LAGUNA MOON MELLOW FLAVOR  LIVE GUITAR  LINK LYRICS



2022年 映画・演劇・舞台 etc

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2022.2.26

太平洋の奇跡
- フォックスと呼ばれた男 -




2011年に劇場で鑑賞した映画、
『太平洋の奇跡 - フォックスと呼ばれた男 -』を
DVD で鑑賞した。
今回の引っ越しで、引っ越し前に処分しきれなった物
色々を整理中なのだが、その中に本作の
DVD があった。
これは、映画を観たあと、私が父に
プレゼントしたものだが、昨年、父の遺品の中から
見つけて、持って帰ってきたものだった。

父は、昭和5年生まれで、終戦時15歳。
戦争に行きたくても行けなかった世代だ。
本当に戦争に行きたかったのかどうかは
分からないけど、子供の頃、そんな話を
誰かに聞いた覚えがある。
この映画は、ある意味、日本人の矜持を
描いているとも言えるので、父に観せたいと
思ったのだな。

細かいことは忘れてしまっていたので、
自分は、どんな感想を持ったのだろうと、
このひとりごとに書いたエントリーを読んで驚いた。
なんと、この映画を観たのは、
2011年の2月26日。
11年前の今日だったのだ。
なんという偶然だろう。

その日のエントリー。

映画は、日本陸軍の 大場栄 大尉の
実話を基にしている。
サイパンで約200人の民間人を守り抜いた人で
最後まで生き残った兵隊たちの命も救った人だ。
特典映像の出演者たち(竹野内豊、唐沢寿明、
井上真央、阿部サダヲ)のインタビューを
観ると、過酷な撮影であったことが窺える。
が、実際の戦場は、当然、映画の撮影どころでは
なかっただろう。
改めて、戦争は死ななくて良い人が大勢
命を落とす全く馬鹿げた行為だと思った。

「日本人の矜持」と書いたけど、一つ間違うと、
それは人を死に向かわせることもあることも
描いている。


★★★★☆


奇しくも先日、ロシアがウクライナに侵攻した。
すでに民間人が犠牲になったとの報道もある。
ロシア国内で起こった反戦デモの参加者をも
拘束しているという。

プーチン大統領に告ぐ、
その愚行を 今すぐにやめなさい。





2022.3.5

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
SPIDER-MAN: NO WAY HOME




TOHO シネマズ日比谷で、
ビートルズの『ルーフトップ・コンサート』を観ようと
予約していたが、上映時間まで時間があるので、
時間つぶしに『スパイダーマン』を観た。
他に観たい映画もあったのだけど、
これしか時間が合わなかった。

自分でもホントに年を取ったなぁと思うのは、
こういう映画を観たいと思わなくなった。
実際、観ている途中で、
「こういうのはもう観んでええなぁ」と
思ってしまったほど。
でも、後半ちょっと面白くなって、良かった。
でも149分はやや長い。

まあ、この手の映画はビジュアルもストーリーも
どんどん派手に過激になっていくのは、
仕方ないのだろうな。
突っ込み所もあるけど、こういう映画で、
突っ込みはなしだな。

出演者は、トム・ホランド、
ベネディクト・カンバーバッチ、
ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス、
ジョン・ファヴロー、トビー・マグワイア、
アンドリュー・ガーフィールドなど大変豪華。
IMAX で鑑賞。


★★★☆☆




ザ・ビートルズ
Get Back:ルーフトップ・コンサート

THE BEATLES: GET BACK - THE ROOFTOP CONCERT




1969年1月30日にビートルズがロンドンの
アップル・コアの屋上で行ったライヴの
ドキュメンタリー映画。
50年以上前の映画にも関わらず、
クリアな映像と音で楽しめた。
メンバーは、ビートルズの4人と
キーボードにビリー・プレストンが参加。

知らなかったのだけれど、
このライヴは、ゲリラ・ライヴだったんだ。
近隣の苦情を受けて、警官が
現場にやってくる。
「やめなければ、逮捕者が出る。
脅しじゃない」とまで言うが、
観ていると意外に呑気に見えるのは、
時代のせいだろうか。

警官達が現地に到着後、ずい分経ってから、
屋上(ライヴ会場)に上がる。
警官の姿を見たポール・マッカートニーは、
明らかにテンションが上がっている。
アドリブで「逮捕されるぞ」なんて歌っているのもスゴイ。
ついには、ギターアンプの電源を落とされるも、
演奏をやめない。
ジョージは、再びスイッチを入れて、演奏を続けるのだ。

路上の人達からは、演奏する彼らの
姿は見えないのだけど、音だけは、
しっかり聴こえている。
ゲリラ・ライヴに好意的な人達がいる
一方で、あからさまに迷惑だと批判する人達もいる。
イギリスでは、誰もがビートルズを
受け入れていたのかと思ったら、
そんなことはなかったんだな。

高齢の人が、「彼らの音楽も髪型も
受け入れているよ」と好意的なことを
言うので、インタビュアーが
「娘さんの恋人でも?」と聞くと
「(彼らは)金持ちだからOK」と
答えるのが面白かった。

結局、警官に屋上のライヴを止められたあと、
スタジオで他の曲の収録が続く。
"Let It Be" のアルバム収録ヴァージョンの
シーンも少し流れるのだが、
これは、カットなしで全部流して欲しかったな。
とはいうものの、途中で止まるテイクも
観られるので貴重だ。

ジョージ・ハリスンのギターは、
このライヴで有名になった
Fender のオールローズのテレキャスター。
ジョン・レノンは、エピフォンのカジノ。
アンプは、2人とも Fender に見えた。
ポールは、カール・ヘフナー。

曲は、"Don't Let Me Down"、"Get Back" は
複数回のほか、"Dig A Pony"、"I've Got A Feeling"
"One After 909"、"Let It Be"、"Two Of Us"、
"The Long And Winding Road"。

アルバム『レット・イット・ビー』の収録のころには
ビートルズのメンバーはもう不仲だったというような
記事を読んだ記憶があるが、この映画を見る限りは
険悪なムードは感じられず、久しぶりの人前での
演奏を楽しむ、若者の姿だと思った。
IMAX で鑑賞。


★★★★★


アート、映画、音楽に親しめる平和に感謝。





2022.3.28

ドライブ・マイ・カー



映画『ドライブ・マイ・カー』が、
アカデミー賞の国際長編映画賞
(旧外国語映画賞)を受賞した。

不思議なことに 濱口竜介監督の作品は、
一作も観たことがなかった。
私は、主演の西島秀俊にあまりよい印象を
持っていない上、原作が村上春樹と知って
観たいとは思っていなかったのだが、
受賞するほどの作品ならば観てみようと思った。
アカデミー賞を受賞したからと言って、
自分もが観て良かったと思えるわけではないことは、
過去の数々の受賞作を観て、体験済みだけど、
中には納得の受賞作ももちろんあったからね。
同賞の日本作品の受賞は、2009年の『おくりびと』
以来らしいが、あの映画も素晴らしい作品だった。

さて、『ドライブ・マイ・カー』、
上映時間は179分と長いが、
私は、全く長いと感じなかった。
前半は、とても良かった。
途中で、「先入観や既成概念で、
作品を判断するのは良くないなぁ」と
アカデミー賞を受賞しなかったら本作を
観なかったであろうことを反省したほどに
作品に引き込まれた。

