2017年 映画・演劇・舞台 etc
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2017.1.3
2016年 ベスト映画
昨年は、1年間で(のべ)86本の映画を
劇場で観た。
(「のべ」と書いたのは、2回観た作品が
数本あるから。)
86本は、新記録である。
2013年は62本、2014年は68本、
2015年は78本と年々記録を伸ばしているのだが、
中々 目標の年間100本は難しい。
まあ、100本観たからなんやねん、と
言われれば、なんでもないねんけどね。
2016年は、★5つを付けた作品が 23本、
★4つ半が 11本、あわせて35本もある。
それだけ、良い映画が多かったということやね。
2016年の特徴は、★5つの23本の中に、
『君の名は。』
『この世界の片隅に』と、
日本のアニメ作品が2本あることと、
『THE BEATLES: EIGHT DAYS A WEEK』
『ふたりの桃源郷』
『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』
『シーモアさんと、大人のための人生入門』
『JACO 』と、
ドキュメンタリー映画が
5本も含まれていること。
それから、これは毎年いえることやけど、
実話を基にした作品はパワフルやね。
今年の★5つの実話を基にした映画は、
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『不屈の男 アンブロークン』
『ザ・ブリザード』
『リリーのすべて』
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
『ニュースの真相』
『ハドソン川の奇跡』
『海賊とよばれた男』
『ブルーに生まれついて』
米国作品が多く、残念ながら、
邦画は『海賊とよばれた男』一作のみ。
その他の★5つ作品は、下記。
『俺たちとジュリア』
『海よりもまだ深く』
『ブルックリン』
『ジャングル・ブック』
『アスファルト』
『ある天文学者の恋文』
『PK』
アニメとドキュメンタリーを除くと
邦画は『海よりもまだ深く』と
『海賊とよばれた男』の2本しかない。
★4つ半作品は下記。
『人生の約束』
『クリード チャンプを継ぐ男』
『ザ・ウォーク』 (実話)
『クーパー家の晩餐会』
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
『スポットライト 世紀のスクープ』 (実話)
『グランドフィナーレ』
『SCOOP!』
『お父さんと伊藤さん』
『湯を沸かすほどの熱い愛』
『ヤクザと憲法』 (ドキュメンタリー)
こちらには、ドキュメンタリーを含め、
邦画が6本。
さて、ベスト3やベスト5を選びたいが、
毎度のことながら、順位を付けるのは難しい。
順位は、付けられないのだけど、
心に残った1本は?と訊かれれば、
間違いなく『アスファルト』なのです。
もう一度、観に行こうと思っていて、
機会を逃してしまったけど、
2月に飯田橋のギンレイホールで上映が
あるようなので、観に行こうと思う。
DVD が出たら買うかもな。
今年も良い映画が観られますように。
2017.1.3
MERU/メルー
今年の映画1本目は、
登山家のドキュメンタリー『MERU/メルー』。
インド北部のヒマラヤ山脈メルー中央峰に
「シャークスフィン(サメの背びれ)」と
呼ばれる岩山(?)がある。
誰もこの「シャークスフィン」の登頂に
成功したことのないルートに挑むという
ドキュメンタリー。
エベレスト登頂に成功したクライマーでも
登れない、誰も成功していない難攻不落の頂き。
誰も登っていない、不可能と言われると、
登らずにはいられない人達がいるようだ。
コンラッド・アンカー、ジミー・チン、
レナン・オズタークの3人は、
2008年、山頂まで残りわずか100メートルで
登頂を断念する。
それ以上進むことは、死を意味する。
素人の私が見ると、
「これを登ろうと思うの?」というような
断崖絶壁。
しかし、人間に不可能はないねんなぁ。
2011年、彼らはその登頂に成功する。
まるでドラマのように、
その登頂の前に、いくつかの障害が立ちはだかる。
しかし、山の神は見捨てない。
あんな山に登ろうとするのは、
命知らずだろうと思っていたが、
命知らずでは、登れない。
登山は、無事下山して初めて成功だからだ。
登山に興味のない私でも 本作を
興味深く観ることができたのは、
これは登山のドキュメンタリー映画ではなく、
登山家(人間)を追った
ドキュメンタリーだからだと思う。
3人のクライマーの一人、ジミー・チンが
監督・プロデュース・撮影を担当している。
彼は、ナショナル・ジオグラフィックなどの
写真を手掛けてきたと読んで納得。
ただの登山家ではない。
チームのリーダー、コンラッド・アンカーは、
世界のトップ・クライマーで、
クライミング界のリーダー的存在。
もう一人、レナン・オズタークは、
登山だけではなく、絵画や短編フィルムでも
知られるアーティスト。
命が懸かっている。
チームを組むのは、誰とでもよいわけではない。
重要なのは「信頼」。
「どうして、そこまで信頼できるのか?」と
いうような言葉があったが、
この3人は、最強のチームだ。
だからこそ、達成したのだと思う。
何かに挑むのに理由や説明は無意味なのだ。
★★★★☆
こころに剣士を
THE FENCER
エストニアという国は、調べてみると、
1918年にロシア帝国から独立するも、
1940年にソ連に占領され、
1941年にはナチス・ドイツに占領され、
1944年に再びソ連に占領され、
1991年にようやく独立を回復したという歴史がある。
映画『こころに剣士を』は、1950年代初頭、
ソ連占領下にあったエストニアでの物語。
元ドイツ軍兵士ということで、
秘密警察に追われているエンデルは、
ハープサルという田舎町に教師として
やってくる。
校長に運動部を作るよう言われたエンデルは、
子供たちにフェンシングを教え始める。
エンデルは、元フェンシングの選手だったのだ。
娯楽のない、希望のない田舎町に暮らす
子供たちは、すぐにフェンシングのとりこになる。
はじめは、子供たちが苦手だったエンデルも
フェンシングを教えながら、子供たちに
教えることにやりがいを見出し始める。
ある日、レニングラードで行われる全国大会に
出たいと生徒たちから言われる。
レニングラードに行くことは、
秘密警察に捕まりに行くようなものだ。
当初、理由をつけレニングラードには
行かないと言うエンデルだったが、
やがてレニングラード行きを決意する。
大きく盛り上がることもなく、
ドラマチックに展開することもなく、
どちらかというと、静かなトーンで、
淡々と進んでいくのだが、
その静かなトーンが、グッとくる。
本作は、実話を基にしているのだ。
フェンシングは、相手との距離を取る競技。
相手が出てくれば、自分が退き、
自分が前へ出れば、相手が退く。
子供たちにフェンシングを教えながら、
エンデルは、逃げる(退く)ことをやめ、
前へ出る。
逃げない イコール 秘密警察に捕まる、
ということなのだが。
フェンシングという競技と
エンデルの生き方が重なる。
自由に生きることを制限された時代、
子供たちに希望を与えたエンデルは、
自分にも希望を見たのかもしれない。
エンデルはすでに亡くなっているが、
その中学校にはエンデルが作った
フェンシング部がいまだに続いているという。
原題の「The Fencer」は「剣士」のことだが、
邦題の「こころに剣士を」は、中々良い。
イマイチな邦題が多い中、珍しい。
エンデル役は、マルト・アヴァンディという
エストニアの人気俳優らしい。
本作で、フィンランドのアカデミー賞に
ノミネートされた。
(本作は、フィンランド、ドイツ、エストニア合作。)
マルタという少女役のリーサ・コッペルが
とっても良い。
幼く見えて、中学生には見えないのだが、
2003年生まれなので、撮影時には 11歳ぐらいか。
大人になる前にたくさん映画に出て欲しい。
★★★★▲
2017.1.8
うさぎ追いし
―山極勝三郎物語―
ロバート・デ・ニーロの出演する映画
『ダーティ・グランパ』を観ようと、
有楽町の TOHO シネマズに出向いた。
11:15 からの上映で、
映画館に着いたのが、11:10 ごろ。
チケットを買おうと窓口に並んだ。
窓口の掲示には、「残席少」の文字。
私の前の人がチケットを買うと、
窓口のおネエさんが、
「少々お待ちください」と席を立った。
(なんやねん、時間ないのに)と思う私。
おネエさんは、掲示板の
「残席少」を「売切」に差し替えた。
げっ!
そう。
私の前の人で売切れたのでした。
こういうこともあんねんなぁ。
この頃は、ネットで予約していくことが
多いのだが、今日は一人だったし、
油断していた。
妻と待ち合わせの時間まで、
3時間ある。
どうしたものかと思い、
ちょうど良い上映時間の映画が、
近所でないか、検索してみると
一つだけあった。
『うさぎ追いし ―山極勝三郎物語―』。
知っていたけど、あまりに地味そうで
観ようと思わなかった作品。
しかし、3時間ぶらぶら時間をつぶすのは
つらいので、上映している有楽町スバル座へ
向かった。
スバル座の窓口では、おネエさんに
「一般とシニアとございますが?」と
訊かれてしまった。
「シニア」とは、年齢60歳以上の人に
適用される割引のことで、
一般料金 1,800円のところ、1,100円になる。
ろ、60歳以上見えるのか・・・オレ。
と軽い衝撃を受けつつ、劇場へ。
場内に入ると、高齢のお客さんが多い。
ああ、そうか、それでおネエさんは、
あんな風に訊いたんだな、と
的外れかも知れない理由を付けて納得。
さて、映画の方はというと。
山極勝三郎(やまぎわかつさぶろう)という、
聞いたこともない人の物語。
おそらくは、医学界では有名な方なのだろうが、
私は知らなかった。
近年、日本人でノーベル賞を受賞するのは、
物理や化学の世界では珍しくなくなったが、
まだ日本人が誰も受賞したことのない1920年代に、
山極は、ノーベル賞候補になっていた。
彼は、世界で初めて人工的な癌の発生実験に成功したのだ。
癌細胞を作ることができれば、
治療法も発見できるという信念から、
その実験を続け、成功したのだ。
この実験が地味。
ウサギの耳にコールタールを塗っては
剥がす、の繰り返し。
山極は、結核を持ちながら、
その実験を続けるのだが、
映画からはその実験が地味で簡単そうで
あまり大変さが伝わってこないのが残念。
「簡単そう」と書いたけど、
当初ネズミではうまくいかず、
ウサギに変えるも、実験中のウサギが
たくさん死んでしまったり、
結果が中々出ない、
経済的に苦しい、など、
それは、根気のいる実験であったことは
分かるのだけどね。
東京帝国大学生時代から、亡くなる67歳までの
山極を演じるのが、遠藤憲一。
う〜ん、きつい。
16歳の山極を若い役者が演じていて、
大学生になったとたん、遠藤憲一。
遠藤憲一って、55歳やからなぁ。
いくらなんでも無理がある。
学生服がまるでコントのようで、
気の毒に見えたほど。
先日観た『海賊とよばれた男』の岡田准一は、
主人公の20代から90代までを演じていたけど、
メイクも素晴らしく、それほどの
違和感はなかったのだけど・・・。
その他にも、予算の関係だろうか、
残念な要素がいくつかあった。
役者の演技のひどいところとか。
そんなわけで前半は、
やや白け気味に観ていたのだが、
名前も知らなかった、
一人の日本人学者の努力が、
今の癌治療の基礎を築き、
癌研究センターや癌専門病院なども
その男が描いたヴィジョンであったことを知り、
最後には心を打たれて泣いてしまった。
ノーベル賞受賞に全く無頓着だった山極や、
最後まで山極を支え続けた奥さんも良い。
出演は、山極役の遠藤憲一のほか、
妻かね子役に水野真紀、
山極の同郷(信州上田)の友人役に豊原功補、
山極の助手役に岡部尚 など。
ちょっとだけ、北大路欣也、高橋恵子。
良い題材だけど、作品としては、
イマイチ突き抜けていないためか、地味なためか、
東京では有楽町スバル座、一館でしか上映していない。
エンディング・テーマ音楽も、残念だったが、
こういう日本人がいた、ということを
知るのは良いことだと思う。
★★★★☆
2017.1.9
幸せなひとりぼっち
EN MAN SOM HETER OVE/A MAN CALLED OVE
スウェーデンの映画って、
あんまり記憶にないのだけど、
過去に観たことがあったのだろうか。
『幸せなひとりぼっち』は、
スウェーデンの作家によるベストセラー小説の
映画化で、映画の方も、国民の5人に1人が
観たという大ヒット作。
愛妻を亡くし人生に絶望した老人が、
向かいに引っ越してきた家族と交流しながら、
少しずつ心を開いていくというヒューマン・ドラマ。
老人といっても、59歳ということで、
おじいさんではないのだけど、
この人(オーヴェ)が偏屈というか頑固というか、
変人というか、近所に住んでいたら、
絶対関わりたくないタイプ。
オーヴェは最愛の妻の後を追って、
何度も自殺を試みるが、なかなか死ねない。
そして、物語が進むうちに、
まるでサスペンスドラマの謎解きのように、
オーヴェの生い立ちや、妻との出会い、恋、
結婚、人生を変えてしまった事故などが
明かされていく。
特に、妻ソーニャとのラヴ・ストーリーは良い。
そして、ソーニャが良い。
前半、こんなダンナやったら、
さぞかし奥さんもイヤだっただろうと思ったけど、
そうではなかった。
オーヴェは、本当に妻を愛していて、
その妻を失ったことで、人生に絶望し、
心を閉ざしていたのだということが、
徐々に分かってくる。
ご近所の皆さんの心の広さを感じる、
自分の心の狭さを感じずにはいられないが、
人の心を開かせるのは、人の愛しかないのだね。
基本、コメディタッチなので
笑えるシーンも多く、深刻さもない。
そして、人間っていいなぁと思える作品。
オーヴェは、幸せな人だったと思うね。
ソーニャのような女性と結婚できた上に
あんなご近所に恵まれて。
スウェーデンということで、乗る車が、
サーブ派とボルボ派に分かれているのも面白かった。
★★★★▲
2017.1.14
ダーティ・グランパ
Dirty Grandpa
先週、劇場へ行き、チケットを買おうと
窓口に並んだところ、私の前の人で
チケットが売り切れ、観られなかった映画
『ダーティ・グランパ』を観てきた。
ロバート・デ・ニーロとザック・エフロンの
共演で、ロバート・デ・ニーロが、
『マイ・インターン』の品の良い紳士とは
打って変わって、どうしようもない、
下品で スケベで 奔放なジジイ演じている。
デニーロは、以前は大好きでよく観ていたのだが、
この数年はあんまり見ていなくて、
2015年の『マイ・インターン』が久しぶりだった。
デニーロの演じるギャングやチンピラも好きだが、
私がデニーロ・ファンになったのは、コメディ。
1989年の ショーン・ペンとの共演作、
『俺たちは天使じゃない(We're No Angels)』。
これを観て大好きになったのだった。
さて、『ダーティ・グランパ』もコメディ。
下ネタ満載でかなり下品。
ちょっと『テッド』を思い出す感じ。
顔をしかめるご婦人もおられるだろうが、
『テッド』同様、私はこのバカバカしさは結構好きだな。
妻を亡くした翌日に、孫を連れて旅に出る。
旅の目的は、若い女を抱くことと、もうひとつ。
それは後半に明かされるのだけど。
『マイ・インターン』の紳士ジジイも
こんなジジイになりたいと思わせてくれたけど、
全く別の意味で、『ダーティ・グランパ』の
ジジイにも憧れるなぁ。
もし、自分にあんな祖父がいたら、
困るけど、楽しいやろな。
ザック・エフロンのことは、知らなかったけど
アイドルのような俳優だったみたいで、
本作では かなりぶっ飛んだ役に挑戦している。
下ネタや下品な言葉など、英語が分かれば
きっともっとおもろいのやろな。
★★★★☆
2017.1.25
50/50
先日受けた英語の発音レッスンをきっかけに
今年は、積極的に英語の勉強をしようと思い、
何か1〜2本アメリカ映画を教材にしよう、
何にしようかなと考えていたところ、
グッドタイミングで Amazon から
DVD のセールのお知らせメールが届いた。
・もう一度観たい映画。
・日常的な場面の物語。
・価格が安い。
この3つの条件を満たす DVD を探し、
『50/50 フィフティ・フィフティ』
『リトル・ミス・サンシャイン』
の2本に決め注文した。
『50/50』は、税込4,104円が なんと 721円。
『リトル〜』は、1,533円が 559円。
送料を入れても、2枚で2千円でおつりが来た。
どちらも新品。
まず今日は、『50/50』を鑑賞。
『50/50』は、2012年の2月だから
5年前に劇場で鑑賞した、
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演の映画。
27歳の酒もタバコもやらないアダムが、
脊髄の癌になる物語。
タイトルの「50/50」は、
生存率50%、死亡率50% ということ。
今回は、まず字幕なしでどれくらい
理解できるか試してみようと思い、
字幕なしで観始めたところ、
全くと言ってよいほど聞き取れず、
5分でギブ・アップ。
日本語字幕付きで観ることに変更。
最初の部分は、英語の発音に注意を払いながら
観ていたけど、途中で物語に引きずり込まれ、
あんまり英語をちゃんと聞いていなかった。
次は、英語の字幕付きで観てみようと思う。
そのあと 日本語字幕、英語字幕、字幕なし、
日本語吹替え、この4パターンを混ぜながら、
部分的に繰り返し観たり、色々やってみようと思う。
映画は、やっぱり良かったなぁ。
深刻さと、軽さ(下ネタも結構あり)が共存して
いながら、感動もある。
ラストも好きやな。
そして、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが良い。
彼の出演作をそんなにたくさん観たわけではないけど、
昨年観た『ザ・ウォーク』も良かったし、
今週金曜日に公開予定の『スノーデン』も楽しみだ。
『スノーデン』は、2013年にアメリカ政府の
監視システムを告発したエドワード・スノーデンを
題材にした オリバー・ストーン監督の作品。
当時、日本でもずいぶんとニュースになったので
国際ニュースに疎い私でも彼のことを覚えていたよ。
★★★★★
2017.2.4
アスファルト
ASPHALTE / MACADAM STORIES
2回目
昨年、劇場で観た80数本の映画の中で、
一番印象に残った映画「アスファルト」。
もう一度 観たいと思いながら
機会を逃してしまったが、
今日から、飯田橋のギンレイホールでの
上映が始まったので、早速観てきた。
昨年 観たときのエントリーを読むと、
可笑しくないところで笑う観客に反応している
自分がいるが、今日のお客さんは、
そんなことはなかった。
観る人たちによって、劇場の空気が違うのだな。
物語は、3組の男女の出会いを描いている。
中年男と看護師、
ティーン・エイジャーとちょっと落ち目な女優、
NASA の宇宙飛行士と移民の女性。
3つのストーリーが同時に別々に進行していくが、
よくあるように最後に繋がったりはしない。
同じ団地を舞台にしてはいるけど、最後まで別々。
そして、前回観たとき、ラストに衝撃を受け、
「意味不明の涙が溢れ出した」と書いたけど、
やはり、ラストはじ〜んときたね。
1回目ほどではなかったけど。
今回も泣けてくるのが、なぜかよく分からなかった。
不思議な感覚です。
そして、今回の観終えての感想は、
「6人の登場人物のことをもっと知りたい。」
マダム・ハミダ(アルジェリアからの移民のおばさん)の
息子はなぜ刑務所に入っているの?
