2020年 映画・演劇・舞台 etc
感想・ご意見は→ shinya◇shin223.com
メールをくださる方は、上記アドレスの◇を@に変えて送ってください。(スパムメール対策)
2020.1.5
ヴァン・ゴッホ 〜最期の70日〜
VAN GOGH
1991年製作のフランス映画
『ヴァン・ゴッホ〜最期の70日〜』
(原題 "Van Gogh")を DVD で鑑賞。
映画監督になる前は画家でもあったという、
モーリス・ピアラ監督作品。
日本では劇場公開されなかったようだ。
邦題にあるように、ゴッホが人生の最期を
過ごした北フランスのオーヴェル=シュル=オワーズ
という村での70日間を描いている。
その前には、ゴッホは南フランスのアルルという街で
耳切事件などを起こし、アルル市立病院に入院。
その後、約1年間サン=レミの療養所
(精神病院)に入所する。
サンレミ時代に描かれた絵には『アイリス』
『星月夜』『糸杉』シリーズなどの代表作も多い。
サン=レミの療養所を退所後、
1890年 5月20日に
オーヴェル=シュル=オワーズに汽車で
到着したシーンから映画は始まる。
観終えた感想は、
私が思い描いているゴッホとイメージが
違いすぎて、良かったとは言い難い。
この70日間にゴッホは、約70点の
油彩作品を残しているのだが、映画では
あまりにものんびりしているように見えるのだ。
もっと、何かに取りつかれたように
創作に集中していたんじゃないのか。
人を笑わせるためにおどけたり、
ダンスを踊ったりというのもイメージと違う。
まあ、実際はどうだったのかは、
今となっては謎だし、100人いれば
100通りのゴッホが存在するのは、
分かるけど、私のゴッホ像とは
かけ離れていたのだ。
切ったはずの耳もちゃんとあるし。
後半、少しゴッホの苦悩が分かるようにも
描かれているが、それでも、感情移入には
至らない。
精神が不安定なのだからと言われてしまえば
それまでだが。
日本とフランスの文化や国民性の違いも
あるだろうし、字幕の限界も大いにあるだろう。
字幕で鑑賞するには、観る側に
より想像力を要求される作品かも知れない。
本作ではない別の何か(本か映画か忘れた)で、
ガシェ医師は娘マルグリットとゴッホの関係を
快く思っておらず、2人が会うことを
禁じたというものがあった。
マルグリットとゴッホに何らかの交流があったのは、
彼女の肖像画が残っていることからも
間違いないだろうが、本作では、ゴッホと
マルグリットは、完全に男女の関係であったと
描かれている。
が、このラヴストーリーも、私には
どうも中途半端な感を否めないのだった。
自殺(ピストルを撃つ)のシーンもなく、
テオ(ゴッホの弟)が駆けつけても、
ゴッホから自殺の説明もない。
テオが「なぜそんなことをしたんだ?」と
問うシーンさえない。
どうせなら、監督の解釈の自死の理由を
語らせてほしかった。
と、本作もやはり、今まで観たゴッホ関連映画
同様、スッキリしないのだった。
そんなわけで、もし、ゴッホのことをよく知らない時に
この映画を観ていたら、ゴッホの絵を
観に行こうとは思えなかったかも知れないな。
とはいえ、オーヴェルの風景や、
当時の人々の暮らしを感じられるのは、良かった。
★★▲☆☆
[ キャスト ]
ジャック・デュトロン(ゴッホ)
アレクサンドラ・ロンドン(マルグリット)
ベルナール・ル・コク(テオ)
ジェラール・セティ(ガシェ)
[ スタッフ ]
モーリス・ピアラ 監督
2020.1.6
シーモアさんと、大人のための人生入門
SEYMOUR : AN INTRODUCTION
2016年10月に観たドキュメンタリー映画
『シーモアさんと、大人のための人生入門』は、
とてもインスパイアリングで、
素晴らしい映画だったと記憶している。
しかし、情けないことに内容は覚えていない。
ふと、もう一度観てみようと思って、
DVD を借りて観てみた。
今読んでいる『エフォートレス・マスタリー』とも
重なることもあり、非常に興味深く観た。
観終えてから、このひとりごとに書いた
2016年の自分の感想を読んでみた。
「ああ、そうか、そんなことを感じたんだな」と
思いながら、読んだのだが
「DVD 出たら買うよ」と書いたことは、
すっかり忘れていた。
確かに、これは時々で良いから、
繰り返し観た方が良いと思った。
特に印象に残った言葉を。
音楽は一音たりとも 妥協を許さず
言い訳や ごまかしも 受け付けない。
そして 中途半端な努力も。
音楽は我々を映す鏡と言える。
音楽は我々に完璧を目指す力が
備わっていると 教えてくれる。
う〜む。
★★★★▲
2020.1.11
写真家ソール・ライター
急がない人生で見つけた13のこと
In No Great Hurry: 13 Lessons in Life with Saul Leiter
先日、始まった写真展
『ニューヨークが生んだ伝説の写真家
永遠のソール・ライター』に合わせて
映画『写真家ソール・ライター
急がない人生で見つけた13のこと』が
渋谷のルシネマで特別上映されている。
2017年の写真展のときにも上映されたので、
私はそのときに劇場で鑑賞したし、
観たければレンタルでいつでも観ることが
できるのだけど、やはり、劇場で観たいと思い、
観に行ってきた。
やや睡眠不足で、映画館に行く前から、
今日は眠くなりそうやなぁと思ったので、
ドラッグストアで眠気覚ましを
1本飲んで臨んだが、やはり、途中で
10〜15分くらい気絶してしまった。
悔しい。
先日、開催記念講演会で講師を
務めたソール・ライター財団ディレクターの
マーギット・アーブ氏が、出演していたので、
この映画にもグッと親近感がわいたよ。
ソールが公園のベンチに座る若い女性の
足を隠し撮りのように撮るシーンがある。
撮った写真を(映画の)カメラマンに
見せながら、
「じいさんにこんな破廉恥なことを
させてるって、彼女たちは知ってるのかね」
というようなことを言う。
2017年に観たときは
「やばいな、これ盗撮やん」と、
きわどいシーンに見えたのを
覚えているのだが、不思議なことに
今日はその若いネーチャンの太ももを
撮った写真さえもが、全くいやらしくなく、
素晴らしい作品に見えた。
面白いなぁ。
そして、ソールが何気ない言葉の中に、
いくつもの宝物が隠されているように聞こえてきた。
彼の作品がなぜ素晴らしいと感じるのか、
この映画だけでなく、他の書物も合わせてだけど
ひとつひとつ、解き明かされるたびに
ますますソールの作品が好きになっていく。
これは、時々観直した方がいいなぁ。
★★★★★
2020.1.13
パラサイト 半地下の家族
PARASITE
カンヌ国際映画祭で『万引き家族』の翌年
(2019年)パルムドールを受賞した、
韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。
中々の高評価で公開中だ。
ネタバレになるといけないので、
詳しく書けないけど、
「起承転結」でいえば「起承」までは
ドキドキもしたし、ストーリーも読めないし、
もの凄く面白かった。
しかし、観終えてみると、後半の展開に
ちょっと強引さが否めず、消化不良の感ありだな。
意味不明のシーンもいくつかあったし。
前半が、面白かっただけに惜しい。
たとえて言うなら、ホラー映画で
一人で行ったらあかんと分かっている所に
わざわざ一人で行くような設定だ。
そうするしか、展開できなかったのかも知れないし、
意味不明のシーンは、分かる人には
分かる暗示なのかも知れないけどね。
チラシや公式ウェブサイトには
「アカデミー賞最有力」とあるけど、
私にはそれほどではなかったな。
面白いか面白くないかと言われれば
面白いのだけど。
★★★★☆
2020.1.14
炎の人 ゴッホ
Lust for Life
ゴッホ関連の映画を順次観ているのだが、
いよいよその代表作ともいえる
『炎の人ゴッホ』を DVD で観た。
原題は、"Lust for Life"。
「生きる意欲」「生きるための欲望」と
いう意味だろうか。
「炎の人 ゴッホ」はいい邦題だと思う。
主演は、本作でアカデミー賞主演男優賞に
ノミネートされた カーク・ダグラス。
ゴーギャン役のアンソニー・クインは、
さほど出番は多くないものの本作で
アカデミー賞助演男優賞を獲っている。
1956年製作のアメリカ映画で、
往年のハリウッド映画らしい音楽が良い。
オランダ、フランスが舞台だが、
ゴッホを含め全員が英語で話す。
映画は、ゴッホが画家になる前、
聖職者の試験を落ちるシーンから始まり、
伝道師として失敗し、画家を目指し
オーヴェルで自ら命を絶つまでの
約12年間を描いている。
見所は、アルルでのシーン。
ゴーギャンとの共同生活では、
寂しがり屋のくせに、人とうまくやれない
ゴッホが観ていてしんどい。
芸術には、正解がないので、
意見や感想を聞くのは良いとしても
自分の考えと違う人と意見を
闘わせることには意味がない。
しかし、多くの人が「自分が正しい」という
落とし穴に落ちてしまう。
ゴーギャンもマイペースな人だったようで、
あまり協調性のある人のようには描かれていない。
まあ、芸術家なんてみんな個性的で、
わがままなものかもしれないけど。
ゴッホのストーリーは、大体知ってしまったので、
それらをどう描いているか、どう解釈しているか
という見方になってしまう。
本作でも、ピストルはどこで手に入れたのかは
語られておらず、何かに苦悩しているのは
分かるものの、何がそんなに苦しいのかは、
明確に描かれていない。
上手くいかない人生、いくら描いても売れない絵、
孤独、弟テオへの罪悪感、そういうことの
寄せ集めなんだろうか。
精神の病気だったので、想像しても
分かりようがないのかもしれないけど、
ゴッホの絵を実際に観ると、
命を使い切ったと言われれば、
そうかもしれないと思う。
伝道師の頃のエピソードを見れば、
不器用なほどに純粋で生真面目。
そんな真面目な人だったから
あんな絵が描けたのかもしれない。
★★★▲☆
バンパイアのように見えてしまうのは、私だけ?
2020.1.23
リチャード・ジュエル
RICHARD JEWELL
今年90歳になる、クリント・イーストウッド大先生
監督の最新作『リチャード・ジュエル』。
監督の創作意欲、バイタリティ、エネルギーは、
もう神の域だと思う。
1996年、アトランタオリンピックの際、
爆発物を発見し、多くの人を救ったのだが、
第一発見者ということで FBI に犯人扱いされた、
実在の警備員、リチャード・ジュエルの物語。
冤罪ものといえば、痴漢冤罪を描いた
『それでもボクはやってない』を思い出す。
あれも怖い映画だったけど、本作は、
痴漢ではなく、死者まで出た爆弾テロ犯と
疑われるのだから、たまったもんじゃない。
リチャードが、闘わなければならなかったのは、
合衆国、FBI なのだが、
実話だと思ってみるとなおさら恐ろしい。
FBI が、リチャードが犯人ではないかと
疑い始める根拠、理由があまりにも単純。
え〜っ?それだけで、疑われるの?