しかし、後半、一番のハイライトであろうシーンで、
西島秀俊演じる家福(かふく)のセリフが、
どうにもこうにも空々しく聞こえてしまった。
「この映画で泣くとしたらここやろ」という
大事なシーンで。
もともと西島秀俊って、大きく抑揚のある
演技をするような印象がないのだが、
あまりにも淡々としたセリフ回しに、
映画との距離がどんどん離れていく感じだった。
思えば、その前あたりから、違和感が
始まっていたのだな。
(--- 以下、ネタバレ注意 ---)
岡田将生演じる高槻という役者が、
ずい分年上の、しかも自分が出ている芝居の
演出家・家福に向かって、家福の人生について
ずい分と切り込んだことを言うシーンがある。
高槻という男は、気が短く、非常に軽率な
男として描かれている。
その高槻が、こんなこと言えるだろうか、
という疑問が始まりだったような気がする。

そして、仕事の非常に大事な局面で、
家福は、「静かに考えられる場所に行きたい」と
言って、専属ドライバー・渡利みさき(三浦透子)に
渡利の実家があった北海道の村に車で行こうと提案する。
その実家は、土砂崩れで今はもうない。
その土砂崩れで彼女の母親は亡くなっていた。
「静かに考えられる場所に行きたい」と
言った人が、そんな感情が揺さぶられるような
場所に行きたいと思うのだろうかという疑問。
静かに山でも海でも見ながら考えたらええんちゃうの。
しかも、車で広島から北海道まで何時間かかるねん。
百歩譲って、行くとしても、飛行機で行って、レンタカー
借りる方が、自然だと思ったのは私だけだろうか。

前述の家福のセリフが空々しく聞こえてしまった
ハイライトシーンというのは、北海道の渡利の
実家の跡での家福と渡利の会話なのだけど、
そのシーンで、ちょっと白けてしまった私は、
ラスト・シーンでは完全に置き去りにされてしまった。
意味が分からない。
なぜ彼女は、韓国にいるの?
なぜその車に乗っているの?
その犬は、あそこにいた犬?
家福も一緒にいるの?
どういうこと?
全くもって 「??? 」な終わり方だった。

ヤフー映画のレビューで、高評価の人たちの結末の
解釈を読んで、なるほどそういうことのなのか、と思った。
これは、私の想像力不足、理解力不足だろうけど、
そうすると残念ながら、私はこの映画のターゲットから
完全に脱落している。
私には、高尚過ぎた感じだ。

高評価の人たちのレビューの中には、
そのハイライトシーンの家福の棒読み的セリフさえ、
演出のように書いていた人もいた。
そこまで読み取れんわ。

劇中で演じられる、チェーホフの
『ワーニャ叔父さん』のセリフで
家福の心中が表現されていたりするのは
面白いと思ったし、ホントに途中までは
かなり良かったんだけどな。

今日、アカデミー賞の発表があったので、
もしかしたら混んでいるのかなと思ったら、
ガラガラだった。
それもそのはずで、本作、昨年8月20日の公開で、
もう7カ月もやってるんやな。


★★★▲☆


(2022.3.30 追記)
「ええアングルと構図やなぁ」と思ったシーンが数回あった。
本作の高評価の部分として、撮影が良かったことを
付け加えておこう。





2022.4.3

コーダ あいのうた
CODA




耳の不自由な家族の中で ただ一人
耳が聞こえる女子高生がシンガーを
目指すが、家族の理解を得られない・・・。
数カ月前、この映画を知った時、
そんなあらすじを聞いて、
「あれ?その映画観たことあるぞ」と思った。

アカデミー賞を3部門(作品賞・助演男優賞
・脚色賞)受賞した本作は、2014年製作の
フランス映画『エール』のリメイクでした。

2015年に『エール』を観た私の感想を読むと、
かなり良かったみたいで、
「今年観た映画(74本)の中で一番」
「途中からほとんど泣きっぱなし」とまで
書いている。(その日のエントリー

『コーダ』の方は、良くなかったわけではないが、
それほどの感動はなかったな。
何が違ったのか、もう一度『エール』を
観てみないと分からないけど。

このタイトルの「CODA(コーダ)」、
私はてっきり音楽用語の「CODA」だと
思い込んでいた。
「CODA」は、楽曲の終結部分を指す言葉だが、
本作の「CODA」は意味が違った。
「Children of Deaf Adults」の略。
「耳の聴こえない両親に育てられた子ども」と
いう意味で、主人公のルビーのことだったのだ。
でも、音楽の「CODA」ともかけているんだろうけど。

両親を演じたトロイ・コッツァー、
マーリー・マトリンは、実際に聴覚障害である俳優。
真に迫った演技も納得だ。
トロイ・コッツァーは、本作で助演男優賞を受賞。
鑑賞後に調べて知ったのだけど、
マーリー・マトリンは、1986年の映画
『愛は静けさの中に(Children of a Lesser God)』で
ろうあ者を演じ、21歳で史上最年少で
アカデミー主演女優賞している。
つまり、両親を演じた二人ともがオスカー受賞者なのだ。

主役は、エミリア・ジョーンズ。
レッスン・シーンで歌う『Both Sides Now』が
素晴らしい。


★★★★☆





2022.4.14

エール!



2014年製作のフランス映画『エール!』の
リメイク版『コーダ あいのうた』は、今年の
アカデミー賞を3部門(作品賞・助演男優賞
・脚色賞)受賞した。

私の『エール!』の感想(2015年)を読むと
「今年観た映画(74本)の中で一番だ。
途中からほとんど泣きっぱなし」と書いているが、
先日観た『コーダ あいのうた』の方は、
それほどの感動がなかった。(その感想
この違いは、何だろうと興味があったので、
もう一度、『エール!』を観てみた。
(Amazon Prime で鑑賞)

さすがにストーリーも結末も知っているので、
「途中からほとんど泣きっぱなし」というほどは
感動しなかったが、それでもどちらを
選ぶかと言われれば、迷わず『エール!』を選ぶ。

家業が漁業か酪農業かの違いや、
兄弟が兄か弟かの違い、そのほかにも
細かい設定の違いはあれど、ストーリーはほぼ同じ。
セックスにオープンな家族という設定も同じ。
なのに、私が『エール!』の方が良いと思うのは、
主人公の歌の力が大きいように思う。

音楽、映画、本にどれくらい感銘を受けるか、
感動するかは、それに出会ったときの
自分の内面と深く関係していると思う。
だから、ある時に「素晴らしい」と感じたものが
違う時には「何がそんなに良かったんだろう」と
思うことも珍しくない。

そのことを踏まえて考えてみると、
7年前『エール!』を観たときは、
『エール!』の主人公を演じる ルアンヌ・エメラ の
歌(特に最後のオーディションで歌う曲)が、
私の琴線に触れたのであろうことは想像に難くない。
7年経って聴いても泣けるぐらいだからね。

歌唱シーンは、明らかに『コーダ』の方が多い。
この辺りは、いかにも アメリカ映画らしい。


★★★★▲





2022.4.15

エデンの東
East of Eden




最近、ソロ・ギターに取り組んでいる曲に
『エデンの東』がある。
映画を観たかどうかは全く覚えていなくて
(観たとしても、子供の頃)、
演奏するなら、映画も観ておかなきゃと思って
DVDで鑑賞した。

『エデンの東』は、1955年のアメリカ映画。
主演は、ジェームズ・ディーン。
それまでにも映画に出演は、あったようだけど、
エキストラのためノンクレジットだったらしい。
『エデンの東』が、初主演作品。

1955年当時、ジェームズは 24歳。
ご婦人たちが、ワ―キャー言いそうな
いでたちの男前です。
1931年生まれ。
1955年、ジェームズは24歳で自動車事故で
逝ってしまった。
早く死に過ぎたなあ。
もっともっと 活躍できただろうに惜しい。
生きていれば、今年91歳だ。

