくカラー写真と絵画が、混在して展示されていた。
しかし、カラー写真はあまり数がなく、
私が期待していたような展示ではなかった。
ソールの写真は確かに絵画的だと思うのだが、
絵画ではない。
写真に見える写実的な絵が、写真ではないように、
写真は写真であり、絵画は絵画だ。
当たり前のことだけど。
絵画と写真が、混在していることにより、
より写真の素晴らしさが際立ってしまったように
感じたのは、私の思い込みか。
ソール自身、「写真を撮らなければ
もっと良い絵が描けたかもしれなかった」と
いうような発言を残しているので、
もっと描きたかったのかも知れないけれど、
私には、断然写真の方が良い。
今回は期待外れだったかな、と思いつつ
最後のコーナー「カラースライド・プロジェクション」に入った。
まず、そのイントロダクションのように
ソールの部屋が模されたコーナーの壁にで、
数十枚のスライドが映し出されていた。
そして、スライド・フィルムも展示されていた。
ソールは、生前カラープリントをあまり残していない。
確認されたプリントは 200枚あまりだという。
経済的な問題や置き場所の問題も
あったのかも知れないけれど、スライドで
観る方が好きだったのかも知れない。
その方が光が通っているので鮮やかだからね。
最後の部屋に入ると、広いスペースに
5メートル×3メートルほどもあろうかと思われる
大きなスクリーンが10面もあり、
それぞれにスライドが映し出されていた。
実際にはスライドではなく、プロジェクターなのだけど、
スライドの切り替わる「カチャ」っていう
音が効果音として流されており、雰囲気は十分だった。
何より、サイズがでかい。
大迫力でソールを楽しめる。
映し出される 250枚の作品の中には、
未発表のものも多く含まれているという。
これは、素晴らしかったな。
この「カラースライド・プロジェクション」を観に
もう一度観に行きたいぐらい。
欲をいえば、1枚の写真が映し出される
時間が もう1~2秒長いとなお良い。
「ソールの写真を観ると写真を撮りたくなる」
と以前に書いたことがあるが、今回もそう感じた。
どうして、そんな構図が、視点が思い浮かぶの?
どうして、そんな奇跡みたいな写真が撮れるの?
その問いかけは、自らシャッターを押しながら
探求するしかないのだろうな。
今回の展覧会の図録は、売り出されていないが、
昨年発売された写真集『まだ見ぬソール・ライター』が
図録的な位置づけなのかもしれない。
[ 関連エントリー ]
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2017.6.4 ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展
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2018.7.25 Early Color / Saul Leiter
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2020.1.10 Saul Leiter/ Paul Auster It Don’t Mean a Thing
2020.1.11 写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと
2020.2.1 永遠のソール・ライター Forever Saul Leiter
2020.2.16 日曜美術館「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」
2020.8.29 アンコール開催 「永遠のソール・ライター」
2022.9.16 まだ見ぬソール・ライター The Unseen Saul Leiter
コンサート・フォー・ジョージ
CONCERT FOR GEORGE
2001年11月29日、ジョージ・ハリスンが
この世を去ったのは、なんと58歳だった。
自分が60歳を過ぎるとその年齢の若さが、
改めて、身に沁みる。
そのちょうど一年後、ロンドンのロイヤル・
アルバート・ホールで、ジョージを偲んで
開催されたコンサートが、映画になって
公開されたので観てきた。
以前から、映像は流通していたようだが、
私はちゃんと観たことがなかった。
私は、特にジョージのファンというわけでは
なかったけれど、ビートルズの好きな
曲の中には『Something』、
『While My Guitar Gently Weeps』、
『Here Comes The Sun』など、
ジョージの曲も含まれている。
それらは、明らかにレノン&マッカートニーとは
違うテイストで、ジョージの才能を表現していると思う。
ソロになってからの『My Sweet Lord』も良い曲だと思う。
さて、このコンサート、ジョージとは
長年の付き合いのエリック・クラプトンが
音楽監督を務め中心になっているようだ。
出演は、ジョージと共演のある人達ばかりだろう。
エリック・クラプトン、ポール・マッカートニー、
リンゴ・スター、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、
ビリー・プレストン、アンディ・フェアウェザー=ロウ、
ジェフ・リン(ELO)、レイ・クーパー、アルバート・リー、
トム・スコット、ジム・ケルトナー、
ジョージのシタールの師匠・ラヴィ・シャンカール
(ノラ・ジョーンズのお父さん!)、その娘
アヌーシュカ・シャンカール、ビートルズが前座を
務めたというジョー・ブラウン(知らなかったけど
たぶんイギリスでは超有名なんでしょう)などなど。
ジョージがファンだっというモンティ・パイソンの
くだりには、トム・ハンクスも参加!