と思うのだが、そういう目で見ると、
色んな事が証拠のように見えてくるというのが、
人間の厄介なところでもある。
以下ネタバレ含みます。
FBI が水面下でリチャードの捜査を進めている時、
アホな捜査官が、スクープが欲しい、
女性新聞記者のエロ仕掛けに負けて、
「FBI はリチャードを疑っている」と漏らしてしまう。
翌日、そのことが大きく新聞に載り、
爆弾から多くの人を救ったと英雄扱いだった
リチャードの生活は、一気に転落する。
この女性新聞記者がまぁひどい。
この記者も実在した人(故人)だが
彼女のセックスと引き換えに情報を
引き出そうとする描写は、真実ではないという
反発もあり、問題になったようだ。
映画の中では、後半、リチャードが無実だと
分かると、反省した風にも描かれているけど。
リチャードは、知り合いの弁護士
ワトソン・ブライアントに弁護を依頼し、
2人で闘い、やがて嫌疑を晴らす。
捜査開始から88日もかかってしまう。
もともと無実なのだから、どんなに調べても
証拠は出てこないのだけど、
ひとつ間違ったら、有罪にされてしまう
恐ろしい状況だ。
リチャードが、FBI に出向いて
事情聴取を受けるシーンの
彼の実直さ、ピュアさが溢れた
トークが感動的で素晴らしい。
その実直さが、疑われた一つの要因にも
なっているというのが、皮肉だ。
映画は、クリント・イーストウッドらしく
派手ではないけど、じわ〜っと
感動が広がる作品だ。
所々に クリント節 を感じる。
そして、最後には、涙が流れる。
リチャード・ジュエルを演じるのは、
ポール・ウォルター・ハウザー。
弁護士にサム・ロックウェル。
サム・ロックウェルは、『グリーンマイル』の
時はイヤな奴だったけど、
『スリー・ビルボード』といい、本作といい
だんだん好きになってきたよ。
リチャードの母親役にキャシー・ベイツ。
アカデミー賞助演女優賞にノミネートされとります。
好演です。
★★★★★
2020.1.25
フォード VS フェラーリ
FORD V FERRARI/LE MANS '66
いやぁー予想以上に良かった。
アカデミー賞4部門ノミネートも納得の作品。
作品賞以外の主要な賞にノミネートされて
いないのが不思議なぐらい良かった。
150分以上あるけど、長く感じなかった。
これはカーレースの映画ではない。
もちろんレースシーンは、大迫力で楽しめるけど、
車に興味のない人でも観る価値のある
ヒューマンドラマだ。
フランスのル・マンで行われる「ル・マン24時間レース」。
24時間でサーキットを何周周れるかを競う
耐久レースだ。
タイトルの通り、フォードが王者フェラーリに
勝負を挑むのだが、まず、フォードが
ル・マンに出るまでのストーリーがゴキゲン。
フォードは、最高のレーシングカーを作るため、
ル・マンで優勝経験を持つキャロル・シェルビーを
雇い入れる。
シェルビーは、天才的なイギリス人レーサー、
ケン・マイルズを誘い、2人はチームになる。
そして、フェラーリを倒すべく、最高のマシーン
作っていく。
キャロル・シェルビーを演じるのはマット・デイモン。
ケン・マイルズにクリスチャン・ベイル。
2人ともとても良いです。
フォードとフェラーリの闘いを描いているようで、
実はそれは表面的なことで、きっかけに過ぎない。
単純な話ではなく、もうちょっと深い。
いわゆる大人の事情が絡んでくると
ことは複雑になる。
映画を観ていると、誰が一番勝負に勝ちたい
人か明確だが、チームに、勝ち負け以外に
興味のある奴が混ざると
足を引っ張られることになるのだな。
シェルビーとケンの友情の物語でもあり、
2人と巨大企業との闘いの物語とも言える。
レースシーンはどれも大迫力だが、
特に後半のル・マンでのレースは、
結末を知らずに観たこと手伝って、
ドキドキもんだった。
これは、ぜひ劇場で大画面で観て欲しい。
そういえば、中学生の時、スティーブ・マックイーンが
好きで、彼が出演してる『栄光のル・マン』を
映画館で観た覚えがある。
ほとんどがレースシーンで、当時の私には
あまり面白くなかった覚えがある。
『フォード VS フェラーリ』では、
レーサーを辞めて車のセールスマンを
やっているシェルビーが、マックイーンから
注文を取ったというシーンがあったよ。
あと、シェルビーが、フォード会長を
車に乗せて走るシーンは、痛快!
フォードの言葉が感動的。
★★★★★
余談だが、ウィキペディアによると
日本のメーカーは過去に ル・マンで
トヨタが2回(2018年2019年)、
マツダが1回(1991年)優勝している。
ニッサンも何度か出場していたが、
優勝はしておらず、2000年に当時の
CEO(今話題の)カルロス・ゴーンに
撤退を余儀なくされたらしい。
2020.1.27
神韻芸術団(SHEN YUN)
半年ほど前に YouTube の広告で初めて見た
神韻芸術団の公演に行ってきた。
これは、素晴らしそうだと思い、
広告を見てすぐにチケットを取ったおかげで、
前から4列目の中央付近という
凄く良い席で鑑賞することができた。
「神韻」というのは、音楽と舞踊を使って、
天上の光景、古代伝説など
中国五千年の伝統文化を表現する舞台。
勝手に、中国版シルクドソレイユみたいな、
アクロバティックな演目を想像していたのだが、
中国古典舞踊、民族・民謡舞踊が、
中心でちょっと思っていたのと違った。
面白くなかったわけではないし、
一糸乱れぬ舞踏は、素晴らしかったし、
中国らしく、太極拳のような動きであったり、
民族衣装のようなステージ衣装も美しかったし、
音楽はオーケストラの生演奏だし、
バックのスクリーンに映し出される映像と
ステージの演技が上手くシンクロしていたり
見所も多かったが、それでもやっぱり
期待していたものとは違った。
神韻芸術団はニューヨークを拠点として
活動している。
驚いたことに、この舞踏は、
今の中国では鑑賞できないのだという。
というのも、その公演を中国共産党が
許可しないらしい。
観ればわかるが、これは中国共産党は
OKしなだろうなと思う。
純粋な芸能の部分と同時に、
明らかに政治的、思想的なメッセージがある。
それは、抑えつけられているからこその
メッセージなのかもしれないけど。
ラストの演出は、ちょっと新興宗教の
イベントみたいと思ったら、
やはり法輪功という宗教を母体としていた。
中国共産党政権は、この数十年、
政治的に中国の伝統文化を廃絶しようとしてきた。
中国共産党と神は、相容れないからである。
その結果、当の中国人は「神韻」を海外で
鑑賞するしかないという現実がある。
裕福な中国人しか鑑賞できないわけだ。
中国共産党が、なぜ「神韻」を迫害するかは、
「中国共産党が神韻を恐れる理由」という記事に
書かれているが、ちょっと「ホンマかいな」と思う
恐ろしいことまで書かれている。
↓
中国共産党が神韻を恐れる理由
こうなってくると、ただ単にエンタテイメントとして
云々という話ではなくなってきて、
大変難しい問題になってくるのでした。
@ 文京シビックホール 大ホール
神韻芸術団 公式サイト
2020.2.1
ゴッホとヘレーネの森
クレラー=ミュラー美術館の至宝
VAN GOGH:TRA IL GRANO E IL CIELO
ドキュメンタリー映画
『ゴッホとヘレーネの森
クレラー=ミュラー美術館の至宝』。
昨年10月の公開だったが、東京では
新宿武蔵野館のみ上映だったようで、
見損ねていた。
今日から一週間、下高井戸シネマで
上映されているので観てきた。
映画は、オーヴェル=シュール=オワーズの
教会から始まる。
映画のナビゲートを務めるのは、
フランスの女優、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
オランダ有数の資産家であった
ヘレーネ・クレラー=ミュラー は、
ゴッホの死後、ゴッホに惚れ込み
コレクションをはじめた。
そして、資材を投じて美術館まで
作ってしまった。
2人は同じ時代に生きていたが、
会ってはいない。
ヘレーネは、ゴッホの魂に触れてしまい、
ゴッホの作品を守り、後世に伝え、
残さねばと思ったのだろうが、
ゴッホだけではなく、芸術にかけるその
情熱は、命がけだ。
肖像画や写真が出てくるが、
聡明な人だったのだろう。
鋭い目つきなのに美人で優しそうだ。
1938年にクレラー=ミュラー美術館は
開館する。
ヘレーネの集めた美術品は、
彼女の死後、評価されたという。
まるでゴッホだ。
映画は、途中からゴッホの絵の解説が
中心になった印象。
もう少しヘレーネ自身のこと、
ヘレーネとゴッホの関係を知りたかったな。
クレラ=ミュラー美術館には、
ゴッホ美術館に次ぐ最多のゴッホの作品が
所蔵されている。
★★★▲☆
(2020.2.2 追記)
音楽は、Remo Anzovino(レモ・アンツォヴィーノ)と
いうイタリア人で、サントラが欲しいと思うぐらいに
とっても素晴らしかった。
ただ一点、ゴッホが日本の影響を受けたという
くだりのBGM が、どうにも中華なメロディだったのは、
残念だった。
日本と中国のメロディの違いなんて、
欧州の人には分かりにくいんだろうなぁ。
2020.2.7
ミッドナイト・イン・パリ
MIDNIGHT IN PARIS
ポスターの一部に
ゴッホの絵『星月夜』が使われているので、
気になっていた2011年の映画
『ミッドナイト・イン・パリ』をビデオで鑑賞した。
パリに来たアメリカ人のギルが
夜中に1920年代のパリにタイムスリップし、
フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、
コール・ポーター、ピカソ、ダリなどなどに
会うというファンタジー。
脚本監督は、ウッディ・アレン。
ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の
脚本賞をW受賞、それぞれ
その他3部門でもノミネートされた作品。
ギルは、1920年から1880年にも
タイムスリップする。
1880年ならゴッホも生きていたけど、
残念ながら出てこない。
ゴーギャンは出てくるんやけどな。
なのでなぜ、ゴッホの絵が使われたのか、
分からない。
でも、主人公ギルがセーヌ川沿いを
歩くシーンでは、あきらかに
ゴッホの『ローヌ川の星月夜』を
連想させる光景が出てくるので、
ウッディ・アレンには、何かゴッホへの
思いがあるのかもしれないな。
以下、ネタバレ。
ギルは1920年代のパリに憧れている。
夜のパリで迷子になったギルは、
1920年にタイムスリップする。
1920年に行くとピカソの愛人
アドリアナは、1880年がパリの
黄金時代だという。
1880年に行くと、ゴーギャンは、
「ルネッサンスの時代に生まれたかった」という。
それを聞いて、ギルは過去への憧れは
幻想だと気づくという、
大人向けのメッセージのあるファンタジー。
ギルを演じるのは、オーウェン・ウィルソン。
ええ味出してます。
ギルの婚約者イネスにレイチェル・マクアダムス。
とっても美人でセクシーだけど、
だんだんイヤな女に見えてくる。
そして、1920年のアドリアナに
マリオン・コティヤール。
これまた美しい。