さて『エデンの東』。
ジェームズの魅力は満載だが、
映画としてどうかと 訊かれると微妙だな。
(以下ネタバレ含む)
なんだか、親の愛を十分に受けずに育った、
大人になり切れない青年と、自分が正しいと
信じて疑わない困った親父の物語なのだけど、
私には、親父がアウトだったな。
ジェームズ演じる主人公のキャルは、
親父に認めてもらおうと必死なのに、
親父は それを頭から否定するドアホです。
キャルの兄貴もアウト。
そのフィアンセもアウト。
「お兄様を愛しているの」と言うたその口で
弟とキスするなよ。
感情移入できる登場人物がいない物語だった。
強いていえば、自由を求めて出ていった母親かな。


★★★☆☆




マンチェスター・バイ・ザ・シー
MANCHESTER BY THE SEA




2017年アカデミー賞 主演男優賞・脚本賞を獲った
映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。
2017年に観て、とても良かった。
「映画館を出てからも、思い出すと泣いてしまいそうに
なる映画」「しばらくしたら、もう一度、観たい」
と書いている。(その感想

それで、「BLU-RAY+DVD」のセットを
すぐに買ったのだけど、
ずっと観ずに5年近くが過ぎた。
(こういう DVD が、意外と多い。)
このたび、荷物の整理をしているのと、
コロナのための自宅療養で時間が出来たので、
ようやく観たのだけど、やっぱり良かったわ。
好きだな、この映画。

事故で家族を失った男の再生の物語。
5年前の感想に書いた自分の言葉が、
そのまましっくりくる。

人は、乗り越えられないことがあっても、
生きていかねばならない。
乗り越えられなかったら、
乗り越えなくてもいい。
でも、生きることを投げ出してはいけない。

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」という町は、
アメリカのボストンの北に位置する実在の町。
とても美しい町で、映画を観ると、
ここに写真を撮りに行きたくなる。

そういえば、何年も前に書いた曲で、
タイトルを付けていなかった曲に
『絶望と希望(リー・チャンドラーに捧ぐ)』って
タイトルを付けて、ソロ・ギター用にアレンジしかけて
ほったらかしになっていたのを思い出した。
リー・チャンドラー というのは、
ケイシー・アフレック演じる本作の主人公。
練習しようっと。


★★★★▲





2022.4.30

とんび




重松清原作の映画『とんび』。
過去に NHK と TBS でドラマ化されており、
その上での映画化ということで、
原作のパワーを感じずにはいられない。

瀬戸内に生きる、阿部寛演じる
市川安男(通称:ヤス)と北村匠海演じる
息子・旭(あきら)との物語を中心に、周りの人々との
交流を描く。
ストーリーは、ベタだと言えばベッタベタなのだけど
涙なしには観られない。
とても、日本的な物語だと思う。

子供が親になり、その子供がまた親になる。
当たり前と言えば当たり前だが、
人間は、何千年も何万年もその営みを繰り返してきた。
そして、これからも脈々と繰り返し続ける。
この営みには終わりがない。
その一つ一つにドラマがあり、喜怒哀楽があり、
出逢いがあり、愛があり、別れがある。
一つ一つは、個別のようだけど、
ずっと繋がっているんだな、と思った。

旭が生まれるのが、昭和37年で私と同じ年。
物語のほとんどが、昭和が舞台なので、
町中や家の中に見える小道具なんかも懐かしかった。

出演は、阿部寛、北村匠海の他に
安田顕、大島優子、杏、薬師丸ひろ子、
濱田岳、麻生久美子、宇梶剛士、など。
薬師丸ひろ子が良かったなぁ。

映画は、良かったけど、
あえて苦言を呈するとすれば、阿部寛が、
30年間ぐらいを演じるので、
若い頃の時期がちょっとしんどい。
あと、北村匠海の高校球児時代のかつらが
ドリフのコントみたいで笑える。


★★★★▲





2022.5.5

パリ13区
LES OLYMPIADES, PARIS 13E

PARIS, 13TH DISTRICT




『夢みる小学校』というドキュメンタリー映画が
気になっていたのだけど、スケジュールが合わず
中々観に行けなかった。
今日が、上映最終日だったが、
UPLINK吉祥寺で、上映は 朝9:25からの一回だけ。
最近は、映画はほとんど事前にネットでチケットを
購入してから行くが、UPLINK吉祥寺は、
劇場の都合で、ネット予約が出来ない状況だった。
チケットは、現地で購入するしかない。
朝、9:10頃劇場に着くと、すでに売切れだった。
残念。
もともと2月に公開された映画で、
知ったのが遅かった。
今回の上映は アンコール上映で、一日一回の上映だった。
縁があれば、また機会があるだろう。

仕方ないので、ちょうど 9:30 から始まる
『パリ13区』という映画を観た。

パリの13区というのは、アジア系が多い地域らしい。
主人公は、台湾系の女性、アフリカ系の男性、
そして、白人女性。
ふたりの女とひとりの男の物語だけど、
恋愛映画という感じじゃない。

日本人にだって、性に自由な人はいるだろうけど、
フランス国民の性の自由さは、日本人の感覚とは
違い過ぎるというのが、私の感想。
愛しているのか、セックスしたいだけなのか、
なんだかよく分からない。
登場人物の誰のことも理解できず、
最後まで誰にも感情移入出来なかった。

ラスト・シーンも疑問。
なんで?って感じ。
まあ、フランス映画らしいと言えば、
フランス映画らしい。
そんな感じです。

白黒映画。

原作は、エイドリアン・トミネという日系アメリカ人。
短編コミック3編を下敷きに書かれた脚本のようだ。


★★★☆☆





2022.5.8

ぼけますから、よろしくお願いします。
~ おかえりお母さん ~




2018年に動員20万人を超えるヒットを
したというドキュメンタリー映画
『ぼけますから、よろしくお願いします。』の
続編となる映画。
2018年版の方は、観ていないのだけど、
先日、テレビでこの続編の紹介をしていて
初めて知った。

監督は、信友(のぶとも)直子さん。
彼女の両親を撮ったドキュメンタリーなのだが、
元々は映画を作るつもりで撮り始めたのではなく、
撮影の練習だったらしい。
彼女は、ドキュメンタリーのディレクターで、
取材にカメラマンを連れて行けない時には、
自分でも撮影しなければならない。
そんな時のためにハンディカメラの撮影練習を始めた。
つまり公開する意図などなく、
きわめてプライベートな撮影だったわけだ。

撮影を始めてから、お母さんがボケ始めた。
そのお母さんを撮ることに抵抗を感じ、
撮影しなくなると、お母さんが
「私がボケたから、撮るのをやめたのか」と
言われ、撮影を再開したらしい。

『ぼけますから、よろしくお願いします』というのは、
2017年のお正月に実際にお母さんが言った言葉で、
映画の中にもそのシーンは収められている。

もう何年も前だけど、ある高齢の芸能人夫婦の
奥さんの方がボケてしまった。
妻を介護するご主人の姿を
テレビで放映していたことがある。
その時、なぜか見たくない、見せないで欲しい、
と思って、チャンネルを変えた覚えがある。
しかし、本作は、驚くほど抵抗なく、
老夫婦の姿を受け入れることが出来た。
この違いは何なんだろう。
私が年を取ったということか。
父が死に、ボケたとまではいかないが、
時々おかしなことを言う母を持ち、
他人事ではなくなったということなのだろうか。

いずれにしろ、老々介護のドキュメンタリーというと
暗く重いイメージを抱きそうだが、
本作に暗さや深刻さはない。
むしろ、何度も笑わせられる。
ひとえに ご両親の明るさ、ユーモア、
そして、お母さんを介護するために、
筋トレをする98歳(!)のお父さんの存在。
全てを受け入れる、この親子3人の
素晴らしさだと思う。

2018年、映画が公開された頃の映像もある。
自分たちのプライベートを娘が映画にして、
世間に発表するという、普通では
考えられない状況をこの両親は、
むしろ喜んで受け入れている。