シャルリ(ティーン・エイジャー)って
どういう人なの?
母親はどんな人なの?
好きな女の子は、どんな子なの?
ジャンヌ・メイヤーは、どうしてこの団地に
引っ越してきたの?
看護師は、どういう人物なの?
等々。
あまりにそれぞれの背景が描かれていないがために、
この人たちのことをもっと知りたいと
思ってしまったのだ。
でも、それは映画としては成功なんだろうな。
★★★★▲
2017.2.11
恋妻家宮本
出来ちゃった婚から27年、
一人息子が結婚し、家を出ていき、
夫婦二人きりになった50歳夫婦の物語(映画)。
その夫婦役に阿部寛と天海祐希。
その他の出演は、菅野美穂、相武紗季、富司純子ら。
予告編を観て、コメディだとは思っていたが、
予想を大きく裏切られ、ずい分泣いてしまった。
まさか、こんな作品だとは思っていなかったが、
エンドロールで、原作が重松清の小説だと知り納得。
数年前、この人の『その日のまえに』を読んで、
めちゃくちゃ泣いた覚えがあるからだ。
原作は『ファミレス』というタイトル。
映画でも何度も「デニーズ」の場面が出てくる。
阿部寛 演じる宮本陽平は、
人生に正解を求める、優柔不断な中学教師。
人生に正解などないのだけど。
「正しい」より大切なことを
メッセージとしている、
ただのコメディに終わらない秀作だった。
『海よりもまだ深く』にも通じる部分があるが、
阿部寛は、こういうちょっとダメな男役がよく似合う。
天海祐希は、ただのおばちゃんには
なり切れないなぁ。
映画配給会社にひとこと。
陽平が駅のホームで、向かいのホームにいる
妻に何か言おうとして、大事なところで
電車が通過するというシーンが予告編に
使われているが、これは予告編で見せてほしくなかった。
「電車が通過します」という構内アナウンスが
流れるので予想の着く展開なのだが、
予告編で観てしまっているために、
面白さが半減する。
こういう予告編、邦画に多いのだけど、
ホンマやめて欲しい。
映画館での楽しみを奪っていると思う。
★★★★★
マリアンヌ
ALLIED
今日は、久しぶりに映画を3本観たのだが、
『恋妻家宮本』に続いて、2本目も夫婦の物語。
これまた、予想以上にめちゃくちゃ良かった。
主演は、ブラッド・ピットとマリオン・コティヤール。
第二次世界大戦中。
ブラッド・ピット演じる極秘諜報員マックスと
マリオン・コティヤール演じるフランスのレジスタンス
マリアンヌは、カサブランカで偽の夫婦を演じて、
一緒にドイツ大使の暗殺を行った。
もちろん、命懸けの作戦だった。
そして、2人は、その作戦を縁に結婚する。
子供も生まれ、夫婦は上手くいっていたのだが、
マリアンヌがドイツのスパイだという
疑いがかけられる・・・。
緊張感たっぷりで、ドキドキハラハラする場面も
たくさんある上、ラストはもう悲しくて悲しくて。
ブラッド・ピットとマリオン・コティヤール、
2人ともめちゃくちゃ良いです。
監督は、ロバート・ゼメキス。
上手い!
原題の "ALLIED" は、「同盟している」
「〜と結びついて」「同類の」「同属の」
などという意味で、"the Allied Forces" では
「連合軍」という意味になるようだ。
以下、余談。
名詞の "ally" は、「同盟・味方」という意味。
例えば、A さんが、B さんに C さんの情報を
流すことで、B さんが、C さんを嫌いになったり、
避けたりするようになるように仕向けたとする。
この場合の A さんと B さんを "ally" と呼ぶと、
以前 習ったことがある。
A さんと B さんが同盟を組み、
C さんを共通の敵にするというわけだ。
なので、"ally" ってあんまり良い意味ではないのかと
思っていたのだが、そういうわけではなさそうだ。
★★★★★
サバイバルファミリー
『恋妻家宮本』と『マリアンヌ』、
2本続けて、当たりの作品で、
たっぷり泣いたので、もうええかなと思ったけど、
ちょうど時間が合ったので、もう1本続けて観た。
脚本・監督は、『スウィングガールズ 』や
『ハッピーフライト』などの矢口史靖。
ある日、停電が起きる。
電気が止まっただけではなく、
電池も使えなくなり、車のエンジンもかからない。
時計も止まり、ガスも使えない。
そういう状況で、4人家族がお母さんの実家、
鹿児島を自転車で目指す。
出演は、父親に小日向文世、母親に深津絵里、
息子に泉澤祐希、娘に葵わかな。
魚もさばけない母親、
スマホを手放せない息子と娘、
子供らに信頼されていない父親。
ちょっとバラバラだった家族が、
このサバイバル生活を通じて、
一つになっていく・・・といった物語。
異常な停電は荒唐無稽だが、
そこはファンタジーなので良い。
デジカメは使えないけど、
機械式のカメラは使えたり、
電車や飛行機は動かないけど、
蒸気機関車は走ったりする。
つまり、新しいテクノロジーほど
電気に頼っているのだ。
現代の私たちが、
電気というものに依存しすぎた生活を
送っていて、電気や道具がなければ、
火さえ起こせないんだということは、
考えさせられることであった。
でも、家族の再生や、
命(生き物)を食すことへの
厳しさと感謝といったことも
描こうとしていたのかも知れないが、
残念ながら、いずれもやや弱いというか
ちょっと中途半端な印象でした。
★★★▲☆
2017.2.12
沈黙 −サイレンス−
SILENCE
遠藤周作 原作、
マーティン・スコセッシ 監督の映画『沈黙』。
これは、重厚で 難しいテーマやなぁ。
もう宗教というより、哲学や。
何を書いても薄っぺらくなりそうやけど
何か書かないわけにはいかない。
17世紀(江戸時代)、キリシタンへの弾圧が
激しかった長崎が舞台。
中学や高校の歴史で、軽〜く習ったことのある、
「キリシタン弾圧」「踏み絵」。
映画観たら、軽〜く教える内容とちゃうやん。
(歴史の授業にこの映画を使ってはどうでしょう。
中学生には刺激が強いでしょうか。)
日本へ布教に渡った宣教師のフェレイラが、
捕まって棄教したと聞いた、
弟子のロドリゴとガルペは、
殉教を覚悟で日本へ渡る。
彼らは、フェレイラが棄教などするはずがないと
信じており、その真意を確かめたかった。
長崎に渡った2人は、隠れキリシタンの人たちと
出会うが、幕府の弾圧の激しさに衝撃を受ける。
その拷問がひどい。
しかし、一方で当時の幕府の
「キリスト教は日本には必要がない」という
言い分も分からないではない。
前半は、英語を話せる日本人の多さに
ひっかかってしまった。
百姓も侍も英語話すねん。
それも、そこそこ話すねん。
そんなわけないやろが。
と、その不自然さに慣れるのに
時間がかかってしまった。
でも、リアルに言葉が通じないような
映画にしてしもたら、話が進まんよなぁ、
これは、作品にする段階での必要な創作なんやと
観終えてから考えた。
英語のことは、作品の本質とは関係ないので、
置いておいて。
罪もない人たちの拷問を
宣教師に見せつけ、棄教しろと迫る。
棄教すれば、拷問を止めるというのだ。
宣教師は、何も出来ずにただ祈る。
しかし、祈れば祈るほど、拷問は長引く。
宣教師は、苦しむ。
神に助けを教えを乞う。
だが、神は何も言わない。
沈黙だ。
自分が、キリストの絵を踏めば、
彼らは助かる。
「キリスト教を捨てた」と言えば、
彼らは助かる。
自分自身が信念を通すために、
絵を踏まずに殺されるのは、いいだろう。
もっとも私には、そんな強い信念も信仰も
ないので理解に苦しむが。
しかし、わざわざ布教にやってきた地で
自分が広めた信仰のために
人々が拷問され、殺される。
何のために?
救いに来たのではなかったのか。
正解はない。
神は、何も応えてくれない。
昨日観た『恋妻家宮本』とは、
あまりに作品の重厚さに差があるが、
『恋妻家宮本』で、「正しい」と「優しい」に
言及するシーンがあった。
本作でも宣教師は(自分の)正しさを
貫こうとするのだが、それは民に対して、
全く優しくない。
「信仰」とは何だ。
こういうのを観ると、
私のように特定の宗教に帰依していない者は、
むしろ幸福なのではないかとも思う。
ひとつの考え、価値観に縛られずに済むからね。
(というのもひとつの考えなのだろうが。)
特定の宗教を持っていなくても、
スピリテュアリティがないわけではない。
自分の価値観で、ちゃんとあるしね。
キリスト教のことはよく分からないけど、
「愛」だとか「赦し」だとかいうのなら、
本物の神は、人を救うためなら踏み絵を踏んでも、
棄教しても、何をしても赦して下さるだろう。
そして、そのことを神を裏切ったと言うのなら、
神を裏切った自分を赦すのは、
神ではなく、自分しかいないのだと思う。
出演は、アンドリュー・ガーフィールド、
リーアム・ニーソン、アダム・ドライヴァー。
日本からは、イッセー尾形、浅野忠信、
窪塚洋介 ら。
ハリウッドが描く「変な日本」はなかったと思うが、
風景が、(これ、日本ちゃうな)と思うシーンは
いくつかあった。
どうも南国に見えたら、ロケは台湾で行われたようだ。
165分と内容とともに時間も重量級だが、
長いとは感じなかった。
ただ、面白い映画ではない。
★★★★☆
2017.2.19
雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
DEMOLITION
ジェイク・ギレンホール主演の映画
『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』。
う〜ん、どうにかならんか、この邦題。
原題 "DEMOLITION" は、
「解体・取り壊し・破壊」といった意味で、
これは映画を観ればよく分かる。
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」も
映画の中に登場する言葉なのだが、
「解体」や「破壊」では キツイので、
苦肉の策で決めたような気がしてならない。
毎度、邦題を決めるのは難しいとは思うが、
頑張って欲しいな、配給会社の人。
交通事故で突然妻を亡くした
ディヴィス(ジェイク・ギレンホール)の
再生の物語なのだが、デイヴィスは、
妻を亡くした後、泣くことも出来ず、
妻を「愛してなかった」とまで言う。
ところが、精神に異常をきたしているのは、
間違いがなく、仕事上のボスでもある、
義父に「修理(再生)するためには、
一度分解しなければならない。
人間でも同じだ」と言われてから、
色んな物を分解し始めるが、
分解というより、破壊になっていく。
私は、『ムーンライト・マイル』で、
ジェイク・ギレンホールが好きになった。
あの映画も、結婚前の彼女が突然
死んでしまう物語だった。
彼の出演作を全部みているわけではないが、
映画の出来云々より、この人が出ているだけで、
OK というようなところがある。
ロバート・デニーロなんかもそういうところが
あるのだけど、私にとっては、
そういう数少ない俳優。
本作では、妻が死んでしまう悲しさより、
ディヴィスの壊れ方が、痛々しい。
その他の出演は、ナオミ・ワッツ、
クリス・クーパー。
ナオミ・ワッツの息子(15歳)役の
ジュダ・ルイスがとても良い。
今後 注目。
★★★★☆
ママ、ごはんまだ?
歌手一青窈の姉である、一青妙(たえ)の
エッセイを基にした映画『ママ、ごはんまだ?』。
最後にエッセイを基にした「フィクションです」
と出たけど、本当の話のような印象。
まあ、細かいところで創作があるのかもね。
一青窈が日本人と台湾人のハーフだというのは、
知っていたけど、「一青(ひとと)」という姓が、
日本の苗字だとは、知らなかった。
変わった姓なので、中国の苗字だと思っていた。
考えてみれば中国人の姓は、
「周」「王」「毛」といった一文字ばかりだ。
台湾に住んでいた一家は、姉妹が子供の頃、
日本に移住する。
間もなく、台湾人の父が亡くなり、
日本で暮らしやすいようにと、
母親の旧姓 一青 に変えたのだという。
母親は、能登の出身で、
能登には「一青」という地名があるようだ。
物語は、母親の思い出をたどる。
母は、日本人だが台湾人の父に見初められ、
結婚して台湾へ渡る。
言葉の分からない台湾で、
台湾の家族に溶け込むために
一生懸命、台湾料理を覚えた。
姉妹は、母が作った大根餅、豚足、
チマキなどの台湾料理で育てられた。
日本で育っても、台湾料理が
おふくろの味なのだ。
オフィシャルサイトにあるメッセージに
一青妙はこう綴っている。
「原作は私が書き、主題歌は妹が歌います。
この映画そのものが、早くに亡くなった
両親に果たせなかった親孝行になればと思っています。」
ラストに流れる主題歌、一青窈の「空音(そらね)」が良い。
改めて、この人の歌、説得力あるなぁと感じた。
出演は、木南晴夏(一青妙)、藤本泉(一青窈)、
河合美智子(母)。
一青妙ご本人も出演している。
ひとつ、不思議に感じたこと。
この映画、食事のシーンが結構多い。
最近の傾向として、食事のシーンは、
凄く美味しそうで、映画館を出ると
それを食べたくなるような、
そんな演出(撮影?)が多いように思うのだが、
本作では、どういうわけか、
あんまり美味しそうでなかった。
いや、まずそうだったわけではないよ。
でも、唾をゴクリと飲み込むような、
そんな食欲をそそられるシーンがなかったのだ。
まあ豚足は、私はそんなに好きではないと
いうこともあるけれど。
それが、意図的なのかどうなのかは分からないが、
一緒に観た妻に訊いてみると同様の感想だった。
チマキは食べてみたい思ったけど。
この映画を観ようと思った時に、
『ママ、ごはんまだ?』って 誰かが、
関わってるって言うてたなぁと気になっていた。
思い出せなかったので、
観たら分かるやろと思っていた。
始まってみると、音楽が印象的だったので、
(ああ、ミュージシャンか。
エンドロールを見たら誰か分かるな)と
思っていたのだが、後半、ある人の登場で、
思い出した。
その人は、春風亭昇太。
先日、昇太の独演会に行ったときに
出演していると、聞いたのだ。
「真面目な役です」と言っていたように、
確かに真面目な役だった。
ちなみに音楽担当は、妹尾武。
★★★★☆
2017.2.26
素晴らしきかな、人生
COLLATERAL BEAUTY
ウィル・スミス主演の映画
『素晴らしきかな、人生』。
この邦題は、賛否両論のようだが、
私にはピンとこないな。
原題『Collateral Beauty』は、
直訳すると「二次的な(付帯的な)美しさ」
ということになるのだろうが、
劇中では「幸せのオマケ」と訳されていた。
広告代理店の代表として成功していた
ハワード(ウィル・スミス)は、
6歳の娘を亡くし、ふさぎ込んでしまい、
仕事も私生活もめちゃくちゃ。
エドワード・ノートン演じる共同経営者や
仕事仲間(ケイト・ウィンスレット、
マイケル・ペーニャ)たちが
なんとか彼を立ち直らせようとするが、
全く効き目がない。
そのうち、会社の経営も危うくなってくる。
家族を亡くした人のよくある再生の物語かと
思いきや、一ひねりも二ひねりもあるストーリーで
ちょっとファンタジーっぽいところもあるが、
よい映画だった。
結構、深い映画で一度観ただけでは
とても十分に理解したとは言えないと感じた。
前述の「Collateral Beauty」のことでさえ、
掴んだとは言い難い。
日本人には難しい概念なのかなぁ。
ウィル・スミスも年取ったな。
調べてみたら、48歳だ。
それから、エドワード・ノートン。
『真実の行方』(1996年)で受けた
衝撃は忘れられない。
主役のリチャード・ギアを食ってると
思ったもんね。
その後の『アメリカン・ヒストリーX』も
印象的やったな。
最近は『グランド・ブダペスト・ホテル』や
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
にも出ていたけど、そんなにインパクトなかった。
本作では、結構普通のおじさんを演じていて、
これまた、年取ったなぁって思ってしまった。
調べてみると47歳。
「年取った」って、彼らだけが年取ってんちゃうけど。
その他、ヘレン・ミレン、ナオミ・ハリスも
ええ味出してました。
娘を亡くした話というだけで、
涙は避けられないが、
子供のいない私には、
子供を失った悲しみなんて、
想像すらできない。
★★★★▲
スノーデン
SNOWDEN
ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演、
オリヴァー・ストーン監督作『スノーデン』。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが出てるのと、
「スノーデン事件」の映画ということで
気になっていたのだが やっと観てきた。