そして、ジョージの息子ジョージの若い頃に
そっくりのダニー・ハリスン。
素晴らしいコンサートだった。
個人的なハイライトは、ポール・マッカートニーが
ウクレレで『Something』を唄い出し、
そこにリング・スターがドラムを被せ、
エリックがオブリガードを乗せる。
後半は、バンド全体の演奏になり
エリックの歌にポールがハモるシーン。
こんなことないよね。
この2人のハモりは、
『While My Guitar Gently Weeps』
でも聴かれるのだが、この曲でエリックは、
自分のソロを丁寧に弾いていたよ。
エリックのこのコンサートへの真摯さを感じたね。
それから、ビリー・プレストンが唄う
『My Sweet Lord』も良かった。
こういう素晴らしいコンサートが、
ジョージの死によってのみ、
可能になるというのは
哀しくて皮肉な感じもするが、
ジョージの音楽の素晴らしさ、そして、
出演者のジョージへの尊敬と愛に
あふれた一夜だったと思う。
誰かがこのコンサートのことを
「感動的だが、感傷的ではない」
と評していたけどまさにそんな感じ。
メンバーや曲目のテロップが入らなかったので、
プログラムを買おうかと思ったら、
売っていなかった。
そういえば、入場時に何かくれたなと
カバンの中を見たら、表紙を入れて
8ページのプログラム的な小冊子だった。
2023.7.30
笑顔の行方
家の近くを歩いていた時のこと。
私の数メートル前を赤ちゃんをだっこした、
父親らしき男性と5歳ぐらいの女の子が歩いていた。
女の子は、おもむろに振り向くと
言葉にできないほど、めちゃくちゃかわいい
笑顔で私を見た。
もちろん会ったこともない知らない女の子。
そんな笑顔で見つめられる覚えは、
私にはなかったが、子供が笑顔でいるのに
無愛想な顔もできない、と思った私は、
彼女にこれまた精一杯の笑顔で応えた。
精一杯の笑顔を送りたくなるほど
彼女はかわいかったんだ。
女の子との距離は3メートルほどだったろうか。
その時、私の背後に人の気配がした。
自転車に乗った女性が近づいてきて、
私を抜いた。
その瞬間、女の子の笑顔が
私に向けられたものではなく、
その(母親とみられる)女性に
向けられたものであることを悟った。
そう、神様は何の理由もなく
60歳のおっさんに
天使の笑顔を送ったりはしないのだ。
いや、待てよ。
ほんの少しでも女の子の笑顔に
癒された私はラッキーか。
ちょっと恥ずかしかったけど。
安心してください。女の子は母親の方を
見ていたので、私の笑顔には気付いていません。
たぶん。
2023.7.31
トランペット・ヴォランタリー
中学生時代、私は吹奏楽部に所属していた。
小学生の頃から楽器演奏に興味があり、
5年生でギターを始めた。
軽音楽部への入部も考えた。
でもギターは、独学でもできると思ったけど、
管楽器はクラブに入らないと
出来ないと思ったんだ。
担当楽器は、一年生の時はトロンボーン、
二年生の時はユーフォニウム、
三年生になるとトランペットだった。
あの頃は、今よりももっとクラシック音楽も聴いていた。
その頃聴いた、バロック音楽を集めたアルバム
(当時は LP)にトランペットがメロディを
吹く曲があって、そのメロディがとても好きだった。
しかし、曲名を覚えていなかった。
数年前、どうしてもその曲を聴きたくなった。
そのアルバムは、テレマン(ゲオルク・フィリップ・
テレマン、ドイツの作曲家 1681ー1767)の
曲を集めたものだと思い込んでいたので、
「テレマン トランペット協奏曲」などと
キーワードを入れて検索してみたのだが、
全く見つけられず、手がかりもなく諦めてしまった。
先日、テレビをつけたら、
ちょうど『題名のない音楽会』が始まった。
バロックの特集だった。
そこで、なんとあの曲が演奏されたのだ。
オルガンとチェンバロとピッコロ・トランペット
(途中からトランペット)による演奏だった。
私はあわてて曲名をメモした。
テレマンだと思い込んでいた作曲者は、
クラーク(ジェレマイア・クラーク、イングランドの
作曲家 1674ー1707)という人だった。
曲名は『トランペット・ヴォランタリー』。
45〜6年ぶりに聴いたそのメロディ。
なんとなく気品と威厳があり、
それでいてどことなく甘美な感じもする。
調べてみると『デンマーク王子の行進曲』とも
言われているようだ。
結婚式に演奏されることが多いと読んで、
なるほど結婚式なら気品と甘美の共存だと思ったのでした。
今なら「この曲を演りましょう」と吹奏楽部の
顧問の先生に提案するだろう。
全員でやらなくても、数人のアンサンブル用に
編曲することだって出来る。
でも、当時はそんなことは思いつきもしなかった。
その曲がこれ。
Trumpet Voluntary (トランペット・ヴォランタリー)
YouTubeにはいくつかのヴァージョンがあるけど、
このブラスのアレンジが気に入った。
Wikipedia によると、クラークは
「身分が上の美しい女性に恋したことから銃で自殺」
とある。(涙)
そして、野球に詳しくないので知らなかったけど、
この曲、近鉄バッファローズの村上選手の
応援歌になってるやん・・・。