あと、キャシー・ベイツも出てます。
★★★★☆
2020.2.9
ジョジョ・ラビット
JOJO RABBIT
今日は、映画を4本観たよ。
3本は何度もあるけど、
4本は初めてかも知れない。
まずは、アカデミー賞作品賞ほか6部門に
ノミネートされている『ジョジョ・ラビット』。
第二次大戦中のドイツの少年の物語だけど、
コミカルに風刺が効いていて素晴らしかった。
主役の少年ジョジョを演じる、
ローマン・グリフィン・デイヴィスが素晴らしい。
ジョジョの母親役のスカーレット・ヨハンソンは、
アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。
ドイツ軍の大尉役に『リチャード・ジュエル』にも
出ていたサム・ロックウェル。
完全にこの人のこと好きになってしもたよ。
ドイツ人なのに全員英語を話しているというのは、
映画の冒頭、ちょっと引っ掛かってしまうのだけど、
アメリカ製作の映画では、よくあることだ。
戦争はイヤだし、悲しいこともあるのだけど、
観終わった時、世界って素晴らしい、と
思える作品。
★★★★★
音 楽
ON-GAKU: OUR SOUND
10年前に友人が大橋裕之 (著) の
『音楽と漫画』というコミックを
プレゼントしてくれた。
表紙を見て、買わずにはいられなかったらしい。
(その時のエントリー)
その大橋裕之の原作を基に、
岩井澤健治監督が約7年もかけて
ほぼ個人制作で作り上げたという
アニメーション映画『音楽』。
71分と短いが、オタワ国際アニメーション
映画祭では、長編部門グランプリを獲った作品。
インディーズっぽい作りが逆に新鮮。
他校生とのケンカに明け暮れる
楽器を演奏したことのない不良3人が
バンドを結成し、町のロックフェスティバルに
出演するという物語。
初めてバンドで音を出した時の感動が良い。
岡村靖幸も声で出演。
★★★▲☆
ザ・ピーナッツバター・ファルコン
The Peanut Butter Falcon
施設を脱走したダウン症の青年ザックと
社会のはみ出し者漁師タイラーの
ロード・ムービー。
ザックを演じるのは、実際のダウン症の
役者ザック・ゴッサーゲン。
タイラーにシャイア・ラブーフ、
ザックを探す施設のスタッフにダコタ・ジョンソン。
ネットでの評価も高く、
『リトル・ミス・サンシャイン』のプロデューサーが
贈る最新作、ということもあって、
ちょっとハードルを上げて観てしまった。
面白くなかったわけではないが、
ラスト近くのわざとらしい演出に疑問があり、
私的にはそこでちょっと減点だな。
他にも突っ込み所はあるけど、
それはさほど気にならなかったのだけどね。
★★★★☆
前田建設ファンタジー営業部
坂上忍が テレビ番組の中で、
漫才コンビ「おぎやはぎ」の 小木博明 のことを
「来年の助演男優賞だ」とまで絶賛していた上に
映画も高評価なので、これは観てみたいと
思っていた映画『前田建設ファンタジー営業部』。
「前田建設ファンタジー営業部」は実存する組織。
アニメなどに登場する架空の建造物を
実際に作ったら、どれくらいの工期、費用で
できるのかということを真面目に積算する、
大人の遊びのようなプロジェクト。
2003年に「マジンガーZ」の格納庫の建設を
検証することから始まり、いまだに続いているようだ。
本作はその「マジンガーZ」格納庫の物語。
実際には作らないで、ウェブで公開するためだけに
設計図を出し、工期を立て、見積もり書を
完成させる。
なんとも意味にあるような、ないようなことを
大の大人たちが本気で取り組む。
アニメの世界のことなので、
実際の建造など前提にされていないので、
問題は山積み。
さあ、どうやってクリアしていくのか、
という プロジェクトX 的な作品でもある。
当初、やる気のなかったメンバーが、
少しづつプロジェクトに燃えていき、
自分の会社に誇りを持ち、
力を合わせて乗り越えていくというのは、
ありがちな話だが、『陽はまた昇る』
(VHSの開発の物語)のような
真面目なタッチではなく、
コミカルに描かれているので、
観る方も割り切って楽しめた。
出演は、前述の小木のほか、
高杉真宙、上地雄輔、岸井ゆきの、
六角精児ら。
確かに小木は、役者としても良いけど
助演男優賞は大げさかな。
★★★★☆
2020.2.10
ジョジョ・ラビット
昨日観た映画『ジョジョ・ラビット』のことを
もう少し書こう。
今日のアカデミー賞授賞式で、
タイカ・ワイティティ監督が脚色賞を受賞した。
映画には、主役のジョジョ少年の空想の友人として、
アドルフ・ヒトラーが登場する。
このヒトラーが、あまり似ていない。
似ている役者はいくらでもいるだろうに、
ちょび髭だけ合わせていて、中途半端な
ヒトラー感も皮肉な演出の一部かと思っていたら、
タイカ・ワイティティ監督自身だった。
原作小説をワイティティ監督に勧めたのは、
ユダヤ人である実母だったというのも興味深い。
→ 記事
第92回 アカデミー賞
作品賞と監督賞に、韓国映画
『パラサイト 半地下の家族』。
英語以外の作品は、史上初だという快挙。
私的に作品賞は(ノミネート作品を全ては
観ていないけど観た中では)、『ジョーカー』、
『フォードvsフェラーリ』、『ジョジョ・ラビット』の
いずれかで、米国人が選ぶのだから、
『アイリッシュマン』や『ワンス・アポン・ア・タイム・
イン・ハリウッド』でもおかしくないと思っていた。
『パラサイト 半地下の家族』は、面白かったけど
途中から失速した感があって、まさか受賞するとは
思っていなかった。
でも、英語以外の作品が受賞したということは
日本映画にも可能性があるわけだし、
ハリウッドも変わってきたということだ。
新しい時代の到来なのかもしれないな。
--- 受賞結果(★印が受賞)---
【作品賞】
★『パラサイト 半地下の家族』
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
『マリッジ・ストーリー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
【監督賞】
★ポン・ジュノ(パラサイト 半地下の家族)
マーティン・スコセッシ(アイリッシュマン)
トッド・フィリップス(ジョーカー)
サム・メンデス(1917 命をかけた伝令)
クエンティン・タランティーノ(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)
【主演男優賞】
★ホアキン・フェニックス(ジョーカー)
アントニオ・バンデラス(ペイン・アンド・グローリー)
レオナルド・ディカプリオ(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)
アダム・ドライヴァー(マリッジ・ストーリー)
ジョナサン・プライス(2人のローマ教皇)
【主演女優賞】
★レニー・ゼルウィガー(ジュディ 虹の彼方に)
シンシア・エリヴォ(ハリエット)
スカーレット・ヨハンソン(マリッジ・ストーリー)
シアーシャ・ローナン(ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語)
シャーリーズ・セロン(スキャンダル)
【助演男優賞】
★ブラッド・ピット(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)
トム・ハンクス(ア・ビューティフル・デイ・イン・ザ・ネイバーフッド)
アンソニー・ホプキンス(2人のローマ教皇)
アル・パチーノ(アイリッシュマン)
ジョー・ペシ(アイリッシュマン)
【助演女優賞】
★ローラ・ダーン(マリッジ・ストーリー)
キャシー・ベイツ(リチャード・ジュエル)
スカーレット・ヨハンソン(ジョジョ・ラビット)
フローレンス・ピュー(ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語)
マーゴット・ロビー(スキャンダル)
【脚本賞】
★『パラサイト 半地下の家族』
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
『マリッジ・ストーリー』<Netflix作品>
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『パラサイト 半地下の家族』
【脚色賞】
★『ジョジョ・ラビット』
『アイリッシュマン』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
『2人のローマ教皇』
女優賞の2本は観ていないので何も言えないけど、
男優賞は、主演、助演ともに納得。
2020.2.15
ラストレター
岩井俊二監督の映画最新作。
松たか子、広瀬すず、福山雅治、神木隆之介、
森七菜をメインに、庵野秀明、中山美穂、
豊川悦司らが脇を固める。
以下、ネタバレ含みます。
姉(美咲)の死を伝えるために、
妹(裕里)は、姉の高校の同窓会に
向かうのだが、会場で裕里は同窓生から、
美咲と間違えられてしまう。
おいおい、それはないやろ。
いくら似てたとしても(高校時代の
シーンもあるがそんなに似ていないし)、
25年ぶりやいうても、高校時代3年間
一緒に過ごしたんやから 本人か妹か分かるで、
と一発目の違和感。
間違えられた裕里は、間違えられたまま、
姉になりすまし(姉が生徒会長だったので)
壇上に上がり挨拶までする始末。
そして、会の途中で逃げるように帰ってしまう。
いやいや、あかんやろ、そんなことしたら、
っていうか、そんな奴おらんやろ。
と、二発目の強力な違和感。
あまりにもリアリティがない。
「これ、もしかしたら原作は少女マンガ?
それならええけど」などと思いつつ
話が進んでいくと、そんな違和感は
ぶっ飛んでしまった。
裕里の口から、「(姉の死を伝えに行ったけど)
とても言える雰囲気ではなかった」という
言い訳があったこともあるけど、
そもそもこの違和感を抱く設定がないと
この物語が成立しないねんな。
そして、物語の展開が、同窓会部分の
違和感を超えてきよった。
タイトルや予告編から、
昔送ったラブレターにまつわる、
薄っぺらいラブストーリーかと(失礼)
思っていたのだけど、適度にヘビーさもあり、
甘酸っぱさもあり、結局、結構泣きました。
25年 美咲を想い続けてきた乙坂(福山雅治)や、
美咲の娘の鮎美(広瀬すず)、
裕里(松たか子)の娘の颯香(森七菜)が、
人生の新たな一歩を踏み出すことで
希望と救いがある。
人の死には、周りの人の再生がなければね。
後悔もあるし、できればやり直したいことも
あるけど、どうにもならないのが人生。
人には、その人が生きてきた以外の
人生はないのだもの。
福山雅治が、ちょっとパッとしてない、
売れない小説家役で、
あんまり二枚目でないのがいい。
豊川悦司が、イヤな男の役で怪演。
出番は少ないけどインパクトを残します。
印象的なのは、乙坂が高校時代に、
美咲に恋に落ちる瞬間の描き方。
神木隆之介の表情がいい。
森七菜も可愛いけど、
広瀬すずは、可愛いというより美しいなぁ。
同級生でなくて良かったよ。(なんで?)