「スノーデン事件」については、
そんなに詳しくは知らないけど、
2013年に日本でもずい分ニュースになったので、
概要ぐらいは知ってた。
元CIA および NSA(アメリカ国家安全保障局)の
職員エドワード・スノーデンが、
アメリカ政府が世界中の人を監視していると
内部告発したあの事件だ。
実話ということだが、
ホンマやろかと思うような内容。
実際のニュース映像もおり込まれ、
最後には、スノーデン本人も登場します。
本人役で。
映画を信じるなら、スノーデンは愛国者だ。
もともと軍人だったぐらい。
ルールは破ったかもしれないけど、
そもそもルールを破っていたのは、
アメリカ政府の方だろうしね。
今では、モスクワで暮らしているというが、
二度とアメリカへは戻れないのだろうな。
いや、何十年か経って時代が変われば、
アメリカの土を踏む日が来るのかもしれないけど。
映画の中で、離れ離れになった恋人も
今ではモスクワで一緒に暮らしているという。
信念を貫き、告発を達成し、
牢屋にも入れられず、恋人も失わなかった。
アメリカ国籍は失ったかもしれないけど、
ある意味、ハッピーエンドにも感じた。
彼の行動がきっかけで、色んなことが
明るみに出て、世界が見直すことになったのだし。
それにしても、システムに疑問を抱いても普通は
あんな行動には出ない人がほとんどだろう。
間違いなく重罪だからね。
そういう意味でも、スノーデンは、
本気で国を憂いていたんだと思う。
賛否はあるだろうが、命を懸けた
勇気ある行動には違いない。
こういう映画を作ってしまうアメリカは、
毎度のことながら、自由の国だと思う。
が、この映画作るのに、CIA や NSA は、
協力したんやろか。
★★★★▲
2017.2.27
アカデミー賞
米国アカデミー賞の受賞結果発表があった。
14部門にノミネートされていた『ラ・ラ・ランド』が
不手際により、間違って作品賞を受賞したと
発表されるという前代未聞のハプニングが
あったようだが、一映画ファンとしては、
受賞作は1本もまだ観ていないので、
これからが楽しみだ。
第89回 米国アカデミー賞受賞結果
作品賞:「ムーンライト」
監督賞:デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」
主演男優賞:ケイシー・アフレック
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
主演女優賞:エマ・ストーン「ラ・ラ・ランド」
助演男優賞:マハーシャラ・アリ「ムーンライト」
助演女優賞:ビオラ・デイビス「Fences」
脚本賞:ケネス・ロナーガン
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
脚色賞:バリー・ジェンキンス、
タレル・アルビン・マクレイニー「ムーンライト」
視覚効果賞:「ジャングル・ブック」
美術賞:「ラ・ラ・ランド」
撮影賞:リヌス・サンドグレン「ラ・ラ・ランド」
衣装デザイン賞:
「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
長編ドキュメンタリー賞:
「O.J.:メイド・イン・アメリカ(原題)」
短編ドキュメンタリー賞:
「ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊」
編集賞:「ハクソー・リッジ」
外国語映画賞:「セールスマン」(イラン)
音響編集賞:「メッセージ」
録音賞:「ハクソー・リッジ」
メイクアップ&ヘアスタイリング賞:「スーサイド・スクワッド」
作曲賞:ジャスティン・ハーウィッツ「ラ・ラ・ランド」
主題歌賞:“City of Stars”「ラ・ラ・ランド」
長編アニメーション賞:「ズートピア」
短編アニメーション賞:「ひな鳥の冒険」
短編実写映画賞:「合唱」
2017.3.19
ドント・ブリーズ
DON'T BREATHE
盲目の退陣軍人の家に泥棒に入った若者3人組が
家に閉じ込められ、その老人に逆襲にあう。
相手は、目が見えないのにめちゃくちゃ強い。
そんな映画『ドント・ブリーズ』。
予告編を観た時には、面白そうと
思ったけど、なんとなく観ずにいた。
昨年12月16日の公開で、
東京では渋谷の映画館1館で
一日一回の上映になっており、
いよいよもう上映が終わりそうだったので
ようやく観てきた。
空いているかなと思ったけど、
これが予想に反して9割ぐらいの混みよう。
なんか高校生ぐらいの若者が多かったけど。
「20年に一度の恐怖の作品」なんて
コピーが付いているけど、
それはちょっと大げさだったかな。
まあハラハラドキドキはするし、
こういう映画に付き物のビックリもするし、
気が付いたら結構 身体に力が入っていたりと
退屈することなく楽しめたのだけど、
「面白いか」と言われると
「う〜ん、それほどでも」
「怖かったか」と言われると
「う〜ん、それほどでも」てな感じだ。
終演後、高校生ぐらいの若い女の子が
「めちゃくちゃ怖かった」と言っていたので、
女子高生が観れば怖いのは分かるけど、
50歳過ぎたおじさんが女子高生と同様に
怖がっているのもなんか違うだろ。
ホラーはあんまり観ないのだけど、
こういう映画のパターンで
突然ビックリさせられるぞと
心構えが出来てしまうのが、
あんまり怖くない要因かもしれない。
それでも、その予想に反しての展開や、
油断してる時に突然仕掛けられると
ビクッとしてしまうねんけどね。
あんまり怖くないのだけど、
ドキドキハラハラはするのです。
その違い、分かってもらえるかな。
ストーリー的には、
突っ込みどころもいくつかあったけど、
盲目老人の不気味さが
有無を言わせず、ストーリーを
グイグイ引っ張ってゆく感じ。
まあ、こんなじじいホンマにおったら、
めちゃくちゃ怖いわな。
ゴーストタウン化したデトロイトの住宅街が
舞台だけど、本当にあんな風なんでしょうか。
そうだとしたら、この映画には、
アメリカの負の象徴というか
深いテーマがあるのかもな。
ちょっとスッキリしない終わり方だったのが、
気になったが、続編が作られるとの情報を知り納得。
あんまり後味の良い映画ではない。
でも、続編も観るかも。
★★★▲☆
2017.3.20
しゃぼん玉
映画『ラ・ラ・ランド』や『シング』も
観たかったのだが、今日はあえて、
人気のそれらを避けての2本を鑑賞。
1本目『しゃぼん玉』。
直木賞受賞作家、乃南(のなみ)アサの小説が原作。
この人の本はまだ読んだことがない。
通り魔となって強盗を重ねてきた若者が、
宮崎県の山村で逃亡中にある老婆と出会う。
その村の人々と過ごすうちに、
少しずつ若者の心に変化が芽生え始めるという
ヒューマンドラマ。
逃亡中の若者に林遣都(はやしけんと)、
老婆には、市原悦子。
『家政婦は見た!』の印象が強すぎる人だが、
本作では、あの家政婦の印象ほどねっとりと
しておらず、田舎の素朴な老婆を好演。
その他の出演は、綿引勝彦、藤井美菜、相島一之 ら。
以下、ネタバレ。
ナイフで女性を脅し、金を奪ってきた伊豆見(いずみ)が、
山村で出逢い、好意を持った女性が、
実は都会で通り魔に襲われてショックを受け、
田舎に戻ってきたと知るシーンが、非常に印象的。
もう、耐え切れず吐いてしまう伊豆見。
初めて、自分の罪の重さを痛感する瞬間だ。
その辺の難しい心理を林遣都は
見事に演じていたと思う。
彼は心を入れ替え、償おうと自首する。
出所後に再び山村に戻った時のまなざしも良い。
あえて、老女との再会シーンを見せないエンディングも良い。
結局、人を救うのは「愛」なんだな。
宮崎北部の山村の風景も美しい。
★★★★▲
わたしは、ダニエル・ブレイク
I, DANIEL BLAKE
本日の2本目は、カンヌ国際映画祭で
パルム・ドール(最高賞)に輝いた
『わたしは、ダニエル・ブレイク』。
カンヌ以外にもたくさん受賞している。
予告編を観て、感動のヒューマンドラマと
ばかり思っていたら、なんとも強烈な
イギリスの社会(制度)批判であり、
問題提起の作品だった。
大工のダニエル・ブレイクは、
心臓病を患い医者から仕事を止められる。
国からの援助を受けようとすると、
就労可能と判断され、給付を受けられない。
職業安定所からは、就職活動をしないと
給付金(失業保険?)を受けられないと言われる。
医者には働くなと言われているのに
就職活動をしているという証明が必要なのだ。
そして、これらの手続きが、非常に面倒。
申請はオンラインと言われるが、
ダニエルはコンピューターが使えない。
窓口のスタッフは、規則一点張りで
融通が利かない。
弱い人々の味方である行政の機関が、
まったく不親切で、機能していないのだ。
そんな中、同様に困っているシングルマザーの
ケイテイとその2人の子供と出会う。
彼らを助けたことから、親密になっていくが、
現実は一向に良くならない。
日本の役所でもめんどくさいなぁと
思うことはあるが、もっと酷い。
イギリスって、ホンマにこんなに酷いの?
監督のケン・ローチは80歳で、
前作で引退を表明していたらしいが、
現在のイギリスの問題、世界中の格差や貧困にあえぐ
人々を目の当たりにして、今どうしても
伝えたい物語として引退を撤回してまで
本作を制作したのだという。
そりゃこの現実は、世界に訴えたくなるでと思った。
主役は、映画出演は初めてらしいデイヴ・ジョーンズ。
コメディアンらしいが、非常に良い味を出していた。
奇しくも今日1本目に観た『しゃぼん玉』同様、
赤の他人が家族のように結びつく点が
共通しており、「遠くの親戚より近くの他人」
ではないが、身近に愛を持っていてくれる人が
いることほど人生で心強いことはないなと思った。
★★★★▲
2017.3.21
SING/シング
SING
昨日は「『ラ・ラ・ランド』や『シング』も
観たかった」と書いたけど、
実はミュージカル映画はそれほど好きではない。
なのに何でそんなことを書いたのかと言うと
『ラ・ラ・ランド』に関しては、
それほどヒットしているならば、
映画ファンとしては 観ておかねばという
興味からで、つまらなければ
(やはり私にはミュージカルは合わない)と
思うだけだし、良かったら、
(ミュージカルは好きではないけど
『ラ・ラ・ランド』は良かった)と
記憶に残る作品になるだろうと思っている。
一方『シング』は、誰かが
「これはミュージカルではなく、
ミュージックに関する映画だ」と
書いていたことと、字幕版、吹替え版、
どちらも素晴らしく楽しめるという
レビューをいくつか読んだことで、
『ラ・ラ・ランド』以上に興味を持っていた。
ミュージカルではなく、ミュージックに
関する映画なら大歓迎だ。
で、今日は字幕版を鑑賞してきた。
まず、登場人物ならぬ登場動物の
表情が良い。
コアラやゴリラや象や豚なのに
皆、誰かに似ている。
こんな人おるで、と思いながら観ていた。
先に書いた通り、ミュージカルではなく、
ミュージックを題材にしたストーリー。
なので、セリフの代わりに突然歌ったりはしない。
歌は、歌として描かれている。
なるほど「SING」だ。
その歌や踊りがホントに楽しめる。
特に後半のショータイムは最高。
声の出演は、マシュー・マコノヒー、
リース・ウィザースプーン、
スカーレット・ヨハンソンら。
これは、ぜひ日本語吹替え版も観てみたい。
吹替え版を作って、
オリジナル版の方が良いと言われては、
作った甲斐もメンツもないだろうから
きっとの吹替えの制作スタッフも
気合が入ったはずだ。
期待大。
制作は、『ミニオンズ』などの
イルミネーション・エンターテインメント。
イルミネーション〜 の作品は初めて観たけど
ディズニーとは違うカラーで、
私はディズニーより好きだな。
『ミニオンズ』も面白いとは聞いていたけど、
観ていなかった。
ちょっとチェックしてみたい。
★★★★★
SING Official Site
2017.4.16
ムーンライト
MOONLIGHT
映画『ムーンライト』。
アカデミー賞では、8部門でノミネートされ、
うち3部門(作品賞、助演男優賞、脚色賞)で受賞。
その他にも数々の映画賞を受賞している。
シリアスなテーマだとは思っていたけど、
よく分からなかったというのが正直な感想。
黒人であること、シングルマザー、ドラッグ、
同性愛など いくつかの要素が絡んでいるのだが、
どう受け止めてよいのか分からず、
(結局、何が言いたかったんだろう)という
疑問が残った。
これはアメリカ人にしか分からない映画なのかなと
言いたいところだが、日本人でも素晴らしいと
言っている人達がいるので、
そうするとこれは、感性のことなのかな。
助演男優賞受賞のマハーシャラ・アリは、
前半しか出演しておらず、
あれで受賞というのもどうなんだろう。
それほどのインパクトも感じなかったけど。
ただ、はっきり感じたのは、人生の不条理。
ヤクの売人が、子供を救おうとする。
その子供の母親は、
その売人からヤクを買っているいわばお客様。
その子供は、イジメを受け続け、
最後にはキレて暴力をふるう。
そして、大人になった時、
彼はヤクの売人になっていた。
これが、人間の姿なのか。
★★★▲☆
2017.4.22
午後8時の訪問者
LA FILLE INCONNUE/THE UNKNOWN GIRL
予告編を観て面白そうだなと思った映画
『午後8時の訪問者』。
少女が、診療所のドアベルを鳴らすが、
診療時間外だからと応じなかった女性医師ジェニー。
その後、その少女は遺体で発見される。
名前も分からない。
自分が、ドアを開けていたら、
少女は死なずにすんだと悔いるジェニーは、
刑事まがいに少女のことを調べ出す。
予告編では、
「新たなサスペンス
かつてなく力強いラストにおいて、
圧倒的な真実が明らかになる」と
紹介されていた。
確かにサスペンス的要素が
ないわけではないが、
これはサスペンス映画でなないだろう。
そして「かつてなく力強いラスト」や
「圧倒的な真実」は、ちょっと大げさ。
最後に明かされるネタに衝撃などないし、
「力強いラスト」とあるが、
あんまりスッキリもしない。
ネット・レビューでは、
サスペンス映画だと思って観に行った人たちの
怒りの声が結構見られる。
最初から、ヒューマンドラマだと
売ればそんな誤解もなかっただろうに、
監督自身が「サスペンスです」って
言うてしもてるから、どうしようもない。
日本人とフランス人の認識の違いでしょうかね。
私は、そんなレビューにも目を通した上で
観たのでそれほどガッカリはしなかったけど、
面白かったかと言われると、う〜んって感じ。
フランス語だったので、舞台はフランスの
どこかだとばかり思っていたら、
ベルギーのセランという都市らしい。
(本作は、フランス・ベルギーの合作。)
ベルギーってベルギー語かと思っていたら、
調べてみると公用語は、
オランダ語、フランス語、ドイツ語とあった。
ベルギー語なんてないねんな、
初めて知ったよ。
ベルギーでは、映画に描かれているように
町医者が患者の家を診療をして
周っているのだろうか。
昭和の日本のような感じだ。
そして、主人公の女医さんの
プライベートがない。
真面目な人として描かれているが、
友達も家族も登場しない。
なんかそのへんもなぁ。
★★★☆☆
キングコング:髑髏島の巨神
KONG: SKULL ISLAND
中学2年生の時に友達と3人で
電車に乗って映画館へ『キングコング』を
観に行った。
映画の中身より、ジェシカ・ラングの
オッパイばかりが気になった覚えがある。
ああ、思春期。
あれから、41年。
中学2年生の童貞野郎も、今年55歳だ。
今回のキングコングは、ニューヨークには
連れてこられない。
エンパイアステートビルや
世界貿易センタービルに登ったりしない。
現代の話かと思っていたら、
1973年が舞台で、髑髏島の調査に
ベトナム戦争に出ていた兵士達が
かり出される。
その辺のシーンは、『地獄の黙示録』への
オマージュもあるようだ。
感想はね。
ドキッとさせられるシーンもあって、
予想より面白かった。
もう完全に怪獣映画やね。
昨年の『シンゴジラ』より
余計なメッセージがない分、
娯楽に徹しており、楽しめた。
で、その怪獣、キングコングと
巨大生物の戦闘シーンが、迫力満点。
突っ込みどころはあるけれど、
それは、まあ怪獣映画なんだからと
いうことで、許してしまおう。
で、エンドロールのあとに、
おまけの映像があるんやけど、
これがちょっと日本人としては嬉しい。
以下、ネタバレ。
太古の時代、地球を支配していたのは、
コングだけじゃなかったと言って、
ゴジラ、ギャオス(?)、モスラ、
キングギドラの壁画が出てくるの。
これって、日本の怪獣映画への
リスペクトちゃうのかな?