大変だったけど、本当に幸せな夫婦だったねと
映画を観た多くの人が、祝福するだろう。

脳梗塞を起こし、寝たきりになったお母さんが、
一時的に帰宅するシーンが強烈。

涙なしでは観られません。

そして、自分の、自分たちの、老後、延命、
看取りについても考えさせられる映画です。
監督が、1961年生まれということもあり、
世代的には、まさにドンズバです。

2018年版も観てみたい。


★★★★★


オフィシャルサイト

[ 参考サイト ]
信友直子監督が語る『ぼけますから、よろしくお願いします。
~おかえり、お母さん~』90歳超え両親の老老介護とその後


信友直子監督が語る 家族ならではの至近距離で両親を
見つめたドキュメンタリー『ぼけますから、よろしくお願いします。』





英雄の証明
GHAHREMAN




昨年のカンヌ国際映画祭グランプリ作品。
(グランプリは、パルム・ドールに次ぐ賞。)
珍しいイランの映画。ペルシア語です。
(制作は、イランとフランス。)

イランの法律のことは、全く知らないのだけど、
借金をして返さないと、貸主が訴えると 借主は
投獄され服役しなければならないようだ。
でも、休暇があって、その時は家に帰ることが
出来るという、ちょっとよく分からないシステム。

主人公は、借金を返していない罪で、
投獄され服役しているラヒム。
彼の婚約者は偶然、17枚の金貨を拾う。
その金貨で借金を返済すれば、
出所できるのだが、正直なラヒムは、
金貨を落とし主に返す。

その行いが 反響を呼び “正直者の囚人” という
英雄に祭り上げられていく。
借金返済のための寄付金も集まる。
しかし、SNS で良からぬ噂が広まり出し、
ラヒムは、一転 窮地に立たされることになる。

ちょっとサスペンス的要素もあり、
ストーリーは、面白い。

(以下ネタバレあり。注意。)
金貨を拾ったのは、ラヒムの婚約者だったのだが、
そのことを隠し、自分が拾ったと言ってしまったがために、
ラヒムの話にほころびが生じる。
金貨を返した持ち主は、どういうわけか、見つからない。
すると、金貨を拾って持ち主に返したという話が、
まるでラヒムの狂言のように見えてくるのだ。
結局、ラヒムは嘘つき呼ばわりされ、
刑務所に戻っていく。
あまり後味の良い映画ではない。
ハッピーエンドになるほど、
世の中は甘くないと いうことか。

彼は、どこで つまづいたのだろうか。
彼女との関係を公にしたくなかったがために
自分が「金貨を拾った」とついた一つの嘘。
本当の話の中に、たった一つでも嘘が
含まれていると、それは、嘘の話に見えてしまうんだ。
これは、戒めとして、覚えておかなければ。

最後に。
日本では、ほとんどの落とし物は警察に
届けられるだろうから、金貨を返しても
善行にも美談にもならないかもしれない。


★★★★☆





2022.5.29

大河への道



立川志の輔師匠の新作落語『大河への道』が
映画化され、先週公開された。
落語『大河への道』は、江戸時代、初めて
日本地図を測量して完成させた 伊能忠敬 を
NHKの大河ドラマにしようというストーリー。

映画の方の出演は、中井貴一、松山ケンイチ、
北川景子、西村まさ彦、平田満、橋爪功、草刈正雄ら。
それぞれが一人二役を務め、現代と 200年前を演じる。

志の輔師匠が、この落語を創ったきっかけが、
千葉県佐原(現 香取市)の伊能忠敬記念館に
訪れたことだったと聞き、2016年に初めて『大河への道』を
聴いたその2カ月後には、伊能忠敬記念館まで出かけた。
それほど、この落語には感動したのだ。

もう一度、聴きたいなと思っていたが、
落語としても大作ゆえにか、中々その機会がなかったが、
今年の正月のパルコ公演で、再び聴くことが出来た。
本来なら 2021年が、伊能図完成から 200年の年で
その公演が予定されていたんだけど、
コロナのせいで今年に延びたんだ。

そんなわけで、『大河への道』が映画化されたとなれば、
必ず観なければと思っていたので、私は
かなり、偏った観客ではあったと思うが、やはり、
一番のクライマックスシーン(上様に完成した
地図を見てもらうシーン)は、涙なしには
観られなかったね。

命を懸けてでも成し遂げたいこととは、
それが成し遂げられたなら、命を差し出して
良いということなんだけど、この物語は、
伊能忠敬の意志を引き継ぎ、
正に命を懸けた人々の物語。

落語の方も映画の方も、
伊能忠敬は、出てきません。
なのに、忠敬の偉業・偉大さを知ることになる、
という不思議な仕組みです。

ただ、ラストの数分は、蛇足な感じも否めなかった。
落語が原作ということで、コミカルなシーンも
多いのだけど、そういうの抜きにして、
シリアスな人間ドラマとしても、観てみたい。

志の輔ご本人も出演しております。


★★★★▲


[ 関連エントリー ]
2016.1.24 志の輔らくご in PARCO 2016
2022.1.17 志の輔らくご in PARCO 2022





2022.6.12

エコー・イン・ザ・キャニオン
ECHO IN THE CANYON




ウェストコースト・ロックの聖地と
言われる「ローレル・キャニオン」を
題材にしたドキュメンタリー映画
『エコー・イン・ザ・キャニオン』。

ウェストコースト・ロックと聞くと、私は
イーグルス、ドゥービー・ブラザーズ、
リンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウン、
J.D. サウザーあたりを思い浮かべる。
それらは、いわば70年代で、
本作は、それらよりちょっと前、60年代の
ウェストコースト・ロックを題材にしている。

ザ・ビーチ・ボーイズ、ママス&パパス、
ザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールドと
いったグループだ。
ザ・ビーチ・ボーイズ、ママス&パパスは、
代表曲ぐらいは知っているけど、
ザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールドに
至っては、全く聴いておらず、
もし、若い頃に聴いていたら、とても
面白かったんではないかと思った。

とはいえ、ビートルズに触発された、
ウェストコーストのアーティストが創った
音楽に今度はビートルズが、
影響されるという構図は大変興味深かった。
大西洋を挟んでそのケミストリーが
起きていたわけだ。
そしえ、ウェストコーストのアーティストたちが、
互いに影響し合って音楽を創っていたのが
「ローレル・キャニオン」だったわけだ。

そう考えると、音楽、この場合ロックは、
誰か一人で生み出されるものではなく、
アーティスト同士が、影響し合い
発展してきたことが分かる。
一人きりでは、生み出されないのだ。

ビートルズだけではない。
エリック・クラプトンが、デラニー&ボニーや
デュエイン・オールマンなど
アメリカ南部のミュージシャンに影響を
受けたというのは有名だが、エリックも
ウェストコーストの影響を受けていたんだ。
『Let It Rain』の元ネタが、
スティーヴン・スティルスの曲だと
エリック自信が認めている。

案内役は、ジェイコブ・ディラン
(ボブ・ディランの息子)。
ジェイコブが、ベック、ノラ・ジョーンズらと
カヴァーを聴かせる。

インタビューに応じるのは、
トム・ペティ、ブライアン・ウィルソン、リンゴ・スター、
ミシェル・フィリップス(ママス&パパス)、
スティーヴン・スティルス、デヴィッド・クロスビー、
グラハム・ナッシュ、ロジャー・マッギン、
ジャクソン・ブラウン、そして、エリック・クラプトン。


★★★★☆





2022.6.12

ぼくの歌が聴こえたら
THE BOX




韓国映画『ぼくの歌が聴こえたら』。
才能があるのに人前で唄うことが出来ない青年と
その青年を売り出そうとする、借金まみれの
音楽プロデューサーの物語と聞いて、
面白そうだと思い観てきた。