広瀬すずは、高校時代の美咲と
現代の美咲の娘・鮎美の二役。
森七菜は、高校時代の裕里と、
現代の裕里の娘・颯香の二役。
2人ともちゃんと演じ分けてたのも素晴らしい。
あと、見たことあるけど、
パッと誰だか分からない人が数人出てた。
エンドロールで名前(小室等、水越けいこ、
木内みどり、鈴木慶一)を見て、
ああーそうかと。
皆年取ったよな。(俺も)
以下、超ネタバレ。
ツッコミ所というか、
「それ、気づくやろ」と思ったこと。
死んだ美咲になりすまし、妹の裕里が
乙坂に手紙を書く。
(乙坂は、美咲ではなく裕里だと
最初から見抜いていたのだけど。)
その返事を乙坂は美咲の実家に送るもの
だから、美咲の娘・鮎美も美咲になりすまし、
乙坂に手紙を書着始める。
この時点で、乙坂は2人の美咲からの
手紙をもらうわけで、当然筆跡も違うだろうし、
話が微妙に噛み合わなくなってきているのだけど、
そのことには触れないのが、ちょっと不自然でした。
そんなこと以上に、ヤフー映画にボロクソに
書いてるレビューがあった。
普段は、自分が良かったと思った映画の
ネガティヴなレビューを読むと、あまり
良い気がしないのだけど、
その人のレビューは、全くそうだと同意できた。
だからといって、私の評価は変わらないのだけど、
こんなこと初めてだから、書いておく。
(このレビュー)
★★★★▲
1917 命をかけた伝令
1917
宣伝では、「驚愕の全編ワンカット映像」と
謳っているので、思わず三谷幸喜の
『大空港2013』を思い出した。
予習のために観る前にちょっとググると、
ワンカットに見えるが、実際は、
複数回の撮影を編集してあるとのこと。
なんじゃそら。
確かにワンカットのように観える映像だが、
完全に暗転するシーンもあり、
「全編ワンカット」は明らかに誇大広告だ。
ワンカットのように編集できたのは、
もの凄い編集技術の進歩があったかららしいが、
その編集も映画の演出の一部であって、
メインではないと思う。
さて、映画の方は1917年4月6日、
第一次世界大戦中のヨーロッパ(フランス?)。
若いイギリス兵士2人に重要な任務が
命じられる。
最前線にいる味方の部隊に、
作戦の中止の命令を伝令に行くのだ。
今から100年前だと、無線も発達しておらず、
電話線を切られると、命令は
兵士が手紙を持って直接届ける以外に
方法はなかった。
任務を受けた、スコフィールド (ジョージ・マッケイ) と
ブレイク (ディーン=チャールズ・チャップマン) は、
塹壕を出て、決死の覚悟で伝令へと向かう。
カメラワークのおかげもあって、
臨場感が凄い。
ちょっと『ダンケルク』を思い出した。
死体の臭いが臭ってきそうなぐらいの
リアリティ。
何が何でも伝令を届けなければならないという
使命が、スコフィールドを捨て身にさせます。
死んでしもたら、目的は達成できないけど、
死ぬのを怖がっていても、達成できない、
という究極の状態。
サム・メンデス監督が祖父から聞かされたという
話を元にしているそうで、もし本当にあったことなら、
スコフィールドの勇気は、
1,000人以上の味方を救ったことになる。
アカデミー賞10部門にノミネート。
残念ながら主要部門での受賞はなかったけど、
うち3部門で受賞(撮影賞、録音賞、視覚効果賞)。
英国アカデミー賞では、7部門受賞。
ゴールデングローブ賞ドラマ部門、作品賞、
監督賞受賞など、 53の賞、163部門で
受賞&ノミネートというのも頷ける仕上がりだ。。
IMAX で観た。
確かに迫力のある音声だが、
プラス 500円は、ちと高くないか。
★★★★▲
2020.2.23
東京グランド花月
昨年5月に子供の時以来数十年ぶりに
「花月」を観に行き、予想以上に
爆笑したので、今年も観に行ってきた。
前半は、漫才とコント。
8組出演した。
全組面白かったけど、特筆すべきは、
ウーマンラッシュアワーの村本。
この人の超高速おしゃべりは、
まずそのスピードが凄いのだが、
内容に「ROCK」を感じる点が好きだな。
それから、大御所のオール阪神・巨人。
安定の芸風、芸歴45年の貫禄です。
あ、それと前説で登場した、
スクールゾーンというコンビも面白かった。
新喜劇の方は、昨年面白かっただけに
期待し過ぎてしまったのか、昨年ほどの
大爆笑ではなかった。
メンバーが全然違うので、
それぞれのチームによって、
違いが出るのは仕方がないな。
でも、たまには良いよ、新喜劇も。
[ 出演者 ](順番違うかも)
(前説:スクールゾーン)
EXIT
オズワルド
ウーマンラッシュアワー
トレンディエンジェル
とろサーモン
ジャングルポケット
テンダラー
オール阪神・巨人
〜 休憩 〜
【吉本新喜劇】
座長:川畑泰史
佐藤武志、安尾信乃助、新名徹郎、
松浦真也、もりすけ、末成映薫、
島田珠代、佑希梨奈、森田まりこ、
小寺真理、鮫島幸恵、湯澤花梨
@ よみうりホール(有楽町)
1回目(開演11:30)
2020.2.242020.3.9
男と女
UN HOMME ET UNE FEMME
1966年のフランス映画『男と女』をビデオで観た。
当時、カンヌ国際映画祭のパルムドールや
アカデミー賞で最優秀外国語映画賞を
受賞した名作だ。
この映画を観ようと思ったのは、
今、上映されている『男と女 人生最良の日々
(The Best Years of a Life)』を
観たいと思ったからだ。
『男と女 人生最良の日々』は、
『男と女』から53年を経て、
同じ監督、主演男優女優で撮られたのだ。
それだけで奇跡だと思う。
何度か予告編を観て、これを観るには
まず『男と女』を観ておかなければならないと
思ったのだった。
『男と女』は、互いにパートナーと死別した
男女が出逢い、恋に落ちるラブストーリー。
主演は、アヌーク・エーメと
ジャン=ルイ・トランティニャンで、
役名もアンヌとジャン。
イイ女とイイ男です。
男性目線では、アンヌは超魅力的です。
ストーリーとしては、そんなに
大したことないのだけど、
大人のラブストーリーで良いです。
印象的なのは、セックスの最中の
冷めたアンヌの表情。
冷めたわけではなく、ジャンに抱かれながら
死んだ夫のことを思い出してしまい、
冷めた表情になってしまうのが
なんとも辛い。
求めあって、やっと結ばれたのに
満足がないって悲しい。
一応、ハッピーエンド的に終わるけど。
本作は、クロード・ルルーシュ監督の出世作。
DVD 付録映像の監督のインタビューを観ると、
撮影当時、会社は倒産寸前だったらしい。
なんでも、撮影時には配給会社も
決まっておらず、予算の都合で、
白黒で撮ろうとしたところ、
「テレビで放映するなら」とスポンサーが
現れたそうな。
それで、屋外のシーンはカラーで、
屋内のシーンは白黒で撮影することに
なったのだという。
(厳密には屋外でも白黒のシーンあり。)
映画を観ると、現在のシーンが白黒で
挟まれる回想シーンがカラーだったり、
その逆だったり、またアンヌとジャンの
シーンで分けられていたりしたので、
そういう意図的な使い分けかと思ったら、
結果的にそうなったということなのかな。
だとしたら、それはそれでスゴイ。
超有名なフランシス・レイのテーマ曲が
中々出てこない。
半分ぐらい進んでやっと流れる。
1回聴いたら忘れへんメロディ。
名作に名音楽ありですな。
ジャンの職業がレーサーで
先日観た『フォード VS フェラーリ』でも
重要な舞台だった「ル・マン24時間レース」や
「モンテカルロ・ラリー」などレースシーンもあり、
不思議な感じがした。
★★★★☆
淪落の人
淪落人 / Still Human
昨日は、久しぶりに香港映画を観てきた。
『淪落の人』。
「淪落(りんらく)」とは、知らなかったけど、
「おちぶれること。また、堕落すること」の意。
英語題の「Still Human」と合わせて
考えると「落ちぶれてもまだ人間だ」と
言うことだろうか。
ネットでは、大変高評価なので
気になっていた作品だ。
(先日観たときには「4.57」だった。)
事故で、腕以外が麻痺し、車いす生活になった
男性とフィリピン人の住み込み家政婦の
1年間の物語。
一見気難しそうだけど、実は優しい車いすの男性
リョン・チョンウィンにアンソニー・ウォン、
訳ありのフィリピン人家政婦エヴリンに
香港滞在が十年を超える女優クリセル・コンサンジ。
ふたりとも とても良いです。
現実は、この映画ほど甘くはないと思うけど、
言葉が通じなくても、人生の背景が違っても、
人と人は分かり合えるんだと思える
希望の物語でもある。
そして、香港では外国人家政婦のことを
見下げて差別している現実も描かれている。
世界中どこに行っても、この人間として
優劣を見てしまう性(サガ)は、共通なのかもしれない。
監督は、オリヴァー・チャン(女性)で初長編作品。
ウエブサイトの「PRODUCTION NOTES」に
この映画のヒントになった、
監督自身の体験が書かれている。
自身の母親が、事故による脊髄損傷から
車いす生活で苦労したことで
障害者と介護者の物語を撮りたいと
思うようになったのだという。
以下、ウエブサイトから一部引用。
「数年前のある日、
家の近所である光景を見ました。
フィリピン人女性が車椅子の後ろに乗り、
車椅子には中年男性が座っている。
彼らが路上を走り去っていく時、
彼女の長い黒髪は風になびいていた。
2人とも微笑みを浮かべ、
若干の甘い雰囲気すら漂わせている。
私はとっさに
『それはマズいでしょう』と思いました。
でも考えてみれば、本当に“マズい”のは
私のこうした考え方のほう。
背景や文化がまったく異なる見知らぬ2人が、
数奇な運命の末にめぐり合い、
互いの人生の中で最も親しい人になる…
それはきわめて美しいことです。」
監督のこうした世界と自分への観察が
本作のきっかけになっている。
監督は続ける。
「彼らの境遇や関係性を借りて
『愛や欲望、夢など、人生における美しいものを
抱く権利は、誰にでもあるのでは?』と
問いたかったのです。
弱い立場にある人がそうしたものを求めると、
なぜ現実味がないだとか、さらには
不快とさえ思ってしまう人もいるのか。
人生のどん底にある人は、一体どうやって
その先の人生に向き合えばいいのか。
こうした多くの自問や想像、考察を経て、
2人の“淪落の人”の物語が
だんだんと形作られました。
そしてついには、彼らが風の中を走る姿は、
私の頭の中だけの存在ではなくなり、
皆さんに温かさを伝えられる感動的な
作品になったのです。」
主人公ふたりだけではなく、
田舎から出てきた時に、
リョン・チョンウィンに大変世話に
なったっという青年ファイが、
家族のように関わっていることも
この映画の大きな要素だと思う。
淪落の人 オフィシャルサイト
★★★★★
黒い司法 0%からの奇跡
JUST MERCY
「黒い司法」とはまた思い切った邦題を
付けたものだ。
原題は「JUST MERCY」。
「まさに慈悲」「ただの慈悲」といったところか。
映画を観終えると、タイトル(原題)がなぜ
「JUST MERCY」なのか、ちょっと疑問だった。
「JUST JUSTICE」の方がピンとくるのだけど、
もしかしたら「MERCY」を「慈悲」と訳すことが
正確ではないのかもしれないな。
先日観た『リチャード・ジュエル』も
米国で実際にあった冤罪のはなしだったけど、
本作も実際にあった冤罪の話。
1980年代後半が舞台だ。
アラバマ州で、身に覚えのない
殺人犯として逮捕されたウォルター・マクミリアン。
黒人だというだけで、犯人に仕立て上げられ、
死刑の宣告を受ける。
そこに新人弁護士のブライアンが登場。
ウォルターの無実を証明しようとするが、
これはもう白人権力との闘いで、
誰が見ても無実だろうと思うことさえも
認められない状況なのだ。
アラバマ州にとっても、米国司法にとっても、