そして、それらの続編があると
におわせているのかな。
出演は、トム・ヒドルストン(ええ男です)、
ブリー・ラーソン(ええ女です)、
サミュエル・L・ジャクソン、
ジョン・グッドマン など。
冒頭の1944年のシーンで
日本軍のパイロットとして、
ギタリストの MIYAVI が出演しているが、
役名が「イカリ グンペイ」って・・・。
★★★★☆
2017.4.29
LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
LION
5歳の時にインドで迷子になり、
オーストラリアの養父母に引き取られ
育った青年が、25年後、Google Earth で
自分の家を探すという、実話を基にした映画。
主人公のサルー役に
『スラムドッグ$ミリオネア』のデヴ・パテル。
サルーの子供時代を演じる、
サニー・パワールが とても良い。
サルーを引き取る養母にニコール・キッドマン。
サルーが迷子になるのが1986年(だったと思う)。
戦後の混乱期なら分かるが、
80年代に 日本ではこんな迷子は
起こりえなかっただろう。
インドでは今でも年に8万人もの迷子がいるという。
一体そのうち何人が家族のもとに戻れるんだろう。
映画にも暗示されているが、
人身売買や臓器売買など悪人の餌食に
されてしまうなど日本では考えられない
現実があるのだろう。
映画は、結末が分かっていても感動的だった。
サルーが Google Earth で故郷を
見つけるというだけの話ではなく、
サルーを引き取った、
タスマニアの夫婦が凄いと思った。
子供が出来ないから養子を取ったのではなく、
人口が膨れ続ける地球で、自分たちの子供を
持つことよりも困っている子供を助けたいと。
そんな考えで、外国の、会ったこともない
子供を引き取る夫婦が実際にいるんやね。
そしてこれは、苦悩の物語でもある。
幼い弟を見失った兄の苦悩。
幼い息子が帰ってこない母親の苦悩。
大好きな兄や母と離れ離れになった5歳児の苦悩。
今も自分を探し続けている兄や母が
どこにいるのかも分からない苦悩。
養子を引き取った養母の苦悩。
ストーリーに描かれていない苦悩や葛藤までもに
思いは巡る。
映画の最後に明かされる
タイトルの「LION」の意味には、
どういうわけか、心を揺さぶられる。
「LION」が強さの象徴だからだろうか。
また、迷子になったときにはぐれた兄のその後は、
あまりにも悲し過ぎる。
事実は小説より奇なりというが、
これがフィクションではないところが、
この作品の力強さだと思う。
★★★★★
おまけ
ラストでタイトル「LION」の意味が
明かされたとき、私は嗚咽が漏れそうになった。
そして、一緒に観た妻の映画館を出ての第一声。
「なんで『ライオン』っていうタイトルやの?」
もう、ひっくり返りそうになったで。
なんでも本人が言うには、泣きすぎて、
そこんとこ字幕が読めなかったというのだが。
2017.4.30
イタリア映画祭 2017
愛のために戦地へ
In guerra per amore / At War With Love
日本で未公開の最新のイタリア映画を
上映するイタリア映画祭。
昨日(4/29)から、5月6日まで東京は
有楽町の朝日ホールで開催されている。
今回が17回目ということだが、
今年は15本の日本未公開作品と
5本のアンコール作品が上映される。
私は2013年にこのフェスを知ってから、
毎年 2〜3本を観に行っている。
本当は全作品観てみたいところだが、
そういうわけにもいかない。
今年は 2本をチョイス。
その 1本目。
今日は『愛のために戦地へ』を観てきた。
原題は「愛のための戦争で」という意味で、
英語のタイトルは『At War With Love』。
上映の前に
ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督の
挨拶があり、上映後に観客との質疑応答の
時間が設けられていた。
こういうのは、映画祭ならではで、
1,450円のチケット代でずい分得した気分だ。
物語は、第二次大戦中の1943年が舞台。
ニューヨークのレストランで働くシチリア出身の
アルトゥーロは、レストランのオーナーの姪、
フローラと相思相愛だが、フローラには
許婚がいて、結婚が出来ない。
結婚するためには、シチリアにいるフローラの
父親に会って、許しをもらうしかないが、
シチリアに行くお金もない。
そんな時、アメリカ軍はシチリアを
開放するためにマフィアと手を結び
シチリアに上陸する作戦を練っていた。
偶然そのことを知ったアルトゥーロは、
志願し、米軍兵としてシチリアに行くことになる。
というような展開だ。
この米軍とマフィアが手を組んだというのは、
実話らしい。
マフィアの協力を得て、
上陸をスムースに進めることの引き換えに
米軍はマフィアの犯罪者たちを解放した。
米軍はファシズムから、
島民を解放したかもしれないが、
再び島はマフィアの管理下に置かれることになった。
その様子を、アルトゥーロの恋物語を
絡めながら描いている。
監督は、コメディですと言っていた。
途中、お客さんは笑っていたシーンも
結構あったけど、私はほとんど笑えなかった。
声を出して笑っているご婦人たちが、
不謹慎に感じるほど、私にはシリアスだった。
明るく描かれている部分はあるけれども、
市民をマフィアの手に渡したのは、
やはり戦争の悲劇に感じた。
マフィアの復活に疑問を感じ、
ルーズベルト大統領に手紙を書く
米軍中尉は、主人公のアルトゥーロと
間違われて、マフィアに殺されてしまう。
ラストは、アルトゥーロが
その手紙を大統領に手渡そうと、
ホワイトハウスの前でフローラとともに
大統領を待つシーンで幕を閉じる。
上映が終わってから 監督が、
アメリカはイタリアの敵だったのに
米軍が来ると「解放された」と
イタリア人が手のひらを返したことを
みっともない(そんなニュアンスだった)と
思うと言っていたのが印象的だった。
「何からの解放だ?自分達か?」と。
そして、ドイツ国民は戦後も自分たちの
過去の過ちを問い続けているが、
イタリアは、全部ヒトラーのせいにして、
そんなことしていない、と。
そんなシリアスな話をしながらも、
ディリベルト監督は、とっても笑顔で、
ひょうきんなイタリア人という印象。
映画撮影の裏話も聴けて面白かった。
次の映画は、「東京で撮る」と
言っていたので楽しみだ。
★★★★☆
イタリア映画祭 2017
2017.5.2
イタリア映画祭 2017
どうってことないさ
Che vuoi che sia / What's the Big Deal
昨年のイタリア映画祭で観た、
『俺たちとジュリア』の監督、
エドアルド・レオ主演の映画。
イタリア語の原題の意味は分からないけど、
英語のタイトル『What's the Big Deal』は、
「大したことちゃうやん」
「どうでもええやん」てな感じのようだが、
映画鑑賞後もあんまりピンとこなかった。
クラウディオは、新しいビジネスを始めるために
クラウドファンディングで資金を集めようとするが
一向に集まらない。
で、酔っぱらた勢いで、資金が集まったら、
恋人のアンナとのセックスをネット上で
公開すると約束してしまう。
冗談のつもりが、お金が集まりだし、焦る2人。
削除しようとしても削除できない仕組みに
なっていて、どんどん拡散してゆく。
当初2万ユーロ集めるつもりだったのが、
20万ユーロを超えてしまう。
2人は、お金のためにセックスを公開する
決意をするが・・・。
SNS への皮肉(?)も感じたし、
途中までは面白かった。
でも後半、なんかあんまり意味が分からなくなって残念。
特にラストは、携帯電話の修理業者が
そんなことしたらアウトでしょ、
という品のない行動に出て、ますます理解不能。
付いていけなかったって感じ。
それにしても、動画のアップだの、
クラウドファンディングだの、
イマドキのお話です。
★★★☆☆
はじまりへの旅
CAPTAIN FANTASTIC
予告編を何度か観て、気になっていた作品
『はじまりへの旅』。
ベンは、6人の子供たちと森の中で、
サバイバルな生活を送っていたが、
子供たちの母親が死んでしまったので、
バスで旅をして、葬式に向かう。
子供たちは、学校には通っていないが
ベンの熱心な教育と訓練を受け、
体力も知識も身についていたが、
世の中のことは知らない。
強い信念のもと、子供たちを育ててきた
ベンだが、自分の教育が間違っていたのではと
思わざるを得ない事件が起きる。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉の通り、
ベンの考えは素晴らしい面もあるが、
極端に偏っていて、とても社会的とは思えないし、
実際子供らは社会に馴染めない。
ちょっと現実離れした物語だが、
自信満々のベンが、
世間に敗北するシーンが印象的だ。
自分が、正しいと信じてきたことが
崩壊するのは、耐え難いことだ。
しかし、邦題にもなっているように、
それは、新しいスタートでもあるのだな。
原題は、「CAPTAIN FANTASTIC」。
キャプテンは父親ベンのことだとは思うが、
この場合の「FANTASTIC」は、
どういうニュアンスなんだろう。
「FANTASTIC」は辞書を引くと
「すばらしい」だけではなく
「途方もない」「風変わりな」「ばかげた」
などの意味もある。
ラスト・シーンのあと、エンドロールで
ボブ・ディランの "I Shall Be Released" が
流れてきて、ゾクゾクっときた。
歌の意味は難しいが、大好きな曲。
色んな人がカバーしてるけど、
歌っているのは、Kirk Ross という人だった。
★★★★☆
2017.5.6
人生フルーツ
90歳と87歳の老夫婦の日常を撮った
ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』。
1月2日に公開されていまだに上映が
続いているのだから、ロングラン上映だ。
ネットにあるレビューに
「年寄り夫婦の生活をみるだけなのに
謎の深い感動をいただく」と書いている人がいた。
確かにそうだ。
年寄り夫婦の日常を切り取っただけの映画だ。
それなのに、観終わったあと、
自分の生き方を振り返り、
自分の老後に思いを馳せずには
いられなくなる。
主人公は、建築家の津端修一氏と妻の英子さん。
修一氏は、高度成長の時代、
日本の団地をいくつも設計した建築家。
名古屋近郊の高蔵寺ニュータウンを開発する際、
自然と共存する集合住宅を作ろうとするが、
実際に出来上がったのは、かまぼこを
並べたような無機質な団地だった。
津端夫婦は、そのニュータウン内に
300坪の土地を買い、雑木林を作り、
畑を耕し、自給自足に近い生活を営み始めた。
40年経った今、その庭で採れる作物は、
70種類の野菜と50種類の果実。
少し前に流行った「スローライフ」という言葉を
薄っぺらい響きではなく、
40年以上前から実践してきたお二人。
当初は、数回にわたり取材を断られたらしいが、
出来上がった映像には、修一氏の
遺体までが映し出されている。
この取材の期間中、スタッフとご夫婦に
特別な関係が築かれていったことは、
ご家族がご主人の遺体を撮影させたことで、
十分に推測される。
修一氏、90歳の最期は、
昼寝をしたまま 起きてこないという、
まさに理想の死に方。
病気で寝たきりになるでもなく、
全く普段の生活の中で、
プツンと人生が途切れる。
驚いたことに、修一氏は、
自転車には乗るわ、梯子は登るわ、
屋根の上に上がって作業をするわで、
とてもじゃないが、90歳に思えない。
そして、耳も遠そうじゃなかった。
87歳の英子さんも然り。
全く健康そう。
夫婦の日々の暮らしと食生活を
見ていると、良い死に方は、
良い生き方だという思いに至る。
修一氏は東大出身の建築家、大学教授。
もちろん、誰もが雑木林付の自宅を
手に入れられるわけではない。
それは承知の上だが、
90歳になっても、毎日身体を動かして、
やることがいっぱいあって、
健康で 何かを生み出し続ける。
そして、ある日、お迎えが来る。
そんな風に自分もありたいと思った。
本作に好感が持てるのは、
前述したように ただその日常を
淡々と映しているだけで、
何か問題を提起している風でもなく、
何かを批判している風でもなく、
こういう風に生きようという
押し付けがましさもないところ。
それなのに、いや、それだからこそ
考えさせられるのかもしれない。
ナレーションは、樹木希林。
制作は東海テレビ。
元々は、テレビのドキュメンタリー
番組だったようだ。
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり、
人生フルーツ。
★★★★▲
人生フルーツ オフィシャルサイト
2017.5.13
パリが愛した写真家
ロベール・ドアノー<永遠の3秒>
ROBERT DOISNEAU,
LE REBOLTE DU MERVEILLEUX
写真家 ロベール・ドアノーの
ドキュメンタリー映画を観てきた。
ロベール・ドアノーは、20世紀を代表する
フランスの写真家。
写真は何枚も観たことがあるけど、
彼自身については、何も知らなかった。
映画の監督は、ドアノーの孫娘
クレモンティーヌ・ドルディル。
孫娘ならではの視線で、
ドアノーの人がらと仕事を描いている。
ドアノーは、仕事とプライベートを
区別していなかったらしく、
休暇に撮った家族の写真が
そのまま広告に使われることも
あったという。
そういうことを許す時代だったのだな。
映画では、古い映像も多く使われている。
昨年5月に 写真展で見た
「流しのピエレット・ドリオン」の
アコーディオンを弾く女性が、
写真ではなく映像で登場し、
動いているのには、感激した。
たまに写真でしか見たことのなかった
アーティストの映像を見て、
「動いてる〜〜〜を見た!」と
感動したというような話を聞くが、
まさにそれ。
アコーディオンを弾く女性は、
写真ではちょっと冷たい印象があるのだが、
映像では、(当たり前やけど)血の通った
人間に見えてなんか嬉しかった。
その映像は、ドアノーが撮ったのでは
ないと思うけど。
有名な「パリ市庁舎前のキス」
この写真の2人は、ドアノーが雇ったと
いうのは何かで読んだことがあるけど、
本当の恋人同士だったとは知らなかった。
1950年代にアメリカの LIFE 誌の依頼で
撮影され、実際に掲載もされたが、
その時は特に話題にもならず、
忘れ去られた写真であったらしい。
1980年代にポスターとして発売されると
世界中に広まったというのも興味深い。
欧州では、昔から人前でキスをするのかと
思っていたが、撮影された1950年代は、
男女が往来でキスをすることは
まだ珍しい時代だっという。
そして撮影から30年を経た 1枚の写真が
パリを代表する写真となり
ドアノーの名を一般の人々にまで
知らしめたというのも興味深いストーリーだ。
パリ解放の日、兵士に頼まれて撮った
集合写真がある。
当時、ドアノーはフィルムが十分に
なかったこともあり、
集合写真(記念写真?)を撮ることに
抵抗があり、いわば嫌々撮ったらしい。
ところが、何年も経ってから、
その写真の素晴らしさを気付いたと
本人が語るシーンも興味深い。
ドアノーが割と年老いてからだが、
カフェで老婆を撮影するシーンがある。
メイキングのような映像だ。
そのあとに、ドアノーが撮った
モノクロのスチールが映し出されるのだが、
これが直前の映像の老婆と
まるで違う人のように写っていて、
ハッとさせられる。
明らかに映像では見えないその老婆の
何かが写っているのだ。
瞬間を切り取るとはこういうことなのだ。
とにかく、映し出される写真や映像、
語られる言葉が、インスパイアリングで、
色んなことが思い浮かび、映画に
集中できなくて困ったほど、面白かった。
ドアノーが語る。
写真家に必要なのは、
好奇心、不服従、そして、釣り人のような忍耐だと。
なんか、私には3つとも備わっていないような
気がするなぁ。
反抗的な態度は、たまに取るけど、
反抗は不服従という意味ではないしなぁ。
上記の3つもだけど、もうひとつ、
私が自分に欠けていると感じたのは、
なんというか被写体との向き合い方のようなもの。
(以前から感じていることではあるけど。)
ドアノーは、被写体と向き合うのだが、
向かい合ってないように感じた。
変な文章になった。
向かい合うという概念がそもそもないように感じた。
だからといって、一体になるとか、
そういうのでもない。
もっと自然なもの。
ドアノーは「背景になる」と言ったように
思うのだが、忍者のように気配を消す
わけではなかろう。
「カメラが腕の一部」ということと
関係あるのかもしれない。
上手く書けないけど。
ひと言でまとめると、
ドアノーの写真が、今までより好きになる。
そんな映画だった。
たくさんのメッセージがあったのに
いっぱい聞き漏らしたような気がするので、
DVD が出たら買って観たい。
映画のタイトルにある「永遠の3秒」は、
ドアノーの次の言葉から来ているんだろう。
今まで成功した写真はせいぜい300枚。
1枚が1/100秒だとすると
50年でたったの 3秒だなんて すごいだろ!
パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>
★★★★★
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2016.5.15 ロベール・ドアノー 写真展
2016.9.13 パリ・ドアノー ロベール・ドアノー写真集
2017.5.17
スモーク
SMOKE
1995年公開の映画『スモーク』。
公開当時、恵比寿ガーデンシネマで
25週に渡るロングラン上映となった作品が、
数か月前に、デジタルリマスターで
リバイバル上映された。
気になっていたけど、ロードショーは、
観損ねてしまった。
今週、目黒シネマで上映しているので、
観に行ってきた。
これは、デジタルリマスターではなく、
35mmフィルムの上映でしたが。
凄く期待していたのだけど、
ちょっと私には難しかったというか、
それほど良さが分からなかった。
嫌いじゃないのだけど、
絶賛するほどではなかったな。
とはいうものの、
主演のハーヴェイ・カイテルが、
めちゃくちゃ良い。
この人の出演作、
そんなにたくさん観ていないのだけど、
好きやなぁ。
『ピアノ・レッスン』はもちろん、
昨年の『グランドフィナーレ』も良かった。
その他の出演は、ウィリアム・ハート、
フォレスト・ウィテカーなど。
劇的な事件が起こるわけでもないし、
大感動するような話でもない。
なんてことのないストーリーなのだが、
退屈はしない。
監督は、ウェイン・ワン。
昨年、80本以上観た映画の中で、
最低評価を付けた『女が眠る時』の監督だ。
この人の作品は、ほかに観ていないので、
何とも言えないけどね。
ハーヴェイ・カイテル演じる
オーギーが、最後に語るクリスマスの
エピソードは、ええ話なのかどうなのか
私には微妙だった。
オーギーが、14年間毎日休むこともなく
交差点の写真を撮り続けている理由が
聞けるのかと思ったら、そうでもなかったし。
まあ、これはオーギーの作り話である
かもしれないという臭いもさせてたし、
その辺はやっぱり英語で理解しないと
ホントのニュアンスは分からないのだろうな。
舞台は1990年頃だったけど、
私がアメリカに行った1985年の
雰囲気が結構そのままあって、
ちょっとノスタルジック。
冒頭、WTC が映るしね。
★★★★☆
2017.5.27
光
河瀬直美監督、永瀬正敏、水崎綾女主演の
映画『光』。
先日のカンヌ国際映画祭で上映され、
上映後スタンディングオベーションが
10分に渡ったとのニュースを読み、
期待をしながら観に行ってきた。
河瀬監督の作品は、2年前の『あん』が
初めてだった。
あの作品では、劇場では泣いている人も
いたにもかかわらず、私にはピンとこなかった。
映画鑑賞後、原作を読みズルズル泣きましたが。
そんなこともあったので、本作では、
ぜひ「ええ映画だった」と思えることを
期待していた。
感想。
まず、映画の内容を語る前に。
カメラワークが嫌い。
なんで、そんなにアップにするの?
スクリーンの大きな劇場(丸の内TOEI)で
観たから余計かも知れないけど、
人の顔がアップ過ぎて、観ててしんどい。
おまけにハンドカメラで揺れる、ブレる。
観てて疲れる。
アップにする意味が分からない。
映画としては、う〜ん、相性が悪いのかな。
難しいテーマの作品だというのは
分かるけど、結局何が言いたいのか分からない。
奇しくも、劇中で
「想像力がないんでしょ!」というセリフが
あるのだけど、私の想像力の欠如かもね。
視覚障害者のための映画の音声ガイドの
仕事をする女性と、視力を失っていく
写真家のラブストーリーとあるのだけど、
恋に落ちていく様も共感しにくい。
★★★☆☆
2017.7.2
22年目の告白−私が殺人犯です−
割と高評価のようなので、
軽い期待を持ちつつ鑑賞。
藤原竜也、伊藤英明 ダブル主演の
映画『22年目の告白−私が殺人犯です−』
途中中だるみすることもなく、
ずっとスクリーンに引きつけられたので、
面白買ったといえば面白かったのだけど、
手放しで星5つを付けたいとは思えなかった。
まあ、現実味がないのは良しとして、
どんでん返しに意外性がないというのか、
後半、ということはこの人が真犯人?