障害を乗り越えて歌手になっていく、
ヒューマン・ドラマかと思いきや、
EXO(エクソ)という韓国の男性アイドル
グループのチャンヨルという人が主演で、
いわゆるアイドルの映画でした。

なぜ人前で唄えなくなってしまったのか。
子供の頃のトラウマが原因のように描かれてはいるが、
イマイチ何が原因かよく分からなかったり、
人前で唄えるようになる流れも説得力に欠けた。
冷蔵庫用の大きな段ボール箱に入って
歌うシーンでは、やたらと箱の中が広かったり、
ストリートで飛び入りで演奏するのに、
ギターアンプが用意されていたり、
意味不明なミュージカル的なシーンがあったり、
要するに映画というより、
長~いミュージック・ビデオのようであった。

チャンヨルは、日本でいうとジャニーズの
グループの中の誰かといったところだろう。
歌も良いし、ギターも上手い。
映画の中では、ピアノもドラムも演奏する。
その上、イケメンだ。
韓国では、初登場1位の映画だったらしい。
EXO のことを知らなかったので、
YouTube で観てみたら、ダンスも素晴らしい。
韓国のエンタメは、レベルが高いと聞くが、
本作は、映画としては期待外れだった。
まあこれは、アイドルの映画で、
おっさんが観る映画ではなかったんだな。
入り口で入場者プレゼントとして
フォトカード(写真)を配ってるぐらいやもん。
そら、アイドルの映画やで。

あと、邦題もイマイチやなぁ。
原題は『The Box』。

『Wthout You』、『What a Wonderful World』、
『My Funny Valentine』など渋めの
選曲があったのは、良かった。


★★▲☆☆




死刑にいたる病




阿部サダヲ主演の映画『死刑にいたる病』。
タイトルやポスターの印象から、
サイコパスな映画だとすぐ分かるね。

死刑判決を受けた連続殺人鬼・榛村大和
(はいむら やまと)に阿部サダオ。
その殺人鬼から、「事件の一つは冤罪。
真犯人がいることを証明してい欲しい」と
依頼される大学生・筧井雅也
(かけい まさや)に岡田健史。

雅也は、我流で事件を調べ始めるが、
三流大学に通っている設定の 20歳の若者が、
こんなに頭が良くて、調査能力に長けているのは、
自分の20歳の頃を思うと、考えられないけど、
まあそこは、突っ込んでも仕方ない。

以下、ややネタバレ含む。
途中、こいつが真犯人ちゃうの?と思う男が
登場する。
こいつが真犯人やったら、サスペンスとしては、
簡単すぎてイヤやな、と思っていたら、
後半、どんでん返しがあるのだが、
そのどんでん返しが、イマイチ分かりにくいねんけど。

殺人鬼・大和は、人に好かれるというのは怖い。
誰もが、大和の思う壺にはめられていく。
看守でさえ、大和は味方にしてしまう。
サイコパスは、異常な才能を持ち、
人の心理をコントロールする。
雅也もあやうくその手に落ちるところだったが、
寸前に自分自身を取り戻す。

概ね、映画に引き込まれてしまうのだが、
後半が分かりにくく、
ラストシーンも頭の中で「???」な感じ。
これは、原作を読まないと意味が分からんな。
たぶん、原作を読んだらもっと面白いんだろう。

雅也を演じる岡田健史は、どこかで観たことが
あると思っていたら、『そして、バトンは渡された』に
出ていた、ピアノの上手い高校生ね。


ところで、妻は今、次の本を執筆中で、
キルケゴールのことを調べているらしい。
映画が始まる前、『死刑にいたる病』という
タイトルを見て「これってキルケゴール?」と
訊いてきた。
「違うやろ」と答えたのだが、
映画の中の大学の講義のシーンで、
「キルケゴール」が出てきてビックリ!
鑑賞後に聞いたのだけど、
キルケゴールの著書に『死にいたる病』というのが
あるらしい。
その上、哲学の講義のシーン。
タイトルのヒントになっている可能性は大だな。


★★★▲☆





2022.7.2

エルヴィス
ELVIS




オースティン・バトラーが、エルヴィス・プレスリーを
演じる、映画『エルヴィス』を観てきた。
トム・ハンクスもマネージャー役で出ているが、
あんまり良い人の役ではないし、
とにかく年を取ったなという感じ。
たぶん、かなりメイクもあるだろうけど。

オースティン・バトラーは、一見すると
エルヴィスには似ていないのだけど、
途中で本人かと思うようなシーンが
何度も出てくる。
歌も上手い上、若い時と30代とで
貫禄というか雰囲気も違ってくる。
特に歌唱シーンで。
これは、メイクや特殊技術もあるのかも
知れないけど。

映画はエルヴィスがビッグスターに
なっていく過程を中心に描かれているのだが、
エルヴィスに詳しくない私には、
知らないことだらけだった。
今から65年ほど前のことだけど、
腰を振って唄ったら逮捕されるかもしれないなんて。

ビートルズもそうだったし、日本のエレキギターや
ロックもそうだったし、いつもいつも若者の
新しい文化は、頭の固い保守的なジジイどもには
理解できないのさ。フッ。

でも、エルヴィスの生き方は、ロックだった。
マネージャーのアドバイスなんて聞かず、
彼はやりたいようにやった。
それを聴衆が望んでいたからね。

結局、ほかのスターと同様にエルヴィスも
心のより所を失い、ドラッグに頼ってしまう。
お金か女か酒かドラッグか。
大体、パターンは一緒やねんな。

42歳というのは、若すぎた死やな。
1977年のエルヴィスの訃報は、
なんとなく覚えている。
1935年生まれやから、うちのオカンと一緒や。
生きてたら、87歳。

エルヴィスが若い頃、BBキングが、
相談相手だったり、テレビ収録で弾いていた
エレキ・ギターが Hagstrom の
Viking II だったり、スコティ・ムーア
(エルヴィスのバンドのギタリスト)のギターが
Gibson の ES-295 だったりと、
マニアックなことも楽しめます。

ところで、今回 初めて「DolbyCinema」で観た。
通常料金が、1,900円やけど、
「DolbyCinema」は、2,500円もする。
「IMAX」では数本観たけど、そんなに凄いと
思えなかったので、通常のスクリーンでもええかなと、
思ったけど、「IMAXを超えた」という文言を
見かけたのと、一度は体験しとかんと、と思ったので、
あえて「DolbyCinema」で観ることにした。

丸の内ピカデリーの「DolbyCinema」だったのだけど、
まず、座席がゆったりしていたのが良い。
かなり前の席との隙間が広いので
足を組んでも前の椅子に触らない。
左右も広くて、両サイドに自分用のドリンクポケットがある。
そして、確かに音が良いし、画像もきれいだ。
音が良いのは、映画に入り込んだら、
当たり前になってしまうねんな。
映画の途中でいちいち「おお、ええ音やなぁ」とか
思えへんからな。
一番違うと思ったのは、「黒色」。
上映前に「DolbyCinema」の宣伝が
流れてその中で「黒が違う」と言っていたのだけど、
確かに今までない「黒」だった。
+600円はちょっと高いけど、
総合的に「IMAX」より良いと思った。
あと、ひと月ほどで「シニア割引」で
観られるようになる。うれしいな。


★★★★☆


エルヴィスと言えば、1985年のアメリカ旅行で
メンフィス(テネシー州)を訪れた際、
彼の邸宅(グレイスランド)を訪れた。
映画の中でも何度もこの家が映る。
エルヴィスが死んだのもこの自宅。
彼の死後ここは、観光地(ファンの聖地)となっていて、
彼の衣装やジェット機なんかも展示されていた。
そこで、なんだか短いドキュメンタリー映画を観て、
特にファンでもなかったのに感動して
泣いてしまった覚えがある。