不名誉な冤罪事件だと思うが、
いまだに米国では冤罪が多いようだ。
今でも時々、白人警官による黒人への
違法な暴力などが報道されるように思う。
人間の心理の奥底に刷り込まれた
思い込みの恐ろしさだと思う。
無実の死刑囚にジェイミー・フォックス、
ハーバード出の弁護士にマイケル・B・ジョーダン。
マイケル・B・ジョーダンって、何に出てたっけと
思ったら、2015年の『クリード チャンプを継ぐ男』
(ロッキーシリーズ)でアポロの息子役で
迫力満点のボクシングシーンを演じた人でした。
奇しくも昨日観た2本は、
どうしようもない不運に見舞われた人たちの映画。
なぜ、歩いていただけで事故に遭い、
半身不随にならなければならないのか、
なぜ、何もしていないのに死刑の罪を
着せられなければいけないのか、
現実の人生は説明のつかないことだらけ。
そんな人生でも、「希望」は誰にも奪えないし、
人間だけが、失わずに持ち続けられるものでは
ないかと思うのでした。
★★★★★
ところで。
新型コロナウイルスの影響で、たくさんの
イベントやライヴが中止になっている中、
映画館は、営業を自粛しているのは、
渋谷の「ル・シネマ」ぐらいで、
ほかはどこも営業しているようだ。
(ほかにもあるかも知れないけど。)
映画館では、じっと座っているだけだし、
喋ったりしないので、感染の確率も
低いということなのかな。
『淪落の人』を観た新宿武蔵野館では、
席を一つ飛ばしに販売するという
特別な措置に出ていたけど、
『黒い司法〜』を観た新宿ピカデリーは、
通常どおりでした。
2020.3.14
Fukushima 50
フクシマフィフティ
2011年3月11日の地震による津波で
大被害に遭った福島第一原発の
当時の実話をもとにした映画。
何度か劇場で予告編を観たが、
気にはなるもののあまり観たいと思えなかった。
いくつかのレビューを読んで、
観ることにしたのだが、観終えてから
どうして観たくなかったんだろうと考えてみた。
思うに、原発事故を含むあの大震災が
私に与えた衝撃は、9年経った今も、
心の奥底にしっかりと残っていて、
もう思い出したくないとか、
なかったことにしたい、と無意識に
思っていたのではないか。
原発は危険だと思い知らされた上に、
あの時、計画停電だ何だのとあれだけ
電気の不足を謳い、国中で節電をしたのに
何事もなかったかのように
平気で電気を使う自分の罪悪感への
直面を避けたかったのではないか。
もっと単純に観る前から、
楽しい映画ではない(多分疲れるだろう)
ことが分かっているのに、わざわざ観たいと
思えなかっただけかもしれないけど。
あの頃は、連日のショッキングな映像と
ニュースで、気付かないうちに
心が異常モードになっていたと思うのだが、
私は、原発の事故について、
ほとんど何も覚えていなかった。
爆発があったことさえ、
そういえば、そうだったっけという程度。
でも、建屋が吹っ飛んだ後の映像は
見覚えがある。
福島で故郷を捨てざるを得なかった方々には
申し訳ないような記憶だ。
あの日、福島第一原発には
大勢の職員がいて、
彼らはその非常事態をなんとか収めようと
文字通り命がけで、現場を守っていた。
それは考えてみれば、当然のことだが、
私は彼らについて何も知ろうとしなかったし、
思いを馳せたこともなかった。
この映画は、あの日現場で
奮闘した人たちの物語だ。
福島第一原発1・2号機当直長、
伊崎利夫に佐藤浩市。
福島第一原発所長、
吉田昌郎に渡辺 謙。
そのほか、吉岡秀隆、安田成美、
火野正平、平田 満、萩原聖人、
小倉久寛、緒形直人、田口トモロヲ、
段田安則、篠井英介、佐野史郎、
吉岡里帆、富田靖子、斎藤 工、
泉谷しげるなど、豪華キャストだ。
で、映画の感想。
概ね良かった。
知らなかったことが知れたし、何より
停電した現場で命を懸けて働いた
原発のスタッフには頭が下がる。
映画で描かれていることが事実だとしたら、
最悪の事態では東京に住めなくなっていた
可能性もあったんだ。
しかし、一抹の違和感も感じた。
まず、アメリカ、米軍の描き方。
「トモダチ作戦」のことは覚えている。
でも、この映画に「これ要るか?」という
程度の扱いなのに、もの凄く
アメリカに気を使っている感、
もっといえばゴマ擦ってる感があった。
それなら、日本の自衛隊に
もっとスポットを当ててもいいだろう。
彼らは、原発に出向いて
作業にあたっていたんだから。
感想を「概ね良かった」と書いた。
そして、ネット・レビューでも評価が高い。
一方で、低評価のレビューを読むと、
手放しに「良かった」とは言えないものを
感じるのも確か。
映画は「真実の物語」と謳っているが、
事実と違うことも含まれているようだ。
多少の脚色レベルなら構わないが、
もっと深いところで、政治的なレベルで。
なので、本作をプロパガンダだとまで
言う人もいる。
単純に全てを鵜呑みにするのは
危険だと思うが、これは難しい問題だ。
想定外の津波が来たことが、事故の発端だが、
311地震以前に10メートル以上の津波の
可能性が示された際、
東電の原子力設備管理部は
「そんな津波がくるはずがない」と
対策を講じなかった。
その原子力設備管理部の当時の部長が
この映画ではヒーローの一人として
描かれている吉田所長だが、
そういうことには、映画では触れられないわけだ。
原発事故について、詳しく知っている人は、
そういう点を正直に描いていないことに
怒りと不信感を抱いている。
吉田所長は最後に「自然を甘く見た」と
言うのだけど、津波対策を講じなかった
張本人が吉田所長だと知っているのと
知らないのとで、このセリフの印象は
大きく違ってくる。
これがフィクションだったらいいけど、
残念ながら、事実だということで、
色んな立場の人がいて、
話が込み入り過ぎているように思う。
最後に「東京オリンピック2020は、
復興オリンピック」というテロップが流れる。
新型コロナウイルスのせいで、
オリンピックの開催さえ危ぶまれている今では、
この言葉も私にはむなしく思えた。
ウイルスもある意味、自然だとすれば、
この映画が訴えている通り、
人間は本当に自然をコントロールできない。
原発のスタッフは本当にすごいのだけど、
これを彼らの美談で終わらせるのではなく、
そもそも起きなくて良いこの事故が
なぜ起きたのか、そこをもっと掘り下げないと
いけないなと思ったのでした。
あと 大事な場面で流れる音楽が、
なぜ『ダニーボーイ』(もともとは
アイルランド民謡)なんだろう。
なんで、日本の曲じゃないんだろうと
いうのも気になった。
映画の途中で
「こんなのは捏造だ!」と叫んで
席を立った人がいると、
複数のレビュー(少なくとも3件)で
読んだのだけど、そこまで賛否を生む
問題作でもあるのだと思う。
同じ人だったりして。
★★★★☆
地獄の黙示録 ファイナル・カット
APOCALYPSE NOW FINAL CUT
フランシス・フォード・コッポラ監督による、
1979年のアメリカ映画『地獄の黙示録』。
その40周年記念版の『ファイナル・カット』。
公開された当時、高校生だった私は
「黙示録」が読めず、
「地獄のだんじろく」と読んで
友人に笑われた覚えがある。
そんなこと覚えているのは、
よほど恥ずかしかったんだな。
さて、本作、ビデオで観ていても
おかしくない作品なのだが、
一度も観た覚えがない。
このたび、コッポラ監督自身が
再編集をし「最終版」と呼ばれる
『ファイナル・カット』が上映されるにあたり
これは劇場で観ないとと思っていた。
なぜ「最終版」というかというと、
2001年に発表された特別完全版は、
1979年の劇場公開版より
30分長かったらしいが、
『ファイナル・カット』はそれより
20分短くなり、新たなデジタル修復を
施したのだという。
しかも IMAX。
コッポラ監督も80歳なので、
本作をいじることももうないということやろな。
今まで数本 IMAX で観てきたけど、
もしかしたら、初めて IMAX の
良さを体験したように思う。
音が良かったし、ヘリの音とか
リアルやった。
そして、CGなしの撮影というのが
これまたスゴイ。
ホンマにジャングル焼いてるんやもん。
今だったら、出来ないというか、
やらないよ、きっと。
ベトナム戦争中、ウィラード大尉は、
軍上層部から特殊任務を命じられる。
カンボジア奥地のジャングルで、
軍規を無視して自分の王国を
築いているカーツ大佐を殺せという命令だ。
ウィラード大尉は、4人の部下と共に、
ボートでヌン川を上っていく。
このウィラード大尉を演じている役者を
誰か知らずに観ていたのだが、
チャーリー・シーンに似てるなぁと思ったら、
父親のマーティン・シーンでした。
182分と長い映画だけど、長くは感じなかった。
ひと言でいうと、「狂気」の映画。
『ディア・ハンター』にしろ『プラトーン』
『カジュアリティーズ』にしろベトナム戦争を
描けば狂気になるのかもしれないけど。
ロバート・デュバルが演じるキルゴア中佐。
あまり出番は多くないけど、本作で
アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている
このキルゴア中佐も狂気の極み。
まず、ヘルメットも被らず、
伏せたりしないのに、弾が当たらないね。
ほんでもって、戦闘の最中に
サーフィンしようとするね。
こんな人、おらんやろと思うけど、
きっと狂気の表現なんやろな。
自分の王国を築いてしまったカーツ大佐は、
マーロン・ブランド。
この王国も死体だらけで意味が分からない。
兵隊は、おかしくなってるもんやから、
必要ないのに機関銃撃って、
民間人を殺してしまう。
で、自分たちが撃ったのに、
生きてる人を助けようとする。
戦争で殺し合いしてるのに
戦場に「殺人罪」があったりする。
「欺瞞」って言葉が出てくるけど、
ホントにそうだなと思った。
若いころのハリソン・フォードも
ちょい役で出ています。
★★★★▲
2020.3.31
ジャニス
リトル・ガール・ブルー
JANIS : LITTLE GIRL BLUE
2016年に公開された、
ジャニス・ジョプリンのドキュメンタリー映画
『ジャニス リトル・ガール・ブルー』。
劇場では観そびれてしまったが
気になっていた作品で、ようやく
DVD で鑑賞した。
観てから分かったことだが、
奇しくも今年は、ジャニスの没後50年。
10月4日が命日なので、夏から秋に向けて、
何か企画があるかも知れない。
私は、ジャニスについて詳しいわけではないが、
20代前半の頃、1枚だけ LP レコードを
買ったことがある。
どうして、その1枚を選んのだか
覚えていないのだが、そのアルバムは、
彼女の遺作となり、死後に発表された
『Pearl』というアルバム。
"Move Over" "Cry Baby"
"Half Moon" などが収録された、
めちゃくちゃカッコイイ作品だ。
たぶん、『Pearl』が遺作だということぐらいは
過去に知っていたと思うのだけど、
このドキュメンタリーを観て、改めて
『Pearl』が頂点の作品だったのだと感じた。
ジャニスの人生は、全く違うのだけど、
エリック・クラプトンと共通する。
この人も「人生がブルース」な人なのだ。
高校時代はいじめられ、成功してから、
同窓会に出席するも孤独。
だから、あんな歌が唄えたんやね。
あの歌は、練習して唄えるもんとちゃうもんな。
そういう意味では、この人は
天然、野生の天才ブルース・シンガーだったんだと思う。
そして、シンガーとしての成功は、
「多くの人からの愛を得るため」と、
本人が公言するほど、寂しい人だったんだな。
当然、寂しい人にはドラッグと
アルコールが付きまとう。
享年27歳の死因は、ヘロインだった。
残念。
合掌。
ジャニスを知らない人は、これを聴いてくれ!