と読めた時点で冷めた感じがする。
この映画、韓国映画『殺人の告白』を
ベースにした作品ということだった。
『殺人の告白』は2013年に映画館で観たのだが
ストーリーは全く覚えいなかった。
『22年目の告白〜』を観終えてから、
なんとなく思い出した。
『殺人の告白』は「中々、面白かった」と
星4つ半を付けたことを思うと、
無意識にどんでん返しを知っていたので、
『22年目の告白〜』にはそれほどの
意外性を感じず面白みが欠けたと
いうことなのだろうか。
以下は、娯楽映画なんだから
そんなにマジに突っ込むなよと
いうことかもしれないが、
感じたことなので書いておく。
曾根崎雅人(藤原竜也)が殺人犯だと
名乗り出た後、そのルックスからか
サイン会では大勢の行列が出来るほどの
人気者になる。
しかし、曾根崎は殺人犯なのですよ。
5人も殺した。
仮にこれが実際の話だとして、
その殺人犯にサインをもらい、
握手をしてもらうと歓喜するような
若い女性が本当にいるんだろうか。
いるとしたら、異常者でしょう。
そこには、凄く違和感を感じた。
それから、単独犯であんな犯行が
何度も成功するというのも
あり得ないだろうし、
連続殺人犯の動機も説得力に欠ける。
あと、BGMがノイジーで耳障り。
わざとかもしれないけど。
想像だが、高評価を付けているのは、
若い人じゃないだろうかね。
★★★☆☆
2017.7.6
しあわせな人生の選択
TRUMAN
大人のための良い映画だった。
こういう映画が、心に沁みる年に
なったんだと思った。
登場人物は同年代だし。
マドリードに住むフリアンは、末期癌。
そのフリアンに会うためカナダ在住の
友人トマスが4日間だけやってくる。
さよならを言うために会いにきたのだ。
映画はこの4日間の物語。
フリアンは死を覚悟し、治療をやめ、
愛犬の里親を探している。
トマスは、治療を放棄したフリアンに
考え直せと言おうとするが、
フリアンの決意は固く、
やがてトマスもその友人を受け入れる。
どんなラストが待ち受けているのだろうと
思いながら、観ていたのだが、
変な言い方だが、何も起こらない、
静かなラストだった。
海を越えてまで最後に会いに行く友人が
自分にはいるのだろうか、
会いに来てくれる友人はいるのだろうか。
そんな考えと同時に、
彼らの最後の別れを見て、
最後の別れは、特別なものではなく、
私たちの日常の中にある、と思った。
フリアンもトマスも、いとこのパウラも
フリアンの息子も元嫁も、みんな良い人。
パウラはちょっと激しい人だけど、
フリアンの死を受け入れられないがための
反応で、しょうがない感じ。
トマス役のハビエル・カマラは、
『トーク・トゥ・ハー』で
看護師役をしていた人だけど、
すっかり禿げあがってしまっていて
なんか別人のようだった。
実際、フリアンを演じたリカルド・ダリンとは
実年齢で10歳も違うのに、
年の差を感じなかったもんね。
アコースティック・ギターで
奏でられる劇中の音楽がとても良い。
アメリカ映画なら、鉄弦なんだろうけど、
スペインの映画なのでナイロン弦。
ギターとベース、ギターとピアノ、
ギターとヴォーカルといった風に、
デュオが多かったのも
デュオ好きな私には良かった。
映画は良かったけど、
邦題「しあわせな人生の選択」は、
どうも "賢明な選択" とは思えないなぁ。
もうちょっと考えなあかんで、配給会社の人。
原題「TRUMAN」は、ラストシーンに
重要な意味を持つ、フリアンが
息子のように可愛がる愛犬の名前。
スペイン・アルゼンチン製作。
ゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)で
5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、
助演男優賞、脚本賞)を受賞。
★★★★▲
2017.7.8
ありがとう、トニ・エルドマン
TONI ERDMANN
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートの他、
カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞など、
世界の映画賞を数多く受賞。
その上、ジャック・ニコルソンが、
自らハリウッドでのリメイクを熱望したという
映画『ありがとう、トニ・エルドマン』。
数々の受賞もそうだし、
ジャック・ニコルソンが、リメイクを
熱望するってどんな映画かと
期待を持って鑑賞。
父と娘を描く、ちょっとコミカルな
ファミリー映画。
162分は、全く長く感じなかったけど、
正直、私にはあんまりよく分からなかった。
ルーマニアのブカレストにある
コンサルタント会社で働く、
キャリア・ウーマンの娘イネスを心配して、
ドイツからやってきた父。
数日後、帰ったと思ったら、
カツラをかぶり、入れ歯を付け
トニ・エルドマンと名乗る変な人になって
イネスの行く先々に現れる。
イネスにしてみれば、
全く迷惑この上ないのだが、
どういうわけか、全面的に拒絶しない。
最後の方で父が語る、生きる意味が
この映画のテーマだと感じたのだけど、
感動的なエンディングを期待していた
私には、少々肩すかし。
でも、一緒に観た妻は、
「私には分かるな」とパンフレットも
買っていたので、女性には共感する部分が
あるのかもと思ったら、
監督脚本は、マーレン・アデという
女性(ドイツ人)。
ネットのレビューを読んでいると、
父と娘のことだけではなく、
ビルのすぐ裏が貧民地区だったり
ドイツ人(巨大企業)とルーマニア人(労働者)の
EU内格差であったり、社会的な問題も
散りばめられている深い作品だったのね。
そんへんも、数々の受賞につながっているのだろう。
途中、イネスが父親に突然、歌を唄えと言われる。
教師だった父親は、キーボードで
ホイットニー・ヒューストンの
"GREATEST LOVE OF ALL" のイントロを
弾き始めるが、イネスは中々唄い始めない。
何小節か伸びたイントロのあと、意を決し
イネスが唄った "GREATEST LOVE OF ALL" が
良かった!
あと、イネスのバースデイ・パーティで、
覚悟を決めるのは、友達、彼氏ではなく、
上司と秘書。
この上司と秘書は素敵。
結構、笑えるシーンもあります。
ドイツ・オーストリア製作。
★★★★☆
2017.7.23
"Spiritual" と 『情熱の嵐 〜LAN YU〜』
先日聴いた Charlie Haden の 2008年の
"Family & Friends - Rambling Boy" という
アルバムに "Spiritual" という曲が収められていた。
歌っているのは、Charlie Haden の
息子、Josh Haden。
Jesus
I don't wanna die alone
Jesus oh Jesus
I don't wanna die alone
というような簡単な歌詞だが、
「一人ぼっちで死にたくない」という詞に
胸に迫りくるものがあった。
歌詞を調べたりしているうちに、
この曲のオリジナルが
ジョニー・キャッシュであることや、
私がすでに持っていた、
Charlie Haden & Pat Metheny の
"Missouri Sky (ミズーリの空高く)" の最後に
インストで収められていたことなどを
発見した。
全然、印象に残っていなかったけど。
そして、この曲がある映画に使われているという
ことを書いているブログにたどり着いた。
その映画は、男同士の愛の物語
『情熱の嵐 〜LAN YU〜』。
そのブログで紹介されていたのだが、
YouTube には映画 "Brokeback Mountain" の
映像にこの "Spiritual"(Charlie Haden &
Pat Metheny の Version)を流しているものもあった。
"Brokeback Mountain" のサントラには
収録されていないようなのだが。
"Brokeback Mountain" もゲイの物語。
"Spiritual" の歌詞に
「I know I have sinned(私は罪を犯したことを
知っています)」というフレイズがある。
「sin」というのは、「道徳上の罪を犯す」という意味。
余談だが、私は外人に名乗るとき「Shinya」では
言いにくいので「Shin」と言うことが多い。
それで以前、そのアルファベット表記を
「Shin」はなく「Sin」にした方が、
外国人にはインパクトがあって良いんじゃないかと
提案してくれた人がいた。
そんな勇気、僕にはなかったけど。
話を戻そう。
ジョニー・キャッシュがこの歌を唄った
背景までは分からないのだけど、
同性愛にからめて、2つも出てきたので、
そういうことなのかなぁと。
今や同性の結婚を認める国や自治体が
現れているし、同性愛は罪ではなかろうと
思いつつ、どこかでいけないことだと
思いつつ止められない人たちがいるのかも
知れないなと、私なんぞには理解できない
難しいことかもという思いに至った。
で、興味がわいたので DVD をレンタルして
『情熱の嵐 〜LAN YU〜』(2001年)を観てみた。
映画では、"Spiritual" は流れず。
もう一度、件のブログを読み直してみると、
"Spiritual" が流れるのは、その映画の
メイキングだと書いてあった。
ちょっと勘違い。
映画の方は、アマゾンの DVD のレビューには、
星5つが多く付けられているが、
私にはそれほどグッとくる作品ではなかった。
「禁断の愛の物語」などと紹介されていたので、
同性愛者であること自体を苦しむのかと
思って観たけど、全くそういう気配はなく、
周囲の人たちも知っているのか知らないのか、
分からないけど、認めているんじゃないかと
思うようなセリフもあった。
男同士というのも自然に描かれており、
一人の男は、バイセクシャルなんだけど、
それさえ特別なことに感じなかったのは、
描き方の妙か。
天安門事件の頃の北京が舞台になるが、
事件については詳しく描かれておらず。
その辺は、香港映画といえども
デリケートなんだろうか。
細かい点は違うのだけど、
松坂慶子と真田広之の『道頓堀川』(1982年)を
思い出させる結末だった。
救いようのない結末が哀しい、切ない恋の物語。
★★★☆☆
Charlie Haden Family & Friends - Spiritual (Live)
ライヴ。CD よりテンポがやや速い。
Spain performing "Spiritual" on KCRW
こちらは、Josh Haden のバンド。
お父ちゃん(Charlie Haden)は参加していないが、
Haden 三姉妹(三つ子)が参加。
後半、Petra が歌います。
テンポもゆったりでしみじみ聴けます。
2017.7.26
マンチェスター・バイ・ザ・シー
MANCHESTER BY THE SEA
マット・デイモンが、プロデューサーで
映画賞227部門にノミネート、107部門で受賞した
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。
アカデミー賞では 6部門にノミネート、
主演男優賞と脚本賞の2冠。
その主演男優賞のケイシー・アフレックが良い。
凄〜く良い。
この人、知らなかったけど、
ベン・アフレックの実弟なのね。
そして、ケイシー・アフレック演じる
リー・チャンドラーの元妻ランディを演じる
ミシェル・ウィリアムズが、これまた良い。
出番が少ないにもかかわらず、アカデミー賞
助演女優賞のノミネートも納得の演技。
映画館を出てからも、思い出すと泣いてしまいそうに
なる映画は、1年に1本もあるかどうかだが、
本作はその1本。
間違いなく、私の今年のベスト3には入る。
突然、兄が亡くなったので、故郷のマンチェスター・
バイ・ザ・シーに戻り、甥の16歳のパトリックの
後見人になるリー。
リーには、この町に戻りたくない理由があった。
その理由は、リーに生きる希望も失わせたような
出来事だった。
人は、乗り越えられないことがあっても、
生きていかねばならない。
乗り越えられなかったら、
乗り越えなくてもいい。
でも、生きることを投げ出してはいけない。
生きている限り、希望はある。
それは劇的なことではなく、
ほんの小さな変化かもしれないけど。
色んな再生の物語があるが、
本作はドラマチックでなく、とても控えめに
再生の兆しを描いていることが、
現実味を強め、感動を強めているように思う。
そして、表面の怒りや乱暴さの奥底にある
人間らしさが、根底にあることを感じられるので、
観ている側も登場人物を慈しむことが
できるんじゃないかと思う。
マンチェスター・バイ・ザ・シーの景色も美しく、
カメラワークも良い。
写真にしても良いような構図が何度も出てくる。
音楽も良い。
ベタな選曲なのだが、
見事にその演出にやられてしまった。
エンドロールで音楽が終わったら、付け足しのように
別の曲が流れてくる映画がよくあるけど、本作では、
ただ波の音だけが聞こえるところも好感が持てた。
しばらくしたら、もう一度、観たい。
素晴らしかった。
★★★★★
2017.7.30
ブランカとギター弾き
BLANKA
イタリア製作で、監督が日本人で、
舞台がフィリピンという映画。
マニラのスラム街で暮らす少女ブランカと
盲目の路上ギター弾きピーターとの物語。
タイトルに「ギター弾き」とあるので、
観ないわけにはいかない、と思ったけど、
原題は "BLANKA" のみでした。
家もなく親もいないブランカにとっては、
物乞いも盗みも生きていくため。
ある日、盲目のギター弾きピーターと出会う。
ちょうどその頃、ブランカは
お金で 母親を買うことを思い付く。
ピーターは、ブランカに歌うことを教え、
レストランで2人で演奏する仕事に
ありつくのだが・・・てなストーリー。
ブランカを演じるのは、YouTube に
アップしていた歌っている動画で
プロデューサーに見出されたサイデル・ガブテロ。
歌手としても、女優としても将来が楽しみ。
ピーター役には、実際に街角で
流しの音楽家だったピーター・ミラリ。
この映画の完成後、亡くなったとのこと。
その他の出演者の多くも
路上でキャスティングされたということで、
大変リアルな仕上がりに感じた。
監督は、本作が長編監督デビュー作となる長谷井宏紀
フィリピンの貧困層、ストリート・チルドレンの
問題を扱った社会的にも意味のある、
良い映画だと思うが、私には少し物足りなかった。
上映時間が77分とやや短めということも
あるかもしれないけど、
ブランカの最後の選択に至る心の変化が、
いまいち伝わってこなかったからかな。
フィリピンには、知り合い親子がいるので
タガログ語のナナイ(お母さん)と
タタイ(お父さん)は聞き取れたよ。
★★★★☆
2017.8.11
君の膵臓を食べたい
膵臓・・・
読めなかった。
「すいぞう」だ。
映画『君の膵臓を食べたい』。
ホラーかコメディのようなタイトルだが、
そうではない。
原作がコミックだったら、観るのを考えたけど、
原作は小説だということと割と評判が高いので、
観てみようと思った。
始まって10〜20分は、
これはティーンエイジャー向けかなと
思ったけど、結局、いっぱい泣いてしまった。
膵臓の病気を持った女子高生 桜良(さくら)と、
クラスメイト 春樹 の淡い恋愛の物語だが、
桜良の病気が深刻で死の宣告を受けているので、
高校生の恋愛といえどもライトな話ではない。
自分が高校生だった頃と比べて、
あまりに達観したかのような主人公二人に
こんな高校生おれへんやろと思ってしまったけど、
そんな風に感じるのは、私の高校時代が
幼稚だったからか。
(今もあんまり変わらないけど。)
そういう意味では、リアルな話ではなく、
私にはファンタジーに思えた。
「なんで?」とツッコミたいところも
2〜3あったけど、ファンタジーなので
野暮なことは言うまい。
物語は高校時代(12年前)と現在を
行ったり来たりする。
現在の春樹を演じるのは、小栗旬。
小栗にしては地味な役。
高校時代の春樹を演じるのは、
時々、漫才のますだおかだの岡田に見えて
しまった 北村匠海。
ヒロインの桜良役は、浜辺美波。
志田未来と有村架純を足して
2で割ったような人。
桜良の親友役に大友花恋(高校時代)、
北川景子(現在)。
あるシーンの演出と北村の演技が素晴らしく、
嗚咽が漏れそうになってしもた。
まあ、命を扱っているので
これは泣くよなぁって感じ。
映画を観れば、タイトルの意味も
よく分かります。
★★★★▲
2017.8.16
ファウンダー
ハンバーガー帝国のヒミツ
THE FOUNDER
原題「FOUNDER」の意味は、
「創業者」「創設者」。
「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」は、
マクドナルドの創業者、レイ・クロックが、
どのようにマクドナルドを成功させたのか、
その実話に基づいた映画。
レイ・クロックを演じるのは、
マイケル・キートン。
「マクドナルドの創業者」と書いたが、
映画を観ると、レイ・クロックが、
創業者なのかどうか疑問が湧いてくる。
マクドナルド・ハンバーガーを始めたのは、
別の人物だった。
ディックとマック、マクドナルド兄弟が経営する
マクドナルド・ハンバーガーでは、
当時はまだ誰もやっていなかった画期的な
システム(いわゆるファースト・フード)で
大繁盛していた。
そのことを知ったレイ・クロックは、
マクドナルド・ハンバーガーを
フランチャイズで全米に広げようと
ディックとマックに持ちかけるが、
金儲けより、品質維持を重視する兄弟は、
乗り気にならない。
どうしても諦められないレイは、
ついに兄弟を説得し、契約にこぎつける。
しかし、金儲けを目指す「経営者」レイと、
「現場で働く」ディックとマックでは、
見ているものも目指しているものも違った。
兄弟との対立が続き、やがて、
レイは「マクドナルド・ハンバーガー」を
名前ごとごっそりと買収する。
レイがマクドナルドと出会うのが、52歳。
そこからの大成功だった。
あの効率の良い、スピード性のある、
サービスを考え出したのは、
レイではなく、ディックとマックの兄弟だった。
だが、兄弟は数店舗までは広げていたものの
それ以上は管理が行き届かないと、
品質重視の立場から、それ以上の拡大を
目指さなかった。
つまり、マクドナルドを世界的企業として
「"再"創業」したのは、レイ・クロックだったのだ。
映画には、利益追求に走るあまりの
ちょっとえげつないレイのやり方も
描かれており、どちらかというと、
後味の良い映画ではない。
特にビジネスの成功と縁遠い庶民にとっては。
が、ビジネスで大きな成功を得るには、
これぐらいの「暗」は、当たり前なのだろう。
その「暗」と引き換えに、
マクドナルドは、物凄い数の雇用を生み出し、
経済を動かし、アメリカを象徴する
文化にまでなったのだから。
今では、世界の食の1%を
マクドナルドが提供しているのだという。
映画の宣伝コピーは、
「怪物か。英雄か。」
それは観る人に委ねられているのだろうけど、