その時、メンフィスで撮った写真。


グレイスランド (Graceland)


娘の名前「Lisa Marie」と名付けたジェット機


エルヴィス像





2022.7.10

夢みる小学校



この映画は、今年2月に公開されたのだけど、
知ったのが遅かったため、見逃してしまい、
5月に UPLINK吉祥寺でアンコール上映が
あったのだが、1日1回の上映で、
中々スケジュールが合わず、ようやく
上映最終日に観に行ったのだけど、
映画館に到着した時には、すでにチケットは
売切れだったので観られなかった。

このたび、同じくUPLINK吉祥寺で
2週間「再アンコール上映」されている。
5月には、ネット予約が出来ない状況だったので
見損ねてしまったけど、今回は事前に
チケットを購入し、観に行ってきた。

映画『夢みる小学校』は、山梨県の
「南アルプス子どもの村小学校」のドキュメンタリー。
ここの小学校では、いわゆる主要教科、国語・
算数・理科・社会の授業がない。
自分のやりたいことをプロジェクトとしてやる。
例えば、料理で蕎麦を作るなら、
蕎麦を植えるとことからやる。
その過程では、国語はもちろん
理科や算数や社会が必要になるので、
子供たちはそれらを自然に学ぶことになる。
修学旅行も子供たちが企画し、
業者への電話も子供たちにさせる。
もちろん、大人のサポートがあってのことだ。

冒頭、大きな2階建ての遊具を木工で
子供たちが作るシーンから始まった。
子供たちが電動の工具を使ったり
骨組みだけの建物の2階で作業する。
一つ間違えば、大ケガをするかもしれない。
そのシーンを見て、思った。
ああ、これをさせるには大人(教師も保護者も)
の覚悟と責任がいるな。
「こんなことをさせて、子供がケガをしたら
どうするんですか!」と怒鳴り込んでくるような
家の子供はここには預けられないだろう。

明治学院大学名誉教授の辻信一氏が、言う。
大学生になっても質問の出来ない生徒が多いが、
子どもの村小学校の卒業生は、積極的に質問をする、と。
面白いことに、子供たちに自由にさせた方が、
上から詰め込むより、よほど子供たちは学ぶ。
ただ学ぶだけではない。
自分で考えること、問いを立てることを身に付ける。

学校内の何かを決めるのに、小学1年生の児童も
先生(この学校では「おとな」と呼ぶ)も同じ
1票で投票する。
けっして、大人が決めたことを押し付けない。

集会などの行事で、子供たち整列もさせないし、
一般的な教室のように、児童たちに同じ方向を
向いて座らせることもない。

そして、イジメもない。

今の一般的な小中学校の教育は、
同じような子供を育てようとしているようで、
本当の意味で個性を伸ばそうとはしていない。
私が受けた教育もそうだった。

驚いたことに、公立の小中学校でも、
通知表を出していない学校がある
「伊那市立伊那小学校」だ。
「世田谷区立桜丘中学校」にいたっては、
通知表どころか定期テストもない。

この定期テストの廃止は、生徒たちが決めたこと。
生徒たちが決めたことに教師は反対しないんだ。
桜丘中学校の前校長西郷さんは、
子供たちが定期テストの廃止を決めたとき、
「やったぁ~」と思ったという。
なぜなら、学校は子供たちにとって幸せである場
だからだという。
そんなことしてたら、成績が下がるんやないかと
世の大人たちは心配する。
ところが、桜丘中学校の学力は、
世田谷区でもトップレベルなんだそうだ。

この3つの学校に共通しているのは、
”子どもファーストな学校” ということ。
絶対に子供の味方であるということ。

そして、とっても不思議なのは、この映画に
「文部科学省選定」と付いていること。
だったら、もっとこういう学校増やそうぜ。

今思えば、私は、校則を守る、先生に
怒られないようにする、模範的な
くだらない生徒だった。
もし、こんな風に「なんでも自分のしたいことを
すればいいよ」という環境の中で
育ったなら、どんな大人になったんだろうと思った。


夢みる小学校 オフィシャルサイト


★★★★☆





ベイビー・ブローカー
BROKER




是枝裕和監督が、韓国で製作した映画
『ベイビー・ブローカー』。
カンヌ国際映画祭で、男優賞と
エキュメニカル審査員賞を受賞した。
男優賞は、主演のソン・ガンホで、
韓国人としては初めてらしい。
エキュメニカル審査員賞というのは、
「人間の内面を豊かに描いた作品」に
与えられる賞で、昨年は『ドライブ・マイ・カー』が受賞した。

さて、ネット上での評価はさほど高くない本作。
昨年死んだ私の父は、『万引き家族』を観て、
「何が良いのか分からん!」と憤慨していたというから、
分からない人には、全く分からないんだろう。
是枝作品は、賛否というか好き嫌いが
ハッキリわかれるんだろうと思う。
私は、好きです。

さて、本作、ストーリーは、
「赤ちゃんポスト」に預けられた赤ん坊を
人身売買するという物語。

大きな盛り上がりはないけれど、
是枝作品らしく静かに考えさせられる作品。

以下、ややネタバレ。

刑事が、子供を捨てた母親に
「望まれずに産まれてくるぐらいなら、
中絶すれば良かった」と言うシーンがある。
母親は、「その言葉を子供の前で言えるのか!」
と喰ってかかる。
何が正しくて、何が間違いなのか、
分からない世界。
正解なんてない。

なるべく高く赤ん坊を売ろうとする、
ブローカーふたりとその母親、
売られていく赤ん坊、親の顔を知らない孤児の
5人が家族のようになっていく。
『万引き家族』同様、疑似家族がテーマでもある。

そこに、その人身売買の現場を押さえて、
現行犯逮捕しようともくろむ女性刑事二人が
絡んでくる。
彼女たちは、売買が成立しないと
逮捕できないので、売買させようと躍起になる。
何だか変な構図なのだ。

是枝監督が、なぜこの映画を韓国で撮ったのか
分からないけれど、これ日本が舞台だったら、
フィクション過ぎてリアリティに欠けるような気がした。
韓国で、実際にこういうこと(人身売買)があるのか
どうか知らないけれど、私にすれば舞台が
日本でないことで、リアリティが増した。

登場人物の未来が、
幸福であるよう祈りたくなった。


★★★★☆





2022.7.16

トップガン マーヴェリック
TOP GUN : MAVERICK




私と同じ年のトム・クルーズ主演
『トップガン マーヴェリック』。
1986年の『トップガン』の36年ぶりの続編。

私は『トップガン』を観たかどうか覚えていない。
劇場で観ていないことは確かで、観たとしたら、
90年代にビデオで観ただろうけど、記憶にない。
出来れば、『トップガン』を観てから本作を
観たかったのだけど、急に観に行こうと
思い立ったので、『トップガン』を観ずに
鑑賞したけど、十分に楽しめた。

主役のマーヴェリック(トム・クルーズ)は、
アメリカ海軍の戦闘機のパイロット。
パイロットとか戦闘機というのは、カッコイイものだと
男子の中では決まっている。(女子もか?)
しかし、戦闘機は、戦争の道具で、
言ってみれば人殺しの武器だ。
今のウクライナのことを考えると、
複雑な思いがあるが、
本作は、戦争映画や反戦映画ではなく
単純な娯楽映画だ。

本作や戦争映画が、いつか、現代日本の
チャンバラ映画のようになるといいな。
「昔はこんなこと(戦争)してたんや」って。

それはさておき。
敵国(架空)へのウラン濃縮プラントへの
攻撃がミッション。
ある意味ヒーローものなので、
最後は、助かるんだと思っていても、
まあ、手に汗握るシーンの連続。
そこにヒューマン・ドラマと
ライトなラブ・ストーリーも絡んでおり、
あっという間の130分です。