↓
MOVE OVER by Janis Joplin
死ぬ約100日前です。
カッコ良すぎ。
27歳でいっぱい死んでるんよね。
ロバート・ジョンソン、ブライアン・ジョーンズ、
ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、
ジム・モリソン・・・みんな27歳。
この人たちには「J」が付くので、
「"J" の呪い」なんていう人もいるぐらい。
そして、カート・コバーン、尾崎豊も享年27歳。
実際には、27歳が特別多いわけでは
ないようだけどね。
2020.4.19
歩いても 歩いても
毎年毎年、数十本の映画を観るので、
観たことも、タイトルさえも忘れていく映画が
多い中、記憶に残っていく映画もある。
ストーリーは、ほとんど覚えていないけど、
「良かった」「感動した」「泣いた」「強烈だった」
など、感想をは覚えているのだ。
中には、あまりにもつまらなかったので
覚えている作品もあるけどね。
さて、『歩いても 歩いても』は、今や
世界的監督となった是枝裕和監督の
2008年の作品。
当時、「すごく良かった」と記憶に残った作品だが、
昨夜、急に観たくなって、
Amazon prime video で鑑賞した。
阿部寛、樹木希林、原田芳雄、YOU、
夏川結衣らが家族として出演。
是枝監督と樹木希林の関係は、
この作品から始まっている。
どこにでもいそうな、普通の家族。
映画にはこの「普通」というキーワードが
何度か出てくる。
特別大きな事件があるわけではないし、
感動するわけでもない。
悲しいわけでもない。
なんだろうな、自分がまるで、
実家か親戚んちに行って見てきたような感じ。
記憶の奥底に残っている、
昭和の家族の風景という感じ。
家族のめんどくささ、
「血」の汚さ、
母親の恐ろしさ、
男の馬鹿さ、
老いの儚さ、
そして、
家族の素晴らしさ。
そんな映画です。
★★★★☆
アヒルと鴨のコインロッカー
もう1本、偶然にも『歩いても 歩いても』と
同じ2008年に観た映画、
『アヒルと鴨のコインロッカー』を観た。
これも記憶に残る映画だった。
これは映画を観た数年後、
伊坂幸太郎の原作小説も読んだが
幸いにもストーリーは驚くほど覚えていなかった。
ラストまで、タイトルの「コインロッカー」の
意味は思い出せなかったよ。
主演は、濱田岳。
共演に瑛太、松田龍平、大塚寧々。
売れる前の岡田将生が、ちょい役で出演している。
瑛太演じるカワサキが、濱田演じる椎名に
秘密を告白するシーンが素晴らしい。
ストーリーには、ちょっと無理があって、
現実的ではないし、突っ込み所もあるけど、
そういうのを含めても好きやなぁ。
★★★★▲
2020.6.27
ザ・ビートルズ
EIGHT DAYS A WEEK
The Touring Years
2016年9月に劇場公開された
ビートルズのドキュメンタリー映画、
『EIGHT DAYS A WEEK』を
DVD で観た。
公開されてすぐに劇場で観たのだが、
とても良かったことを覚えている。
(その時のエントリー。)
「本作を観て、
ビートルズのアルバムを1枚目から全部、
ゆっくり聴き直そうと思った。
映画も もう1回観たい」と書いているのだが、
アルバム全部は聴き返していないなぁ。
たぶん、直後は数枚聴いたような
気がするけど。
「もう一回観たい」というのも
4年近く経ってやっと観たよ。
でも、これぐらい時間が経っている方が、
新鮮でいい。
かなり忘れているからね。
感想のポイントは、2016年に書いたことと
ほぼ同じだけど、やはり楽曲の素晴らしさ、
そして、その影響力の大きさだな。
もう世界を変えてしまったわけやからね。
ホントに素晴らしいバンドです。
当時の4人の結束力も素晴らしい。
スタジアムで、まともな PA もモニターも
なく、ステージ上ではメンバーの音も
(たぶん自分の音も)聞こえていないのに
演奏はバッチリ合っている。
リンゴは、前の3人の後ろ姿を見て、
見当をつけてドラムを叩いていたという。
今では、イヤホンでモニターをする時代に
なってしまった。
あんなワイルドな環境で
演奏できるバンドは もういないかもな。
劇場公開時は、本編の後に
1965年の NY シェイ・スタジアムの
コンサートの映像(31分)が
続けて上映されたので、
楽しみにしていたら、
DVD には、コンサート映像は、
収録されていなかったよ。
残念。
2020.7.25
17歳のウィーン
フロイト教授 人生のレッスン
DER TRAFIKANT/THE TOBACCONIST
3月14日以来の劇場での映画鑑賞だった。
新型コロナの影響なのだが、
4ヶ月以上、劇場で映画を観なかったのは、
この十数年ではなかったことだ。
渋谷Bunkamuraの映画館ル・シネマでは、
両隣の席を一つ開けての販売。
半分の席で満席としなければならないのは、
劇場としては、つらいだろうな。
さて、『17歳のウィーン』。
サブタイトルが『フロイト教授 人生のレッスン』とある。
ナチスドイツに併合される前後の
1930年代のオーストリア、ウィーンが舞台。
田舎からタバコ屋に見習いとして働きに来た、
17歳のフランツは、タバコ屋の常連客、
精神科医のフロイト教授と懇意になり、
恋をしろと勧められる。
それからは、葉巻と引き換えに恋の相談に
のってもらうのだが、恋の物語と並行して、
あの時代のナチス、ユダヤ人の物語も進んでいく。
フロイトのことを期待したが、映画の主人公は、
あくまでも17歳のフランツ。
そして、あの時代そのものがテーマと言える。
時代背景や、フロイトは歴史上の事実だが、
原作は小説ということだから、
フィクションだろう。
私には、フランツの言動があまりにも
大人じみていて、とても17歳とは思えなかった。
映画では、現実とともにフランツの妄想も
描かれているので、彼が理想通りに振舞って
いたわけではないのは分かる。
それにしても、ナチスの建物の前に
タバコ屋の主人のズボンをつるすなど、
勇気なのか、怖いもの知らずなのか、
その思いの強さを感じたね。
フロイトを演じるブルーノ・ガンツは、
昨年2月に亡くなったらしい。
『ヒトラー 〜最期の12日間〜』では、
ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツが、
ナチスに追われるユダヤ人を演じたわけだ。
もう一人、本作の重要人物、
タバコ屋の主人、オットーも印象的な人物だ。
ヨハネス・クリシュという人が、
力強くも優しい男を演じている。
★★★▲☆
2020.8.14
ぶあいそうな手紙
AOS OLHOS DE ERNESTO / THROUGH ERNESTO'S EYES
先月久しぶりに劇場で映画を観たのが、
3月14日以来で、本当に今年は、
コロナの影響で映画を観に行っていない。
例年なら、盆休みは妻の実家(山形)に
行っているところだけど、今年はそれも中止。
色んな事をずい分自粛したてきたけど、
今日は、久々に銀座に映画を観に出た。
銀座の人の出は、まあ少なくもなく、
多くもなくといったところ。
映画館の座席は、相変わらず一席飛ばしだ。
さて映画は、ブラジルの
アナ・ルイーザ・アゼヴェードという
女性監督が撮った『ぶあいそうな手紙』。
ブラジル南部のポルトアレグレという街が舞台。
ウルグアイ出身の78歳のエルネストは、
視力が弱まってきていて、ほとんど見えなくなっている。
息子に一緒に住もうと言われるが、
「ひとりが良い」と首を縦に振らない。
ある日、友人の妻から届いた手紙を
偶然知り合った23歳の女性ビアに読んでもらう。
そこから、手紙の相手とも、
ビアとも新しい関係が発展していくのだった。
以下、ネタバレ含む。
観終えて、久しぶりに「映画を観たなぁ」と
満足のある作品だった。
テーマは、「老い」であり、「死」であり、
「家族」であり、「友情」であり、
「愛」であり、そして「恋」なんだな。
前半で驚いたのは、まずエルネストの大きさ。
彼の目が見えないことをいいことに、
ビアは、勝手にエルネストの家の鍵を持ち出し、
合鍵を作って、泥棒に入る。
エルネストは、そのことを知っていて、
全く気付かぬふりをして、ビアに近づき、
手紙を読んでくれ、返事を書いてくれと
頼みごとをする。
家政婦が、知らない人を信じちゃだめだと
忠告するが、エルネストは言うことを聞かない。