レイの強引なやり方、
レイがマクドナルドを買収する時に
マクドナルド兄弟と結んだ紳士協定を
守らなかったことを暴露(?)していることからも、
彼の成功を手放しで絶賛している作品ではない。
エンドロール時の不穏な音楽が
何よりもそれを象徴していると感じた。
ネタバレになるが、
その守られなかった紳士協定とは、
マクドナルド社が、兄弟に利益の1%を支払うと
いうもので、今なら1億ドル以上だという。
1年でですぜ。
しかし、オフィシャルサイトによると、
制作サイドは、「マクドナルド家から
映画化の権利を手に入れた」とあるので、
ディックとマックはすでに
亡くなっていたけれども、この映画で
マクドナルド一族には、きっといくらかの
お金が入ったことだろうし、
何よりも、ディックとマックは、
この映画で本当の創業者としての名誉を
挽回できたんじゃないだろうか。
ところで、この映画を観て
「もうマクドナルドは食べない」と
ネットのレビューに書いていた人がいた。
「乗っ取り屋」は許せないらしい。
その人は、「邦題を『ファウンダー』じゃなく
『乗っ取り屋』にすべき」とまで書いていた。
それはまた極端な考えだなと感じたが、
確かに観終えて、
「久しぶりにマックを食べたくなった」という
作品ではない。
前述のようにあまり後味は良くない。
ビジネスってこんなもんだと思うけどね。
そういう意味では、マクドナルドに
とっては、あまり明らかにされたくない、
イメージダウンにつながる要素もあるといえる。
では、実際にマクドナルドは
この映画が作られることに
どのような反応を示したのか。
そのあたりのことをジョン・リー・ハンコック監督に
インタビューした記事があったので、
興味のある方はどうぞ。
↓
マクドナルド誕生を描く映画が作られることに、
マクドナルドはどう反応したのか
★★★★☆
歓びのトスカーナ
LA PAZZA GIOIA/LIKE CRAZY
イタリア・アカデミー賞で
作品賞、監督賞、主演女優賞、美術賞、
ヘアスタイリスト賞の5部門受賞。
昨年観たイタリア映画『人間の値打ち』と同じ
パオロ・ヴィルズィ監督と
女優ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが
組んだ作品。
う〜ん、よく分からなかったというのが
正直な感想。
1回観賞しただけでは、難しい。
そういえば『人間の値打ち』も
あまりピンと来なかったな。
精神病院というとちょっとイメージが
違うのだけど、そういう施設から
逃げ出した女性2人のロードムービー。
その2人を演じるのは、
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキと
ミカエラ・ラマツォッティ。
レビューを読むと良かったと書いている人は、
たぶんだけど、女性が多いように感じたが、
どうだろう。
実際、私はよく分からなかったけど、
一緒に観た妻は、何やら感じ取っていた
ようなので。
(聞いたけど、よく分かんなかった。)
邦題は『歓びのトスカーナ』。
トスカーナ地方のきれいな風景が
いっぱい観られるのかと勝手に期待したが、
そうではなかった。
50年代のアメリカを舞台にした映画と
続けて観たので冒頭の色合いが、
なんとなくノスタルジックに感じたけど。
原題は『LA PAZZA GIOIA』で、
ネットの自動翻訳にかけると
「狂牛病の喜び」「狂った快楽を」と訳され、
全く意味不明。
英語のタイトルは『LIKE CRAZY』となっており、
訳すと「狂ったように」ということか。
イタリア語『LA PAZZA GIOIA』の意味は、
何なんだろうと思っていたら、レビューの中に
「怒っての歓び」と相反する感情を同時に表現した言葉。
日本語でいえば、喜怒哀楽の「喜怒」ってところか
という文を発見した。
なるほどね。
主演のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
『アスファルト』『人間の値打ち』と
出演作を観たが、
フランス映画にもイタリア映画にも出てるので、
イタリア人なのかフランス人なのかと
調べてみると(ウィキペディアによると)、
「イタリア出身でフランスで活躍」とあった。
「イタリアとフランスの二重国籍」とも。
そういうことあるんですね。
★★★▲☆
歓びのトスカーナ オフィシャルサイト
2017.8.17
成功の秘訣
昨日観た映画
『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
に関して思ったことをもう少し書こう。
マクドナルド・ハンバーガーの権利を
ディックとマック兄弟から買い取ったあと、
レイ・クロックはその成功の要因は、
「根気」だと話す。
確かにレイは、ディックとマックに
フランチャイズの提案を断られても、
諦めずに交渉し続けた。
資金が尽きたら、妻に内緒で自宅を
抵当に入れ借金をした。
何が何でも諦めなかった。
それを根気というなら根気なのだろうが、
私は根気は何かの表現でしかないと思った。
それは、「情熱」と言っても良いが、
違う言い方をすれば、「強烈な欲」だ。
「成功したい」「稼ぎたい」という
ゆるぎない欲望だ。
それを「野心」と呼ぶ人もいるだろう。
また違う表現をすれば、それは
「コミットメント」とも言えるだろう。
「情熱」というとカッコよくて、
「欲望」というと何かギトギトした
人間臭さを感じるが、
「情熱」も「コミットメント」も「野心」も
中味は「欲」に違いない。
その「欲(=情熱)」が強かったから、
レイは根気よくチャレンジし、
成功したのだと思う。
そして、「野心(=欲)」が強かったから、
ディックとマック兄弟との契約を破ってでも
拡大し続けることができたのだ。
もし、彼が少しでもお人好しな部分を
持ち合せていれば、もしかしたら、
日本人は、マクドナルド・ハンバーガーを
口にすることがなかったかも知れない。
そして、もちろん先見の明が
あったことも間違いない。
兄弟が発明したシステムだけじゃなく
「マクドナルド」という名前が
どうしても欲しかったというあたりも
他の人とは違ったんだろう。
映画の前半、レイがマクドナルドに出会う前、
ミキサーのセールスをしているが
思うようにいかない姿が描かれている。
その時点で彼は、マイホームも手に入れ、
それなりに成功しているように
見えるのだが、全く満足していない。
モーテルの部屋で自己啓発のレコードを
聴くシーンがある。
50歳を過ぎて、セールスが上手くいかず、
自己啓発のレコードを聴いている姿は、
ややイタイ。
そんな風に感じてしまう私には、
大きなチャンスが目の前に転がっていても
見えないだろう。
尋常ではない、成功への野心と渇望。
それがなきゃ、
世界規模の事業にはならないと
いうことだろうな。
何を売るか、の前に。
2017.8.20
ハクソー・リッジ
HACKSAW RIDGE
6月24日に公開され、気になっていたけど、
上映が終了したと思っていた映画
『ハクソー・リッジ』が、
再上映されていたので観てきた。
『ハクソー・リッジ』は、
先の大戦の沖縄戦で、多くの
負傷兵を救った、実在の米軍衛生兵、
デズモンド・ドスの物語。
彼は、銃を持たずに戦場に赴いた。
以下、ネタバレです。
デズモンドは信仰心から、
武器を持つことを拒みながらも、
仲間を助けることを目的に志願する。
衛生兵になるにしても、入隊後、
当然一通りの訓練を受けなければ
ならないわけだが、デズモンドは、
訓練でも銃を持つことを頑なに拒む。
上官は、除隊を勧めるが、
本人はやめない。
(軍には、除隊にするほどの理由がない)
嫌がらせにあっても、リンチにあっても
やめないデズモンドは、命令無視で
とうとう軍法会議にかけられる。
罪(命令に背いたこと)を認め、
除隊すれば家に帰れるが、
認めなければ、刑務所行きだ。
そんな時、デズモンドの父親の
尽力もあって、デズモンドの主張は
認められることになる。
驚いたのは、あの戦争中、アメリカには
「良心的兵役拒否」というものが、
認められていたこと。
当時の日本であれば、非国民と罵られ、
それこそ逮捕されたかも知れない。
デズモンドの場合、「良心的兵役拒否」と
いっても、戦争に行くことを拒否している
わけではない。
仲間とともに戦場に行って、
負傷した仲間を助けるのが
自分の役目だと信じている。
そして、けっして武器は持たない。
持たないどころか触らない。
映画の前半は、デズモンドの
簡単な生い立ちと、入隊後の訓練時の
エピソードが描かれる。
後半は、沖縄のハクソー・リッジ
(前田高地)での戦闘が描かれている。
ハクソー・リッジを攻略するのに
米軍はずい分と犠牲を払った。
米軍は、いったん撤退するが、
デズモンドは一人残り、日本軍の放火の中、
一晩で75名の負傷兵を救い出す。
一人救うと、神に
「もう一人、救わせてください」と
祈りながら。
その中には、負傷した日本兵も
含まれていたという。
その精神力というか、信仰心というか、
行動には、凄まじいものがある。
実話を基にしたと聞いていても、
「ホンマやろか、こんな人おるやろか」と
疑ってしまうほど。
デズモンドを演じるのは、
マーティン・スコセッシ監督の『沈黙』で
幕府のキリシタン弾圧と信仰のはざ間で
苦しむ神父を演じた、
アンドリュー・ガーフィールド。
今回もセブンスデー・アドベンチスト教会の
信者ということと、舞台が沖縄(日本)と
いうことで、『沈黙』との共通点が
多いのは偶然だろうか。
戦闘シーンは、かなり激しく描かれており、
「グロい」との声もあるが、
実際の戦場はあんなもんではないだろう。
日本兵が虫けらのように殺されるとか、
反日映画だとかといっている人は、
あまりにも戦争のことに無知なのだろう。
戦争は、人を虫けらのように殺す行為だ。
私は、激しい戦闘シーンを観ながら、
「何のために殺しあったんだろう」と
戦闘が激しければ激しいほど、
その無意味さを感じずには
いられなかった。
そして、映画館を出た後、
街のネオンを観て、
多くの犠牲の上にある
今の平和に本当に感謝しなければと思った。
生まれる時代が違っていれば、
あそこで死んでいても不思議ではない。
年と共にアクション映画や戦争映画には、
興味を失ってきているが、
本作は、人間 デズモンド・ドス を
知る作品として、
また、ひとつの哲学的問題提起として
『沈黙』と合わせて観たい映画だ。
アカデミー賞では作品賞他6部門でノミネート、
2部門受賞、その他数々の賞を受賞している。
監督は、メル・ギブソン。
デズモンドは、良心的兵役拒否者としては初めて
アメリカ軍人最高位の名誉勲章を受章した。
(2006年 87歳で没)
前田高地のある浦添市のサイトには、
「『ハクソー・リッジ』の公開によせて」という
特設ページがあり、そこにはこう書かれている。
当時の浦添村の状況は住民の44.6%にも
およぶ4,112人が死亡。
一家全滅率も22.6%という状況で、
多くの住民が犠牲となりました。
★★★★▲
2017.9.6
幼な子われらに生まれ
重松清の小説を映画化ということで、
食指が動いたが、監督が『しあわせのパン』
『繕い裁つ人』の三島有紀子だと知って、
やや不安になった。
というのも、この2本とも劇場で鑑賞したのだが、
映画としての私の評価はイマイチだったから、
この監督とは、相性が良くないと
思っていたので。
さて、観賞してみての感想。
上記2作品に感じたリアリティのなさは、
本作にはなく、同じ監督の作品とは思えないほど、
リアルな人間像に迫っていた。
これは原作や脚本の力も大きいだろうけど。
子連れで再婚した家族のことを
「ステップ・ファミリー」というらしいが
血縁のない親子・兄弟などが
家族になっていくことの難しさを
描いた作品でもあるし、
サラリーマンの不条理も描いている。
また、男と女の違いもね。
血のつながりのない者同士が
家族のようになっていく映画は、
今までも何本もあったが、これは、
家族の中に血縁のある親子と
血縁のない親子が、
共存していくことの難しさだ。
特に思春期の女の子と血縁のない父親。
父親と母親の間に新しい子供が
出来ると自分は邪魔者に
なるんじゃないかという不安が、
思春期の女の子をますます難しくしていく。
父親は、一生懸命なのに全然うまくいかない。
おまけに家族を優先して、良いパパでいたら、
会社からリストラされて、倉庫に出向させられ、
給料は減ることはあっても増えることはない、
なんていう境遇に置かれる。
やってられへんよなぁ。
キャストは、再婚したサラリーマンに浅野忠信、
その妻を田中麗奈、別れた元妻に寺島しのぶ、
田中麗奈演じる妻の元夫に宮藤官九郎。
4人ともええ味出してた。
特に宮藤官九郎。
どうしようもない男やねんけど、
何年振りかで娘に会う時には、
ちゃんとネクタイしてきたあたりに、
なんというか ちっちゃい良心みたいなものを感じ、
観ていて、ちょっと緊張がほぐれたね。
子役の3人も良かったけど、一か所だけ、
「なんで今のテイクでOKにした?」と
思う子供の泣き声があって、
そこだけは白けてしまった。
他のところでは、数回泣かされましたが。
ラストシーンは、浅野忠信の笑顔で終わる。
最後に何か救いのようなものが感じられても
良いはずなのだけど、何か釈然としない。
笑顔のあとのエンドロールの不穏な音楽が、
その救いを感じさせない。
家族は少しだけ、前進したかのようにも
感じるが、何一つ解決したわけではない。
でも、人生とはそういうものかもしれないな。
予告編にも使われている、
寺島しのぶの、元夫への
「あなたは理由は聞く(訊く)けど、
気持ちは聞かない(訊かない)」というセリフ。
共感するようなレビューも読んだが、
残念ながら、この元妻は、
夫の気持ちを考えなかった人なのです。
なので、私は「何 勝手なこと言うとんねん」と
思いました。
お互い様でしょう、ここは。
★★★★☆
2017.9.18
三度目の殺人
福山雅治主演、是枝裕和監督の映画
『三度目の殺人』。
殺人犯 三隅(みすみ)に 役所広司。
三隅の弁護士 重盛(しげもり)に 福山雅治。
殺された工場の社長の妻に今話題(?)の斉藤由貴。
その娘 咲江に 広瀬すず。
う〜ん、難しい映画です。
楽しい映画ではないし、面白い映画でもない。
法廷サスペンスということやけど、
ドキドキハラハラするわけでもない。
ひたすら、重厚な感じ。
そして観終わってもスッキリすることもないし、
何か希望や光を見るわけでもない。
以下、ややネタバレ含む。
犯人の三隅は、最後まで真実を語ろうとしないように
見えるので、真実は観客の解釈次第ということで、
賛否が分かれている面もあるようなのだが、
冷静に考えれば、一番 整合性があり、
矛盾がない解釈は、弁護士重盛の口から
語られている。
しかし、三隅は「そんなわけないだろ」と
突き放す。
観客の多くは、しっかりと納得できる
落としどころを求めるのだろうが、
そんなものを この映画は与えてくれない。
しかし、これは、法廷そのものなのだな。
途中、検事が「真実」という言葉を
口にしたとき、重盛は「真実?」と
半ばバカにしたように言う。
その背景には、「真実なんて、誰も知らない」と
いう確固たる信念がある。
「私が殺しました」と犯人が自白すれば、
それが真実なのか。
「この人が殺しました」と目撃者が言えば、
それが真実なのか。
裁判というものは、真実かどうかではなく、
弁護側と検察側のゲームでしかないと
言わんばかりの描写だ。
劇中にも金銭目的と怨恨で殺人の罪の重さが
違うというような話が出てくる。
同じ人殺しなのに。
怨恨の場合、殺してやりたい動機があるが、
金銭目的の場合は、ただの身勝手だという。
怨恨で殺すのは、身勝手ではないということか。
いや、身勝手だけど、金で殺すよりは、
分かるよねってことか。
なんかよう分からん。
観終わっても、タイトルの「三度目」の意味が、
分からなかった。
ネットで数人のレビューを読んで、
その意味を書いている人がいて、
ようやく、ああそういうことかと。
1回観ただけでは、私には分かりませんでした。
要は、本当は、
裁判では人を裁けていない、
ということなんじゃないか。
裁いた気になっているけど。
一点、疑問。
被告の三隅が、殺した社長の奥さんに
殺人を依頼されたと週刊誌の取材に答える。
奥さんからの「例の件お願いします」みたいな
メールも残っている。
奥さんは否定するが、金銭50万円の授受の証拠もある。
そうなると、この50万円が何の金だったか、
説明しなければいけないと思うのだが、
奥さんには、都合の悪いことがあって
本当のことを言わない。
でも、そこに迫らないと、委託殺人の可能性を
消せないように思うのだけど、
警察・検察は全くここんとこを軽視しているように
見えるのがどうも腑に落ちなかった。
★★★★☆
2017.10.8
ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾の小説を映画化した『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。
山田涼介 主演。
その他の出演は、西田敏行、尾野真千子、
林遣都、萩原聖人、小林薫、成海璃子、吉行和子ら。
東野圭吾の小説ということで、
泣かされるんだろうと思っていたら、
少しは泣けたけど、
思っていたほどではなかったな。
悩み相談と回答の手紙が32年前と現在を
行ったり来たりするという、
タイムスリップもの。
その設定だけで、すでにファンタジーなので
細かいことを突っ込んではいけない。
「いけない」というか、
細かいことを突っ込んでいては、
この映画は楽しめないだろう。
オトナのおとぎ話として、
良い物語だとは思うのだが、前半
ちょっとだけ冗長に感じたのは残念。
あと、ファンタジーな設定は気にならないが、
林遣都演じるミュージシャン志望の松岡が、
8年経っても自作の曲に歌詞を付けておらず、
人前で「ななな〜」とスキャットで
歌ってしまうことだけは、
私もアマチュアとはいえ、
音楽を演っているものとして、
ちょっと許容できなかった。
それは、あかんやろ。
結局、その何年後かに 別の人がその曲に
歌詞を付けて、歌うシーンが出てくるので
歌詞が付いていないという状況が必要なのは
分かったが、それならそれで、
もうひとひねり欲しいなと思った。
(一緒に観た妻は全く気にならなかったそうだが。)
その曲が山下達郎の『REBORN』。
これ、シングルCD 発売と同時に買いました。
ちょっと『蒼氓』を思い出すような重厚な曲調。
なんと、通算50枚目のシングル。
劇中では、松岡が鼻歌で歌う(作曲中?)シーン、
松岡がハーモニカで演奏するシーン、
松岡がギターを弾きながら「ななな〜」で歌うシーン、
それを聴いたセリが、1回でメロディを覚え
やはり「ななな〜」で歌うシーン、数年後、
歌手になったセリ(門脇麦)がライヴで歌うシーン、
そして、エンドロールで達郎氏の歌と
何度も流れる。
達郎氏のインタビューで
映画に合う曲を作るのが大変だったと
いうような記事を読んだような記憶が
あるのだが、まあ凄い曲です。
「REBORN」(セリver.)