残念なのは、最後の危機の脱し方が、
読めてしまったこと。
まあ、王道な展開ですわな。

予告編で来年公開予定の
『ミッション:インポッシブル』が流れた。
イーサン・ハントです。
もう、トムは還暦を迎えましたよ。(7月3日)


★★★★▲





2022.7.17

トップガン
Top Gun




昨日劇場で観た『トップガン マーヴェリック』の
前作、1986年の『トップガン』を観たくなった。
レンタルビデオ店に借りに行かなくても
自宅でネットで観ることができる。
便利な世の中になったもんや。

『トップガン(以下、「1」という)』を観て
『トップガン マーヴェリック(以下、「2」という)』
が、続編としても、そのオマージュとしても
とてもよく出来た作品だというのが分かった。

例えば、マーヴェリック(トム・クルーズ)が、
バイクに乗って、トップガンの基地へ向かう
シーンなど まるで再現のようだ。
「1」のファンには、たまらないだろう。
音楽も「1」と同じ曲を使ったり、
ストーリーもちゃんと繋がっていて、
「1」で亡くした相棒の息子が「2」で登場する。

「1」の監督はトニー・スコットだが、
すでに故人で、「2」のエンドロールの最後に
トニー・スコットへの敬意が表示される。
(「2」の監督は、ジョセフ・コシンスキー。)

作品としては、昨日は大画面で観たので
「2」の方に軍配が上がるが、
同じように大画面で観たら、
「1」も十分に迫力のある映画だろうと思う。
「1」は昨日、「ビデオで観たかも知れない」と
書いたけど、観ていなかったわ。
(観たけど覚えていなかったという可能性もあり)


★★★★☆


Amazon Prime Video で鑑賞





2022.7.31

わたしは最悪
The Worst Person in the World




夏休みは、子供向けの映画が封切されるので、
大人が楽しめる映画が少ないね。
毎年のことだけど。

そんな中、これは面白そうかな、と思う
映画『わたしは最悪』という、
ノルウェーの映画を観てきた。

レナーテ・レインスベというノルウェーの
女優が主役で ユリヤという女性を演じる。
このユリヤが、すごく美人に見えたり、
ぶさいくに見えたりするのが、興味深かった。
(本作で カンヌ映画祭で女優賞。)

しかし、残念ながら 私は、
ユリヤに全く感情移入が出来なかった。
なんだか我ままで、何がしたいのか分からない人で、
彼氏が気の毒になるほど、困った人でした。
タイトル(原題)の「世界で最悪の人」と
いうのは、ユリヤのことなのだろうが、
それに「わたしは」と付けた日本人スタッフの
センスもイマイチ分からない。
自虐っぽくしようとしたのだろうけど
原題にはそのニュアンスはないよね。

女性なら、ユリヤに共感できる人もいるのかも
しれないけど、「この映画(監督は男性)は、
女性への敬意がない」というレビューも読んで、
一理あるなと思った。

別れた彼氏、アクセルは良い人だったのになぁ。


★★★☆☆





2022.8.12

こどもかいぎ



保育園の年長児(5~6歳)が、
様々なテーマで会議をする様を約1年間にわたり
撮影した、豪田トモ 企画・監督による
ドキュメンタリー映画『こどもかいぎ』。

会議の進行役は、先生が務める。
6歳児がじっとしていられる時間は、
かなり短時間で、子供たちの集中力は長続きしない。
そんな中でも、子供たちは自分の考えや意見を
言う場を与えられ、人の話を聴く、ということを
学んでいく。
ひと言も話さない(シャイに見える)女の子が
ある日、突然話し出したりする。
昨日と今日は、違う人、違う世界なんだ。

素晴らしいと思ったのは、ケンカをした子供たちを
「ピーステーブル」という席に座らせ、
話し合いをさせること。
その場では、子供たちも興奮しているが、
その席に移動することで、レイヤーが変わる。
そして、自分の思いを相手に伝えることで
徐々に落ち着いていく。
もちろん、「ピーステーブル」で、
何もかもが解決するわけではないが、
そのプロセスは、大人になっていく上において、
非常に重要だと思う。

話し合う、という手続きが取れず、
即、暴力に訴える大人も少なくない。
いや、暴力に訴えるところまで行かなくても、
暴言を吐いて終わる大人も少なくない。
何を隠そう、私も過去に何度かそういう経験がある。

感情を押し殺して、抑えつけているために
爆発してしまうんだ。
感情を溜めないで、外に出すことは必要だと思う。
そのためには、その「場」が必要だ。

日本人は、自己表現が苦手な民族だが、
その背景を監督は、「場数を踏んでいない、
発言と対話の機会を与えられていないから」だと言う。
カナダ、スウェーデン、フィンランドでの
監督の体験
を読むと、まさにそうだと
頷かざるを得ない。

話し合えば、何でも解決するわけではないのは、
承知しているが、この試みがもっと多くの
保育園、幼稚園、小中学校でも広がれば良いなと思う。

私の通った大阪のS高校は、ホームルームが盛んで、
「討論」と呼ばれる機会が多くあった。
しかし、クラス全員(40人以上いたと思う)で
話し合うため、意見を言う人は限られてしまう。
一度も発言しない生徒もいる。
こどもかいぎは、先生と5~6人の園児で行われる。
やはり、個人が安全に発言できる環境であるためには、
少人数で行う必要だ。
高校時代のあるとき、私は学級委員で
その「討論会」の議長をしていた。
一度も発言しない複数のクラスメートに対し、
「自分の意見を言わないのは卑怯だ」と非難した。
すると、一度も手を挙げなかった女子に
「あなたみたいに誰でもがべらべら喋れる
わけではない!卑怯者とは何ごとか!」
と、意見を受けた。
まあ、言葉は正確に覚えていないけど、
そういう内容のことだ。
それはとても印象的で、今も覚えていて、
私の宝物的な経験になっている。
あのとき、人生で初めて
「思っていることを言えない人がいる」ことを知ったから。
いや、もちろん、私だって言えないこと、
言ってないことは、たくさんあるんだけどね。

映画に話を戻そう。
ひとつ苦言を呈するなら、音声にストレスを感じた。
周囲の子供たちの声がうるさすぎて、
発言している子供の声が聞き取れない場面が
何度かあった。
時々、字幕が出ることがあって、それは聞き取りにくいと
思ってのことなのかもしれないけど、そこは聞き取れるねんな。
どうせなら、子供の発言、全部に字幕を付けて欲しかった。

「なぜ鼻くそをほじるのか」という問いに対する
ある園児の回答が最高。
子供は、天才だ。
ぜひ、ご覧ください。


こどもかいぎ オフィシャルサイト


★★★★▲




太陽とボレロ




今年 70歳になった、水谷豊の監督
3作品目となった『太陽とボレロ』。
西本智実(指揮者)が本人役で出演している。

とある地方都市のアマチュア交響楽団
「弥生交響楽団」の物語。
財政が厳しく、楽団を解散せざるを得なく
なった楽団のラストコンサートまでのストーリー。

主演は、楽団の主宰者・花村理子に
檀れい(なんと映画初主演だという)。
理子の高校の先輩で、楽団のスポンサーである
中古自動車販売会社の社長に石丸幹二。
楽団の客員指揮者に、脚本、監督の水谷豊。
そのほか出演は、森マリア、町田啓太、田口浩正、
田中要次、河相我聞、原田龍二、
六平直政、檀 ふみ、カンニング竹山、等。

楽団のメンバーを演じた役者さんたちは、
1年以上、楽器の練習をしたらしいけど、
おそらくは全員 もともと楽器の経験があった人だろう。
最後のオーケストラとの共演シーンは、
吹替えなしで一緒に演奏したという。