しまいには、ビアを家に寝泊まりさせるほどに。
そんなエルネストにビアも徐々に心を開いていく。
ところで、原題は『エルネストの目を通して』という
意味のようだ。
『ぶあいそうな手紙』という邦題は、微妙だ。
エルネストが手紙の返事を「拝啓」と
始めようとすると、それは不愛想だとビアが言い、
「親愛なる〜」に改めさせる。
結果、相手は「親愛なる」と書いた返信を
喜んでくれることになる。
つまり、邦題になっている「ぶあいそうな手紙」は、
一通も送っていないんだよ。
だから、微妙だと書いたのだけど、
あそこで、頑固なエルネストが、ビアのアドバイスを
素直に聞き入れたことは、大きな意味が
あるような気はするね。
音楽が良い。
劇中のレコードの使い方も良い。
サントラが出ていたら、買おうと思ったけど、
残念ながら出ていないようだ。
主題歌になっているのは、カエターノ・ヴェローゾの
『Un Vestido y un Amor/ドレス一枚と愛ひとつ』。
スペイン映画『トーク・トゥ・ハー』の時も
そうだったけど、この人の歌は、
映画の中で グッと心を掴まれるなぁ。
曲名が分かっているのは、カエターノの
それだけなのだけど、他の曲も良かったので、
サントラ欲しいなぁ。
原題でググってみても見当たらず。
エルネストが息子と一緒に住まないわけも
最後には明かされる。
やっぱり家族は一緒、みたいな結末ではない終わり方。
このラストシーンも好きやなぁ。
また、いつか観たいと思える映画だ。
ひとつだけ腑に落ちなかったのは、
家を売ろうとしていたので、当然エルネストの
持ち家だろうと思っていたら、途中で、
「家賃が払えない」と、大家さんらしき人に
話すシーンがあること。
そんな矛盾を描くはずはないから、
きっとブラジルの不動産の仕組みが
日本とは違うのかもしれない。
★★★★★
エルネストは、78歳。
帰宅して、PCを開けたら、
渡哲也が死んだというニュースが目に入った。
78歳だった。
合掌。
コンフィデンスマンJP
プリンセス編
テレビドラマの『コンフィデンスマンJP』は
一度も観たことがなかったし、
劇場版『コンフィデンスマンJP ロマンス編』が
公開された時も、そんなに興味が湧かなかった。
先日、この『ロマンス編』がテレビで放映されたのを
たまたま観たら、結構面白かったので、
新作『プリンセス編』を観に行くことにした。
まんまとフジテレビの宣伝に乗せられたね。
(映画にもフジテレビは絡んでいます。)
さて、『プリンセス編』。
観る前は面白さは期待していたけど
まさか、これを観て泣くとは思いもしなった。
でも、泣いたよ。
面白いだけでなく、ええ話になっとる。
トリックは、見抜けたものもあったけど
それにとどまらず、「え〜そこもぉ〜!」
という程の騙され具合で、大満足。
プリンセス役の関水渚。
この子のことは、知らなかったのだけど、
途中で「あれ、広瀬すずに似てるな」から
「広瀬すずやん」になり、完全に
広瀬すずにしか見えなくなった。
終わってから、全く別人と知ってビックリ。
でも、かなり似てるよ。
演技も良かったので、これからにも期待。
長澤まさみ、小日向文世、小手伸也は
観ていても安定やね。
そのほかレギュラーメンバーで
今年は話題の東出昌大、
それに、先月他界した三浦春馬が出演している。
三浦春馬は、もったいないね。
そのほかカメオ出演あり、そっくりさん出演あり、
脇役も超豪華です。
また、笑い、涙、哲学的メッセージもあり、
エンタテイメント作品として十分楽しめます。
中にはトリックのほとんどを見抜いたという人も
いるようだけど、私は期待以上の作品でした。
★★★★★
劇場版第3弾の製作も決定したとのこと。
2020.9.20
TENET テネット
TENET
『ダンケルク』『ダークナイト』『インターステラー』
『インセプション』などのクリストファー・ノーラン
監督の新作『TENET テネット』。
劇中でぶっ壊されるジャンボジェット機は、
CGではなく本物だということ、
時間を逆行させる武器が、登場するということ、
この2つだけの予備知識で鑑賞した。
クリストファー・ノーランなので、きっと面白いだろうと
期待したが、はっきり言って、難しかった。
この「時間を逆行させる武器」が曲者で、
どういう仕組みか分からない。
タイムマシーンとは、違うのは分かるのだけど。
おまけに、もの凄いテンポで話は展開していくので、
考えるひまもない。
映像は迫力があるし、スリルもあるけど、
ストーリーは、イマイチ理解できないまま終わってしもた。
とはいうものの後半の謎解きみたいな展開は、
面白かったし、2時間30分を長いとは、
感じさせないのはさすがやね。
ネットのレビューに詳しく解説してくれているのが
あったのだけど、それ読んでもよう分からん。
へぇ〜って思う部分はあったけど、
映画は、もうちょっと分かりやすいのがいいなぁ。
たぶん、1回観ただけで、理解できる人いないんちゃうか。
主演は、ジョン・デヴィッド・ワシントン。
知らなかったけど、デンゼル・ワシントンの息子で、
元プロアメフトの選手だと。
★★★☆☆
オフィシャル・シークレット
OFFICIAL SECRETS
2003年イラク戦争開戦前に
英国であった実話を元にした映画。
こんな事件があったなんて、全く知らなかったから、
実話ながら結末も知らないもので、十分に楽しめた。
そして、恐ろしいと思った。
イギリスの諜報機関 GCHQ で働く
キャサリン・ガンは、アメリカの国家安全保障局
NSA から、違法な盗聴の要請が記された
メールを受け取る。
それは、イラクへの攻撃を推し進めるためのもので、
国民を欺いたものだった。
もともとイラクが、大量破壊兵器を持っているか
どうかさえ疑わしいと思っていたところへ、
この違法な盗聴をキャサリンは、許すことが
出来ず、戦争を止めようとリークすることを決意。
その後、メールの内容がイギリスのオブザーバー紙の
一面を飾る。
しかし、イラクへの攻撃は始まってしまう。
GCHQ では、リークした犯人探しが始まる。
キャサリンは、一度は否定したものの、
同僚が疑われていることに耐え切れず、
「自分がやった」と名乗り出る。
これは、国家を裏切った犯罪行為だ。
さて、キャサリンはどうなるのか?
キャサリンという人は、日本(広島)へ
留学していたこともあり、原爆の恐ろしさを
知っていたということも、戦争を止めようとした
動機の一部になっていたのかも知れない。
それにしても、とんでもないことを
やってのけた人だ。
キャサリンを演じるのは、キーラ・ナイトレイ。
とても力強い演技で良いです。
あと、弁護士役のレイフ・ファインズも良い。
実際にあったことなので、ブッシュやパウエルなどの
ニュース映像も交えて、リアリティもたっぷりです。
★★★★☆
2020.10.4
ミッドナイトスワン
主演のトランスジェンダー役に草なぎ剛が
扮する映画『ミッドナイトスワン』。
中々の高評価の感動作ということで、
期待を持って観てきた。
難しいトランスジェンダーの主人公(凪沙)を
演じる草なぎ剛も(一部、白けてしまう演技が
あったものの)悪くないし、
何より草なぎ演じる凪沙の姪っ子、
一果を演じる服部樹咲が素晴らしい。
バレエが踊れるかどうかがこの役の重要な
要素だと思うが、おそらくは小さい頃から
バレエを演ってきた服部が、
難しいキャラクターの役を素晴らしく演じている。
しかし、残念ながらいくつかの疑問が残り、
作品に没頭できなかったのは否めない。
以下、ネタバレ含みます。
途中、娘に会いに来た一果の母親は、
世話になっている凪沙に挨拶もしないのか?
あの短期間の同居で広島まで一果を
迎えに行くのは、不自然じゃないか?
まずは本人の希望を聞くのが希望を聞くのが
先じゃないのか?
女になったというのに、
どうしてすぐに乳房を隠さない?
ラストに近いシーンで、一果が海に入っていく
シーンは、どういう意味があるのか、などなど。
一果が海に入っていくシーンには、
留学決まったというのに、
この子も自死する気なのか?と混乱した。
おそらく原作を読めば、これらの
疑問は解消されるのかもしれない。
だとすれば、なおさら全体的に
説明不足を否めなかった。
観る側の想像力の欠如といわれれば
それまでだが、残念ながら演者の素晴らしさに
脚本が追い付かなかったという印象だった。
★★★★☆
浅田家!