おそらく私が不満に感じた部分は、
原作を読めば気にならないのだろうな。
2時間に収めるためには、
どうしても説明不足になる部分が出てきてしまう。
人によって、それぞれ引っかかる場所が違うので
作る側としては、全ての観客を納得させることなど
そもそも不可能なのだし、それを目指すのも
意味のないことだろう。
全体としては良い作品だと思うし、
よく知らなかった若い山田涼介という
ジャニーズのタレントの演技が、
中々どうして素晴らしいと思えたのも
新発見で良かった。
ただ、この人、顔が美し過ぎるなぁ。
★★★★▲
2017.10.10
ユリゴコロ
吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチらの
出演する映画『ユリゴコロ』。
原作は、沼田まほかるのミステリー小説。
2012年に大藪春彦賞を受賞、
本屋大賞にもノミネートされたというので、
原作はきっと面白いに違いない。
さて、映画はどうか。
う〜ん、面白くないわけではないのだけど、
設定が異常なので、登場人物の誰にも
感情移入や共感がしづらかった。
そんなに何人も人を殺しておきながら、
警察に捕まらないというのも無理があるが、
まあそこはフィクションなので、目を瞑ろう。
でも、最大の突っ込みどころは、
(ここからネタばれ注意)
女一人でヤクザ数人をどうやって
殺したのかってとこでしょう。
しかも銃器は使わず、刃物で殺したみたい。
誰か殺し屋を雇ったのかも知れないけど、
それもちょっと無理があるもんなあ。
いくら殺人鬼といえども、
男数人を刃物で一気にやるのは、
いくらなんでもなぁ、という感じ。
あと、亮介(松坂桃李)が、
恋人を奪ったヤクザを
やたらと殺したがるのだけど、殺してしもたら、
大好きな恋人と一緒にいられなくなるのに、
そんな判断力もなくなっているのか、
ちょっとそこも解せないな。
このへんは、原作読んでみんと分からんな。
あと、リストカットのシーンは、
グロテスクとは言わないけど、
あんまり見ていられない。
良かったのは、殺人鬼・美紗子を演じる吉高由里子。
この人の(主役じゃない)出演作、
何本か観ているけど、あんまり印象に残っていない。
例えば『重力ピエロ』『探偵はBARにいる』
『ロボジー』『真夏の方程式』など。
本作は主演ということもあるけど、
記憶に残ると思う。
共感は出来ないけど、
数年間幸せだった美紗子が、
過去の過ち(自分の異常さ)のため、
その幸せを失うことになってしまうのは、
不憫だった。
★★★★☆
ドリーム
HIDDEN FIGURES
黒人差別を描いた映画は、
今までも数本観てきたけど、
『ドリーム』は、『42〜世界を変えた男〜』
『ザ・ダイバー』などと同様に
黒人で初めて何かを成し遂げた人達の
実話に基づく映画。
邦題は『ドリーム』だけど、
原題は『HIDDEN FIGURES』。
「FIGURE」には色んな意味があるが、
この場合は「隠された人物たち(の功績)」
といった意味だろうか。
ウィキペディアによると、
当初、日本語題は『ドリーム 私たちのアポロ計画』と
していたのだが、実際には「アポロ計画」の
話ではなく「マーキュリー計画」を扱った作品で
そのことの批判が SNS上で相次ぎ、
20世紀フォックスは日本語題を『ドリーム』に
変更した経緯が記されている。
『ドリーム』にしても、
『HIDDEN FIGURES』のような深みなく
まだやや安易な印象を持ってしまうのは
日本人としては残念やね。
さて本作は、まだまだ黒人差別が横行していた
1960年代初頭のアメリカ、NASAが舞台。
そこで、能力があるのに認められずに、
不平等な扱いを受けていた
黒人女性スタッフが、
アメリカ初の有人宇宙飛行計画を
支えていたという物語。
ウィキペディアには、「史実との相違点」という
項目が書かれている。
映画をよりドラマチックにするためか、
史実より大げさに描かれている部分が
何か所か あるようだ。
それって、どうなんだろうと思ったけど、
製作者側にすれば、演出の一部なのだろうか。
でもまあ、当時、実際に街中のトイレやバスの座席が
白人用と黒人用は分けられていたわけだし、
日本人には想像できないような
ひどいことがあったことは間違いないのだろう。
こういう作品を観ると、
世界を変えてきたのは、
一部の人たちの「信念」「勇気」「正義」
「決断」そして「行動」なのだと思いいる。
以下、ネタばれ。
次のシーンが印象的で好き。
キャサリン(タラジ・P・ヘンソン)が、
上司に「どうして席からいなくなるのか」と訊ねられ、
建物内に黒人用のトイレがなく、
遠くまでいかなければならないことを
半ばキレ気味に訴えるシーン。
それを受けて、本部長(ちょっと腹の出てきた
ケビン・コスナー)が、トイレの
「有色人種用」の看板を取り壊すシーン。
エンジニアを目指すメアリー(ジャネール・モネイ)が、
白人専用の学校で講義を受ける許可を
裁判所に申請し、判事にその前例を
作るよう説得するシーン。
キャサリンが重要な会議に入れてもらい、
その場で誰も出来ない計算をして見せるシーン。
そして、宇宙飛行士のジョン・グレンが、
「キャサリンが間違いないと言うなら飛ぶ」というシーン。
そんな風に、この映画には
印象に残るシーンがいっぱいあったね。
このグレンが乗ったマーキュリー・アトラス6号が
宇宙へ飛んだのは、1962年2月20日。
私がまだ生まれる前のことなのだ。
★★★★★
2017.10.27
ダンケルク
DUNKIRK
映画『ダンケルク』。
クリストファー・ノーラン監督作品だし、
評価もそれなりに高いようなので
気にはなっていたけれども、
どうも だんだんと戦争映画を
観るのがしんどくなってきたので、
ずっと迷っていた。
9月9日の公開だったので、
そろそろ上映も終わりそうなので
やっぱり観ておこうと、観てきた。
私は、この映画で「ダンケルク」のことを知った。
以前 読んだレビューに
「歴史的事実なので結末は
分かっているけど〜」というものがあった。
が、私は、結末を知らずに観た。
もしかしたら、ヨーロッパ、特に
イギリスやフランスでは、
「ダンケルク」のことは、
日本の太平洋戦争における沖縄戦や硫黄島、
ミッドウェー海戦や東京大空襲などと同様に
有名な出来事なのかも知れない。
私同様、「ダンケルク」を知らない人のために
書いておくと、「ダンケルク」というのは、
ドーバー海峡のやや東に位置する
フランス北部の海岸に面する街の名前。
このダンケルクでドイツ軍に包囲された連合軍は、
撤退を余儀なくされた。
つまり、この映画は戦争映画でありながら、
戦うのではなく、撤退する映画なのだ。
ダンケルクには、40万の連合軍がいたが、
それをどうやって撤退させるか。
そこまでドイツ軍は来ている。
海から、撤退するしかないのだが、
船が全然足りないのだ。
この映画の特徴は、
普通の映画のように主人公らしき人が
いるわけではない。
最初から最後まで、出ている兵士はいるものの
名前さえ覚えられない程度だ。
私が感じたのは、あえて主人公といえば、
スピットファイア(英軍の戦闘機)と
そのパイロットだ。
しかし、本当の主人公は、
ダンケルクの海岸であり、
救出を待つ兵士であり、
救出に向かう民間船であり、
前述のパイロットであり・・・
つまり、登場する者 全てなのだな。
ストーリーで映画を描いているのではなく、
実際に戦場にいるかのような
臨場感で話が進んでいくものだから、
どこから敵弾が飛んでくるか分からなかったり、
船とともに沈没しそうになったり、
海面が油で燃えていて、海に潜っていたりと、
観ていて結構しんどいです。
途中で「あっ!」とか声出してしまいました。
最後の数分間は、涙が流れたのだが、
それは、あの場に及んでも味方のために
命を懸け続けるパイロットへの感動であったり、
兵士を救うために繰り出した民間の
船の多さだったり、
英軍は撤退したけど、仏軍はまだ残っているからと
自らもダンケルクに残る将校の心意気であったり、
そういう極限状態での人間の尊厳みたいな
ものに感動したのだと思うのだけど、
そこんとこを描くのに、
戦争がというわけではないのだけど
ちょっと何かが美化されているような複雑な
思いも同時にあった。
にしても、こういう凄いことが
あったことをこの年まで知らなかったことも
ちょっと勉強不足な感が否めない。
まあ、あの戦争のこと、
知らないことの方が多いのだろうけど。
反戦映画というイメージではなく、
ただ淡々とダンケルクで起こったであろうことを
描いているのだけど、十分に
戦争の無意味さと惨たらしさは伝わってきます。
民間船の船長ミスター・ドーソン役の
マーク・ライランスが、『善き人のためのソナタ』に
出ていた ウルリッヒ・ミューエに見えて、
へぇ〜この人、ドイツ人役も
イギリス人役も演るんやと思ったら、別人でした。
勘違い。
(マーク・ライランスは、
『ブリッジ・オブ・スパイ』の
ソ連のスパイ役の人。)
★★★★▲
2017.10.29
女神の見えざる手
MISS SLOANE
オリンピックの招致活動で
「ロビー活動」という言葉を知ったけど、
世の中にはそのロビー活動を仕事にしている
「ロビイスト」なる人たちがいる。
映画『女神の見えざる手』は、
敏腕女性ロビイスト、スローンを
主役にした社会派サスペンス。
奇しくも今月初め、アメリカ・ラスベガスで
59人が犠牲となる銃乱射事件が発生したのだが、
映画では、銃規制の法案をめぐっての
ロビー活動が舞台となる。
見ごたえのある、充実の映画だった。
前半、テンポの速さにストーリーに
付いていけるか不安になったけど、
途中から完全に引き込まれてしまったね。
敏腕ロビイスト、スローンを演じるのは
ジェシカ・チャステイン。
『オデッセイ』や『インターステラー』などに
出演していた人だが、
あんまり印象は残っていない。
本作で記憶に残るだろう。
勝つことに執着し、
勝つために手段を選ばず、
時には周りの人を傷つけても、
突き進んでいく。
まるで冷血人間のように。
本人の「境界線が分からなくなる」という
セリフがあるが、結果へのコミットだけは、
揺るぎない。
だからこそ得られる信頼とともに、
そのやり方に味方にも疑問も持たれてしまう。
最後に この人の本物さというか、
その大きさというか、
誤解を恐れずいえば、化け物具合が分かる。
言い換えれば、めちゃくちゃカッコいいのである。
私の人生には、絶対ないことだけど、
こんな人を敵にまわすことはごめんだな。
結末が分かった上で、
もう一度細かい点に注意しながら観たいと思う。
原題は『MISS SLOANE』。
邦題『女神の見えざる手』はいただけないね。
それにしても、ロビー活動って、
本当にあんな風なのかね。
★★★★★
彼女がその名を知らない鳥たち
蒼井優、阿部サダヲ主演の
映画『彼女がその名を知らない鳥たち』。
原作は、先日観た映画『ユリゴコロ』と
同じ沼田まほかるの小説。
映画の宣伝コピーには、
「共感度ゼロの最低な女と男が辿りつく
"究極の愛" とは ――
このラストは、あなたの恋愛観を変える」
とある。
「恋愛観を変える」は50を過ぎたおっさんには
いささか大げさだが、
「共感度ゼロの最低な女と男」は、確かに。
1人の女と3人の男が登場するが、
この4人の誰にも感情移入、共感が出来ない。
前半は、十和子(蒼井優)の夫(同居人?)
陣治(阿部サダヲ)に対するあまりに酷い
態度に嫌悪感を持つどころか、
コメディのように見えて
何度か笑ってしまった。
十和子の昔の男、黒崎(竹野内豊)が
またどうしようもない、しょうもない男なのだが、
十和子は、いまだにこの黒崎のことが
忘れられない。
そして十和子は、偶然出会った妻子持ちの
水島(松坂桃李)と軽々と関係を持ち
惹かれていく。
この水島も ろくでもない男。
陣治は、十和子のことが心配で心配で、
まるでストーカーのように後をつける。
浮気をする十和子にやめるようには言うが、
怒りは見せない。
前半、十和子に虫けらのように
扱われる陣治が、本当にダメな男にしか
見えないのだが、最後には観客は、
陣治の十和子への想いに降伏するしかない。
「あなたはこれを愛と呼べるか」というのが、
本作のもう一つのコピーにあるのだが、
愛する者のために自分を差し出すことを
「愛」と呼ぶなら、陣治は、どこまでも
十和子を愛していたと言えると思う。
ラストに、十和子と陣治に出会いからの
歴史を見せられ、
それまで感情移入できなかった
陣治に切なさを感じてしまう。
上手い演出だ。
物語は、ちょっと現実離れしている点もあるけど、
ひとつのラヴ・ストーリーとしてはありだな。
★★★★☆
2017.11.32017.11.4
バリー・シール/アメリカをはめた男
American Made
トム・クルーズ主演の映画
『バリー・シール/アメリカをはめた男』。
観ようかどうしようか迷っていたのだけど、
この数年の彼の主演作は、大体観ているし、
(『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)
『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』
(2015)『ジャック・リーチャー』(2016))
今回は、トムが私と同じ歳だと
いうだけの理由で観ることにした。
毎度、同級生とは思えぬいでたちのトムに
日頃の生活のストイックさを垣間見たね。
さて本作、予備知識なしで観たら、
現代の話ではなく、1970年代後半から
80年代半ばの実話を基にした作品だった。
日本語タイトルのバリー・シールは実在した人物。
この人が、お金の為にどんどんと悪事に手を染めていく。
もともとは TWA(トランス・ワールド航空)の
パイロット時代に、キューバ産の葉巻を
密輸していたところを CIA に目をつけられ、
CIA の中米偵察任務に着く。
そのうち、麻薬や武器を運ぶことになっていく。
そして、とんでもない額の金を稼ぐのだが、
これが実話だというのが凄い。
とてもじゃないけど、
平和な日本の小市民には信じられな世界でした。
アメリカってえげつない国です。
バリーは、ええ国やと言うてるけど。
★★★★☆
すばらしき映画音楽たち
SCORE: A FILM MUSIC DOCUMENTARY
子供のころから、映画音楽は好きだった。
映画音楽なら何でもというわけではないのだけど。
はじめは美しいメロディや印象に残るメロディが
好きだったんだと思う。
そのうち映画が良ければ、
音楽を聴けばその映画の感動が蘇るという
体験もしていくわけだ。
テレビドラマも『太陽に吠えろ!』や
『東京ラブストーリー』のサントラを
買った覚えがある。
それらは、毎週毎週何度もドラマの中で、
聞かされるうちに特別なイメージが
出来上がり、好きになっていったんだと思う。
さて、今日はドキュメンタリー映画
『すばらしき映画音楽たち』を観てきた。
映画の裏方ともいえる、映画音楽に
スポットを当てたドキュメンタリー。
ちょっとマニアック。
これが予想をはるかに上回る素晴らしさで、
感動のあまり落涙。
ちょっと情報量が多すぎて、
インタビューが細切れな感じもあって、
ついていくのが大変なのだが、
内容は大変濃いい。
できれば、倍ぐらいの時間をかけて
ゆっく中味を吟味したい作品。
たくさんの映画音楽作曲家や関係者が
登場するのだが、作曲家で私が知っていたのは、
巨匠ジョン・ウイリアムズとクインシー・ジョーンズ、
あとランディ・ニューマンくらい。
でもそれ以外の人も、音楽を聴けば、
「ああ、あの映画の!」と知っている曲が
いっぱいあった。
映画監督は、スティーヴン・スピルバーグ、
ジェームズ・キャメロンと、これまた巨匠が登場。
映像は、付ける音楽によって、
その映像を観る観客の印象が変わることは、
何かのテレビ番組で検証していたのを
観たことがあり、知ってはいたけど、
本作を観て改めてその認識を強くした。
音楽は、映画にとって脇役的な要素も
あるのだけど、場面によっては、
映像と同等かあるいは時には
音楽のための映像である瞬間さえ
ありうると思ったね。
それぐらい映画にとって
音楽は重要なのだ。
映画の映像を見た作曲家は、
監督の指示にしたがって作曲をするわけで、
その時点ではすでに膨大な予算が
使われており、音楽の良し悪しは
作品の興行成績に大きく影響があるわけだ。
なのでそのプレッシャーは相当であることが
インタビューの中でも語られていた。
その中で一流の音楽を創っていくことは
物凄い才能なんだと痛感した。
若い頃、映画音楽の仕事をするのも
私の一つの夢だったけど、
とてもじゃないけど自分には出来ないと思った。
(当たり前や。)
正確にいうと、映画音楽を
創りたかったんじゃなくて、
自分が書いた曲が映画に採用されたら
いいなという程度の考えだったんだな。
『タイタンズを忘れない』の音楽を担当した
トレヴァー・ラビンは、その曲が映画以外で
使われるなんて思ってもいなかった。
ところが、オバマ大統領が勝利したときの
演説の BGM に使われた。
その場にいた友人からの電話で知ったらしいが、
「光栄だけど、無断使用だった」と
言ったのがアメリカ人らしいなと思った。
日本人なら「無断使用」の部分は
思っても 言わないんちゃうかな。
ひとつ気になったこと。
いっぱい映画が出てきたので、
何の映画の音楽だったか分からなくなったが、
「ホルン」と字幕が出て音を聞かせてる
シーンがあった。
「ホルンの音を上げるよ」と言って、
フェーダー(ボリュームのつまみ)を
上げるのだが、聞こえてくるのは、
「ホルン」ではなく、(ホルンも含まれている
のかもしれないけど)いわゆる「ホーン」の
音だった。
日本語で「ホーン」というと
トランペットやトロンボーン、ホルンなど
金管楽器を指す。
「ホーン・セクション」という時には、
サクソフォーンも含まれていることもある。
あの部分は、「ホルン」ではなく
「ホーン・セクション」のことを
言っていたと思う。
「ホルン」も「ホーン」も「HORN」と
書くので、背景が分からないと
訳すのが難しいんじゃないか。
まさか、この映画で音楽の知識のない人が
翻訳をしたとは思えないのだけど。
そこは、ちょっと気になったな。
(訂正 2021.6.19)
もう一度観直したら
「フレンチホルン」と言っていました。
最後にジェームズ・キャメロン監督が、
『タイタニック』の音楽を担当した
故ジェームズ・ホーナーとのエピソードを話す。
ジェームズから「スケッチ」と書かれた
CDが送ってきたので、
レオナルド・ディカプリオが、
裸のケイト・ウィンスレットの
スケッチをするシーン用の曲だと思って
聴くと、まさにピッタリだったので、
キャメロン監督は、すぐにジェームズに
電話をしてそのことを伝えたそうだが、
ジェームズが、「スケッチ」と書いたのは
そういう意味ではなくて、
スケッチ的音楽、つまり試作品という
意味だったそうな。
映像と一緒になった音楽を聴いて、
ジェームズも納得したそうだが、
それならばオーケストラ用にアレンジすると
言ったそうな。
キャメロン監督は、
「いやいや、ピアノだけでいい」と。
するとジェームズは、一流のピアニストに
弾かせると。
キャメロン監督は、
「いやいや、あなたに弾いてほしい」と。
そして、あのシーンが完成した。
ええ話やなぁ。
それ以外にも映画音楽史上の
たくさんのエピソード。
音楽ファンであり、
映画ファンである私にとっては
本当に美味しい映画でした。
★★★★★
すばらしき映画音楽たち
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2009.5.2 映画音楽
2011.1.17 映画音楽
2017.11.5
ゴッホ 最期の手紙
LOVING VINCENT
2010年に国立新美術館で開催された
ゴッホ展で「アイリス」を観た。
絵画を観て、あんなに感動したのは、
あれが最初で最後だ。
魂が震えるとか、心を鷲掴みにされるとか
いうのは、ああいうことを言うのだと思う。
今日は、そのゴッホを描いた映画
『ゴッホ 最期の手紙』を観てきた。
本作、なんと “動く油絵” の映画。
ゴッホのタッチで描かれた
ゴッホの物語なのだ。
実際に撮影した映像を125名の画家たちが、
ゴッホのタッチで油絵に描いてアニメーションに
仕上げたのだ。
その数、62,450枚というから、
気の遠くなるような作業だ。
そして、回想シーンはモノクロの水彩画タッチと
2つのタッチを使い分けて描かれている。
まず、製作陣の「ゴッホ愛」に感動。
ゴッホの油絵が動く様子は、
観る価値があるよ。
ストーリーは、ゴッホの謎の死に迫る
サスペンス・タッチ。
今となっては真実は闇なのだけど、
映画では一応の決着がつけられている。
それが、ゴッホの苦悩を描き出しており、
哀しく苦しい。
エンディングに流れるのは、
Lianne La Havas の歌う "Starry Starry Night"
(別名 "Vincent")。
これまた涙を誘います。
歌詞は、ゴッホにあてた内容で、
ここに素敵な訳詞があります。