冒頭と最後のイルミナートフィルハーモニーオーケストラの
演奏シーンは、中々の迫力で良かった。
私は、オーケストラでの演奏経験はないのだけど、
中学・高校と吹奏楽でトランペットやトロンボーンを
吹いていたので、合奏の楽しさは、それなりには知っている。
アマチュア・オーケストラの演奏シーンを観ながら、
またラッパをやりたくなってしまったけど、趣味多すぎやな。

ちょっと気になったのは、水谷豊監督の
遊び心なのかもしれないけど、
「今のシーン 要るか?」というシーンが、いくつもあったこと。
どうも余計に感じて仕方なかった。

「そんな人おるか?」という、ちょっと現実離れした
言動の登場人物も数人いて、そのあたりは、
コミックが原作の作品のように感じた。(違うけど)
でも、演奏シーンも多く、音楽も楽しめる。
ラストの曲はラヴェルの『ボレロ』。
ナマのオーケストラで聴きたくなったよ。

そういえば、水谷豊って昔『赤い激流』という
テレビドラマでピアニストの役を演じていた。(1977年)
ショパンの『英雄ポロネーゼ』を
本人が吹替えなしで弾いていたような記憶がある。
と思って、ググってたら こんなん見つけました。

相棒のワンシーン

どうも、後半の演奏はほんものだけど、
前半の『英雄ポロネーゼ』は弾いてはいるけど、
音源はプロのピアニストのアフレコらしい。
ホンマかどうか知らんけど、確かに音と映像があってない。
いずれにしろ、彼は音楽好きなんだろうな。
こんな映画撮ろうと思うんだから。


★★★★☆





2022.9.19

沈黙のパレード



東野圭吾の小説を原作にした
『ガリレオ』シリーズの劇場版。
1作目の『容疑者Xの献身』が良かったので、
『真夏の方程式』も劇場で観たが、
1作目を超えられなかった印象だったので、
本作は、どうだろうと期待して観に行った。

途中、湯川(福山雅治)が、ちょっと
賢すぎて、どんどん謎を解いていくのが、
不自然にさえ感じた。
90分度経ったころ、便意(大きい方)を
催してしまった。
映画が終わるまであと30分は、
危険だと思い、仕方なく席を立った。
結果、一番肝心なクライマックスとも言える
部分を見逃すことになり、10分ほどして
席に戻ると話が全く見えなくなっていた。

終わってから、一緒に観た妻に説明を
聴いたけど、やっぱり映画の中で、
真相を知るのとは、わけが違う。
ということで、今回は★評価なし。

以前、同じ理由で途中で席を立った
『グラントリノ』は、もう一度観に行ったけど、
本作は、もう一度も観るより
原作を読んだ方が良さそうだ。

湯川が簡単に謎を解き過ぎると感じたのは、
原作を読んだことのある妻に言わすと、
細かい部分が映画では省かれているせいのようで
原作では、そんな風には感じなかったらしい。

被害者の父親役に飯尾和樹が出ている。
お笑い芸人がシリアスな映画に出るのは、
難しいと思うのだが、飯尾は良い味を出していると思った。

気になったのは、前半で北村一輝演じる刑事、
草薙が、以前捕まえたのに有罪にできなかった殺人犯の
名前と写真を見て、吐くシーンがある。
そんなメンタルのやつ、殺人事件の捜査官に
なられへんのちゃう?と思った。
ここは、大いに違和感あり。

あと、犯人のシャツに被害者の血が付着しているという
物証があっても自白がないからということで
起訴できずに釈放されることなんて、あるんかな。





2022.11.20

どうして何も壊れてないのに直そうとするの?



2~3ヶ月前の深夜。
もう最終電車も行ってしまったのではないかという
時間だったと思う。
近所の居酒屋で飲んで、ええ気分で帰っていたら、
駅前で若い女性が何かチラシを配っていた。
しらふだったら、シャイな私は素通りしていたかも
知れないが、なにしろええ感じで出来上がっていたので、
「こんな時間に何してるの?」と声をかけた。
彼女は「劇団やりたかった」の人で、
公演のチラシを配っていたのだった。
なんでも、自転車であちこち周っていて、
その日は、不動前の駅前に来たらしい。
確か三鷹まで帰ると言ってたような気がする。

その日は、チラシを受け取って帰った。
後日、なんとなく気になるので調べてみたら、
面白そうだったのでチケットを買った。

それから、しばらくして また夜遅く、
同じ居酒屋の帰り道に また 彼女がいた。
私のことを覚えていてくれていて、
「チケット買ったよ」と伝えると、
とても喜んでくれた。
彼女は、手売りのチケットを そんな風に
駅前に立って、200数十枚売っていた。
(公演は、14日間 20公演ある。)
どうせなら、彼女の手売りの分から
買ってあげれば良かったと思った。

前書きが長くなったけど、その演劇
「どうして何も壊れてないのに
直そうとするの?」を観てきた。
ハコは、参宮橋 TRANCEMISSION。
参宮橋駅って、初めて降りたよ。
良い所やね。

ストーリー。
希子の婚約相手、慎吾の元カノが男であったことが分かる。
元カノが男性であったことが受け入れられない希子は、
その元カノ(男)を呼び出す。
元カノは、慎吾の小2からの親友でもあり、
現在の親友でもあった。
それだけでも希子にとっては、大変なのに
慎吾の両親は離婚しており、
母子家庭であること判明する。
希子の家族は、離婚や母子家庭であることを
快く思わない人たち。
両方の家族の顔合わせの日が近い。
さて、どうする?

前半の設定、展開は面白かったのだけど、
途中から、ちょっと飛躍し過ぎな感が出てきて、
最後には、「結局、何が言いたかったんだろう」
という疑問が残った。
タイトルの「どうして何も壊れてないのに
直そうとするの?」という言葉は 登場人物の
セリフとして、途中で語られるが、
場面にあまりフィットしていないような、
取ってつけたような言葉に感じた。

LGBT、離婚、家柄の違いなどによる、
分断や差別に一石投じたいのかもしれない。
何かメッセージがあるのかも知れないけど、
私には分かりにくかった。
登場人物の誰にも感情移入できなかったことが
分かりにくさの一因かもしれない。
全体にセリフが早口だったことや、
暗転が多かったことも気になった。
頑張っているのは、分かるのだけど、
演劇は、色んな意味で難しいなぁと思ったのでした。




ある男



映画『ある男』を観てきた。
原作は、『マチネの終わりに』の平野啓一郎の小説。
出演は、妻夫木聡、安藤サクラ、、窪田正孝、
眞島秀和、仲野太賀、真木よう子、柄本明など。

谷口里枝の夫、大祐が事故で亡くなる。
法事の際、大祐の兄・恭一が遺影を見て
「これは大祐ではない」と言い出す。
では、一体彼は誰で何者だったのか。
里枝の依頼を受けて、弁護士の城戸が調査を始める。

サスペンスタッチで、徐々に謎が解き明かされていく
展開は、面白くて良かったが、感動的ではない。
観終えて、スッキリしたり、ハッピーになる作品ではない。
あまり現実味はなく、フィクションの域を出ないように
感じたが、「自分は何者か」ということに、
名前や国籍、戸籍、出自が与える影響が
大きいのは残念ながら事実だろう。
しかし、その上で(名前や戸籍ではなく)
「自分は誰か」を創り出さなければならないんだろう。
「自分ではない誰かになりたい」
私は、そんな願望を本気で持ったことはないけど、
そんな風に思う人たちがいるのも事実だろうな。

妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝が良い。
柄本明は相変らず素晴らしい。
大阪弁もかなり上手かったけど、
時々惜しかったな。
本作がデビューだという、中学生役の
坂元愛登も素晴らしかった。

この手の作品は、原作を読むと
きっと印象も変わるんだろうと思う。


★★★★☆



ひとりごと