写真家 浅田政志 をモデルにした映画
『浅田家!』。
浅田政志 を 二宮和也が演じ、
その兄役には、妻夫木聡。
観る前には、二宮と妻夫木では、
二宮が負けてしまうんじゃないかと思っていたが、
そんなことは杞憂に終わった。
役者としての成長を感じたね。(上からだけど)
二宮の出演作は、そんなにたくさん観ていないけど、
クリント・イーストウッド監督の
『硫黄島からの手紙』の時は、
ちょっと頼りなさを感じたし、山田洋次監督の
『母と暮せば』では、32歳になって学生を
演じさせられている苦しさも感じた。
本作でも、学生から演じるけど、
不思議と違和感は感じなかったね。
(何か画像処理しているのかも。)
映画に出てくる、浅田政志のデビュー写真集
「浅田家」を書店で観たことはあったが、
特に興味をひかなかった。
しかし、この映画を観て、そのオリジナリティと、
何よりも浅田政志の家族、
両親と兄の素晴らしさに感じ入った。
「アイディアは面白いけど、ただの家族写真、
そんなもの誰も買わないよ」と出版社に
断られるシーンがある。
そして、「うちで出せば?」という出版社社長との
出逢い。
出版後、「そんなに売れると思わなかったけど、
ここまで売れないとは思わなかった」と
明るく言う社長。
そして、その写真集で木村伊兵衛写真賞を受賞する。
人生を左右するのは、人との出会い、
誰と出会うかで、その人の人生が創られていく。
両親や兄弟も含めてね。
ジャズピアニストの故佐山雅弘さんの
「僕という者は僕が出会った人々で出来ている」という
言葉を思い出した。
前半のコミカルな展開と、東日本大震災以後の
シリアスなストーリーの対比も良い。
恥ずかしながら少しは写真を撮る身として、
最高の被写体は、「人」であり、
それは、撮る側が「人」であるからなのだ、と
再認識したのでした。
★★★★▲
十二人の怒れる男
法廷劇の金字塔とも言われる、
『十二人の怒れる男』。
ヘンリー・フォンダ主演のその映画を
妻が小学生の頃にテレビで観て、
大きな影響を受けたという作品だ。
2009年には、蜷川幸雄 演出、中井貴一 主演で
舞台を観たが、昨日は、堤真一が主役の舞台を
観てきた。
@ Bunkamura シアターコクーン
演出は、リンゼイ・ポズナーという英国の演出家。
なんと、このコロナ禍、来日することなく
リモートで演出、稽古を重ねたのだという。
そういう面でも、コロナは新しい可能を
もたらしたのだな。
今回、改めて感じたのは、
金字塔と言われるだけあって、原作が
素晴らしいことには間違いがないが、
もう結末を知ってしまってからは、
初めて映画を観たときのインパクトを
超えることはないということ。
元々が1950年代のアメリカが
舞台ということもあるだろう。
映画なら気にならないような言葉も
現代では、そんなに差別的な発言を
あらわにする人もいないだろうなと
無理を感じた。
日本人が、アメリカ人を演じているのがだから、
元々が無理があるのだけどもね。
[ CAST ]
陪審員長(陪審員1番)/ ベンガル
陪審員2番 / 堀 文明
陪審員3番 / 山崎 一
陪審員4番 / 石丸幹二
陪審員5番 / 少路勇介
陪審員6番 / 梶原善
陪審員7番 / 永山絢斗
陪審員8番 / 堤 真一
陪審員9番 / 青山達三
陪審員10番 / 吉見一豊
陪審員11番 / 三上市朗
陪審員12番 / 溝端淳平
[ STAFF ]
作 / レジナルド・ローズ
翻訳 / 徐賀世子
演出 / リンゼイ・ポズナー
美術・衣裳 / ピーター・マッキントッシュ
[ 関連エントリー ]
2009.12.6 十二人の怒れる男
2015.10.14 12人の怒れる男
2020.10.18
スパイの妻
黒沢清 監督作品の映画『スパイの妻』。
蒼井優、高橋一生 主演で、
ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞
(監督賞)を受賞した。
何度か予告編を観たことがあって、
それほど食指が動いていたわけではなかったが、
何を観るか決めずに行った映画館で、
ちょうど時間が良かったので、観てみることに。
受賞もあったしね。
感想。
う〜ん、ちょっと物足りなかったなぁ。
昭和初期っぽい、蒼井優のセリフ回しは、
もちろん演出だろうから良いとしよう。
蒼井優の存在に対し、夫役の高橋一生、
憲兵役の東出昌大、このふたりに迫力がない。
ストーリーからいくと、もっと鬼気迫るもんが欲しいなぁ。
まあ、このふたりを「素晴らしい」と書いている人も
いるので、もちろん個人の感想ですが。
高橋演じる優作が、金庫の番号を
人に知られているのに
大切なものを金庫にしまうのは、
不自然を通り越して、アホちゃうかと思った。
優作が成し遂げようとしている大きなことと、
行動のバランスが取れてないんちゃうやろか。
そして、その成し遂げようとしていることも疑問。
結末が字幕でまとめられているのもやや不満。
基本、本作はあの緊張の時代を背景にした
ラヴ・ストーリーなのかもな。
以前、他の役者さんでも書いたことがあるが、
俳優という職業の人は、出演するテレビ CM を
選んでほしい。
高橋を見ると、頭の中で
「なんだし、なんだし、AGC」という
フレーズが勝手に流れてしまう。
これって、コマーシャルとしては成功やけど、
俳優としては、ダメージやと思うねんけど
どうでしょう。
あと、どうでもいいことだけど、東出昌大含め
憲兵さんの制服(軍服)が、みんな、
新品をおろしたてのように見えた。
もっと着古した感があってもええんちゃうかな。
★★★☆☆
2020.11.12
ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった
ONCE WERE BROTHERS :
ROBBIE ROBERTSON AND THE BAND
ザ・バンドのドキュメンタリー映画
『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』を観てきた。
2016年にロビー・ロバートソンが出版した、
『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』を
元に映画化したもので、エリック・クラプトン、
ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、
ヴァン・モリソン、ジョージ・ハリスン、
ピーター・ガブリエル、タジ・マハール、
ロニー・ホーキンス、マーティン・スコセッシらの
インタビューと当時の貴重な映像を交えた
興味深い内容だったが、これが期待以上に良かった。
独自の音楽を創り上げた男達の美しい物語。
こんな風にバンドを組めたら、どんなに素晴らしいだろう。
冗談か本気だったのか分からないけど、
(あまりバンドに恵まれなかった)エリック
(クラプトン)は、「リズムギターで良いから、
バンドに入れてくれ」と言って断られたそうな。
そんな話は、初めて聞いた。
ザ・バンドは、ロニー・ホーキンスのバックバンドとして
スタートし、ボブ・ディランのバックバンドを経て、
『Music From Big Pink』でデビューしたことは、
有名だけど、ロビーが16歳(15歳だったかも)の
時にロニーに曲を提供し、レコーディングされていたことや
ロニーに誘われ、アメリカに出たのも16歳だったとは
知らなかった。
ロビーってなぜか寡黙な印象だったけど、
あんな風に喋る人だったというのも新鮮に映った。
正面から撮影していて、そのカメラ目線が
途中ちょっとだけ可笑しかったけど。
ロビーの奥さんがまた美人。
ふたりともカナダ人なのにパリで出逢った
というのもロマンティック〜。
バンドが売れ、メンバーがアルコールやドラッグに
おぼれていく中、ロビー(とガース・ハドソン)は、
まともだったようだ。
一番印象に残ったのは、名曲 "The Weight" が
できた時の話。
ちょっと感動してしもた。
歌の冒頭「ナザレに着いた時
(I pulled into Nazareth)」って始まるんやけど、
それは マーティンのギターのサウンドホールの中を
覗いたら、「ペンシルバニア州ナザレ」って
書いてあったのが、歌詞になったんやと。
タイトルにあるように、兄弟同様だった
リヴォン・ヘルムとは、いい別れ方はしなかったのだけど、
ロビーが今もリヴォンを愛していることは、
この映画から痛いほど伝わって来た。
ラストはまるで、リヴォンに捧げる映画のようでもあったよ。
ザ・バンド、最後のコンサート、『ラスト・ワルツ』に
繋がるあたりは、ちょっと駆け足になった感じがして、
もっと詳しく知りたかったけど、
それは、ロビーの書籍を読むことにしよう。
監督は、まだ若い(製作時26歳)ダニエル・ロアーと
いう人だが、『ラスト・ワルツ』の監督でもある
マーティン・スコセッシ、『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS
A WEEK-The Touring Years』の監督、
ロン・ハワードも製作総指揮として名を連ねている。。
本作を観てから、『ラスト・ワルツ』を観ると
また違って観えると思う。
★★★★★
オフィシャルサイト
2020.11.16
音響ハウス Melody-Go-Round
先日の『ザ・バンド / かつて僕らは兄弟だった』に
続いて、またまた音楽ドキュメンタリー映画を観てきた。
銀座にある録音スタジオのドキュメンタリー、
『音響ハウス Melody-Go-Round』。
昨年、創立45周年を迎え、撮られた映画だ。
というと、かなりマニアックな印象を持たれるだろうが、
スタジオや録音に興味がなくても、
どんな風に音楽が生み出されていくのかは
音楽が好きならば、十分に楽しめる。
印象に残ったのは、忌野清志郎と坂本龍一の
コラボ『い・け・な・いルージュマジック』の誕生秘話。
これはスゴイなぁ。
そして、1981年(?)スタジオにいよいよデジタルが
導入された時の、松任谷正隆氏のショック。
この辺りは、その後どんな風にデジタルを受け入れて
行ったのか、もっと話が聞きたかったなぁ。
そして、スタジオのドキュメンタリーであるからには
音楽を創らねばならない。
ということで、この映画のために佐橋(佳幸)さんが
作曲し、大貫(妙子)さんが作詞した曲の
レコーディング風景がたっぷり観られる。
リズム・セクションの録音に始まり、
ヴァイオリンのオーバーダビング、
ホーン・セクションやコーラスのオーバーダビング、
そして、歌入れ。
半分は、佐橋さんとエンジニアの飯尾さんの
ドキュメンタリーのようでもあった。
インタビューに登場するのは、
高橋幸宏、井上艦、坂本龍一、矢野顕子、
佐野元春、綾戸智恵、松任谷由実、
葉加瀬太郎、村田陽一、本田雅人、
西村浩二、山本拓夫、大貫妙子、鈴木慶一、
笹路正徳ら。
名前はたびたび出てくるのに山下達郎さんが
登場しないのは、残念。
何人かが同じようなことを言っていたけど、
スタジオが新しければ良いわけじゃない。
機材が最新であれば良いわけじゃない。
そういうことではない、その「場」が、
音楽を創らせる。
奇跡を起こす。
その「場」としての意義と意味を改めて
認識したね。
DTMがどんなに進んでも、所詮、
自分の枠の中でしかない。
スタジオで音を出すということは、
自分ひとりではないということだ。
創り出す音楽が、自分の枠の外へ
飛び出すということだ。
さあ、スタジオへ行こう。
そんな映画でした。
最後にたぶん「良い音とは?」という
質問をしたのだろうと思われる、
各ミュージシャンの色んな答えを聞ける。
教授の答えは、もはや哲学でした。
それにしても、高橋幸宏さんって、
普段の録音の時でもあんなにオシャレしてくるのか。
★★★★★
オフィシャルサイト
2020.12.4
ミセス・ノイズィ
Kさんに「知り合いが出てるから」と誘われて
観に行った映画『ミセス・ノイズィ』。
引っ越し先の隣のおばさんが、
朝6時前からべランダで、布団を叩いて
騒音を出し、勝手に6歳の娘を連れだす。
ご近所トラブルを題材にした物語だが、
実際に布団を叩くおばさんは、数年前に
騒音おばさんと呼ばれ、ニュースにもなった。
おそらくそのおばさんが、モデルになっているだろうが
この物語はフィクションだ。
Kさんの知り合いというのは、その隣の
おばさんを演じる大高洋子さん。
中々ええ味を出してます。
しかし、映画としては少し残念なところもあった。
主役(篠原ゆき子)の行動にちょっとやり過ぎ感があり、
現実的でないシーンがあったのは、否めない。
引っ越して来て何度か食事してるのに
荷物からコップがひとつも出てないとか
リアリティないように思うねんけど、どうでしょう。
マスコミや野次馬の人たちもあまりにステレオタイプで
どうかなぁと思いました。
社会的にも、ヒューマンドラマとしても
良い題材だと思うし、
視点も良いと思うので惜しいなぁ。
ラストがどうも薄っぺらい感じがする。
持って行きようでは、もっと深い映画に
仕上げられたような気がするねん。
上からですが。
篠原ゆき子って、最近何かで観たなと思てたら、
テレビドラマの『相棒』に出てた。
★★★★☆