英詞はこちら。
ひとつ気になったのは、「Vincent」が
字幕では「フィンセント」となっていたこと。
映画のオフィシャルサイトでも
「フィンセント」となっているし、
検索しても多くのサイトで
「Vincent van Gogh」が、
「フィンセント・ファン・ゴッホ」と
記述されているので、オランダ語(?)では
「V」は濁らないのかも知れない。
でも、音は「ヴィンセント」って
聞こえてたんやけどなぁ。
ま、大したことちゃうけど。
★★★★▲
ゴッホ 最期の手紙 予告編
[ 関連エントリー ]
2008.12.14 Vincent
2010.10.23 ゴッホ展
2017.11.132017.12.12
Ryuichi Sakamoto: CODA
坂本龍一を5年間に渡り取材した
ドキュメンタリー映画、
『Ryuichi Sakamoto: CODA』。
「CODA(コーダ)」というのは、
音楽で楽曲の終結部分のことをいう。
意味深である。
監督は、日米のハーフで、東京生まれ
東京育ちのスティーブン・ノムラ・シブル。
冒頭、東日本大震災で津波を被った
ピアノとの出会いから始まる。
そして続く、陸前高田の避難所における
演奏『Merry Christmas Mr Lawrence』が凄い。
ピアノとチェロとバイオリンという
トリオなのだが、これがフルオーケストラか
ラウドなロック・バンドのように力強い。
そして、この曲の持つ普遍的な
美しさと力にノック・アウトされる。
以下、ネタばれ含みます。
津波を被ったピアノは調律が狂っている。
しかし、坂本はそれを
「狂っているのではない。自然が調律したのだ」
という。
音楽家として、人工的(?)な音楽を創り続け、
あるレベルに達すると、
何か違うステージに行くのだろうな。
坂本は、私なんぞ理解できないところで
「音」と関わっているのだと思った。
「理解できない」と書いたけど、
北極の雪が解けて川になって流れる水の音を
坂本が「私が知る限り最も純粋な音」と
形容した時には、その音を聴きながら
ぶるぶるっと震えたので、
何か感じているのかもな。
坂本は、2014年、この映画の撮影中に
中咽頭(ちゅういんとう)癌と診断される。
それが、彼の生き方や音楽制作に
大きな影響を与えたであろうことは、
容易に想像できる。
復帰後の最初の仕事は、映画
『レヴェナント: 蘇えりし者』の音楽。
『バードマン あるいは(無知がもたらす
予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞を
受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・
イニャリトゥ監督の作品だ。
アカデミー賞を受賞した監督の次の作品なんて
やりたくてもやらせてもらえるような
仕事ではない。
彼は、「ノーと言えなかった」と
語っているが、結局 やりたかったんだろうな。
これは、アーティストの性ですよ。
坂本の映画音楽のキャリアは、
『戦場のメリークリスマス』(1983年)がスタート。
それで英国アカデミー賞作曲賞受賞し、
『ラストエンペラー』(1988年)で日本人として初めて
アカデミー賞作曲賞を受賞した。
本作では、それらの制作時のエピソードも
交え、興味深い話も満載だ。
『シェルタリング・スカイ』の時には、
レコーディングの場になって、
ベルナルド・ベルトルッチ監督が、
「このイントロは気に入らないから
変えてくれ」と言ったそうだ。
スタジオには40人のオーケストラが
レコーディングのスタンバイをしている。
坂本は「今からそれは無理です」と言うと監督は
「そうなのか? エンニオ・モリコーネは
その場ですぐに書き換えたぞ」
と言ったらしい。
そう言われては、やらないわけにはいかない。
楽団員に「30分待って」と言って
その場でイントロを書き替えたのだという。
書き直せという方も、書き直す方も
超プロフェッショナルだ。
先日の『すばらしき映画音楽たち』でも
映画音楽に携わる人たちの
そのプロフェッショナルな仕事を
垣間見たけど、坂本龍一も然り。
締め切りが近付くと、やっぱり、
途中で投げ出したくなるって言ってた。
その他、イエローマジックオーケストラの
ライヴ映像や、若い頃のインタビュー映像も
交えてミュージシャンとしてだけではなく、
一人の人間としても大変興味深い
ドキュメンタリーだった。
私は特に坂本龍一のファンというわけでもなく、
CD も過去に1枚しか買った記憶がない。
でも、これを機会にもっと彼の音楽を
聴こうと思う。
まずは、今年の新譜『async』を注文した。
来年1月には、今年4月に NY 行われた
200人限定のライヴが映画になって上映される。
『坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK:async』
★★★★☆
Ryuichi Sakamoto: CODA オフィシャルサイト
[ 参考記事 ]
坂本龍一、病み上がりで挑んだ映画音楽「死ぬ覚悟だった」
坂本龍一ドキュメンタリー、監督「“音”で感じられる映画に」
坂本龍一 「いい映画に音楽はいらない」 映像と音の関係を語る
永遠のジャンゴ
DJANGO
ベルギー出身のジプシー・スウィング・
ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを
描いた映画『永遠のジャンゴ』。
ジャンゴは、ジャズ・ギターの歴史上、
チャーリー・クリスチャンと
並んで避けては通れない人物。
といっても私は全く詳しくなく、過去に
ベスト盤のようなCDを買った記憶はあるが、
曲は有名な "Minor Swing" ぐらいしか
分からない。
ジプシー・スウィングは、
雰囲気は好きだけど。
さて、この映画は第二次大戦中、
フランスがドイツに占領されていた頃の話。
パリにいたジャンゴは、
ベルリンに来てドイツ軍のために
演奏するよう言われるが、
スイスに逃げようと家族とパリを脱出する。
ナチスは、ユダヤ人だけではなく、
ジプシーの人たちも弾圧しており、
ジャンゴの仲間も殺されたりしていたのだ。
国境近くの村で、身を隠すがそこでも
嫌々ドイツ軍のために演奏することになる。
ジャンゴは若い頃にやけどを負い
左手の薬指と小指が自由に動かなくなったので、
残りの2本の指でギターを弾いていたのだが、
映画では、ジャンゴを演じるレダ・カテブが、
その感じをうまく演じていた。
劇中音楽を実際に演奏しているのは、
ストーケロ・ローゼンバーグ(gt)率いる
ローゼンバーグ・トリオ。
音楽は、良かったのだけど、
映画としては、ちょっと物足りないな。
スイスに逃げるのに国境の村で
数か月足止めを食う。
湖を船で渡る算段のために動けないのかと
思っていたら、結局、歩いて山越えを
することになる。
これやったら、もっと早くに
逃げられたんちゃうのと思ってしまった。
もちろん、道案内が要ることなので、
簡単には逃げられないのだけど。
ラストシーンでは、スイスに逃げたはずの
ジャンゴがパリで自作曲の演奏会を
開くのだが、どういう経緯でスイスから
パリにもどったのかも、分からない。
1945年5月と出たような気がするので、
ドイツは降伏した後のことだろうけど、
なんか話が飛び過ぎた感じ。
ジャンゴを描くならもっとジャンゴに
焦点を当てて欲しかったと思うのだが、
残念ながら、戦争映画としても、
ミュージシャンの半生を描いた映画としても
不完全燃焼な印象で終わった。
ジャンゴが時間にはルーズだけど、
音楽には厳しかった人だったとか、
戦時中のナチスのジプシー・ミュージシャンの
扱いを知ることが出来たのは良かった。
戦争は、実にバカバカしいと思う象徴的なこと。
ドイツ軍はジャンゴに演奏を
してほしいくせに、注文を付けてくる。
たとえば、(笑ってしまったけど)
「シンコペーションは、全体の5%」
「ソロは5秒で終れ」とか
「ブルースは演奏するな」
「速いテンポで演奏するな」
一体なんやねん。
あと、映画の宣伝文句に
数人のギタリストの名前を挙げて、
「もっとも影響を受けた "ギターの英雄" と
讃える天才ギタリスト、ジャンゴ・
ラインハルト」って書いてあるんやけど、
そこに書いてあるギタリストの中の
少なくともエリック・クラプトンについては
「もっとも影響を受けた」は言い過ぎちゃうか。
他の人たち(ジミヘン、BBキング、
ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックなど)も
「もっとも」なのかどうかは疑問。
間接的に皆、ジャンゴの影響は
受けているとは思うけどね。
★★★▲☆
この動画を観ると、指2本で弾いているのが
よく分かる。ジャンゴ 1939年のライヴ。
(映画とは直接関係ありませんが。)
↓
Django Reinhardt & Stephane Grappelli
- Jattendrai Swing 1939 - LIVE!
『永遠のジャンゴ』オフィシャルサイト
人生はシネマティック!
THEIR FINEST
もう1本、奇しくもこれまた戦時中の映画
『人生はシネマティック!』。
舞台は、イギリス、ロンドン。
『永遠のジャンゴ』と共通しているのは、
戦争と芸術の関わり。
『永遠のジャンゴ』では、軍が
人々を抑えつけるために、
音楽さえもコントロールしようと
していたが、本作では映画が
戦意高揚、プロパガンダとして
利用される様子が描かれている。
その中でも映画人は、命懸けで作品を
作っていたのだ。
ヒロインのカトリンは、
たまたま書いた広告コピーを
英国情報省映画局に認められ、
脚本家の仕事に就く。
英国でも女性の地位は低かったのだろう。
あからさまに男性より安い賃金を
提示されるが、それは問題にはならない。
カトリンは、才能を発揮し、
仕事にやりがいを見出していく。
と同時にラブ・ストーリーも
展開していく。
カトリンが製作に関わることになった映画が
フランス、ダンケルクでの大救出作戦の
エピソードを描いたもの。
ダンケルクといえば、先々月
そのタイトルも『ダンケルク』という
映画を観たばかりだ。
おかげで、その背景がとってもよく分かり
めちゃくちゃ理解に役立った。
あの映画を観ていなかったら、
全くなんのことか分からずじまいだったと思う。
しかし、本作は戦争映画というよりも、
戦争時のラヴ・ストーリーという印象。
つまり、日々、周りの人が空襲で
亡くなっていくという日常。
以下、ややネタバレ注意。
途中でラブ・ストーリーの先が読めてしまい、
一瞬冷めてしまったのだが、そのあとに、
予測しない悲しい来事が用意されており、
観客は「えぇ〜そんなぁ〜」となる。(たぶん)
それでも、前を向いて生きていく、
女性を描いている。
脇を固める人たちが素晴らしい。
特に老役者を演じるビル・ナイが良い。
あと、イギリス空軍に属するアメリカ人役で
出てくる人がいて、絶対最近の映画で
観た顔だと思ったけど思い出せなかったら、
『女神の見えざる手』のエスコート・サービスの
兄ちゃんやんか!
★★★★☆
『人生はシネマティック!』オフィシャルサイト
2017.12.23
素晴らしき哉、人生!
It's a Wonderful Life
ジェームズ・スチュアート主演の1946年の
アメリカ映画『素晴らしき哉、人生!』を
DVD で鑑賞した。
「哉」は「かな」と読むので、
今年公開されたウィル・スミス主演の
『素晴らしきかな、人生』と同じ邦題だが、
J・スチュアートの方の原題は、
"It's a Wonderful Life" で、
W・スミスの方は、"Collateral Beauty"。
全然 意味が違う。
なんで、古い名作と同じ邦題を
付けてしまったんでしょうかね。
それはさておき、
『素晴らしき哉、人生!』。
ジェームズ・ステュアート演じる、
ジョージ・ベイリーの身に起こる、
クリスマス・イブの奇跡の映画。
お金に困ったジョージは、
自殺をしようと思っていたら、
目の前で男が川に飛び込み、
その男を助ける羽目になる。
飛び込んだのは、ジョージを助けに来た
(翼がない)2級天使のクラレンス。
「自分なんか生まれてこなければよかった」
というジョージを、クラレンスは
ジョージが存在していない世界に
連れて行く。
そこでは、ジョージがいないがために
不幸になっている人達がいるのだった。
もう71年も前の作品だが、
普遍的なテーマで、今でも十分に楽しめる。
ヒロインのドナ・リードも美しく良い。
★★★★☆
2017.12.24
はじまりのボーイミーツガール
LE COEUR EN BRAILLE / HEARTSTRINGS
フランスのベストセラー青春小説を
映画化した『はじまりのボーイミーツガール』。
フランス語の原題は、
"LE COEUR EN BRAILLE" で、
「点字の心」のような意味のようだ。
英語題は、"HEARTSTRINGS"。
「心の琴線」の意味だが、
ヒロインの少女マリーが、チェロを弾くので、
そのストリングス(弦楽器)と
「琴線」をかけているような気がする。
あいかわらず邦題は微妙ですな。
12歳の少年少女の淡〜い恋の物語。
マリーは、目の病気を患っており、
失明の危機に面しているが、
音楽学校に進学する夢を諦めきれない。
プロフィールを見ると、
主人公の少年ヴィクトールを演じる
ジャン=スタン・デュ・パックも、
マリーを演じるアリックス・ヴァイヨも
ふたりとも2003年生まれなので
同じ年なのだが、これくらいの年齢は
世界中どこでもそうなのだろう、
女の子の方が明らかに大人っぽい。
アリックス・ヴァイヨは、
実際にヴァイオリンを演っているようで、
チェロの演奏シーンも
本当に弾いているかのように見えた。
以下ネタバレ。
ラストシーンは、マリーが音楽学校の
入学試験でチェロを弾くシーン。
弾きながら、視力がどんどん衰えていくのだが、
マリーは、至福の表情で演奏する。
映画は、そこで終る。
このあと、マリーには失明という
人生の困難が待ち受けているので、
ハッピーエンドとは言い難い。
音楽学校に進学できるかどうかも
分からない。
フランス映画らしいと言えば
それまでだが、そんな終わり方なので
私はどのように受け止めればよいのか、
いまだに考えあぐねている。
フランス人は子供のころから
愛情の表現が日本人とは違うのだろうな。
女の子に見つめられて
「君に見つめられるのは好き」なんて、
日本の男の子は、恥ずかしくて
言えないだろう。
それとも恥ずかしいの私だけか?
★★★★☆
2017.12.30
否定と肯定
DENIAL
昼間に「 皆様 良いお年を」なんて
今年最後のエントリーと思って
書いたのだが、夕方映画を観てきたので
最後にそのレビューと一年間観た映画を
振り返って、今年の終わりにします。
今年最後の映画は『否定と肯定』。
原題は、"DENIAL" なので
「否定」だけなのだけど、
「否定」と「肯定」両方入れたのは、
珍しく良い邦題だと思う。
「珍しく」は、余計か。
映画が始めるまで知らなかったのだが、
実話を基にした作品だった。
1993年、ユダヤ人女性歴史学者の
リップシュタットは、自著の中で
イギリスの歴史家で ホロコースト否定論者である
アーヴィングを批判した。
1996年、アーヴィングは、リップシュタットと
その出版社を 英国で名誉毀損で訴えた。
リップシュタットは、米国人なのだが、
なぜ、アーヴィングが英国で訴えたかというと、
英国の司法は、日本やアメリカとは違い、
被告が原告の訴えが間違いであることを
証明しなければならないのだ。
ちょっと不思議なしくみ。
つまり、リップシュタットは、
裁判で、ホロコーストは事実であり、
アーヴィングは歴史を捻じ曲げようと
していることを立証しなければならなくなった。
そのためにダイアナ妃の離婚の弁護士など、
英国の敏腕弁護士でチームが作られる。
しかし、弁護団は、リップシュタットに
法廷で証言をさせない。
他人に任せず、自分の口で生きてきた
リップシュタットには、耐えられないことだ。
しかし、裁判が進むにつれ、
リップシュタットは、弁護士の腕と
その作戦を認めずにはいられなくなる。
裁判は、2000年にロンドンで行われた。
欧米では、かなり注目を浴びたようだが、
ホロコーストが遠い国の出来事である日本では、
あまり報道されていたような記憶がない。
私が注意していなかっただけかもしれないけど。
映画としては、リップシュタットが
命を狙われるとか、スパイが紛れ込んでいたとか
そういったドキドキ要素はないのだけど、
テーマがテーマだけに、
大人の法廷もの映画という趣だった。
言論の自由と歴史認識の問題とともに
信頼とチームワークの大切さも
テーマであると観た。
感情的になりがちなリップシュタットに
常に冷静で、語り過ぎない弁護士たちが
印象に残った。
リップシュタットを演じるのは、
レイチェル・ワイズ。
いや〜なおっさん、アーヴィング役に
ティモシー・スポール。
敏腕弁護士に トム・ウィルキンソンと
アンドリュー・スコット。
この裁判のことは全く知らなかったので、
少しググってみた。
映画では、描かれていないが、
ウィキペディアにはこう書かれている。
「アーヴィングは控訴したものの、
2001年7月20日、申請は却下された」
「裁判に敗れたことで、アーヴィングには
リップシュタットとペンギンに対し
200万ポンドを超える支払義務が生じた。
これにより、2002年に彼は破産宣告を受けた」
おまけに2005年(2006年?)には、
「アーヴィングはオーストリアで逮捕された」
とある。
「彼が1989年に行った演説が、
ホロコーストの否定を禁じる同国の法に
違反していたためであった」らしい。
(デイヴィッド・アーヴィングのページには
2005年とあり、アーヴィング 対
ペンギンブックス・リップシュタット事件の
ページには、2006年とある。)
映画の冒頭、アーヴィングはリップシュタットの
大学での講義に乗り込み、
学生に1,000ドルを見せて
「ヒトラーのホロコーストの命令書を
見つけた者には1,000ドルをやろう」と言う。
このあまりの品の無さには閉口だが、
裁判後、テレビ番組に出て、
何の反省の色もなく息巻いているのを見ると、
世の中には色んな人がいて、
色んな考えがあって、然るべきだと思うが、
こういう人って、ホンマにどうなんでしょうと
思ってしまう私も、偏っているのでしょうな。
それにしても、英国って今でも
裁判官や弁護士があんな中世の髪形のような
カツラを真面目にかぶっているのかね。
ちょっとびっくり。
日本人なら、ちょんまげにしてるような
もんだと思うとなんとも不思議。
★★★★▲
2017年 ベスト映画
今年は劇場で56本の映画を観た。
この数年間では、一番少ないのだけど、
今年は、ライヴやコンサートが増えたし、
自分のライヴも多かったので、
その分映画が観られなかった感じだ。
さて、その56本の中で、
一番印象に残っているのは、
『マンチェスター・バイ・ザ・シー
(MANCHESTER BY THE SEA)』だな。
DVD 買ったよ。
まだ観てないけど。
そのほか、★5つの作品は下記。
『恋妻家宮本』
『マリアンヌ (ALLIED )』
『SING/シング (SING)」
『LION/ライオン〜25年目のただいま〜(LION)』
『ドリーム (HIDDEN FIGURES)』
『女神の見えざる手 (MISS SLOANE)』
邦画が『恋妻家宮本』1本だけ。
めずらしくミュージカルが1本入った。(『シング』)
例年、実話を基にした映画が強い印象があるが、
今年は、『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』
と『ドリーム』の2本だけ。
★4.5は下記。
『こころに剣士を (THE FENCER)』
『幸せなひとりぼっち
(EN MAN SOM HETER OVE/A MAN CALLED OVE)』
『素晴らしきかな、人生 (COLLATERAL BEAUTY) 』
『スノーデン (SNOWDEN)』
『しゃぼん玉』
『わたしは、ダニエル・ブレイク (I, DANIEL BLAKE)』
『しあわせな人生の選択 (TRUMAN)』
『君の膵臓を食べたい』
『ハクソー・リッジ (HACKSAW RIDGE)』
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
『ダンケルク (DUNKIRK)』
『ゴッホ 最期の手紙 (LOVING VINCENT)』
『否定と肯定 (DENIAL)』
戦争ものが2本、邦画が3本、実話が4本。
やはり、ヒューマン・ドラマが多い。
ドキュメンタリー部門
★5つ
『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>』
『すばらしき映画音楽たち』
★4.5
『人生フルーツ』
『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』
来年も良い映画が観られますように。